ようこそホワイトルームが無くなった世界へ 作:好きjaなくないない無い
多分ね
翌日の朝7時55分、オレは船上にあるカフェに向かった。既についていた2人はドリンクの紅茶を頼んでいる。
「待たせたな。」
「いいえ、集合時間5分前よ。遅刻ではないわ。」
「先に頂いているよ。綾小路くんは紅茶でよかったかな?」
そう言って出迎えるのは堀北と平田だ。
「大丈夫だ。それより昨日は大変だったみたいだな。」
「ええ、アレは災難以外に何と呼べばいいか分からないわ。」
先日の20時40分からの説明会の前に各クラスのリーダー格が集合し一悶着があったらしい。
「それでグループメンバーと人数は?」
「ここに書いてあるわ。あなたも見れば驚くわよ。偶然とは思えないほどの偏りだから。」
受け取って確認する。グループ名は辰、つまり竜か。そしてそこに乗っていた面々を見て納得する。
Aクラス:葛城康平 西川亮子 的場信二 矢野小春
Bクラス:安藤紗代 神崎隆二 津辺仁美
Cクラス:小田拓海 鈴木英俊 園田正志 龍園翔
Dクラス:櫛田桔梗 平田洋介 堀北鈴音
一目でわかるほどこのグループは偏っている。まず他クラスにはそれぞれ龍園や葛城といったリーダーに、神崎という副リーダー的存在もいる。そしてDクラスはおそらく現時点では最強の布陣だろう。潜在能力的に見てもクラストップの3人だ。高円寺もこの3人に負けないだろうが(まだまだ底が見えないが)やはり普段の行動からだろうか、別のグループだった。
「確かに偏り方が半端じゃない。ある程度仕組まれているだろうな。だが同時に違和感を覚える。」
「うん。それは僕も堀北さんも思ったんだ。君や一之瀬さんがこのグループにいないことが。」
一之瀬はともかくオレまでもか、それだけ平田から高評価をもらっているということだろう。
「ええ、でも私達は一之瀬さんの学力や運動能力についてはよく知らないわ。綾小路くんも運動はあまり得意じゃないのかしら?それならこの選別についても納得がいくのだけれども。」
運動はできる方だ。それにホワイトルームでは運動能力の測定も行っていたし、そこでもずっとトップだった。よって人より遥かに高いだろう。だが、その事実は今後のためにも隠すことにした。
「いや、あまり得意じゃないな。足が人並み以上ってことくらいだ。」
「...そう、ならこの結果は学力以外の観点も入っているってことで間違いなさそうね。」
「ああ、だが大変だな。このグループを出し抜くことになるなんて。」
「ええ、でもやってみせるわ。そろそろ時間ね。本当に一斉にメールが来るのかしら。」
堀北が携帯の時計アプリで秒針を眺める。やがて画面上の細い針が時計の一番上を通り過ぎたと同時にコンマ数秒の誤差もなく俺たち3人の携帯が鳴った。すぐさま確認をする。そしてほぼ同時に読み終えたオレ達はそれぞれ周りに人がいないことを確認し携帯を出した。平田と堀北の携帯には全く同じ内容が書かれていた。
『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした。グループの1人として自覚を持って行動し試験に挑んでください。本日午後1時より試験を開始いたします。本試験は本日より三日間行われます。竜グループの方は二階竜部屋に集合してください。』
オレとはほぼ同じ内容だった。グループが違うためだろうから後は同じ文章が並んでいる。
「同じ文章だ。要するに、優待者なら『選ばれました』になっているんだろう。」
「そうだね。あとはDクラスのうちの誰が優待者かだね。昨日のうちに連絡したしもうすぐ連絡が来ると思うからそれを待つとしよう。」
「そうね。それはそうとして気に入らない一文ね。まるで私に優待者としての資格がないような言われようよ」
さすがは堀北、こんな優等生ばっかりのグループの中でも自分が一番だと思っているのだろう。
「何よ、そのまるで私が優待者に相応しくないとでも言いたそうな目は」
おっと見られていたか。まずいまずい。目線を外してそっぽを向いていると平田の携帯に通知が届いた。
「連絡がきたよ。やっぱり平等性を保つため各クラス3人ずつの配置なんだね。今転送するから確認して。」
すぐさま通知が来て3人の名前を確認する。
「これでDクラスの状況は確認できた。綾小路くん、あなたは今回どんな作戦で動くつもりなの?」
色々とわかったところで堀北から質問が飛んだ。予定通りの動きだ。ここからはオレも予定通りに動くだけだ。
「すまん。これは今日言おうと思っていたことだが、オレはDクラスのリーダーを降りる。そして今後はDクラスにいる一生徒として過ごすつもりだ。」
突然の言葉に動揺する2人。
「ちょっとどういうこと?あなたはAクラスを目指すんじゃないの?」
堀北は声こそ抑えてはいるがなかなかに怒っている。平田は一回深呼吸をしてからオレに体を向けた。
「その決断を止める権利は僕たちにはない。でも理由くらいは教えてほしいな。」
「ああ、もちろん。いくつかあるが一つはこれまでオレはほとんど1人でクラスを引っ張った。もちろん2人の協力無くしてここまでの成果は得られなかったが、このままではオレ達以外の生徒は全く成長しない。」
「あ...」
「わざわざ学校がクラス戦にしているんだ。それはきっとクラス単位で各々の生徒を成長させるっていう目的があるんだろう。その機会を奪うわけにはいかない。現に他力本願なクラスメイトまでできている。それにオレは元々テストの点数が良かったってだけで勉強会の中心にいただけだ。リーダーは平田や堀北の方が向いている。」
しばらく1人で語ったあと堀北と平田は考えるように喋り出した。
「確かにそうだね。僕はクラスメイトのみんなが退学にならなければいいと思っていた。だけどそれは僕達自身が守るだけではダメだね。ちゃんと自分の身を自分自身で守れるくらいにはなってもらわないとね。」
「そうね。それに私の方がリーダーに向いているってことも一理あるわ。」
おい.....
「だけどクラスメイトであるからには最低限の協力はしてもらいたいわね。それとも今の高円寺くんのように自由気ままに動くわけ?それなら少し容認しかねるのだけれど。」
「そんなことはしないし最低限なら協力はするさ。最低限はな。それにクラス自体が成長すればそれだけオレという切り札の厄介性が増す。」
「成程...」
2人はオレの意見に反対できないまま、また容認もできないままでいる。それもそうだろう。いきなり先導者が消えるということだ。何かしら心配になる。
「ならオレは今回この試験でそれ相応の活躍をしたら来年の夏休みまでは自由にさせてもらう。これでどうだ?」
「あなた...本気で言っているの?」
「ああ、このクラスを成長させるにはそれくらいの時間が必要だろう。」
「それはそうだけど.....最低限の協力はするのよね?それは私達との会話に参加して意見を聞くことくらいはできるのかしら?」
「もちろんそれくらいなら。」
「平田くんはどう思う?」
「僕はいいと思っているよ。正直綾小路くんに頼りっぱなしではこの先彼に何かあったとき何もできなくなってしまう。そんな手遅れな状態になる前にこの件は片付けてしまいたい、今はそう思っているから。」
「そうね、分かったわ。でも約束を忘れないでほしいわね。それ相応の活躍をしたら、よ?具体的にはどれくらいの活躍を見せてくれるのかしら?」
「そうだな...クラスポイント100くらいの活躍はしてやる。それ以上高望みはするなよ。」
「いいわ。それで手を打ってあげる。書面にしとく?」
「しなくてもいいだろ。どうせお前は約束を守るだろうし、オレがお前に嘘をついたらどんな仕打ちが待っているのかたまったもんじゃない。」
ただでさえ前は腕に穴を開けられそうになったのだ。嘘をついたら針千本よりも酷い地獄が待っているだろう。
「そう、なら宣言しておくわ。あなたが約束を破ったらコンパスの針を一万回刺す。これでいいわね。」
「お、おう。」
こいつは悪魔か!渾身の心の叫びを抑えながら紅茶を飲み干し立ち上がる。
「じゃあ早速準備に取り掛かる。お互いにがんばろうな。」
「ええ、必ず勝ってみせるわ。」
それだけ残してオレは喫茶店を去った。船の廊下を歩いていると向かい側から龍園が近づいているのが分かった。取り巻きは1人だけ、しかもたしか彼女は伊吹澪と言ったオレと同じグループの1人だ。
「よう綾小路、こんなところで1人なんて寂しいな。お前なら女にはこまらねぇだろ。1人くらいつれないと寂しいぜ。」
「私はあんたとなんか絶対にごめんなんだけど。」
勝手にデート扱いされたせいか苛立ちを隠さない伊吹。それは置いておいて、
「それがな、ついさっき堀北達にリーダーを辞めさせられてな。悲しみに暮れているんだ。」
「へぇ、そいつはおもしろい。明日から世界は氷河期に逆戻りだ。」
「珍しいな、オレを慰めてくれるなんて。」
「オレは意外と優しいんだよ。」
それだけ言って龍園はカフェへと向かった。きっと堀北に絡みにいくのだろうがそれはオレには関係ない。今は特別試験を勝ちに行くことだけしか頭にないからだ。オレは平田からのメールを見る。
竜グループの櫛田
馬グループの南
そして、兎グループの軽井沢
悪いがこの3人、いや優待者に選ばれた12人はDクラスのために、オレのために生贄になってもらおう。そう心に決めてオレは次の集合場所へと足を進める。
そして試験開始を合図した一時の船内放送が終わった瞬間に四つのグループが試験終了のアナウンスを受けた。
『鼠グループの試験が終了致しました。結果発表をお待ち下さい』
『虎グループの試験が終了致しました。結果発表をお待ち下さい』
『馬グループの試験が終了致しました。結果発表をお待ち下さい』
『鶏グループの試験が終了致しました。結果発表をお待ち下さい』
そういえば説明していなかったんですがグループが幸村から三宅に変更していたのは綾小路のお陰で幸村が早く丸くなったからです。
で、設定上幸村とは仲良いけど他とは話すけどそこまで親しい中なわけではない三宅を入れました。
最近は『みたく』と入れないと三宅が出てこないことです。
それとは別にグループメンバーを池にしようかなと思ったのですがそれだとあのグループで積極的に会話する事になると思ったし、何より優待者が...ね?
山内にしようとも思ったんだけど、彼には最後の最後に見せ場を作ってるから.....ね?{予定}
次回の話は今月中に上げて見せます。(宣言)