ようこそホワイトルームが無くなった世界へ   作:好きjaなくないない無い

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ねむ


とある夏休みの日常⑥

 

 

 

 

「今は8時15分か。」

 

 

 

昨日の今日でオレは彼女と待ち合わせの5分前には到着し、コーヒーを飲みながら待っている。一之瀬と映画を見る約束をしたはいいが、問題は時間だった。夏休みは今日を含めて後三日ほど。間接的にとはいえプールで遊べたので今優先されるのは映画らしい。何を見るかなどは全く決めていないが一之瀬自身が『見たい映画ががある。』と述べていたのでそこら辺は世間に疎いオレより彼女に任せるべきだろう。

 

 

 

 

楽しみだな......

 

 

 

 

 

砂糖もミルクも入れた覚えのないコーヒーが、なぜかとても甘く感じた。

 

 

 

 

 

 

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8時25分を過ぎたところ....。寮の方面から急いでやってくる人影が見える。一之瀬だ。彼女はオレがいると分かるとオレの座っているテーブルまで走ってきた。

 

「ハァ...ハァ...お、お待たせ....ハァ...」

 

「大丈夫か?オレも別についさっき来たところだし....」

 

肩で息をしているあたり相当な距離を走ってきたのだろう。おそらくは寮を出たあたりから。およそ4〜500メートルの全力ダッシュは運動部に属していたい女子には相当な距離だろう。だが、

 

「しかし珍しいな。一之瀬が遅れるなんて...」

 

「うぅぅ....」

 

ぐうの音も出ないのかオレの向かい側の席に座り唸る。息は整ってきたみたいだ。

 

「今日ちゃんと6時には起きてたんだよ?だけどお洋服とかどうすればいいか分からなくて迷ってたらいつの間にか時間になっちゃってたんだ。」

 

恥ずかしそうに暴露する一之瀬。オレもそこまで言われると責めるも何も出来ないが(元から責める気なんてないが)心に恥ずかさが生まれる。

 

 

「映画の時間までまだ余裕はあるからゆっくり休んでいいぞ。」

 

「え?いやいやもう大丈夫だよ。息は整ったしあと20分くらいしかないじゃん。」

 

映画が開始する時間は8時50分ここから映画館のある3階まで3分もかからないと思うが、一之瀬が大丈夫というのならとオレも立ち上がってコーヒーのカップを指定の片付け場所に置きに行く。

 

「なら行くか。」

 

「うん!!」

 

一之瀬の返事を聞きながらオレ達は並んで映画館へと向かった。

 

 

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「すごいね。」

 

「ああ。」

 

映画館のフロアに着いたオレ達はまずその人数の多さに驚いた。夏休み最後ということもあるだろうがこの人数は異常だ。

 

「今日はなんか特別な日なのか?」

 

「うーん....私は特に聞いてないかな。もしかしたら新作の映画が話題作だったりして。」

 

「そうか....今日公開の映画は....これだな。知ってるか?」

 

「あ!それ知ってる。ライトノベルとかアニメで大反響したのだね。私は見たことないけどそういえばこの前クラスで話題に上がってたね。」

 

「そうか。どれどれ....この映画、原作のヒロインの視点で始まるって書いてあるな。なら物語を知っている人も知らない人も楽しめるって寸法か。」

 

「綾小路くんってこういう漫画とかアニメの文化に触れたことないの?」

 

「まぁ、こう言ったのは見たことがないな。....これを機に少し見てみるか?」

 

Dクラスに配属されて学んだことの一つとしてアニメや漫画の文化は男女問わず少なからず持っていることだ。その中には感動系や冒険系、戦闘系などジャンルも沢山あるそうだ。この映画は近未来の技術を用いたバトルアクション系だ。仮想の世界には興味があるので、上映期間中に見に行ってみよう。

 

「ふーん、もし見るなら私も誘ってね?」

 

「?別にいいが、いいのか?」

 

「もちろん。綾小路くんの興味あるもの知りたいし。」

 

笑顔でそう返されてはこちらも照れてしまう。そんな中2人でネット予約しといた映画の券を印刷しにいった。機械全般には疎いというか、そもそも触ったことがないので一之瀬にお願いする。

 

「あ!綾小路くん。さっき言ってた映画15時からなら観れるけどどうする?」

 

「一日二本見るのか。まぁ、夏休みも少ないしこのままで見なかったら行かないってオチも想像できる。一之瀬さえ良ければ今日見に行きたいな。」

 

「私は全然大丈夫。それに一緒に遊べる時間が増えて嬉しいな。じゃあ2人分分予約しちゃうね。」

 

そう言って慣れた手つきでスクリーンをタップする。やはりこういった機械には慣れていったほうがいいだろう。後二年強はお世話になるのだから。そう思っているうちに操作を終えた一之瀬がオレにチケットを一枚渡し腕を掴んで引っ張ってきた。

 

「早く早く!ポップコーンとか買わないと!」

 

「?なんで買うんだ?映画を見るんだろ。」

 

時が止まった。いや厳密には一之瀬の動きが止まった。そのままロボットのようにギコギコとオレの方に振り向いた。

 

「どうしたんだ?いや無知であることは謝るからその人でない何かを見るような目でオレを見ないでくれ。」

 

一之瀬の目から消えたハイライトは戻ってきたが、どうも納得がいってないらしい。

 

「綾小路くん、言っておきます。映画を見るときにはポップコーンとジュースは必需品です。これがなくては映画を100%楽しめたなんて言えないの。」

 

「そう...なのか?」

 

物凄い熱量で語られて肯定せざるおえなくなったが冷静に考えれば2時間程の長さの映画に少しばかりスナック菓子と飲み物があって損はないだろう。

 

「なら買いに行こうか。だと言ってもおすすめの味とかはあるか?」

 

「....綾小路くん、もしかしてポップコーン食べたことないの?」

 

またもや信じれないと言いたげな目を向けられる。ここは嘘を言っても特に意味がないため正直に告げる。

 

「ああ、スナック菓子といった類のものは食べたことがない。親が食事に気を遣ってたからな。」

 

嘘は言ってない。

 

「むむむ、また何か隠してるね?綾小路くん。」

 

「いやなんで分かるんだ?」

 

たまに彼女は本当に心が読めているのではないかと疑ってしまう。しかし、一之瀬はオレにとって触れてほしくない話題と理解し話題を変えてくれた。

 

「ならおすすめはポップコーンとドリンクのセットかな?1番王道だし気に入ってくれると思う。綾小路くんって塩系のお菓子と砂糖系のお菓子どっちが好き?」

 

「そうだな。どっちも好きだが強いて言うのなら塩系だな。」

 

「なるほど。なら塩のポップコーンとドリンクのセットがいいね。ドリンクは店員さんが見せる表から決めてね。」

 

「了解だ。」

 

 

オレはポップコーン塩味と烏龍茶のMセット、一之瀬はキャラメルポップコーンとオレンジジュースのMセットを注文した。

 

 

 

 

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映画を堪能したオレと一之瀬はポップコーンやドリンクのゴミを満員さんに渡しながら出てきた。横を見れば一之瀬の目元が赤くなっており、涙を流したことが分かる。

 

 

 

「感動したね、まさか最後あんな終わり方になるなんて。」

 

 

「本当だな。余命を知るって言うのはこんなにも辛く悲しいことであって、その設定をここまで感動作にしてくるなんて思わなかった。」

 

 

「ホントだね。それで、綾小路くん、次の映画まで時間あるしどっかのお店に入りたいんだけどどうする?」

 

 

「そうだな.....」

 

 

今の時間は11時。お昼にはまだ早いがレストランにでも入ってゆっくり昼食を取るのも悪くないだろう。しかしせっかくの休みだから何か思い出に残るものが欲しいな....。そんなことを考えているとオレは反対側の通路に列ができていることに気づく。

 

「一之瀬、あれは何だ?」

 

「あれ?うーん...占いかな?そういえば学校のサイトに夏休み限定で外部から占い師が来るって言ってた気がする。」

 

「そうだったのか。ならせっかく時間があるし行ってみていいか?」

 

「いいよ!私もちょっと今後のこととか聞きたいし...」

 

一之瀬が何を聞くかは分からないがオレも聞きたいことがいくつかある。占いを完全に信じているわけではないが、聞きたいことが聞きたいことだけに神のお言葉が欲しくなっていた。

 

 

 

 

 

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列自体はそこそこ長く10分間ほど並ばなくてはならなかったが無事占い師と対面することができた。

 

「ようこそいらっしゃい。あなたたちはどんなことを占ってもらいたいですか?」」

 

「オレは自分の今後についてと、自分の身の回りの人間についてお願いします。」

 

「私は......恋愛面について.....」

 

 

一之瀬は途中から声を小さくして内緒話の体勢で占い師に告げていた。あまり聴かれたくない内容かもしれないので深く追求はしない。

 

「よろしいではまず、名前で占ってみましょう。二人ともここに自分の名前を書いてください。」

 

30代手前の女性である占い師は指定したデジタル機器とタッチペンを2人の前に出した。俺たちは2人で字を書くと占い師は画数などを確認している。

 

「なるほどね、一之瀬さん。」

 

「はい。」

 

「一之瀬さんは明るい性格で真っ直ぐ誠実な子ですね。仲間意識がすごく強いとてもいい子でしょう。」

 

「え?いや、アハハ。」

 

唐突に褒められ少しばかり照れてしまう。そりゃいきなりこんなに褒められたらそうなるだろう。

 

「占いもとてもいい結果です。これからも頑張ればきっとあなたの願いは叶います。」

 

「ありがとうございます!」

 

オレがいるからか少し遠回しに報告される。もちろん一之瀬は十分分かったようなので次はオレの番だ。

 

「さて、綾小路さんは自分の今後についてと、自分の身の回りの人についてですよね?」

 

「はい。」

 

「ではまず身の回りの人物から...苗字占いでは、過去に打ち勝ち現在を楽しんでいると言う占いが現れました。また、ここ三年間の運勢はあなたが今まで生きていた中で最も高いと言っていいでしょう。幸せな高校生活を過ごせそうですよ。」

 

「そうですか...」

 

「良かったね。」

 

「ああ」

 

この結果は素直に嬉しかった。現に今充実した毎日を送っている自覚はあるし1日があっという間に感じられる。

 

「身の回りの人については、この一週間であなたの身近な人にある決断が言い渡されます。占いではここまでしか分かりません。」

 

「そうですか。」

 

「また、あなた自身にはこれから試練が訪れるでしょう。しかし仲間と協力すれば些細な問題です。一人で解決しようなどとは思わないように。」

 

「分かりました。」

 

占いといえどありがたい情報をいただいた。近日中にあの人の元に顔を出そうと決心した?

 

「さて、これで占いはおしまいです。最後にこのお守りをプレゼントします。このお守りはあなたの1番大切なものを必ず守ってくれます。ぜひ大事にしてくださいね。」

 

「「ありがとうございました。」」

 

二人で礼を言って占いのお姉さんとは別れることにした。

 

 

 

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「綾小路くん、さっきの質問ってどう言う意図があったの?」

 

「ん?」

 

ショッピングモールの中にあるレストランでお互い注文を終えた後、不意に一之瀬から質問が飛んできた。一之瀬はなぜかオレの心を正確に当ててくるためこういった答えたくない質問にはどう答えればいいか困ってしまう。

 

「言いたくない?」

 

ほら読んだ。

 

「いや....そうだな。あんまり言いたいことではない。」

 

「そう。なら大丈夫。私も我慢する。」

 

そう言った一之瀬。だが、言葉とは裏腹に気になってしょうがないらしい。

 

「そんなに知りたいのか?」

 

「な、なんで分かるの?!」

 

「さぁ、なんでだろうな?」

 

「やっぱり顔に出ちゃってるのかなぁ?気を付けよう。」

 

そう言いながら一之瀬は手で頬をグニグニと触っている。そんな中、店内に入ってきた女子二人組がこちらにやって来る。それ自体は別に普通のことだが、こちら側のテーブルは全て埋まっているし反対側のテーブルが空いていたのはレストランに入った時確認済みだ。その女性二人組の1人、白紫色の髪をした少女がオレ達のテーブルの前に着く。杖をついているあたり脚に何か障害があるのだろう。ブレザーから一年生であると分かる。ここまでの情報で彼女が何者であるかは大体理解できた。

 

「すみません、相席よろしいでしょうか?」

 

「え?.....!さ、坂柳さん...」

 

振り返った一之瀬が知っていたのかその名前を呼ぶ。これで確定した。

 

その少女、坂柳は終始不敵な笑みをオレに向けてきた。

 

 

 

 




お気に入り登録者が増えていてとても非常に嬉しいです。
これからも頑張りますのでどうか末長くお願いします。
近々で夏休み編が終わります。後三話くらい?かな?

次の章の名前は『台本編』です。

伏線のようになるよう頑張っておりますので楽しみにしていてください。



ちなみに映画は実際に見たものから選別しております。
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