ようこそホワイトルームが無くなった世界へ   作:好きjaなくないない無い

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幕開け(3)

勉強会が終わるとオレは一旦寮に帰りある人に連絡してから龍園との待ち合わせ場所へ向かう。

 

「クク、来ないと思っていたが、そんなにタダ飯が欲しいのか?」

 

「欲しくないと言えば嘘になるがオレも少なからずお前に興味を持っているんだ。お前のことは知らないがその目、恐怖を知らない目だ。」

 

オレはこの目の持ち主を彼以外に1人だけ知っている。父だ。彼は野望のためならば死すら恐れていなかった。

 

「確かにな。俺は恐怖を感じねぇ。だが、そんな俺にも寒気を感じる時がある。お前と目があった時だ。お前は何者なんだろうな。」

 

龍園はジッと俺の目を見る。目の泳ぎ方などで反応を確かめるつもりだろう。だが、そんなところで俺が隙を見せるわけがない。

 

「やっぱり只者じゃねぇな。目ん玉ひとつ微動だにしねぇ。」

 

「それだけか。なら俺は中々腹が減っているから早く食べに行きたいんだが。」

 

「悪いな。日頃から観察するのが趣味でな。それよりどうした?行かないのか?」

 

龍園はそこから動く気配のないオレに声をかけた。

 

「ああ、ちょっと待ってくれ。オレが誘った奴が来る。」

 

そう言った時にその人物は角を曲がって現れた。

 

「テメェは、....!_________________________

 

 

 

 

 

 

 

龍園たちとの意義のある夕食を済ませオレは寮へ帰ろうとした。しかし、寮に入る少し前に堀北が寮から出ていくのが見えた。遠目からではっきりとはしないがその顔にはいつもある覇気がない。堀北らしくないのでオレは堀北の跡をバレないようにつけた。堀北は寮の角を曲がり姿を消す。その先は特に何もないのでオレもいったことがない。逆に言えばあそこは人気がなく密会には適している。おそらくだが堀北はあいつと会うつもりだろう。

 

 

「まさかここまでついてくるとはな、鈴音。」

 

(堀北と.....生徒会長か、)

 

案の定そこには堀北の兄にである生徒会長がいた。おそらく朝会った時にここにくるよう耳打ちされていたのだろう。見つかると面倒なので角から様子を見る。

 

「私はもう、兄さんの知っている私ではありません。」

 

堀北はいつもの強気な態度とは裏腹にどこか怖さを抱いているようだ。これは予測にしかならないが昔から兄妹で優劣を決められていたのかもしれない。

 

「いや、お前は変わっていない。さっさとこの学校を去れ。お前はこの学校には向いていない。」

 

「すぐに、いえ、必ずAクラスへ上がって見せます。」

 

「無理だ。」

 

「......絶対に上がります。」

 

「本当にお前は昔から言うことを聞かないな。」

 

そう言って兄は堀北の手首を掴み自分の顔よりも高い位置の壁に押し付ける。当然、兄は堀北よりも力があるため堀北は動くことができない。

 

「本音を言おう。オレは現生徒会長。お前はDクラスの劣等生。恥を描くのはこの私だ。そうなる前にさっさと学校を去れ。」

 

兄は手首を掴んでいない方の手で堀北を手打ち込もうとしているのがオレからの角度で認識できる。狙いは肋骨か。堀北は戦力だしここで失うのは惜しい。オレは飛び出して会長の手が堀北の肋骨に届く前にその企みを阻止するため彼の手を掴む。

 

「!綾小路くん!何で?」

 

堀北は驚きを隠せていなかった。会長はさすがと言うべきか。顔色ひとつ変えずオレを見ている。

 

「たまたまだ。それよりこれはどう言うことですか?会長?」

 

「何のことだ?盗み聞きとは感心しないな。」

 

「確かに盗み聞きではありますが、訴えれば非は会長に向けられるのではないですか。現在からの三分間、録音させてもらいました。」

 

オレは抑えている手と逆の手で携帯端末を表示する。そこには現在も続いている録画アプリが見える。ここで初めて会長は動揺を見せたが、それも束の間。すぐに冷静さを取り戻していた。

 

「何が望みだ?」

 

「言いたいことは色々とありますが、まずは堀北を掴んでいるその手を離してもらいたいですね。」

 

そう言ってオレは彼が堀北を離すことを催促する。しかし、

 

「やめて、綾小路くん。」

 

こんなにも弱気な堀北は初めて見る。須藤と言い合った時ですらあんなに強気な態度を示していた分以外ではあった。オレは堀北会長の手を離す。それと同時に彼も堀北の腕を離した。その直後、オレに向かって裏拳が飛んできた。咄嗟だったのでオレは体を後ろに曲げて避ける。その体制から普段通りに戻った時には会長は新しい攻撃を繰り出していた。容赦ない蹴りが襲ってくるが、これも間一髪で避けることに成功した。避けたことに驚いた会長と堀北の2人だが、前者は落ち着くのが早く距離をとり話しかけてくる。

 

「いい動きだな。何か習っていたな。」

 

「いえ、特には。中学も帰宅部でしたしね。」

 

「そうか。ならその異次元の反射神経をどう説明するんだ?」

 

「昔から逃げ足だけは速かったんですよ。」

 

互いに探り合いが続く。もちろんオレはホワイトルームのことを話すつもりはない。情報を聞き出せないと判断した会長は制服のネクタイを締め直し、

 

「条件とは何だ?」

 

「まずはあなたの連絡先が知りたいです。この学校は奥が深そうだからこれからのことをセンパイに聞きたいんでね。」

 

「なるほどな。それも一種の正解か。」

 

「言っときますけど暴力を振った件は貸しにしときますよ。」

 

「構わん。それと敬語はよせ。何か気持ち悪い。」

 

会長に悪気はないだろうがオレのメンタルが抉られた気がした。

 

「ああ、そういえば入学試験で妙なやつがいたな。入学試験では全教科50点。不合格にする予定だったが理事長の後押しがあったため入学できた、綾小路とか言う生徒がな。」

 

「何のことでしょう。確かに理事長には会ったことがありますが。」

 

理事長の件は仕方がないため認める。

 

「......微塵も動揺しないとはな。中々ユニークな男だ。鈴音にこんな友人がいるとはな。」

 

「彼は友人ではありません。ただのクラスメイトです。」

 

ここまで固まっていた堀北が答える。

 

「本当にお前は孤高と孤独の意味を履き違えているな。まぁいい、Aクラスに上がりたいのなら精一杯足掻け。綾小路、もしオレに聞きたいことがあるなら今度連絡してくれ。」

 

「ちょっと待て。一つだけ聞きたい。堀北は昔から変わっていないのか?」

 

「.....ああ、昔と変わっていない。」

 

そう言って会長はその場を去った。オレも続けて去ろうとすると、

 

「待って!」

 

堀北にしてはあまり聞かない大声で呼び止められた。顔は羞恥心からか赤くなっていた。

 

「あなた、本当に何者なの?」

 

「そろそろ分かってくれ。とても優秀な隣人だ。」

 

オレの答えに納得してはいないがこれ以上聞いても自分の期待する答えがこないことを知って彼女はため息をついた。

 

「そうね。あなたってすごいのね。」

 

「別にあれくらい....」

 

「言っとくけれど兄は合気道と空手をやっていたわ。どちらも一流よ。」

 

オレがとぼける前に堀北は会長の凄さを言い放ったため口が裂けてもまぐれとはいえなくなった。

 

「まぁ、オレも色々やってたんだ。」

 

「あなたはいつも抽象的ね。あれほどの実力なら何かしらの実績があるんじゃないの?」

 

「いや、覚えてないな。気にしたこともなかったし。」

 

「....あなた、変わってるわ。」

 

堀北は言葉を終え自身が買ったココアを飲む。5分ほど前の出来事で抱いた動揺はもう治ったようだ。

 

「堀北、お前は本当にこれでいいと思っているのか?」

 

「何のことかしら?主語をお願いしたいわ。」

 

「お前は本当に須藤たちを見捨てていいのか?」

 

「当然でしょう。彼らの勉強スキルは中学生未満よ。それに彼らみたいな人たちが退学になれば、残るのは必然的に優秀な人達、Aクラスを目指すには人数を減らすのが最も確率が高いわ。」

 

「本当にそう思うのか?お前はこの学校を知り尽くしたわけじゃない。クラスから退学者を出した場合クラスポイントが引かれるかもしれない。お前なら考えていただろう。なのになぜその可能性を放棄したんだ?」

 

「......私には無理よ。中学校から1人で努力してきて人と関わることなんてほとんどなかった。兄さんに追いつくために頑張ってきたのに、」

 

「それがお前の弱点で、Dクラスに落とされた理由だ。お前は他人を足手纏いと認識し切り捨てようとする。だが、こうとも言える。この弱点を克服すればお前はこの学校でも通用する力を手に入れられる。」

 

「あなたは知っているでしょう。人は簡単に変わることはできないのよ。」

 

「知っているさ。だから今回はオレに任せろ。須藤たちと一緒に俺たちの勉強会に混ざれ。他人と関わることが今のお前には必要なことだ。」

 

堀北は立ち上がる。その目は先ほどまであった弱さを感じさせることはなかった。

 

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