ようこそホワイトルームが無くなった世界へ 作:好きjaなくないない無い
更新頻度が落ちるのでご了承ください。
定期考査が終わった5月17日。
この日、クラスメイトのみんなはテストが終わった反動で打ち上げなどにいく生徒が多かった。もちろんポイント不足のため寮での開催となったが。オレも平田や軽井沢に誘われてカフェへ行った。参加した10人ほどはドリンクを買うくらいの残金はあったようでみんなで話しながら過ごした。そこで知ったことなのだが平田と軽井沢は付き合っているらしい。人を好きになったことのないオレにとっては何と思ったか言葉で表すのは難しかった。
「じゃーねー。」
「また明日ー。」
そう言ったあいさつで解散して俺たちは部屋の寮に戻る。正直オレはポイントには困っていない。小テストでも今回のテストでも稼ぐことができた。この学校はテストなどの行事で最高の成績を収めたものに褒美としてプライベートポイントを払うそうだ。今回は15万プライベートポイント。オレの残金は残り30万ポイントと同級生の中ではAクラスとほとんど変わらないほどに溜め込んでいた。もちろんコレからの学校生活でいつポイントが必要になるか分からないのでしばらくは節約を続けないといけないと思っている。だが、ここ最近苦手なコミュニケーション能力を駆使しすぎたせいか甘いものを飲みたくなった。時計を見ると午後7時。下の自販機でココアでも買い飲んで、寮の自室で軽い夕食を作ると決めて、オレは一階に降りた。
「久しぶりの甘いものはやっぱりうまいな。」
およそ一ヶ月ぶりのココア。別に特別好物というわけでもないが、その美味さに感動した。しかし横目にある人物を目にしてオレは冷静さを取り戻した。その人物は櫛田。確か今日は堀北や3バカ(池、山内、須藤)と打ち上げをすると言っていたがその帰りだろうか。櫛田はいつも明るく友達と帰っているイメージだが今に限っては明るいオーラも友達もいなくて、はっきり言ったら別人だ。櫛田はショッピングモールから帰ってきたその足で海が見える道沿いに向かう。オレは心配したのか彼女の跡をついて行った。そして道沿いの柵の前で止まった櫛田に声を変えようとした時、
「あー、ウザい。」
今までの櫛田からは考えられない言葉が飛んできた。その時何故か分からないが咄嗟にオレは録画アプリを起動して彼女を撮影できるところに携帯を設置しその場をさっていた。何故さったかは分からないが本能がこの場をさらないといけないと訴えていた。
10分後、オレは彼女がいなくなったのを確認して携帯を取りにいく。幸い彼女は気づかなかったようで先ほどオレが置いた位置で今もまだ録画が続いていた。部屋に戻ってオレは彼女の言動を確認することにした。
『あー、ウザい。まじウザいわー。何あの男子たち。ちょっと優しくしたからってすぐにデレデレになってキモいんだよ!』
そう言いながら柵を蹴る櫛田。あまりにもいつもと違うため、その行動を起こしているのが櫛田だとまだ脳が認めていないほどだった。
『しかもあのクソ堀北死ねよ。今回の須藤との喧嘩で完全にクラスの居場所を無くして退学させようとしたのに。綾小路も邪魔しやがって!しまいに須藤は何で惚れてんだよ?!意味ワカンねぇよ!』
ガンガンと柵を蹴る音は止まない。
『チッ、早く別の案を考えないと。堀北がいる限り私に平穏はないわ。』
櫛田はそう自分に言い聞かせてその場を去って行ったのだろう。そこから先は近くの海から聞こえる波音しかなかった。この様子を見るに彼女は今まで猫をかぶっていたのだろう。信じられないがこの現場を見てしまったら認めざるをえない。しかし問題は何で彼女がここまで堀北を恨んでいるかだ。
オレは確認を含めて堀北に電話をかける。コール音が耳に響くが割とすぐに出てくれた。
『もしもし?』
「堀北か?少し聞きたいことがある。」
『意外ね。あなたから私に聞きたいことなんて。あなたのことだから直接じゃなくて何らかの別ルートを駆使してくると思ったわ。』
堀北は少しばかり皮肉を言うがオレは気にしない。
「遠回りしている時間がないかもしれないし、今回の案件はなかなか重たいんだ。早速本題に入るぞ。」
『分かったわ。けれど何のことかしら?私には心当たりがないわ。何について?』
「櫛田についてだ。今そっちに録音データを送信したから聞いてくれ。」
一度通話が終わり5分と経たないうちに折り返しで電話が来た。
『......聞かせてもらったわ。まさかここまでとはね。』
「その様子だと櫛田から嫌われていたのは分かっていたのか?」
『確証は無かったわ。勘みたいなものよ。彼女から向けられた感情ははっきり言うと憎悪に似ていたわ。』
堀北は武道の心得がある。そのため多少なりとも相手の考えを読めているのだろうか?
「まぁそこは大して問題ではない。オレが一番知りたいのは何でお前が嫌われているかだ。いつも昼食や放課後の誘いを断ったから、じゃないだろう。それならオレや高円寺も嫌われているはずだ。」
櫛田は入学してからずっと学校全員と仲良くなろうと努力していた。その中には堀北やオレみたいな生徒も含む。しかし遠回しに断るオレと違い、堀北や高円寺は正面からバッサリと断っている。
『.....一つだけ心当たりがあるわ。』
「本当か?」
『ええ。だけどこの情報はまだ確定していない。私自身もうろ覚えの記憶だし人違いかもしれないわ。だから話すのは確証を持ってからにさせてもらいたいのだけれど、いいかしら?』
「もちろん構わない。だが、1人で戦おうとするなよ。1人でできることはたかが知れてる。」
『分かっているわ。2度も同じミスはしないわ。』
最後に堀北の成長を感じさせる言葉を聞いて俺たちは通話を終える。オレは疲れからかため息を吐いた。
クラスの中心人物の本性が壊滅的だった。コレはなかなかの問題点だ。彼女を放置するといずれはクラスにも影響が出るだろう。櫛田はそのくらいDクラスで大きな地位を維持している。結局その日は彼女へのコレからの対策を考えるだけで精一杯で特にいい案は浮かばなかった。今はまだクラスで迷惑をかけていないため放っておく。しかしもしも彼女が俺たちのAクラスへの道を邪魔するならばオレは容赦なく彼女に退学という鉄槌を下す。それは決定事項だ。