聖剣憑依主だったのに幼女を操ってる件について 作:無機物憑依ちゃん
それは、人間と魔物が命の奪い合いをする世界。
この世の中は、強いものこそ全てを知ることが出来るように作られている。
死亡者が多いというのに冒険者になりたいと思う者が多いのはそのせいだ。
輝かしい成功を手に入れれば幸運が待ち受ける。好奇心が膨らむがままに旅に出て、世界をこの目で見てみたいと思う愚か者が後悔することなくこの世を去る。
魔物に喰われるか、血肉を利用されるか。
それとも盗賊どもに襲われて終わりか。
もちろん魔物たちだって国から外に出て律儀に襲うわけじゃない。不定期に国を襲撃し、数十と犠牲者を出していくぐらいに狂暴な災害となっていた。
だから冒険者たちは強くならなければいけない。
冒険者たちは皆が国から【冒険家】という職業を貰い、日々活躍していく。死んでいく。
いろんな事件はあれど、それでもと夢を追いかけた者たちを利用し手に入れたものがある。
それが、研究員たる男の財産だった。
金銀財宝。魔法石。竜の秘宝。様々なダンジョンに刻まれる遺跡の秘密など。
そういうものをコレクションするのが男は好きだった。
飾って眺めて、自分だけで楽しむことをよく行っていた。
だから────より面白いことを知ったのは本当に偶然だった。
それは男がまだ研究員でなかった頃。
王家の一人として行事に参加した先で、招待した客の中にいた強い者。
人間の姿をしているくせに、魔物かと思えるほどの強さを秘めた老人だった。
その人は現役で冒険家を続けていて、世界の秘密の一端を知ったと言う。
冒険家の話す今までの冒険についての物語はとても楽しいものばかりだった。
その中でも興味を惹かれたのが人間に種類がいるということについてだった。
魔力が豊富すぎて人間にとって毒霧のような場所。その奥深くに集落があり、耳の長い長命種族の人間がいると言うのだ。
他にも樹海の奥深くにいる手のひらサイズの小さな人間。耳が様々な動物の特徴を持った人間。中には二足歩行で服を着た人間っぽい動物もいたという。
絵で見せてくれたそれらに。好意でくれたという羽や毛、その綺麗なものに目が奪われた。
それらに会いに行きたいと思った。旅に出たいと願ってしまった。
────手に入れたいと、思ってしまったのだ。
冒険家に連れていってくれと頼むが、彼は首を振り拒否をする。
何度頼んでも無理だった。
命令だと言って、時に拷問紛いのことをしようとしても彼は拒み続けた。
冒険家はとても悲しい顔で「話さなければよかった。王族には重すぎるものだ。友を紹介するには、あなたはダメだ」と言って共に旅に出ることを拒んだのだ。
たとえ王家の願いを聞き入れない悪と誤解を受けて殺されようとも。
冒険家の善意を、その男は知るよしもない。
ただ諦めきれなかったのだ。
人間には魔物のように様々な種族がいるのだと聞かされて、とても楽しそうにそれらを発見していった時の顔を見て。
しかし、国のことを考えず勝手ながら始めた冒険はすぐに挫折する。
男は力がない。強さもなにもかも手に入れられない。レベルが足りない。
だから考えた。
ここにないのなら、作ればいいのだと。
人類が様々な環境に適合し進化したと言うのなら、それをこの手に掴みたいと願った。
王家の一人が非道なことをしているぞと囁かれたが、彼がもたらす実験の有益性に皆が気づく。
ダンジョンに潜って攻略し、帰ってこれるものは一部。それを覆せるかもしれない。魔物が出た際の被害が抑えられるかもしれない。
それ以外にも理由はあった。
だがそれは秘匿された。彼にもそれは明かされない秘密だった。
全ては国民のためになることだ。
一部を犠牲にして、その他全てを守れるかもという仮初めの目的を手にしつつ、彼は行動に移す。
それはある意味、残虐非道な冒険の始まりだった。
王族の男は、研究員となることにした。
────をした。
────を、潰した。
様々な実験をして研究員は気づく。
人間は人間のまま進化できない弱い生き物だと。
だから冒険家の話を聞いて分かったのだ。
王国にいる人間になくて、冒険家が見た別種族の人間にはあるもの。
耳、体毛、身体の小ささ。
何故それらがあるのか。
その毛は、羽は。どうしてできたのだろうかと研究員は考えた。
進化をするには根本から変えないといけないと気づいた。
だから、魔物を使うことにした。
魔物の一部には人間を改造し苗床にして、エサ場を作る生き物がいるらしい。
魔物には人間を変える力があるのだと研究員は知った。だから使うことにした。
魔物を解剖すれば出てくるもの。
心臓がその核になると理解して埋め込んだ。
一回目は魔物の核に耐えきれず即死。
二回目はゆっくりと衰弱し、三回目で実験体の肌を魔物のような色に変異させることに成功した。
十回を越えてようやく出来上がったのだ。研究員のコレクションが。
檻のなかにいるそれらを研究員は名前をつけた。
エルフ、妖精、獣人、そうして────。
彼らを作った研究員は、好奇心を膨らませた。
人間は進化できる。なんにでもなれる。
だが、足りない。
実験体があっても、肉体を変異させてもなお進化したという実感は満たされない。
研究員は見たいのだ。人間の持つ成長の可能性を。
冒険家が語ったときのような、目の奪われる全てを。
「まったくあの愚弟は……奴らを騎士にして私に寄越さなくてもいいというのに……」
騎士達は使えないものばかりだ。
それは当然、王国にとって身寄りもない子供達を引き取り洗脳し、騎士にして研究員用の玩具にしただけ。
使い終わったら捨てるためのもの。
それに価値はなにもない。
騎士達に期待はしていない。
逃げられても別にこちらは構わない。なんせ研究員にとってここは己の遊び場のようなもの。
新しい実験が出来るから問題はないのだ。
それに完全に逃げられるとは思っていない。
ここは逃げることの出来ない地下迷宮。かつて己が公開処刑にした冒険家の師が攻略し、安全なものにしたダンジョンの一つなのだから。
それよりも気になるものがあった。
実験体の一人に抱えられている幼い女の子。
その金髪の幼女に見覚えはない。
ホロン村の生き残りはいなかったはずだ。研究員も自身できちんと確認していた。
ホロン村の人間は全員連れ出したか、騎士たちによって殺されていた。
書類にも載っていない。
ホロン村の人数はきちんとこちらで確認した。殺した奴らもきっちりと。
────なのにその見知らぬ幼女は、魔力が異様に込められた見覚えのないナイフを手にやってきた。
幼い子供が何故【失敗作】に抱き上げられそこにいるのか。
彼女は何なのか。
人間に見えるのにそうじゃないような気がするのは何故か。
予想つかない光景に、研究員はなんとなく過去を思い出す。
あの時のような人生を狂わせた素晴らしい景色を見せてくれるかと、そう願って───それを目覚めさせた。
「頼んだよ成功体。君は私にとっての光だ」
ここから彼らがどんな動きを見せてくれるのか、本当に楽しみだ。
感想にご指摘を頂きまして、文章の方を見直そうかと思いプロローグから書き直している最中です。
ご指摘の方、ありがとうございます。続きは全て書き直してから行うつもりです。ただ修正といっても私が出来る範囲での描写を入れること。誰がどこにいるのかの視点などといった部分です。そこまで細かくやるつもりはないです。私の力量もそこまでないので。それと話の流れは変わらないので、気長にお待ちいただけたら幸いです。
そして修正をするのでこのまま未完とさせていただきます。書き直したらちゃんと投稿するつもりですのでよろしくお願いいたします。