聖剣憑依主だったのに幼女を操ってる件について 作:無機物憑依ちゃん
ボロボロの燃えカスの中に無事残っている本。落ちている旗の模様。国の名前。森に住む魔物についての注意文。ダンジョン探索日記など。
日本語じゃなかったのに文字が自然と読めたのはきっと幼女の身体を乗っ取っているせいだと思う。
幼女ができることは俺にもできる。
だから一度も見たことのない文字でも、幼女が知っていれば俺にもできるってこと。
そうして気が付いた。
理解したくもない真実。この世界の在り方に俺は背筋がゾッとした。
この村の名前がホロンという名の、もう二度と蘇ることのない幻の土地だということ。
勇者と魔王が生まれ育った場所でもあり────今の俺は、聖剣ブラッドレリーフという武器に生まれ変わっているという事実に気が付いたのだ。
そう、ここは前世で俺がやっていたゲーム世界。
かなり人気が高かった『勇者の作り方』というダークファンタジー。通称『勇つく』でも知られている。
タイトルからしてもう不穏しかない作品の一つである。ちなみにこれシリーズで掲載されているし、全部不穏すぎてちょっぴりホラーでも混じってるんじゃないかって思えてしまう。
勇者は記憶喪失の少女。
身寄りもなくいつの間にか教会の正門に捨てられた形でいたらしい。その当時は十歳ぐらいの少女だったが、彼女は文字も何も読めない声すらも出せないまっさらな子供だった。
教会はそこで何処にでもいるような少女へ真っ当に育て上げる。文字も読めるし声だって出せるようになったのだ。
そうして、教会で清く正しく生活していたある日、世界に魔王が誕生した。魔物たちが活発に動き出し、世界に闇が広がる。それをどうにかしなくてはならないため王国で選ばれし勇者を探していたところ彼女を見つける。
勇者は聖剣ブラッドレリーフを扱えること。彼女はそれを簡単に使ってみせた。
だから国は彼女を勇者として扱い、魔王を滅ぼすよう命じた。
そこから仲間たちと共に旅をして、魔王を倒す。
魔王は角の生えたドラゴンに似た種族。
人の形をしていたけれど、その殺意は強く人間を滅ぼそうとしているぐらいだった。
勇者はその魔王を倒すことによって世界に救いをもたらす英雄となった。
────問題は、物語の裏側。その真実。
メインストーリーが終わって二周目に移れば、全てが明らかになるようになっていた。
魔王と勇者の関係性についてだが、実は彼らは血の繋がりのある兄妹だったのだ。
ホロン村の生き残りだったけれど、王国によって連れ去られ内密に実験台にされていたホロン村の人たちと同じ犠牲者だった。
勇者にとって王国こそ真の敵だったのだ。
それを知らず彼女は勇者として作られ、その身を国のために使われることになる。真実を知っているのといないのとでは何もかも見え方が違う。
国はホロン村の人たちを使って恐ろしい実験をしていた。
実験内容は魔物に対抗するための方法。
人が魔物に近くなれるかどうか。魔法を簡単に使えるようになるかどうか。
何人ものホロン村の人が死んだ。
魔物になった。精神が壊れた。
その中で唯一生き残ったのが勇者と魔王である。
勇者は人の身でありながら魔物に対抗する力を手に入れた。
魔王は人の身を捨てて、魔物に近くなった。そして魔王は実験施設で研究員たちを大虐殺し逃げ出す事件を引き起こす。
魔王は国を恨んだ。魔物たちを引き入れた。
知識も知恵もない魔物たちが軍隊のように動く。それはどれだけ恐ろしい光景か。
そのせいでまた、恐るべき事実に気が付いてしまったのだ。
実験のショックによって記憶喪失になってしまった勇者が思い出したらどうなるのか。王国を恨むのは必然ではないのかと。
だから王国は一計を案じたのだ。
実の兄妹たる彼らに殺し合いをしてもらおうと。
運がよければどちらも死ぬ。勇者が生き残ってしまったなら、戦いで弱っているうちに記憶を思い出すことがあればすぐ死ねるよう毒か何かを仕込めるよう────そう、彼女を改造をしてやろうと思った。
そうして出来上がったのが、王国にとって都合のいい勇者の作り方という物語。
「クソかよ」
本当にクソである。
王国はマジで滅べ。教会のように良い人はいるけれど、王族はマジで駄目だ。あいつら救いようがないクズばかりである。
……でも待てよ?
ここがホロン村で、壊滅したばかりってことはつまり連れ去られて間もないってこと。
ならば救えるんじゃないだろうか。
勇者も、魔王も。ホロン村で連れ去られて実験された犠牲者たちも。
村で死んでしまった人には悪いが、今はお墓を作っている暇はない。
とにかく早く実験施設に向かえば────きっと、最悪の状況は避けられるはずだ。
幼女の身体は五歳ぐらいだけれど、何とかなるはず。
攻撃のやり方とか分かってないし、出来るかもわからないけれど。俺ナイフだけど聖剣なんだしうまくいくだろ、たぶん!