聖剣憑依主だったのに幼女を操ってる件について   作:無機物憑依ちゃん

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第三話 幼女ちゃんの足、遅すぎない?

 

 

 

 

 ホロン村は王国より外れにある場所。

 いわゆるラストダンジョンの目前に位置する村でもあった。だからか、村人たちは王国の人よりレベルが上で、自給自足で生活できる程度には強かった。ダンジョンの冒険者になれるレベルである。

 それに村人たちは夜は絶対に外に出ないようルールを徹底していたから魔物に襲われず今まで生き残れてきたのだろう。

 

 そんな幸運は、王国にとって目の付け所でもある。

 

 王国目線で悪い言い方をするならホロン村はド田舎にあって、良い言い方をするなら何があっても誰にも知られない絶好の位置にあったということ。

 

 ホロン村にとっては不運なことに、王国が何かやらかしても国民は何も気づかない。魔物にでも襲撃されたんだろうとか噂されて終わる程度である。

 

 実験施設ってここから近い場所にあるはずなんだけど……。

 

 

「きっついなぁ……」

 

 

 

 幼女ちゃんの足が遅い。

 というか体力がないのがきつい。聖剣に生まれ変わったと言ってもやっぱり無機物だからだろうか。幼女のスペックは何も変わっていないから、このままじゃ手遅れになるどころか幼女の方が倒れる。

 

 食べ物とかもここら辺にはないし、幼女ちゃんの身体を考えると実験施設まで行くのに数日はかかりそうだ。

 

 距離が近いと言っても森の奥。幼い身体には辛い崖やら獣道やらがある場所。

 人が全くいない場所に施設を作っているが、魔物に襲われないよう厳重に警戒しているのもあって、侵入はしにくいだろう。

 

 ゲームではホロン村が滅びる前の過去でプレイヤーが好き勝手出来た記憶はない。

 ただあの場所にあるということ。施設の中は厳重に守られているということだけは分かっている。

 

 冒険者並みに強い騎士共が見回りをしているだろうし、幼女じゃ不利なんだよなぁ。どうするべきか。

 

 

「おいそこの貴様! 何をしている!?」

 

「っ────!」

 

 

 やばい見られた!?

 ってかまだまだ先なのになんでここに王国の騎士がいるんだよ!?

 

 

 武器を手に向かって来るガタイのいい男。

 鎧と剣を装備しているから、見回りでもしていたのか。でも一人でいるところを見るに、ホロン村の回収忘れを確認しに来たのか?

 

 

「……貴様、ホロン村の人間か。ちょうどいい、連行する!」

 

「ひぇ」

 

 

 ホロン村の関係者だって思ったってことはやっぱりそういうことか!

 

 逃げようとしたけれど、大人と子供の差は埋めることはできない。幼女より男の方が素早かった。

 すぐさま俺を抱き上げ、縛り付けようとしてくるので必死に抵抗する。

 

 そうしているうちに、男は俺のナイフに気づいた。

 

 

「武器を持っているのか。チッ、それは没収する!」

 

 

 幼女が抵抗してもそれに適うわけがなく、あっけなく奪われた。

 その正体が俺自身の本体。前世のゲームでならちゃんとした聖剣のはずなのに何故か今は呪いの武器っぽくなってるナイフであることに気づかずに。

 

 

「あっ、ぐぅ!? なん────」

 

 

 視界がグルっと回転し、意識が飛ぶ。

 男の呻き声と共に誰かが倒れる音が響いた。

 

 そうして気が付けば、俺は重たい鎧を付け、腰に立派な剣を装備した騎士の男になっていた。

 五体満足。意思の通りに身体が動かせる。男が抵抗するような感覚もなし。つまり完全に男の意識を奪って乗っ取ったってことで……。

 

 

「いやマジで呪いの装備じゃん!」

 

 

 聖剣ってなんだっけ?

 聖なる剣ってなんだ? 呪われた剣に改名した方が良いんじゃねえか?

 

 ま、まあ一応これで安全は確保されたようなものだよな。

 男は俺の力によって意識を奪われ乗っ取られてしまったから、俺の本体が奪われない限り大丈夫なはず。

 

 

 そう思っていると、不意に俺の足を叩く誰かの気配に気づいた。

 

 

「……おっ、目が覚めたのか幼女ちゃん」

 

「んー」

 

 

 足をぺちぺちと叩く小さな手。

 幼女が無事に意識を取り戻して俺を見上げてきたのだ。

 

 何故かその死んだような目が向かう先は俺が握りしめているナイフ。つまり俺の本体なわけで……。

 

 

 

「んう!」

 

「ありゃ、言葉わかるか? 初期の勇者ちゃんみたく言語機能落ちてる?」

 

「それかえせ」

 

「いや急に何言ってんの!?」

 

「それ、かえしぇー!」

 

 

 舌っ足らずに手を伸ばしてナイフを奪おうとする幼女ちゃん。

 泣きそうな顔になったので慌ててしゃがみ込み慰めようとする。

 

 それでもまだ、幼女ちゃんは諦めきれずにナイフに手を伸ばす。

 

 

 

「あのな、俺はこのナイフというか聖剣なわけでな? この男の意識を奪ったから今は安全なんだけど、幼女ちゃんがこのナイフを手に取ると男が目覚めるわけ。つまりまた攻撃してくるかもしれないの。わかるか?」

 

「うー」

 

「幼女ちゃん、俺はこの身体なら攻撃とかできるようになるから……その、せめて村の皆を救うまではナイフは返せないというか」

 

 

 というかこのナイフ俺の本体だよね?

 幼女ちゃんの所有物ってわけじゃないよね?

 

 何でこんなに変な言い訳しなきゃならないんだ。いや幼女ちゃんが泣いてるから仕方ないんだけれども……。

 

 

「かえせぇ!」

 

「あ────っ!?」

 

 

 呆然としていたからか、それとも幼女ちゃんと目線を会わせるためにしゃがんでいたせいだろうか。

 急に飛び出してきた幼女ちゃんが俺のナイフを奪う。

 

 そうして意識が回転、幼女ちゃんの身体に逆戻りしたが────反対に男の意識が戻ってしまった。

 

 

「うっ……ここ、は……」

 

「させるかぁ!」

 

 

 男の手にナイフをイン!

 意識を乗っ取ってこれでオーケー!

 

 流石にまた幼女ちゃんに奪われるわけにはいかない。このままだと意識を奪い奪われっていう不毛な永久機関になりそうだし。

 

 幼女ちゃんが目覚める前に立ち上がって、今度は絶対に奪われないように気を付けよう。

 

 

「かえせぇ……」

 

「ごめんね幼女ちゃん。今はちょっと……俺のお願いを聞いてほしいんだ」

 

「うー」

 

「幼女ちゃんだって、村の皆……家族とこのままお別れなのは嫌だろ? 俺は皆を救う方法を知ってるから、だからお願いだ。俺はこの身体なら戦えるから」

 

 

 

 王国の騎士たる男の身体なら、無意識のうちに戦い方が体に染み込んでいてやれると思った。

 だからなんとか行けそうな気がする。駄目なら別の人の身体に乗り移ればいいような気がするし!

 

 

 そう思いつつ、幼女ちゃんに話しかけると、やっぱり彼女は嫌そうな顔でナイフをとろうとしてくる。

 ……理解はしているのだろう。このままでいるわけにはいかないと。

 

 それでも執着がやめられないってところかな。目線はずっとナイフに固定されたままだけれど、勢いは少し弱まった気がする。

 

 

「行こう幼女ちゃん。皆を救うために」

 

「……おわったりゃ、かえして」

 

「いやマジでその執着なんなの!? 俺はキミに何かやばい呪いでもかけたかなぁ!?」

 

 

 このままだとマジで奪われそうなので早く向かおうと思う。

 幼女ちゃんごめんな。もうちょっとの辛抱だから!

 

 いや、俺の本体って幼女ちゃんの所有物ってわけじゃないんだけどな!

 

 

 

 

 

 

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