聖剣憑依主だったのに幼女を操ってる件について   作:無機物憑依ちゃん

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第五話 聖剣なのに呪われデメリットってなんぞ?

 

 

 

 幼女ちゃんの小さな身体を活かして檻の影に逃げ込んだ。

 ここは明かりがないせいか薄暗くて檻の奥に何がいるのか分からないが、檻から手を伸ばされても絶対に捕まらないよう気を付けて距離をとっておく。

 

 そうしているうちに、扉が開かれ騎士たちが流れ込んできた。

 

 見つけたのは、気絶している騎士が一人。

 彼らから見れば国の使命に反し、重罪者になるだろう男が床に仰向けで倒れている姿だった。

 

 

「おい、起きろ!」

 

 

 倒れているそいつを騎士たちは乱暴に叩き起こす。

 そうして、俺が憑依していた男は呻きながらも起き上がる。

 

 いや、起き上がるというよりは無理やり立ち上がらせたといったほうがいいか。まだ気絶したままみたいだし。頬を叩かれ頭を揺さぶられているが、なかなか目覚めない様子だった。

 しかも彼は可哀そうなことに両手を拘束されていた。何があっても反撃されぬように対処されていたのだ。

 

 俺の聖剣を奪わなければこんなことにならなかったのにな。

 ちょっと同情するし罪悪感はあるが自分の身の安全の方が最優先だ。悪いけど犠牲になってくれ。

 

 このままやり過ごして、周りにいる騎士達がいなくなるまで待とう。

 そう安易に考えていると、奴は意識を取り戻したらしい。

 

 

「ぐっ……ここは? いや、そうだ。あの剣が原因で……っ!!」

 

「何を言って。とにかく貴様を連行しに────」

 

「いやちがう。違うんだ! 俺は俺の意志で皆と敵対したわけじゃない! 敵がいるんだ! 人の身体を操れる恐ろしい呪いの武器が! それを操れる人間が!」

 

「なに?」

 

「……どういうことだ。それは本当か?」

 

「あ、ああ! 確かにここに逃げ込んでる。あいつは俺を利用してっ────とにかく、この部屋に隠れているはずだ!」

 

 

 

 鋭い目で周りを探るそいつは、明らかに俺を探していた。

 その行動に俺は顔を青ざめた。

 

 つまりそれは、俺が奴の意識を奪っていた時の記憶があるということ。いったいどこまで俺のことを知ったのか。

 声に出して言っていたものや、行動だけ?

 俺の頭の中まで読まれているのかすら分からない。

 

 やっぱり何も考えず行動に移したのが悪かったか?

 ゲームの知識を知っていると言っても、聖剣たる俺自身の能力はこんな呪いみたいなことはできないはずだし。もっと清浄な、呪いなんて何もない攻撃力の高い勇者専用の武器だったはず。

 

 こんな時に後悔しても仕方がないけれど、でもやっぱり俺は考えなしだった。自分で自分を殴りたいぐらいに。流石に幼女ちゃんの身体なので殴るわけにはいかないが。

 

 ちゃんと考えて検証して、大丈夫だと判断してからやるべきだったんだ。

 

 

「この部屋にいるとしてもな……」

 

「嘘をつくんじゃないぞ。分かっているんだろうな!」

 

「あ、ああ! 探してくれ! 金髪の五歳ぐらいの痩せた女の子だ!! そいつが持っていた武器が呪われていて……説明はあとでちゃんとする! この部屋にいるのは確かなんだよ!!」

 

「ふむ。逃げていた時の貴様は何かを抱えているようだったが……」

 

 

 危機感というべき本能がここから逃げた方が良いと囁いてくる。

 しかしどうやって逃げ出せばいい?

 

 この部屋は様々な檻が入れられているためか広めに作られてはいるが、扉は一つしかない。

 その出入り口付近に騎士たちがいる。俺はただ一人の幼女なだけ。抵抗する手段も何もない。ダクトとか何か幼女が入れるような入り口があればいいのに、不幸なことに周りには何もない。

 

 しかも憑依していた哀れな犠牲者たる騎士の男は呪いだのなんだの言っていた。つまり俺の武器を敵の手にわざと握らせて意識を乗っ取る作戦が成功する確率は低くなったとみていいだろう。

 

 心臓がやけに鼓動する。

 冷や汗を流し、身体を震えさせる。

 

 喚いている男の言葉を怪しみつつも、騎士共のうち数人は俺を探すことにしたようだ。

 このまま檻の傍にしゃがんでいるだけじゃ見つかるかもしれない。そう思ってもう少し檻の隙間、その奥へ移動しようとする。

 

 その瞬間、だった────。

 

 

「っ!?」

 

 

 俺の身体を掴み、抱き上げる大きな手。

 その爪はとても鋭く、狂暴そうなものだった。刹那、俺は察する。

 

 この身体を掴んだのは魔物だろう。

 幼女ちゃんの柔らかな肉を食べるためか。それとも嬲るためか。

 

 恐ろしくなって全力で抵抗するけれど、幼女ちゃんの身体じゃ意味がない。

 

 

「むぅ────」

 

 

「シッ、静かに……」

 

「むぐ」

 

 

 不意に先ほどの大きな手とはまた別の柔らかな掌が、俺の口を押さえる。

 そうして誰かに身体を抱き上げられて、檻の奥へ入れられた。

 

 俺は今、幼女ちゃんの身体だからとても小さいもの。

 抱き上げてきたその腕から察するに鉄柵を通り抜けられない大きさだけれど、俺は出来たということ。

 

 でも、その柔らかな腕は俺を傷つけようとはしない。

 よくわからない毛むくじゃらで大きな身体の上に乗せられてもなお、殺気も何も感じられないのだ。

 

 ただ聖剣をギュッと握りしめたまま、薄暗い檻の中で動く生き物たちの様子を見ているだけ。

 

 

 

「サヤちゃんをお願い」

 

 

 

 聞こえてきたのは、まだ幼い少女の声。 

 それに呼応するように獣の呻き声がした。

 

 

(もしかして……)

 

 

 少女の声を知っている。

 前世で聞いたことがあるものだった。

 

 それは、勇者として生きた少女アテナ。

 

 哀れな犠牲者でもあり、原作より過去だからまだ十歳ぐらいの少女のはず。

 この時点では彼女はまだ一般人。ただの村人Aにもなれる存在のはずだ。

 

 まだ子供で、こんな場所に居て怖いはずだ。

 実験施設に連れ去られたせいで大変な思いをして。兄とも生き別れみたいな形で部屋から離されて不安でいっぱいのはずなのに。

 

 それなのに彼女は俺を────幼女ちゃんを守ろうと手を伸ばしたのだ。

 

 

 

 

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