ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
大変お待たせしました。
今回も前半のほうでオカルト要素がありますので、苦手な方はご注意ください。
このタイトルの意味はおそらく読者によっていろいろととらえ方に差が出そうな気もしなくないです。
それでは、どうぞ
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後半のほうで誤字と思われる個所が存在しますが、これは意図的に書いているもので、誤字ではありません。
第8話 道
「ただいま……と言っても、誰もいないか」
高月家別邸。
洋式の建物を経由して、ほとんど僕の住居と化している別邸に戻っていた。
もちろん、洋式の建物内には家政婦ないしはシェフだっている。
和風の部屋に置かれた電話の内線を使用すれば、すぐに家政婦たちは駆けつけてくれる。
ある意味恵まれている環境ではあるが、広い家の中に一人というのは少々応える。
(今日は父さんたちは帰ってこないし。料理は僕の方で作ろう)
家に戻った僕は、家政婦の女性にその旨を伝えるようにお願いをしておいたので、料理を自分で作っても問題はない。
シェフの人にはちょっとした休みを与えたと思えば、いいだろう。
まあ、ある意味気苦労をかけるかもしれないけれど。
『誰もいない、だなんて。ひどいわね。私たちがいるというのに』
『そうだぜ、旦那』
そんな中、まるで煙のように湧いて出てきた中年の男女に、僕はため息が漏れた。
「二人は人じゃないだろ」
『ははっ。こりゃ旦那に一本取られたな!』
『成長したので、坊ちゃまも』
この二人は、生きていない。
つまり、幽霊なのだ。
―生活に困り一緒に楽になった―
それが、この二人の幽霊が語った言葉だった。
そもそも、出会い自体がありふれたものだ。
小学生のころ、気が付いたらこの二人はこの屋敷にいたのだ。
話によれば、入ったはいいが出られなくなったらしい。
『それにしても、ほんとこの屋敷は面白い構造をしてるぜ。俺みたいなやつがたくさんいるんだからよ』
「勝手に来ては出られなくなって居すわられるのは、僕にしてみるとかなり問題なんだけど」
男性の関心した言葉に、僕は頭を抱えながら相槌を打った。
この高月家別邸は、本邸からすると”幽霊屋敷”なのだ。
その理由は、霊の通る道である霊道にある。
この霊道は、別邸の今僕がいる自室を中心に直線状になって通っているのだ。
だから、頻繁に幽霊がこの部屋を通っていく。
だが、一番性質が悪いのはここからだ。
この霊道から別邸を守るために形成された霊道を遮断する結界のようなものが、なぜか別邸の外にあるのだ。
しかもその有効範囲は別邸の外壁から先の高月家の敷地内に及んでいるため、屋敷に入ったら出られなくなってしまうという状態になってしまうのだ。
ちなみに、その結界を構築したのは父さんだったりする。
『ごめ~ん。範囲を間違えて別邸の外に展開しちゃったんだ。え? 結界を解除しろ? 諦めてちょうだい、テヘ★』
これが別邸で幽霊をたくさん見る理由を尋ねた際の父さんの答えだ。
ものすごく殺意がわいたのは、今でも記憶に新しい。
『でも、出られたとしてもここを出る気はないですけど』
『ああ。ここにいれば困ることもないしな』
これもまた父さんが結界を構築しようとした要因でもある。
この別邸内は、地脈の関係なのか霊力というエネルギーに満ち溢れているのだ。
この霊力は、幽霊たちの活動源にもなるため一度入ると霊力を得続けようと、出なくなってしまうのだ。
そして霊道があるので、幽霊たちはどんどん入り込んでくる、そしてそこに居座るという悪循環になっているのだ。
一応入りにくくする簡単な結界は張ってあるので、これ以上増えることはないだろうけど、力の強い幽霊はそれをも超えて入ってくるので、あまり意味はないけれど。
(ざっと計算しても50は超えているよな)
一時期は三桁まで行ったが、自らこの別邸を出て行ったりする幽霊もいてくれたので、数は減少傾向にあった。
「さて。夕食でも作るか」
『俺は今日は肉を見たい気分だぜ』
『あなたはお肉が好きでしたね』
とりあえず、外野のことは意識外に追い出す。
この屋敷内にいる幽霊は危害を加えることもなければ、不必要に僕のプライベートに干渉することもない良い幽霊ばかりだ。
今だって、僕が意識外に追い出しただけでどこかに行ったのだから。
「幽霊しか友達がいないというのは、少しいやだけどね」
小学生のころから、僕の友人と言えるのは幽霊たちだけだった。
最初は怖かったが、幽霊に対する対抗策を学んでからはそのような感情は無くなり、ますます幽霊と打ち解けていった。
そのせいで、生きている人たちとの交流はめっきり減ることになったのだが。
その後、小一時間で完成した夕食(今日はカレー)を僕は一人で口にするのであった。
「それにしても、あの学校にいた女の子……彼女は一体なんだったんだろう?」
夕食を終え、会社の仕事の為に本邸の自室を訪れていた僕は、保守管理の合間にポツリと疑問を口にした。
「あの子から幽霊のような気配はしなかったから、死んではいないのだろうけど」
幽霊か否かは見ただけで判別がつく。
どういう感じなのかはうまく説明できないが、直感のような感じで分かるのだ。
その直感が、あの子は幽霊ではないと告げていた。
「でも、そうするとあの消失の説明がつかない」
行き止まりだったはずなのに、完全に姿を消していることが、僕の直観に疑問を感じさせた。
(まあ、とりあえず幽霊にしろ生きている人にしろ、また会った時に捕まえて話を聞けばいいか)
果たして、その時が訪れるのかどうかが甚だ疑問だが。
「ん?」
そんな時、僕の目にある動画タイトルが止まった。
『START:DASH!!』
そう記された動画タイトル。
僕は、その動画のページを開いた。
少しして、動画が再生され始めた。
「これって……」
画面に映し出されたのは、高坂さんや園田さんたちの姿だった。
それは完全に今日講堂でやった初ライブの物だった。
「どうしてだ、録画している人の姿なんてなかったし、カメラはすべて回収してるから映像データをアップロードすることはできないはず」
初ライブで演奏をしている際に、高坂さんたちの振り付けだけではなく、会場全体の方にも視線を向けていた。
何事も観客の反応を把握するのが重要だからだ。
その時にも、カメラ機能を持つようなものを手にしている人はいなかった。
「………まさか」
僕は動画のアングルからその位置に置いておいたカメラを手にすると記録媒体を確認した。
「やっぱりっ!」
記録媒体が何者かに抜き取られていたのか、空っぽの状態だった。
このことから導き出される結論はたった一つだけだ。
「どこのどいつだ? 記録媒体を盗んで、しかもそれを勝手に投稿したとんでも野郎は」
しかも曲の著作情報が明記されてもいない。
これでは削除要請が出れば一発アウトだ。
「ちょっと、調べてみるか」
僕は、動画を投稿した人物のアカウントを調べてみることにした。
高月家が管轄する会社の運営する動画サイトは、会員登録をしなければ動画を投稿することはもちろん、コメントを書いたりすることができない特徴を持つ。
会員になるには、メールアドレスが必要になる。
フリーアドレスなどでは辿れないが、プロバイダーが発行しているアドレスならば開示さえしてもらえば、人物が特定できるのだ。
「出た。これは携帯電話か」
登録されているアドレスは携帯電話の物だった。
「会社はココモか」
残念ながら、僕にわかる情報はそこまでだった。
(あそこにいた人の中で、ココモの会社の携帯を使っている人物さえ分かれば問題はないが……)
問題はそれをどうやって調べるかだった。
非合法な手段と、合法な方法がある。
前者は確実に人権を無視した調査方法となる。
後者の場合は、相手に拒否されてしまえばそこで終了だ。
(どっちにしろ、特定は難しいか)
結局のところ、そう言った結論にたどり着いた。
「仕方ない、管理情報を書き換えて、投稿者が動画に対して操作を受け付けなくさせるか」
僕の取った行動は、管理権をこっちの方に移すものだった。
「ついでに、このアカウントは一月の投稿禁止の措置を取るか」
動画を勝手に投稿しただけではなく映像データを盗むという悪質な行為に比べたら、これくらいは可愛い物だろう。
一通りの対応を終えた僕は、眠りにつくべく別邸の自室へと戻るのであった。
(次の一手を考えておかないと)
そんなことを考えながら。
翌日、いつものように朝の日課を終えた僕は、いつもより早めに教室に来ていた。
それは高坂さんたちに先日考えた妙案を提示するためだった。
「僕が一番のりか」
教室には誰の姿もなかった。
とりあえず僕は自分の席に荷物を置くと席に着いた。
聞こえてくるのは朝練で来ている学生たちの声。
「………どこかに移動するか」
一人で教室にいるという見えないプレッシャーに負けた僕は、逃げるように教室を後にした。
ちょうど学院敷地内の構造を知る機会だと思い、僕は散策をすることにした。
「散策も悪くないかな」
校舎を後にして色々と歩き回りながら、僕は口にする。
通路のような場所を出て歩くと小屋のようなものが見えた。
「何か飼ってるのかな?」
学院にしては珍しい為、僕は木製の小屋に近づいた。
死角になっていて見えなかった、小屋で飼われているであろう動物の姿が少しずつ見えてきた。
「メ~~」
「………」
その動物の姿がを目にした僕は、愕然とした。
「羊か? いや、アルパカか」
白くふさふさとやわらかそうな感じの身体に、くりっとした目がなんとなくチャームポイントと呼べなくもない動物はよく見るとアルパカだった。
(これをアピールすればいいのに)
アルパカを飼っているなんて、かなりのアピールポイントになるはずだ。
「まあ、無理そうだけど」
「ぅ゛!」
ふと漏らした僕の言葉に、飼われているもう一頭の茶色い毛のアルパカが反応して唸り声を上げた。
茶色の毛が目元を隠しているのでさらに怖さを増している。
「もしかして僕の言葉を理解してるのかな?」
ものすごいタイミングで威嚇してきたので、僕は茶色の毛のアルパカをじっと観察してみる。
(こ、これは)
「この凄まじい威圧感。そしてこの貫禄………かっこいいっ」
僕には茶色い毛のアルパカが、まるで数百年生きてきた仙人のように思えた。
「…………」
ゆっくりとアルパカに近づき、右手を伸ばす。
もしかしたら噛まれるのではないかと思うと、右手の動きが止まってしまった。
(大丈夫、大丈夫)
自分にそう言い聞かせながら、僕はアルパカの首に手を触れさせた。
「柔らかい」
思わず漏れた感想がそれだった。
茶色い毛のアルパカは威嚇したり、嫌がるそぶりは見せなかったので、どうやら大丈夫なようだ。
(この撫で心地は癖になるっ)
今まで動物と触れ合う機会がなかったためか、僕は今とてつもないほどの感動をしていた。
「っと、そろそろ戻らないと」
アルパカを撫でていた僕は、ふと時間のことを思い出して腕時計に目をやった。
時間的にも、そろそろ戻っておいた方がいい時間帯だったため、僕は後ろが身を引かれるような思いで撫でるのをやめると校舎へと戻るのであった。
教室に戻った僕は、高坂さんが教室に入ってくるのを待つ。
学生の姿も大幅に増えて、話声に包まれていた。
その中で、僕は持参してきた本を開くとそれに目を通していく。
「………………」
時々周囲に意識を向けて高坂さんの姿を探すが、一向に来る気配がない。
「………」
さらにそれを続けること数十分。
「遅い」
片手で本を閉じた僕は、静かにつぶやいた。
HRが始まる5分前というのに、一向に来る気配がない彼女たちに僕は頭を抱えたくなった。
(せっかく妙案を話そうと思っていたのに、相手が来ないのでは意味がないじゃないか)
しかも、この妙案は集中して聴いてほしかったので、早めに来たのだが、全くもって無意味だった。
「おはようございます。香月君」
「おそようございます。園田さん」
だからこそ、挨拶をしてきた園田さんに嫌味全開で応じるのも無理はない。
「えっと、何か怒ってますか?」
「別に。僕が勝手に空回りしただけなので、気にしないでください」
僕の雰囲気に、恐る恐ると言った様子で尋ねてくる園田さんに、僕はそう答えるのにとどめた。
結局のところ、僕が勝手に動いていただけに過ぎないのだから。
(昨日で気付くべきだった)
よく考えると、昨日もこの時間帯に来ていたような気がする。
だからこそ、悪いのは僕になるわけだが。
(この空回りした気持ちはどう処理すればいいのだろうか?)
僕は途方に暮れている気持をどう対処していけばいいのかに頭を悩ませることになった。
ちなみに、出した結論は休み時間に話すという、至極当たり前な結論だった。
「席に着け。HRを始めるぞ」
その結論にたどり着くのと同時に、担当の先生が教室に入ってきたため、僕は考えるのをやめて先生の言葉を聞くことにした。
こうして、空回りから始まった一日が幕を開けるのであった。