ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
大変お待たせしました。
第9話になります。
まだ登場していない原作キャラがいるので、できれば早く登場させたいと思います。
今回もオカルト要素がありますので、苦手な方はご注意ください。
1限目の授業が終わるころには、不完全燃焼だった気持ちもすっかりと消えて、いつも通りになっていた。
「高坂さん。ちょっといいかな?」
「え? なに?」
高坂さんの席に移動した僕の言葉に、高坂さんは僕を見上げながら用件を尋ねてきた。
「どうしたんですか? 香月君」
ちょうどいい具合にメンバーが集まっているので、僕は手にしていた用紙を高坂さんの机の上に置いた。
「プロデューサーを引き受けたからには、精一杯するということでまず最初の一手がそれ」
「えっと……なにこれ?」
「歌やダンスはそこそこいいんだ。ならば三人に足りないのは知名度。知名度を高めることこそが、上を目指す最大のカギになるだろう」
首をかしげている高坂さんに、僕は説明を簡潔にする。
「な、なるほど~」
「まるで本物のプロデューサーさんみたい」
(”まるで”ではなく、本当にプロデューサーなんだけどね)
南さんの言葉に、心の中でツッコみながら、僕は説明を続けることにした。
「そこで、僕が取るのがホームページの開設ということになる」
「ホームページの……」
「開設……ですか?」
高坂さんの言葉を引き継いで、園田さんが困惑したような表情で続けた。
「コンテンツ案は、そこに書いてある通り。一番上の『INFORMATION』では、"μ's"とは何かを説明する内容を。下の『MEMBER』は文字通り、メンバー紹介。ここは無難に顔写真と下に名前のみを表示させ、クリックすればプロフィールが見れるような感じにしようと思う」
「しゃ、写真ですか……」
写真という単語に、尻込みする園田さん。
そう言えば、初めて会った時も今のように尻込みしているような感じだったような気がした。
「恥ずかしいのは分かるけど、スクールアイドルというのは、形はどうであれメディアなどに出ることになる。これはその練習だと思うのはどうだ? 無論、無理強いはしない。本当に嫌なのであれば文字のみの掲載にするけど。どうする?」
「海未ちゃん」
僕の問いかけに、南さんと高坂さんの視線が園田さんに向けられる。
当の本人である園田さんは、葛藤しているのか視線を色々な場所に巡らせていたが、やがて覚悟が決まったのか僕の方をまっすぐ見てきた。
「私も穂乃果たちと同じにしてください」
「了解」
二人の表情が明るくなるのをしり目に、僕は園田さんの出した結論に頷くことで答えた。
「でも、プロフィールってどういうことを乗せるの?」
「名前と誕生日……西暦は省いて、日付のみ。あと好きな食べ物と嫌いな食べ物とかを考えてる。重要なのはプロフィールからどうやってその人物に興味を持ってもらえるか。情報は多く出さない方が確立としては高くなる」
「ふむふむ……」
なるほどと、頷く高坂さんをしり目に、僕はさらに説明を続けた。
「そしてその下の『DIARY』は、文字通り日記。これはブログの方でメンバーがローテーションを組んで、不定期形式での更新にしようと思う」
「そうですね。さすがに毎日は厳しいですし」
僕の案に、頷きながら相槌を打つ園田さんに僕は無言で頷くと話を続けた。
「順番やどのような内容を書くのかは三人の自由。写真を撮ってそれを掲載するもよし。その日の日記にするのもよし。ただし、常識の範囲内ではあるけど。自分に金銭的な利益を生じさせるような内容の場合は則削除するから」
「意外と厳しいんだね」
「…………それで、最後が『MOVIE』ここでは、ライブでの映像が見れるようにする。とはいえ、動画サイトにライブ映像を投稿してそのページへのリンクを作成するだけだけど」
最初のライブ映像が、その第一弾になりそうだ。
まあ、誰かが勝手に投稿した動画だけど。
「あとは、トップページの方にここの校舎をバックに集合写真を撮るつもりなんだが。その前にこなさなければいけないミッションがある」
「それは?」
「ズバリ。メンバーを増やすこと」
それはある意味当然のことだった。
「今の数だと、印象が弱くなる。だからメンバーを増やすことによって、印象度を増させるんだ。そのためには少なくともHP開設までに2~3名。次のライブ映像を撮影するときまでにはメンバーを6人以上にさせる。これが僕たちの当面の課題。もちろんダンスの練習や歌の練習も欠かさずに。ちなみに、これらは?」
「大丈夫! 毎朝神田明神っていう神社の所でやってるから!」
僕の問いかけに、高坂さんは自信満々に答えた。
(よく鉢合わせにならなかったよな)
毎朝浄化をするために神社に来ているが、鉢合わせにならずに済んだ自分の運の良さが恐ろしく思えてきた。
「ならば、僕も付き合うことにしようか。どういうトレーニングをしているのかはプロデューサー以前に一個人として気になるし。いいかな?」
「もちろん!」
「私もいいよ」
「私も異存はありません」
早朝のトレーニングへの介入はどうやら大丈夫のようだ。
「それじゃ、当面はメンバー集めの方に力を入れるということで、話は終わりだけど。何かある?」
「ううん。私は大丈夫。海未ちゃんとことりちゃんは?」
僕の問いかけに、高坂さんは首を横に振って応えると、ほかの二名も同様に答えた。
こうして、ようやく僕の考えた妙案を説明することができた。
後はメンバーを何とかすることと、大きな壁を超えるだけだ。
――昼休み。
それは全学生に与えられた至福のひと時。
勉強という苦痛から解放された学生たちは、数十分の休憩を楽しみ、また午後の勉強を始める。
そう考えると、この昼休みというのはただの子供だましのような気もするが、昼食をとるためというのを考えれば、ある意味そうでないのかもしれない。
昼食と言えば、購買部でパンなどが売られていた。
それを買って食べる人や、お弁当を持参してそれを食べたり等々、昼食も幅がある。
ちなみに僕は後者だ
「うーん。どこだっけ」
そんな中、僕は空っぽになったお弁当箱を片手に、校舎内をさまよっていた。
僕が向かっているのは、理事長室だ。
もちろん遊びに行くつもりはない。
というより、僕と南理事長はそれほどまでに親しい間柄でもないし。
(そう言えば、南さんは理事長と同じ苗字だけど、本当に親族なのかな?)
最初にあった時にも薄々と感づいてはいたが、本当にそうなのかという疑問を感じずにはいられなかった。
まあ、理事長の関係者だからと言ってとくに何が変わるというわけでもないけれど。
(知らなくていいか)
そして再びその結論に達してしまった。
僕が理事長室に向かうのは、先ほど高坂さんたちに話したHPの開設に伴って、この学校名を明記することの許可を得る為だ。
勝手に書いて処分を受けることになるのは避けなければいけない。
それに何より、スクールアイドルの活動は学校側の協力が必要だ。
スクールアイドルを禁止にするのであれば、今やろうとしていること自体を止めなければいけなくなる。
尤もこれは、ライブをやる前に確認しろよという話になるのだが。
そんなわけで理事長室に向かっていた僕だったが、ものの見事に迷っていた。
「本当に方向音痴なのかな?」
父さんには違うと言っていたが、この間の一件といい今回の件を考えるとそれも怪しくなってきた。
「さすがにこれ以上は時間がないし、引き返すか」
時刻は5限目の授業が始まる10分前となっていた。
説明する時間を考えると確実に間に合わなくなるので僕は引き返すことにした。
「そう言えばこの辺って昨日女の子を追いかけた時に通ったところだったっけ」
ふと壁の方を見てみると、目印のポスター(廊下を走ってはいけませんというものと、大きく張り出された廃坑を知らせる掲示物)があった。
「ということは、あの角が見失ったポイントか」
ふと気になった僕は、突き当りの角まで歩いていく。
そして角を左に曲がったところで
「あれ?」
不思議なものを目の当たりにした。
「確か、ここは壁だったはず」
それがなぜか、通路が続いていたのだ。
(僕の勘違い? そうとしか考えられない)
偶々同じポスターが貼ってあり、僕はそれを見て追いかけた経路だと勘違いしているという可能性も十分に考えられた。
だが、もしそうではないとするのならば、考えられるのは
「って、早く戻らないと」
思わず考え込みそうになる自分に喝を入れながら、僕は慌てて教室へと走っていく。
結局、僕が教室に戻れたのは、チャイムが鳴る5秒前だった。
「あれ、帰っちゃうの?」
HRも終わり、放課後となった。
そそくさと帰り支度をしている僕に声を掛けてきたのは、高坂さんだった。
「何か問題でも?」
「香月君はプロデューサーなんだから、一緒に練習をしないと」
高坂さんの言うこともわからなくもない。
プロデューサーはそれをする側(あえてアイドルと言おう)の現状を把握し、最高のパフォーマンスができるように導いていくのも役割の一つ。
それを把握するのに練習はこれほどないものだった。
「練習の次に重大な課題をクリアするための、下準備をする関係上練習に参加するのはもう少し待ってもらいたい」
「ほえ? 課題?」
僕の申し出に、高坂さんは首をかしげながら頬に指を当てて考え込み始めた。
(わざとだよね? それ)
「新しいメンバーだよね」
思わず目を瞬かせる僕に助け舟を出してくれたのは南さんだった。
「その通り。この三人ではパンチに掛ける。人数を増やせばさらに華やかになる。だから新メンバーの候補者をフィールドワークで探して可能であれば声掛けもする。それが僕が今日やろうとしていたこと。理解できた?」
「うん。そうだよね。確かに部員を集めて部として認めてもらわないとねっ」
僕の言葉にようやく理解できたのか納得した様子の高坂さんの様子に、僕は鞄を手にする。
「それじゃ、また明日の朝」
「うん。またねー」
「練習メニューを考えておきますね!」
何だか今嫌な予感を感じさせる言葉が聞こえたような気がしたが、気のせいだろうか?
そんな予感をよそに、僕はスカウト候補者を見つけるべく学院内を歩き回ることにした。
「これで一通り、回ったかな」
しばらくして、校舎内や外を歩き回った僕は、額の汗を拭う仕草をしながらつぶやいた。
全生徒を見たわけではないが、それらしい収穫はなかった。
「うーん。アイドルは才能や運要素もあるからな……」
輝きがなければ、いくらトレーニングを積んだどころで無意味だ。
僕が求めているのは、輝きを発する人物と、それに足りる存在だ。
ここでいう”輝き”とは比喩だ。
言葉にするのは難しいが、それは雰囲気でもあるし、魅力でもある。
つまり僕にもよくわかっていないのだ。
だが、なんとなく分かるのだ。
その人物が持つ輝きが。
そして、輝いていると思った人物は、うまくその輝きを引き出せればかなりのレベルにまで到達する。
その一番の例が、現在の代のA-RISEだったりもするわけで。
そんなこんなで、収穫がなかった僕は頭を悩ませていた。
(さすがに、”何の収穫もありませんでした”なんて言えないよね)
変な理屈をごり押しして練習に参加しなかった結果が、これというのはあまりにもひどすぎる。
そんな理由で未練がましく校舎内をうろうろとさまよっていた。
「……あそこに行ってみるか」
どうせさまようのなら、昼休みに感じた疑問を解決するのが一番。
僕はそう判断して、先日女の子を見失った場所に向かうことにした。
「やはり、ここに壁はなかった」
女の子を追いかけたルートを辿ってみたが、見失った地点に壁などはなく確かに通路が続いていた。
「僕の勘違いでないとするのなら……」
あるはずもない壁があり、さらに僕にもそれが本物の壁であると思い込ませることができるような存在は、一つしか思い当らなかった。
「あの女の子は、幽霊なのか?」
あの女の子は幽霊だという結論しか。
だが、そう考えればすべての謎に納得がいく。
壁があるように僕を惑わせることも、僕がいくら追いかけても追いつけないことも何もかもが。
(幽霊ならば、見ただけですぐに気付くはずだけど)
僕は血筋なのかは知らないが、見ただけでその人物が死んでいるのかどうか(分かりやすく言えば幽霊か否か)を判別することができる。
ちらっとしか見ていないので、確証はないが、あの女の子からは幽霊だと思わせるような感じは一切なかった。
それがまた更に謎を呼んだ。
「そうだよ」
そんな独り言に近い僕のつぶやきに、後ろの方から声が返ってきた。
その声は小さな子供を思わせる感じの声だった。
僕が慌てて後ろを振り向くと、そこには……
「ふふ」
短めの赤い髪の女の子が立っていた。