ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
大変お待たせしました。
第10話になります。

今回もオカルト要素がありますので、苦手な方はご注意ください。
ちなみに、作中の手品のタネが分かった方がいるのかが、気になったりします


第10話 探し物と少女

「ふふ」

 

僕の目の前に立っていたのは、短めの赤い髪の女の子だった。

彼女こそが、この学院に入り込んだ謎の女の子である可能性が高い。

服装は袖の無い水色のワンピースだった。

 

「お嬢さん。お名前は?」

「内緒」

 

かがむことで女の子と目線を合わせた僕の問いかけに、女の子が笑顔を浮かべながら答えたのはそんな言葉だった。

 

「………どうしてここにいるのかな?」

「あのね。落し物を探してるの」

 

違う質問を投げかけてみると、今度は正直に答えてくれた。

 

「落し物?」

「うん! とっても、とっても大事なものなの!」

 

腕をこれでもかと広げながら告げられたその言葉が本当のことであるのは、聞かずとも分かった。

 

「お兄ちゃんで良ければ、その落とし物を見つけるの手伝うけど?」

「本当?」

「ああ。本当だよ」

 

できるだけ安心させるように笑顔を浮かべながら女の子に答えた。

 

「ありがとう! お兄ちゃん」

「……それじゃ、落し物を落とした場所に案内してくれるかな?」

 

お礼を言ってくる女の子に、僕は落し物がある場所に案内をするようにお願いした。

 

「うん! こっちだよ」

 

そう言って女の子は駆け出した。

その後に僕も続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだよ!」

「ここって、音楽室?」

 

案内されたのは普通の、なんの変哲もない音楽室だった。

ドアを開けると正面奥の方に、ピアノが置いてあった。

とりあえず僕は中に入ると当たりをくまなく探し始めた。

 

(それらしいものはないな)

 

「って……」

 

ふと、そこで気が付いた。

 

(何を失くしたのかがわからなければ、探しようがないじゃないか!!)

 

できれば一番最初に気が付きたかったことだった。

 

(とにかく、あの子に聞かないと)

 

「落し物っていったい何なんだ?」

 

後ろの方から気配がしたので、僕は女の子に問いかけた。

 

「は? 何言ってるの?」

「え?」

 

女の子に声を掛けたはずが、返ってきたのは全く別人の声だった。

僕は慌てて地面から視線をそらして声の方へと向けた。

そこには赤色の髪の先の方が、軽く内側に巻いている髪形の女子学生の姿があった。

その視線は怪しい者を見るような目だった。

 

「失礼。実はとある人物から探し物を頼まれててね」

「……見つかったの?」

「それが、ご覧のありさまで。探し物は見つからないし、クライアントはどこかに行ってしまうしで」

 

女子学生の問いかけに、僕は肩を竦めて答えた。

 

「そう」

 

そんな僕に、相槌を打った女子学生は、興味を失ったのか(そもそも興味なんて持っていなかったようだけど)ピアノの方に向かうと、演奏の準備を始めた。

僕はそんな女子学生の邪魔にならないように、その場を立ち去ろうとしたところで、

 

~♪

 

「………」

 

ふと聞こえてきたピアノの音色と女子学生の歌声が、僕の足を止めた。

そして、気が付くと僕はピアノの方に振り返り、開けかけていたドアを閉めていた。

そのまま僕はその歌声とピアノ演奏に耳を傾けた。

 

(やっぱり、彼女が作曲者”T-princess”か)

 

歌声が僕の下に届いた音源の声と同じだったので、まず間違いはないだろう。

だとすると疑問が一つ。

 

(どうしてライブの時にステージに立っていなかったのか。それと、作詞者の名前が書かれていなかったのか)

 

スクールアイドル"μ's"のメンバーであれば、知っていてもおかしくはないはず。

だが、そのようなものは書かれていなかった。

うっかり書き忘れたという可能性も考えられるが、アイドル名や作曲者名を書いて作詞者情報を書き忘れることはありえない。

 

(まあ、いずれにせよスカウトしてみるか)

 

彼女は、十分に輝く素質がある。

声を掛けてみても損はないだろう。

そう思っていると、演奏が終わった。

タイミングを見計らって、僕は拍手を送った。

 

「え?」

「素晴らしい演奏だったよ」

 

突然送られた拍手に、目を丸くする女子学生をしり目に僕は感想を述べた。

 

「か、勝手に聞かないでよ、変態っ」

 

聞くも聞かぬも自由だし、それに出ようとしたら君の素晴らしい歌声が聞こえてきたんだ、聞くなという方が無理だ。

 

(というより、聞いただけで変態って……)

 

僕はあまりにも理不尽な女子学生の罵声に、内心で首をかしげつつも彼女に警戒されないようにゆっくりと歩み寄る。

 

「ところで、話は唐突に変わるんだけど、実は僕はこの学院のスクールアイドル"μ's"のプロデューサーをすることになったんだ。それで今新メンバーのスカウトをしているんだ」

「や、やらないわよ」

 

僕が言わんとすることを察したのか、先手を打たれてしまった。

 

「理由を聞いてもいいかな?」

「アイドルとか、興味ないし」

 

理由を聞いておいて正解だった。

そっぽを向いたまま答えた女子学生の言葉が、明らかに嘘であることがわかった。

 

「興味がない人が、作曲なんてするかな?」

「な、何を言ってるのよ! 私は知らないわ」

 

僕の問いかけに、女子学生はこちらを睨みつけるようにして否定してきた。

 

(そこまでむきにならなくてもいいんだけどな)

 

思わずため息をつきたくなるのをこらえた僕は、一つ鎌をかけてみることにした。

 

「そう? 実は高坂さんっていう、メンバーから作曲者について聞いたんだけど」

「そ、それは……しつこく作ってほしいって言われたから、仕方なく作ったのよ! 興味なんてないんだから!」

 

見事に引っかかってくれた。

 

「やっぱり、君が作ったんだ」

「聞いたんでしょ? 何を驚いているのよ」

 

僕が漏らした言葉に、女子学生は訝しむような目で聞いてきた。

 

「聞いてないけど?」

「え?」

「僕はただ”高坂さんから作曲者について聞いた”と言っただけで、別に”作曲者が君であることを聞いた”とは言ってないんだけど」

 

僕の返事に目を瞬かせていた女子学生だったが、僕が説明すると次第に顔が赤く染まっていった。

 

「だ、騙したのね!」

「騙してはないよ。そっちが勝手に自爆しただけ」

 

言葉で相手の足を掬うというのは、大人の世界では日常茶飯事に行われている。

気を付けないとこのように不利な状況に追い込まれてしまうのだ。

今のは、それのいい見本だ。

 

「それに君、嘘つくのが下手だよね」

「な、何よ」

 

僕の言葉に自分の身体を抱き寄せるようにして、警戒心むき出しで相槌を打ってきた。

 

「君って、嘘をつくときに目が少しだけ大きくなるから」

「こ、今度こそ騙されないわよ。それもハッタリね!」

 

言葉で鎌をかけられたからか、確実に警戒しているようだった。

 

「ハッタリじゃないよ。だったら、ちょっとした実験でもしてそれを証明してみせようか?」

「上等よ」

 

僕の提案に、女子学生は見事に乗ってきた。

そして僕は小さめの箱を取り出すと、その中からカードの束を取り出した。

上下に自転車の模様が描かれ、中間には風車のあるそれは、トランプだった。

 

「これは、何の変哲もないただのトランプだ。まずはこれをよくきる」

「どうしてそんなものを持ってるのよ」

 

女子学生から至極もっともなツッコミが入るが、僕はそれを無視してカードをリズムよくきっていく。

 

「それじゃ、この中から好きなカードを一枚とって」

 

そしてある程度きれたところでカードを伏せたまま横に広げて女子学生に差し出した。

 

「…………」

 

女子学生は警戒しながらカードを一枚とる。

 

「それを僕に見えないようにして覚えて」

 

カードを一つのヤマに戻したながら僕が指示すると女子学生はカードを僕に見えないようにしながら表の方を見る。

 

「それじゃ、そのカードを好きなところに戻して」

「本当に、これで分かるの?」

 

カードを横に再び広げて促す僕に疑いの声を上げながらも、カードを伏せて戻したので、僕はそれを一つのヤマに戻した。

 

「それじゃ、最後にこれを好きなだけきって」

 

カードのヤマを受け取った女子学生は、念入りに何度も何度もカードをきっていく。

 

「はい」

「これから僕はカードを一枚一枚見せていくから、君はカードを見て全部”違う”って答えて。僕は君の目を見てさっき手にしたカードを当ててみせよう」

「やってもらおうじゃない」

 

女子学生が頷いたのを確認した僕は、伏せられるようにおかれているトランプのヤマの一番上のカードを手にすると、それを女子学生の目の前に掲げる。

 

「違う」

 

女子学生の答えを聞いた僕は、そのカードをピアノの平らな部分に置いて、またトランプのヤマから一番上のカードを手にするとそれを見せていくという行為を繰り返した。

 

「違う」

 

女子学生が、数十回目の否定の言葉を口にした。

数十回目の段階で、僕はようやくそのカードを見つけた。

 

「君の選んだカードはこれですね?」

「…………」

 

僕の言葉に、女子学生は固まっていた。

それはまるで信じられないとばかりに。

 

「ど、どうして!?」

「言っただろ? 君は嘘をつくと目が少し大きくなるって」

 

どうやら的中のようだった。

女子学生の問いかけに答えず、僕はトランプを集めて箱にしまった。

 

「まあ、才能云々とか実力があるか否かで悩んでいるだけなら、僕は入ることを進めるよ。重要なのは、興味があるのか……やる気があるのか否かだよ」

「ちょっと待って!」

 

ドアを開けて今度こそその場を後にしようとしたところで、女子学生が僕を呼び止めた。

 

「何か?」

「そのトランプ、少しだけ貸して」

 

どうやら、トランプを貸してほしかったみたいだった。

 

「絶対に仕掛けがあるに決まってるわ。調べさせてもらうわよ」

「どうぞ、好きなだけ。トランプはそんなに使うわけじゃないから、気のすむまで調べ終わったら返して。それじゃ、ごきげんよう」

 

タネを見破ると息巻く女子学生に、言葉を投げかけながら僕は音楽室を後にするのであった。

 

「作曲者と接触して、スカウトもできたしこれで結果は上々かな」

 

何とか高坂さんたちに胸を張って話せる状態になった。

 

(でも、まだ足りない)

 

もう少しだけ人数がほしいところだ。

 

(欲を言えば、きれいな声で歌えられる人と、元気なのが特徴の人とか)

 

先ほどの女子学生の引き締める感じの歌声もいいが、できれば中間点の歌声があるとさらにバランスが取れる。

今の三人の歌声はかなり個性的だ。

だからこそ、歌声のバランスを整えたいのだ。

そして、元気な人がいればそれはメンバー内の士気の維持にも貢献できる。

はっきり言うと、ムードメーカー的存在だろうか。

とはいえ、それほど欲を出していられる立場ではない。

今はとにかく、希望者を募ることが先決だ。

 

「よし、とにかく今日はこの好成績で満足しておくか」

「かよちん、早く帰ろう」

「待ってよ、凛ちゃん」

 

そう意気込んでいるところに、女子学生の声が聞こえてきた。

 

「うお!?」

「にゃ?!」

 

今、変な声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。

曲がり角の方から赤みがかった茶髪の女子学生が飛び出してきたのだ。

ちなみに、ぶつかってはいない。

そう、ぶつかってはいないのだ。

 

「大丈夫か? き……み?」

「凛ちゃん、走ったら危ない……よ?」

 

僕に続いて、角の方から姿を現した黄色っぽい茶髪の髪に眼鏡をかけた女子学生も、僕を見て固まった。

その二人には見覚えがあった。

そう、それはここに来た時に腑抜け野郎に絡まれていた二人組の少女の姿と。

似ているという次元の話ではない。

確実に本人だ。

まるで時間が凍りついたように、二人は僕の顔を呆然と見ていた。

僕は、二人が反応を示すよりも素早く後ろを向くと駆け出した。

 

「あぁーーーー!! あの時の人だ!!」

 

後ろからものすごく大きな声が聞こえてきた。

だが、僕はもう走り出している。

これはかなりのアドバンテージになるはずだ。

 

「待つにゃーーー!!」

「って、追いかけてきてる!?」

 

まだ遠いが赤みがかった茶髪の女子学生が両手を上に突き上げて僕を追いかけていた。

 

(しかも早っ!?)

 

半分の力で走っているとはいえ、男子と女子の体力差を埋めるすばしっこさに、僕は舌を巻いていた。

だが、捕まるわけにはいかない。

僕は女子学生を振り切るべく、角を曲がったり階段を上がったりと複雑なルートで逃げる。

それでも

 

「待つにゃ~~~!!」

 

距離が開くことも縮むこともなく、女子学生は僕を追いかけ続けていた。

 

「待てと言われて待つ奴はいないわ! 戯けっ!」

 

後ろを走る女子学生に反論した僕は、T字路になっているのを左に折れた。

 

「なっ!?」

 

しばらく走り突き当りの角を左に曲がったところで、僕は固まった。

 

「行き止まりかよ」

 

目の前にあるのは無機質な壁。

つまり、行き止まりだった。

 

(引き返そう)

 

「絶対に捕まえるにゃ~~~!!」

 

引き返そうにもすでに後ろの方にまで女子学生は追いついてきている。

まだ角を曲がっているわけではないので、僕の姿は見えていないが僕が捕まるのも時間の問題だろう。

 

(くそ、どこにも逃げ場がない。これが本当のチェックメイトか!)

 

周囲を見渡しても逃げる場所もなければ隠れるスペースもなかった。

まさに万事休す。

そう思った時だった。

 

「あ、そうだ!」

 

僕は絶好の隠れる場所を思い出したのだ。

そして

 

「じょわぁ!!」

 

思いっきり地面を蹴った僕は、そのまま天井に張り付いた。

天井に張り付いていられるようになったのも、鍛錬のたまものだ。

手足に力を込めて、僕は息を殺す。

 

「あれ~? いないにゃー」

 

追いついた女子学生は、僕の姿がないことに不思議そうな声を上げた。

 

(天井に逃げるというのは最良の手だったな)

 

普通、天井に張り付いて隠れようとする者がいるだろうか?

そんなものはそうそういない。

だからこそ、彼女たちの脳裏には僕が天井に張り付いているという可能性すら浮かんでいないのだ。

 

(さて、あとは移動して彼女の後方で着地して逃げるか)

 

不思議そうに周囲を見渡している女子生徒の目を盗むように、僕はゆっくりと天井を伝って角の方まで移動した。

 

「ふっ」

「あぁ~~~!!!!」

 

着地する際の物音で僕の居場所が知られてしまったがもう遅い。

再び盛大な逃走劇を始めようと走り出した瞬間だった。

 

「ッ!!?」

 

突然左足が動かなくなったのだ。

まるで”誰かに足首をつかまれたかのように”

走り出そうとかなり全力で駆け出していた状態だったのに加えて、動かなくなったのがちょうど左足を上げていた状態だったのもあり、

 

「いつッ!?」

 

僕はそのままバランスを崩して、地面に顔面から激突した。

その結果、

 

「つっかまえたー」

 

追いかけてきていた女子学生につかまることになったのは言うまでもない。

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