ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
お待たせしました。
今回はある人物がかなりすごい扱いになっています。
扱いがよくなるのは少し先になりそうです。
時間とは経つのが早いもので、放課後を迎えた。
「香月君、屋上に行こう!」
「悪い、今日は重大な用事があるから少し遅れる」
早速誘ってきた高坂さんに、僕は両手を合わせて謝りながら告げた。
「そうなんだー。ちょっと残念」
「ちなみに、どのような用事なんですか?」
「この間見せたHPのプレゼンの練習」
園田さんの問いかけに、僕は簡潔にそう答えるのであった。
「えっと、生徒会室は………ここか」
僕が向かったのは生徒会室だ。
理由はもちろん、μ'sのHPのことを説明するためだ。
手元にはHPのレイアウトが記された資料がある。
「うまくいてくれればいいんだけど」
生徒会の下っ端には用がない。
用があるのは会長もしくは副会長だ。
とりあえず、僕はドアをノックしてからドアを開けて中に入った。
「失礼します」
「……何かしら」
中にいたのはあの生徒会長だった。
鋭い目で僕のことを睨みつけている。
そしてこれまた好都合なことに、生徒会室にいるのは会長のみだった。
「実は、スクールアイドルに関しての提案がありまして、それをご説明に参上しました」
「………一応聞かせてもらえるかしら?」
門前払いにはならなかったようで、僕はほっと胸をなでおろすと生徒会長の前に手にしていた資料を置いた。
「それでは、説明させていただきます」
改めてそう告げた僕は、HPについてのプレゼンを始めた。
ここで確認しているのは話にまとまりがあるかということと、噛まずに話せるかということだ。
僕に敵意をむき出しにしている生徒会長の方が、理事長の前でプレゼンをするほどの緊張感が出る。
だからこそ、僕は生徒会長を”練習相手”に選んだのだ。
「―――以上が、スクールアイドルμ'sのHPに関する説明です。つきましては、こちらの学校名を使用する許可を――「却下よ」――」
生徒会長の口から出た答えは、僕の予想していたものだった。
「分かりました。貴重なお時間、ありがとうございます」
僕は生徒会長の前にある資料を回収して一礼した。
本当はそのようなことをする必要はないのだが、練習相手になってくれたのだから、それなりの敬意は示すのが筋だと思ったので、お礼を言うことにしたのだ。
「ちょっと待って」
そしてドアの方に足を向けようとしたところで、生徒会長は僕を呼び止めた。
「彼女たちにも言ったことだけど、いい機会だから貴方にもはっきりと言っておくわ」
「…………」
僕は生徒会長の言葉を無言で待った。
「貴方たちのやっていることは、はっきり言って逆効果よ。それはこの間のライブを見れば一目瞭然のはず」
「ええ、確かに。あれはひどい惨状でしたね」
生徒会長の言葉に、僕は頷きながら相槌を打つ。
彼女の言うとおり、初ライブでの観客数は一桁のみという最悪な結果をだしている。
「このままやってもうまくいくとは到底思えない。そうなれば、やっぱりだめだと生徒たちが思ってしまう。それは廃校になる可能性をより高めるわ。遊び半分でやるべきことではない。今からでも遅くないからあなたの口から辞めるように言ってもらえないかしら?」
「……………」
その言葉に、僕は目を瞬かせた。
「あははははっ!!」
そしてこみあげてきたのは笑いだった。
「あんた、最高に面白いやつだ」
「なっ!? あなた、誰に向かって口をきいて―――」
「どうせ、ここの廃校は確定事項……ならば、失敗しようが関係ないだろ? そもそも、彼女たちが原因で廃校になるという論理自体が飛躍しすぎだ」
僕は激昂する生徒会長を無視して話を続けた。
「それに、仮に彼女たちの失敗が原因で廃校になるというのであれば上等だ。そっちの方が逆に燃えるというものだ」
いつだって、窮地に立たされた時に人は凄まじい力を発揮するものだ。
「それとも、無能中の無能の生徒会長には廃校を阻止する案があるのか? 私たちに偉そうにいちゃもんをつけてるんだ。さぞかし素晴らしい案なんだろうな」
「…………今、検討中よ。仮にあったとしても、それを部外者のあなたに言う必要はないわ」
一瞬視線を逸らしたものの、鋭い視線をこちらに向けて反論した。
「まあ、確かに。テスト要因で生徒になったとはいえ、僕は部外者ですからね。部活にも入ることは実質不可能ですし」
運動系や文化系の部活で僕が所属できそうなところはないのだ。
運動系の場合はそもそも大会などに出ることができないし、文科系の場合は僕自身がコミュニケーションを取れにくくなるのと、向こう側が嫌がる可能性があるからだ。
それに何より、ここにいられるのは来年の3月31日まで。
それ以降は来年の2月あたりで判断することになっている。
生徒会長の部外者というのは非常に的を得ていた。
「僕の母はここの卒業生。いろいろ迷惑かけたから、せめて母校ぐらいは残したい。それに関係がなかったとしても、目の前で必死に前を向き挑もうとする人を放っておくのはできない性分なのでね」
どちらが本当の理由かと言われれば”どちらも”だ。
親孝行と性分どちらも、僕が彼女たちに力を貸す理由だった。
「まあ、これをあんたのような無能中の無能が理解するのは無理だと思うけど」
「………音ノ木坂学院は伝統のある場所よ」
「知ってますよ。パンフレットを読みましたから」
僕の言葉に、いきなりこの学院のことを説明し始めた生徒会長に、僕は首をかしげながら相槌を打った。
「貴方の存在はこの学院にとって大きくマイナスの存在です。校風を大きく損ね、風紀を乱している」
「本当に、面白い人だ。自分に反抗する者は風紀を乱すと言いがかりをつけて、排除しようとするんだから。そんなお前にとってもすばらしい言葉をくれてやる」
生徒会長の言葉に、ため息交じりに言いかえした僕はいったん言葉を区切った。
「『なぜ、ベストを尽くさないのか』とある優秀な方が出版した本に書かれていた言葉だ。ベストを尽くせば困難な状況も打破できる……私はそう解釈しています」
ちなみに、その本はどこかに失くしてしまったので、読むことはできないがいい本だった。
「Why don't you do your best?」
「はい?」
僕は英語で”なぜベストを尽くさないのか”と生徒会長に問いかけると、そのまま生徒会室を後にするのであった。
「やれやれ」
僕はドアを閉めると肩を竦めてその場を後にするのであった。
その次の日の放課後。
「香月君、屋上に行こう!」
「悪い、今日も重大な用事があるから少し遅れる」
先日と同じように声を掛けてきた高坂さんに、僕は両手を合わせて謝りながら答えた。
「何だか最近付き合いが悪くない?」
「ここ数日がかなり勝負なんだよ」
頬を膨らませながら不満を口にする高坂さんに、僕はそう返した。
「先日練習していたものですか?」
「今日、理事長に話をしてくる。これが通れば、一歩前進することができる」
園田さんの問いかけに、僕は頷きながら相槌を打った。
「何か手伝えることはあるかな?」
「ない。舞台の細かな準備はプロデューサーの役割。三人はいつでもその舞台に上がれるように練習をすること。それが君たちの役割だよ。手伝いたいと思うのであれば、次のライブを成功させられるように練習をして」
南さんのありがたい申し出を僕は首を横に振ることで断った。
彼女たちは演じ手だ。
ならば、ライブで成功させられるように練習を積まなければいけない。
「それでは、私達はこれで」
「頑張って」
僕は三人にそう告げて背中を見送った。
「さて、ここからが僕の力の見せ所だ」
彼女たちの喜ぶ顔を見るべく、僕は許可を取るべく理事長室に向かうことにした。
「よし、迷わずについた」
教室を後にして理事長室まで迷わずにたどり着いた僕は、ガッツポーズをとった。
とはいえ、まだまだスタートラインにも立っていないのだが。
「失礼します」
ドアを数回ノックして中に声を掛けてからドアを開けた。
「あ……」
「あ……」
理事長室には、すでに先客があった。
何やら話していたのか生徒会長とその斜め横には両サイドで髪を束ねた紺色の髪の女子学生がいた。
おそらくは、生徒会の関係者だろう。
(どこかで見たような……)
紺色の髪の女子学生のことを前に見たような気がしたが、僕はそのことを頭の片隅に追いやった。
「すみません、お取込み中でしたか?」
「ええ」
「では、私は外で待ってます――「待ちなさい」――はい?」
一礼しながら理事長室を後にしようとする僕を呼び止めたのは、あの生徒会長だった。
「そっちが先でいいわよ」
「ですけど、重要な話があってここにいるのでは?」
生徒会長の計らいに、僕は思わず聞き返してしまった。
「ええ。でも、貴方の要件がどのようなものかが気になるのも事実。だからよ」
「あぁ。なるほど」
生徒会長の返答で、ようやく僕は彼女の真意が理解できた。
つまり彼女は、僕がどんな内容の話をするのかが気になるというわけだ。
(まあ、別にやましいことをするわけじゃないからいいか)
「それじゃ、お言葉に甘えて」
生徒会長の思惑は別として、先に話をさせてもらえるのはありがたいので、僕は用件を口にすることにした。
「理事長の耳にすでに入っているとは思いますが、つい数日ほど前から、この学院のスクールアイドルμ'sのプロデューサーを務めることになりました」
「ええ。存じてますよ」
どうやら、予想通り理事長は知っているようだった。
ならば話は早い。
「そこで、最初の一手としてこのような案があります」
そう言いながら理事長の前の差し出したのは、この間生徒会長に見せたのと同じ内容の資料だった。
「この間のライブでは人はそれほど集まらないという芳しくない結果に終わりました。その原因として、私は認知度が低いためと判断しました。そこで、認知度を高めるための案件がそちらの資料になります」
「ちょっと待ちなさい! あなた、まさかこの間のことを言う気じゃ――「すみません、今は理事長とお話をしています。外野は口を挟まないでいただきたい。貴女の意見はちゃんとお聞きしますから」――」
僕の説明に、割り込む形で異論を唱える生徒会長に、僕はできる限り丁寧な口調で注意した。
「ホームページの開設ですか」
「あ、はい。学園のスクールアイドルなので、UTX学院のようにパンフレットで大々的に紹介すればかなりのアピールになりますが、そもそもここに興味を持ってもいない人が、パンフレットを見ることすらないので、意味がないですしそもそもお金の無駄遣いです」
理事長の言葉に、僕は慌てて説明を続けた。
「貴方! 理事長に向かって――「ですから、話には割り込まないでください。今理事長と大事なお話をしているので」――……」
僕の言い方に声を荒げる生徒会長に、僕はもう一度丁寧な口調でお願いした。
「失礼。そこで、ホームページです。ネットであれば大勢の人の目に留まる可能性は飛躍的に向上します。しかも、ネットユーザーは10~20代のほうが多いという傾向にあります。さらにはサイトを見た人物が、親族にそのサイトのことを紹介してスクールアイドル"μ's"について興味を持ってもらえれば、大勢の人がこの学院のことを知り、興味を持つ可能性があります」
「なるほど……確かに、悪くはない案ですね」
僕の説明に、資料を見ながら理事長が口にした言葉に、僕は好感触だと判断した。
「μ'sについては一番上の『INFORMATION』で紹介をします。そこにこの学院名を記載すれば、どこの学院のスクールアイドルなのかがわかります。もちろん、コンテンツも資料に記載しているように、充実したものにする予定です」
僕の言葉を受けて、理事長は手にしている資料をぱらぱらとめくっていく。
「そこで、理事長にはトップページの方にこの学院後者をバックにしたメンバーの集合写真と学院名の記載の許可を――「待ちなさい! 理事長に対しての直接の要望は原則禁止よ。それに、そのようなことをしても意味はないわ」――……っ」
僕の言葉を遮ってもう反論してくる生徒会長に、僕はついに限界を超えた。
「じゃかぁしゃあ!!」
「っ!?」
いきなり大声を上げた僕に、生徒会長のみならず先ほどから生徒会長を止めようと尽力していた女子学生までもが肩を震わせた。
「さっきから何度も言ってる! 人の話に割り込むな!!! 次割り込んでみろ、その口を縫い付けて二度と開かないようにして、窓から外に放り投げるぞ。ごらぁ!!」
僕の怒りに呼応するかのように、窓ガラスが小刻みに揺れ出した。
「香月君、落ち着きなさい」
「………大変失礼しました。それで、許可の方ですが、どうでしょうか?」
理事長の一声で、僕は一度深呼吸をすると声の大きさを落として話を元に戻すことにした。
「別にいいんじゃないかしら? 香月君の言っていた通り、うまくいけばかなりプラスになるわ。それにデメリットや危惧される問題点とその対策もしっかり書いてあるようだし、私からは特に異論はないわ」
「ありがとうございます」
理事長の判断に、僕は背筋を伸ばしてお辞儀をしながらお礼を述べた。
やはりトラブルとそれに対する対処法を書いておいたことが、いい方向に作用したようだ。
「なぜですか! 彼女たちのライブでは―――」
生徒会長がもう反論をするが、許可が取れた以上僕がこの場にいる必要はない。
僕はそう判断して、生徒会長の反論を聞いている理事長に一例をすると理事長室を後にするのであった。
「待ちなさい!」
教室へと向かっている僕を呼び止めたのは、ほかならぬ生徒会長だった。
「何ですか?」
「どういうつもり? あのような真似をして」
どうやら先ほどのことで完全に頭に血が上っているようだった。
(そんなに高坂さんたちのことが憎いのかな?)
ここまで来ると、猛反対をしているのが彼女たちに対する怨恨が原因なのかと疑ってしまうレベルだった。
「私はベストを尽くしているだけです。だから、理事長は私の意見に賛同した。無能中の無能のお前が却下した案件をね」
「………」
生徒会長の視線がさらに鋭くなっていく。
その視線からはかなり重い殺気のようなものを感じた。
「先輩に対しての言葉遣いができていないような無礼な人に、無能中の無能と言われたくはないわ」
「一応言うけど、僕がため口を使うののは”お前が敬語を使うに値しないレベルの人間”だと判断しているからだ。あんたに敬語を使ったら、敬語で話している他の人がかわいそうだ」
まさに売り言葉に買い言葉。
生徒会長の言葉に、僕は完全に暴言レベルの反論を口にした。
「なんですって?」
「―――――――っ!?」
生徒会長がいつにもなく怒りをあらわにした瞬間、鼓動が力強く脈づくのを感じた。
(これって、まさか……)
僕の目に見えたのは生徒会長の背後にいる黒く染まった―――
「う……ぐっ!?」
それを理解しようとした瞬間、今度は動悸とめまいが一気に襲ってきた。
もはや立っていることができなくなった僕はその場にうずくまる。
「ち、ちょっと、大丈夫!?」
誰かがあわてて声を掛けてくるが、それが誰なのかを理解するよりも早く、僕の意識は闇へと沈んでいくのであった。
7/7
作中の誤字のほうを修正いたしました。