ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
第16話になります。

今回もオカルト要素がありますので、苦手な方はご注意ください。



第4章 『アイドル研究部』
第16話 襲来


「して、浩介」

 

ある日の夕食のこと。

この日は母さんと父さんの三人で夕食を食べられることができたので、久々の家族そろっての食事となった。

そんな食事中に、父さんが唐突に口を開いたのだ。

 

「学院のほうはどうだ?」

「ちゃんとやっている。新メンバーも入ったし、何とか好調だよ」

 

スクールアイドルμ'sが、6人に増えた。

これががいろいろな契機となった。

まず、前々から作成していたHPが完成したのだ。

HPの実物を見たメンバーの反応もよく、問題は特にはなかった。

 

「そういう意味で言ったのではないんだが……まあ、その様子ならば問題はないようだな」

「……?」

 

父さんの聞きたいこととは違ったらしいが、一人で頷く父さんの姿に僕は何のことかが分からなく、首をかしげるだけだった。

 

「まあいい。油断はするなよ。油断した時こそ、問題というのは起こるものだからな。特に、あそこには要注意人物がいるのだからな」

「わかってる」

 

父さんはいまだに彼女のことを危険視している。

 

「今日まで、問題は発生していないし、危険視する必要もないとは思うけれど、とりあえず注意はしておく」

「そうだ。必要なくても注意するべきだ。特に、この周辺ではな」

 

その父さんの一言が、異様に重かった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

とある日の神田明神でのこと。

境内では浩介がいつものように、御神木に手を当て地脈の浄化を行っていた。

そんな浩介の後ろのほうに、怪しい影があった。

黒髪をサイドポニーの髪型にしている少女は、サングラスにマスク、トレンチコートと誰が見ても不審者に見えるような服装だった。

 

(見てなさい)

 

そんな奇抜な服装をした少女は、ゆっくりと浩介のほうに迫っていく。

近づいても気づく様子のない浩介に、少女はさらに距離を縮めた。

そして、一歩足を前に踏み出した瞬間だった。

 

「へ?」

 

少女は突然のことに、頭の中が真っ白になった。

それは一瞬のことだった。

 

(ど、どうして私は空を飛んでいるの?)

 

少女は、空を舞っていたのだ。

だが、少女は本当に飛んでいるわけではなく、吹き飛ばされているだけなので、どうなるかといえば……

 

「ぎゃああああ!!!」

 

重力に従って落下することになる。

 

「あいたた………いったい何なのよ!!」

 

少し離れた雑木林に落下した少女は、突然のことに大声で叫んだ。

一方、浩介の方はといえば……

 

「……曲者が出たか」

 

御神木の浄化を中断させて後ろのほうを見渡しながらつぶやいていた。

 

「本当に、聖域にするんだ」

 

浩介は感慨深げに言葉を漏らしていた。

先ほどの、少女が吹き飛ばされたのは、浩介が、御神木を通して地脈の浄化を行っていたためだ。

御神木を利用して儀式などをすると、その周囲が聖域と化して術者を守ってくれるというのが高月家では昔から言われていた。

この聖域は、一般人であれば中に入った瞬間、別の場所に飛ばされるだけだが、術者に対して悪意があるものが中に入ろうとすると先ほどのように吹き飛ばされたりするのだ。

これはもちろん高月家の者はもちろん、ここで巫女として働いている者は含まれないので、聖域内に入ることができる。

閑話休題。

 

「もう少しだけ、浄化でもするか」

 

そうつぶやいた浩介は、再び浄化の作業を始めるのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「ふう、こんなものか」

 

一通り浄化作業を終えた僕は、額の汗を拭う仕草を(本当に掻いているわけではないが)しながらつぶやいた。

 

「にしても、さっきのはいったい何だったんだ?」

 

気になるのは少し前でのこと。

地脈の浄化をしていた僕は、突如として何者かが近づいてきてよからぬことをしでかすような気を感じた。

だがその人物は見えない力によって、吹き飛ばされるという結果となったのだ。

 

(あれには本当にびっくりした。あるとは聞いていたが、本当だったとは)

 

話したのが父さんでどうせウソだろと思い込んでいたので、本当にそのような領域があったことに驚いていたのだ。

 

「さて、みんなが来るまで残り4,5分。そろそろ移動でも――――っ!」

 

次の瞬間に感じた殺気(というより、悪意だが)に、僕は慌ててその場所から横に転がり込む形で離れた。

その次の瞬間、何かが風を切る音が聞こえてきた。

 

(何だ今のは!?)

 

突然のことに驚きながらも、僕は何かが飛んできたと思われる方向へと顔を向けた。

視線の先……社のそばにいたのは、赤いリボンで黒紙を両サイドに束ねる(いわゆるサイドポニー)髪型の少女だった。

その少女は黒いサングラスにマスクをつけ、茶色っぽいトレンチコートに身を包んでいるという、どこからどう見ても不審者の典型のような恰好をしていた。

 

「お前か。私を闇討ちにしようとした奴は」

「そうよ」

 

謝るわけでも、とぼけたりするわけでもなく堂々と答える少女に、僕はある意味尊敬の念さえ覚えた。

とはいえ、許すわけにはいかないが。

 

「何が目的だ?」

 

目の前の少女は、高月家を狙う暴漢かもしれない。

高月家といえば、現在さまざまな方面で影響力を強く持っている。

影響力や地位が高ければ、それに比例して暴漢に襲われる可能性も高くなる。

現に父さんも暴漢に襲われかけたことが、数回もあるらしい。

いずれも周囲にいた護衛の人が防いでくれたが。

そんなわけで、僕たち一族が毎朝鍛錬をしているのは暴漢から身を守るという目的もあるのだ。

それはともかくとして、彼女が暴漢であれば、このままというわけにはいかない。

 

(骨の一本や二本は折っておかないと)

 

「これは警告よ!」

 

そんな物騒なことを考えていると、少女は声高々に答えると僕に向けて指さした。

 

「とっととスクールアイドルを解散しなさい!」

「断る」

 

少女の口から出てきたのは、μ'sを解散させろという脅迫めいたものだった。

それに対して、僕は即答で拒否した。

 

「誰が不審者の貴様の言うことを聞くか。顔を洗って、部屋の中に引きこもって、タコ飯でも食ってろ、バーカ!」

「な、ぬぁんですってぇ!!」

 

軽く挑発すると、面白いように乗ってきた。

 

(こいつ、わかりやすい)

 

そんな少女の性格に、僕は心の中で思っていた。

 

「そもそも貴様、誰に向かってその汚い口を聞いてるんだ?」

「なっ!!」

 

初対面の人に対して、このような物言いはどうかと思うが、敵相手に容赦はしないのが僕のやり方だ。

 

「立ち去れ。ここは貴様のような穢れた者が入っていい場所ではない。立ち去らなければ、お前には大いなる災いが降りかかるだろう!」

「はぁ? 災いとか、そんなことあるわけ――――――きゃ!?」

 

僕の忠告を一蹴した少女が一歩前に踏み出そうとした瞬間、少女の目の前に瓦が降ってきた。

どうやら少女のそばに建っている社の瓦が外れたようだ。

 

「もう一度言うぞ。早々に立ち去れ。さもなくば、今度はこれ以上に大きな災いが降りかかるぞ」

「っ。覚えてなさいよ!」

 

少女は捨て台詞を残して、逃げるように去って行った。

 

「御神木に当たらなくてよかったな。当たってたら瓦だけじゃすまなかっただろうから」

 

昔、御神木に悪戯をした若者たちがいたが、彼らは帰りに車に敷かれて命を落としている。

父さん曰く、御神木に悪戯をした祟りだとのこと。

それほどに、危険な状態だったのだ。

 

「さて、高坂さんたちは……あ、来た来た。おーい!」

 

階段を駆け上がってくる高坂さんたちに、僕は手を振って自分の居場所を知らせた。

 

「早いんですね、香月先輩」

「たまたまだよ。今日は早く来たから」

 

小泉さんの驚いた様子に、僕は苦笑しながらごまかした。

本当は早く来ているのだが、理由を聞かれるとまずいのでこうするしかなかったのだ。

 

「それじゃ、練習を始めよう!」

 

高坂さんの呼びかけで、今日もまた朝の練習が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間とは立つのが早い。

なんだかんだ言って西木野さんたちが入部してから、二週間という時間が経過したのだから。

そんな僕たちは放課後、廊下に立っていた。

なぜかといえば……

 

「それでは、新たなメンバーを加えて練習を始めます!」

「いつまで言ってるんだ?」

「そうですよ? もう二週間は経ちますよ」

 

高坂さんの言葉に、ため息交じりに呟く僕に園田さんが続いた。

放課後の練習をする前に、いつもやるようになった号令なのだ。

どうせそのうちにやらなくなるだろうけど、無駄に時間を取られるのでこの号令自体があまり乗り気はしないが。

ちなみに二週間経ってもこの号令を続けている理由は

 

「だって嬉しいんだもん」

 

とのことだった。

高坂さんの目標は”神シックス”やら”仏シックス”などと呼ばれることらしいけど、仏シックスと呼ばれることには個人的にちょっとだけ抵抗があった。

まあ、家柄的な理由で。

 

「でも、同じことで感動できるのはすごいですよね」

「裏を返すと進歩がないことにもなるけどね」

 

小泉さんのフォローに、僕は苦笑しながら続いた。

 

「なので! 今日もいつものあれをやります。1!」

「2」

「3」

 

いつものというのは今のように番号を言っていくことだ。

高坂さんに続いて園田さんたちが番号を口にしていく。

 

「もう、香月君もちゃんと”7”って、言わないと!」

「何度も言っているが、僕はメンバーではなくあくまでもプロデューサーだ。主役の頭数には入らないの」

 

これも何度もしているやり取りだった。

僕はメンバーではない。

あくまでプロデューサーであり、主役である彼女たちを輝かせる存在だ。

だからこそ僕はメンバーの頭数には入れてはいけないのだ。

僕はステージで歌うわけでも踊るわけでもないのだから。

とはいえ演奏はするので、これも微妙だが。

 

「それってなんだか屁理屈だよ。ねえ? ことりちゃん海未ちゃん」

「わ、私に聞かれても……」

「たぶん香月君、テコでも動かないような気がするから」

 

同意を得ようと園田さんたちにも話を振るが。二人とも微妙な表お嬢を浮かべるばかりだった

 

「それじゃ、まるで僕が頑固者みたいじゃないか」

「頑固なんです」

 

僕の言葉に、園田さんがズバリ指摘した。

自分でもなんとなくわかってはいたが、実際に人に言われるとかなりショックだ。

 

「もういいから、話を進めて」

 

これ以上自分の傷口を広げたくなかったので、僕は高坂さんに続きを促すことにした。

 

「あ、うん。とにかく、メンバーが多いのはいいことずくめだよ。だって、私賑やかなのが好きだし、歌が下手でもごまかせるしダンスで失敗しても――「高坂?(穂乃果)」――って、冗談冗談」

 

よからぬ企みを口にする高坂さんに、僕と園田さんとで阻止した。

 

「ミスをすればどう隠そうとしても、僕にはすぐにわかるから正確に指摘するからね。小泉さんたちをスケープゴートにするとか、変なことを考えないように」

「はーい」

 

本気なのか、それとも冗談なのか。

どちらにせよ、今後は高坂さんには注意をする必要がありそうだ。

 

「でも、ちゃんとしないと今朝みたいに怒られちゃうよ」

「あ……」

 

今朝のというのは、朝の練習の際にいつもより早めに神社に来ていた高坂さんが、何者かによって襲撃された時のことだ。

南さんに聞いた特徴から、おそらくはこの間の襲撃者と同一人物であることには間違いないようだった。

 

(よりによって神社で事を及ぶとは、随分となめた真似をしてくれる)

 

襲撃をしたことよりも、それをした場所のことで僕は怒っていた。

襲撃などの良くないことを一種の聖域で行うというのは、土地を汚すのと同等の行為だ。

せっかく地脈の浄化を行っているのに、そのようなことをされては意味がなくなってしまうのだ。

まあ、襲撃すること自体は場所を問わずに、してはいけないことであるのには変わりないが。

 

「でも、それだけ有名だっていうことですよね」

「お、ポジティブだな」

 

小泉さんの前向きな発言に、僕は感心した声を上げた。

 

「それよりも早く練習をしないと、どんどん時間がなくなっちゃうわよ」

「西木野さんも今日はかなり積極的だな」

 

癖なのか、人差し指で髪をくるくるといじりながら声を上げる西木野さんに、僕は驚きと関心をこめながらつぶやいた。

 

「ち、ちがうわよ! 早く練習して早く帰りたいだけよ!」

「でも凛は知ってるにゃ! 毎日昼休みに練習をしているのを」

 

照れ隠しなのかそっぽを向いて僕の言葉を否定する西木野さんに抱き付きながら星空さんがそんなことを口にした。

 

「ち、ちがうわよ! あれはただこの間のステップがダサかったから、代わりの振り付けを考えていただけよ!」

 

(かなりやる気満々じゃないか)

 

否定しているつもりだろうが、認めていることになっているのだがこれは言わなくてもいいだろう。

 

「確かに、あのステップはダサいというかしょぼいというか、寂しさを感じさせるものだったからな。実際にあんな振付を考えた人の顔が見てみたいよ」

 

せっかく広い場所なのだから、もう少し使い道はあったはずだ。

 

「そうですか」

 

そんな僕達にかけられたのは園田さんのとても低い声だった。

 

「あれ考えたの、私なんですが」

「う〝ぇっ!?」

 

髪の毛をいじりながら告げられた衝撃の真実に、僕たちは言葉を失った。

 

「あ……」

 

そんな中、声を上げたのは高坂さんだった。

 

「どうした?」

「雨だ」

 

僕の問いかけに答えるようにしてつぶやいた言葉に、僕は高坂さんの視線の先……階段の踊り場にある窓のほうに視線を向けた。

 

「本当だ」

 

窓から見える空模様は完全に曇り空で、時頼聞こえる音は雨が降っていることを表していた。

 

 

 

 

 

「どしゃぶり~」

 

屋上前の扉の所まで移動した高坂さんはドアのガラス戸から外の様子を見て不満げに声を上げた。

 

「梅雨入りしたからな。雨ぐらい降ってもおかしくないだろ」

「だって、降水確率は60%だったんだよ!」

 

僕の言葉に、力強く反論をしてくるが、それは反論するところではないような気がする。

 

「それって、雨が降ってもおかしくないってことじゃない」

 

そもそも西木野さんの言うとおりだった。

 

「だって、同じ数字で昨日は降らなかったのに」

「まあ、最終的には確率の話になるからな、あれ」

 

先日は降らないほうだったのだろうが、今日は降る方になってしまったようだ。

 

「あ。雨止んだ」

「お、本当だにゃー」

 

そんな中、窓の外を見ていた高坂さんが雨が止んだと口にし、それを確かめた星空さんもうなづいた。

すると二人はドアを開けて一歩前に出た。

 

「やっぱり確率だったんだよ!」

「確かに雨は止んでいますけど、下は濡れていますよ?」

 

園田さんの指摘通り、地面は先程まで降っていた雨によってかなり濡れていた。

このまま練習するのはかなり危険だ。

 

「それにいつまた降り出すかもわからないし――「ほら、大丈夫だよ!」――って、人の話を聞けっ!!」

 

僕の話を聞かずに屋上に出ていく二人に、僕は大きな声を上げてツッコんだ

 

「テンション上がるにゃ~!!」

 

なぜかテンションが上がった星空さんは、突然前転を二回もして一回転をするとそのままポーズをとった。

そしてそこを狙っていたかのように雨が再び降り出した。

 

「うわぁ、PVみたいだよ!」

 

(な、何をやってるんだ、あの二人は)

 

二人の奇行に、僕は思わず頭を抱えてしまった。

もはや完全に制御不能状態だ。

 

「はぁ……私帰る」

「ぇ……」

「わ、私も」

 

そんな二人にため息交じりに告げると、西木野さんは先に階段を下りて行った。

止めようとする園田さんに控えめに告げる小泉さんと、次々に今日の練習をあきらめていく。

 

「そうだね、今日はこれで終わりにしようか」

 

そして南さんの一言が決定打となった。

 

「えぇ!?」

「それだと私たちがバカみたいじゃない!」

 

そんな決定に抗議の声をずぶ濡れになって水を滴らせながらあげる二人。

何からツッコめばいいのかがわからないが、あえて言うのであれば

 

「「馬鹿なん(だよ)です」」

 

園田さあんと同じその一言に尽きた。

 

「でも、何とかしないと……」

「体育館とかは使えないんですか?」

「あそこは違う部活が使っているからな。頼めば使わせてもらえるかもしれないけれど、可能性は低いよな」

 

顎に手を当てて考え込む園田さんに問い掛けた小泉さんに、僕が代わりに答えた。

前の学校では使わせてもらえないので練習スペースがないといった言葉が聞こえてきたものだ。

とはいえ、部室があるのだからそこで活動するか、話し合いでほかの部活の練習場所を使わせてもらうかをするようにという答えしかないのだが。

 

「あ、そうだ! ファーストフード店で話し合いをしようよ!」

「そうだな。ここで考えるよりはそっちのほうがいいだろうし」

 

考え込む中、高坂さんの出した提案に、僕は賛同する。

 

「それじゃ、みんなで出発~!」

「その前に二人はずぶ濡れの服とか髪をなんとかしろ!!」

 

下手をしたらそのままの格好で繰り出そうとする高坂さんたちに、僕は強い口調で体をふくように指示を出した。

 

「あ、私は真姫ちゃんに伝えてきますね」

 

そして小泉さんも行動を開始した。

こうして僕たちは、ファーストフード店で作戦会議を行う異なるのであった。




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