ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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こんにちは、TRcrantです。
大変お待たせしました。

色々と立て込んでおり、かなり時間がかかってしまいました。
本日7月22日はにこに―こと矢澤にこの誕生日だそうです、

そんなわけで、今回はそのにこにーがメインのお話となります。


第18話 アイドル研究部

「認められません」

 

生徒会室を訪れ、部活申請用紙を提出した僕たちに、生徒会長が告げたのが、それだった。

 

「どうしてですか? ちゃんと部員は5人以上集まっています」

「それでも、アイドル研究部があります」

 

園田さんの抗議に、生徒会長は毅然とした態度で告げた。

 

「アイドル研究部?」

「そう。すでにこの学院には同じような部活が存在しています」

(競合してたのか)

 

部活としての要件として、同じような部は作らないというのが暗黙の決まりとなっている。

もっとも作りようがないのだが、今のようなマイナーな部活では時たま作られることがあるので生徒会としては注意しなければいけなかったりする。

 

「とはいっても今は部員が一人だけなんやけどね」

 

生徒会長の隣の席に座っていこの間理事長室にいた女子学生が、補足するように説明した。

 

「あれ……確か部員は5名以上なければダメなはずでは?」

「設立するときだけの話。それ以降は何人になっても問題はないという決まりよ」

 

ふと感じた僕の疑問に、生徒会長は即答に近い形で答えた。

 

「そういうわけで、下手に部を増やすようなことはこの状況では避けたいので、あなたたちの申請を澪めるわけにはいきません」

「そんな……」

 

生徒会長の宣言に、高坂さんはショックを受けた様子で声を上げた。

それは、一緒にいた園田さんたちも同じだった。

僕も何かを言いたかったが、生徒会長の言っていることは全く以て正論だ。

反論することは不可能だった。

 

(あれ? 待てよ……)

 

だが、ふと脳裏で何かが引っ掛かった。

申請を認められなかったショックで、頭が真っ白になりかけていたが重要な何かを忘れているような気がした。

 

「話はこれで終わり―――」

「にしたくなかったら、アイドル研究部の人と話し合うんやね」

 

話を終わらせる生徒会長の言葉を遮るようにして、女子学生が柔らかい表情を浮かべながら口にした。

 

「希!」

「二つの部が一つにまとまるのなら、べつにええやん」

 

女子学生のその姿は、僕には偉人にも見えた。

 

「とにかく、一度会って話し合ってみたらええよ。アイドル研究部の場所は―――――」

 

女子学生はそう言って僕たちにアイドル研究部の場所を教えてくれた。

 

「「「ありがとうございました」」」

 

部室の場所を教えてもらい、用事が終わった三人は、生徒会長達にお辞儀をしながらお礼を言うと、生徒会室を後にしていった。

 

「香月君、何してるの?」

「ちょっとばかり、生徒会長さんに用がある。だから外で待ってくれる?」

 

いつまでたっても出てこない僕を不審に思った南さんが、生徒会室のドアを開けて促してくるので、僕はそう頼んだ。

 

「用って何?」

「それは秘密だ」

「………わかりました。早くしてください」

 

食い下がるかと思っていたが、以外にも素直に園田さんは引き下がり、僕にそう言い残してドアを閉めた。

 

(もしかして諦めれられたかな?)

 

”怒られるうちが花”とはよく言うが、見放されるというのはあまり喜ばしい事態ではない。

 

「それで、話って何?」

 

南さんたちが後にしたのを見計らって、生徒会長が用件を尋ねてくるが、言外に”早く出てって”と言っているのがわかった。

 

「部活申請用紙の保存ファイルを見せてほしいんですけど」

「……何をする気?」

 

僕のお願いに、生徒会長の視線がさらに鋭くなった。

 

「エリチ、そんなふうに喧嘩腰はよくないよ」

「……」

 

女子学生の言葉に、生徒会長は一つ息を吐き出した。

 

「その前に自己紹介な。うちは東條 希。ここの生徒会副会長をしとるん」

「香月 高輔です」

 

僕は女子学生……東條先輩の自己紹介に、名乗り返した。

 

「それで、どうして部活申請用紙が見たいん?」

「情報は早目に仕入れておく方がいいですから。特に競合している部活は」

 

もちろん得るのは部員の名前だ。

名前さえ知っておけば話に入りやすくなるばかりか、こちらはいろいろと情報を握っているというアピールにもなり、主導権を握りやすくなる。

まあ、はったりだけど。

 

「生徒会役員でもなく、さらには部外者のあなたに閲覧させることは認められないわ」

「まあそうですよね。わかってはいましたけれど」

 

僕も素直に見せてくれるとは思ってもいなかった。

 

「それじゃ、自分で見ます」

「え?」

 

僕の言葉に目を瞬かせている二人をしり目に、僕はファイルが収められている棚から一冊のファイルを取り出すと、それをぱらぱらとめくっていった。

 

「ちょっと、あなたはいったい何をしてるの!」

 

そして生徒会長が大声を上げるころには、知りたい情報を手に入れていたので、ファイルを閉じると元の場所にしまった。

 

「というより、僕も一応生徒会の関係者でもあるんですけど」

「何を言って――――」

「体育の授業中、僕は参加することも見学することもできないので先生のほうから特別レポートを毎回書かされているんですけど、それも数分で終わるような内容でして」

 

女子のみしかいない学院であれば、必ず付きまとうのが体育の授業だ。

教職員の中から、女子の中に男子を混ぜて体育を行うのはいかがなものかという声が上がったのだ。

結局、多数家sつで僕の体育の授業への参加は認められず、レポートを毎回提出すれば単位として認定するという特別処置が施されたのだ。

僕としてはどうでもいいことだったので問題hなかったが、課せられたレポートは10分もあれば終わってしまうほど簡単なものだったので、残った授業時間が暇で暇でしょうがなかった。

なので、理事長に時間談判してレポートを増やすかそれ以外の課題を課すかの対処を求めたところ、出されたのが生徒会の処理した文章の最終確認というものだった。

 

『香月君ほど適任はいないと思うけど』

 

そんな理事長の言葉が印象的だった。

僕が前の学校で二年連続で生徒会長をしていたことを知っていての言葉なのか、それとも才能での話なのかは定かではない。

 

「ということで、僕は生徒会の資料を確認しているというわけ。理解できました?」

「理解はしましたが……」

「嘘だと思うのであれば、理事長に尋ねてみてください。嘘は一切ついていないので」

 

ふに落ちない表情の生徒会長に、僕はそう告げると一例をしたのちに彼女たちに背を向けてだの前に歩み寄る。

そしてそのまま生徒会室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いわよ」

「なんだか、全員そろってるんだけど」

 

生徒会室を後にした僕が目の当たりにしたのは。高坂さんたちのほかにも西木野さんたちを交えたメンバー全員だった。

 

「生徒会室に行くことを予め教えていたから、私たちが出て少ししてきたんだよ」

「なんだか、申し訳ないです」

 

待たせてしまったことにちょっとした罪悪観にかられた僕は、みんなに軽く頭を下げながら謝った。

 

「それよりも、早くその”アイドル研究部”っていう場所に行くわよ」

 

そんな西木野さんの言葉に頷いた僕たちは、東條先輩から聞かされた道順で『アイドル研究部』の部室へと向かうのであった。

 

「……あ」

「………」

 

部室前に到着した僕たちは、ある問題によってふと立ち止まった。

否、立ち止まらざるをえなかったのだ。

場所は確かにアイドル研究部の部室前。

部室と思われる部屋のドアには小さくではあるが、『アイドル研究部』の文字があった。

問題なのは、目の前に立っている人物だ。

黒髪をツインテール状にしているその姿は、完全に僕と高坂さんを襲い、”解散しろ”とある種の批判をしたばかりか僕たちの食糧を強奪するといういやがらせ行為を行った少女と酷似していた。

 

(というか、完全にビンゴだろ)

 

僕の中では、彼女が犯人であるということで決まっていた。

 

「あぁ!? この間の人にゃ!!」

 

それは、星空さんも同じだったようで、驚きの声を上げた。

 

「それじゃ、あなたが………あなたがアイドル研究部の部長!?」

 

何とも偶然というかなんというか、すごい巡り会わせだ。

とはいえ、このままというわけにもいかない。

 

「ちょうどよかった。この間のチーズケーキの一件。たっぷりとけじめをつけようじゃねえか。なぁに、命までは取りはしないさ。まあ、事と次第によっては骨の一本や二本ぐらいは持っていくけど」

「う〝っ!?」

 

両手の骨をぽきぽきと鳴らしながらできる限り笑みを浮かべてどすの利いた声で部長に声をかけた。

 

「こ、香月君。顔が怖いですよ」

 

園田さんからそんなことを言われるが、僕はそれを気にせずに、一歩前に踏み出した。

 

「うにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!」

「なっ!?」

 

突然のねこパンチ攻撃(全く当たっていないけれど)に、思わず後ろに下がった隙をついて部長は部室の中に逃げ込んだ。

 

「部長さん! 部長さん! って、開かないっ!」

 

中に入った部長生に呼びかけながらドアをたたいていた高坂さんだが、しびれを切らした様子でドアノブを回すも鍵をかけたのかドアはピクリとも動かない。

 

「こうなったらドアごとぶち壊してやらぁ!!」

「お、落ち着いてください! そんなことをしたらとんでもないことになりますよ!」

 

ドアをぶち破ろうと拳を振り上げた僕を止めるように園田さんが慌てて止めてきた。

 

「そうにゃ! 外から回ればいいにゃ!」

「っ! 逃げたぞ!!」

 

星空さんの名案が聞こえていたのか、中から椅子が倒れるような音と駆け出すような物音が聞こえた。

僕たちは急いで外に通じる渡り廊下へと駆けていく。

前を星空さん、その後ろに僕が続くという形だ。

 

「待つにゃ~!」

 

星空さんは素早い動きで外に逃げ出していた部長との距離を縮めていく。

 

「捕まえたにゃ!」

 

そしてへばり始めたところで、星空さんが部長を抱き付くことで捕まえるが、すぐに抜け出すとそのまま別の方向に走り出した。

同じコンディションなのに、この間追いつけなかった自分がものすごく惨めに思えたのは余談だが。

一連の出来事をすべて見ていた僕は、近くにアルパカを飼育している小屋があることを思い出し、部長の走って行く方向に先回りをすることにした。

 

「ふふん。捕まるもんで―――」

 

後ろのほうを見ながら得意げに声を上げる部長の前に回り込んでいた僕に、部長は気づいたようで慌てて横に避けようとする。

だが、それは僕にしてみれば予想通りの動きであり部長にとってはある意味間違いでもあった。

 

「チーズケーキの恨み。成敗!」

「ぎにゃあああ!!!」

 

僕がやったのは単純だ。

気功術もどきで、横に移動した部長の背中を押すようにして加速させたのだ。

これによって、部長はすさまじい速度で飼育小屋のほうに突っ込んだ。

一応飼育小屋にはクッションとなりそうなものが敷かれていたので、大した怪我はしないであろうことを見込んでの仕返しだった。

 

「あれ、いないにゃ」

「部長さんなら向こう」

 

少ししてやってきた星空さんに、僕は飼育小屋がある方向を指さすと星空さんはその方向に駆けていった。

それから数分後、星空さんによって飼育小屋へと特攻した部長が救出され、そのままアイドル研究部の部室へと連れていかれることになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救出という形で確保された部長は諦めたのか不機嫌な面持ちで僕たちを中へと招き入れた。

 

「す、すごい」

「これはまるで、アイドル博物館だな」

 

アイドル研究部の部室内には所狭しと、さまざまなものが置かれていた。

ぬいぐるみやらポスターやら本など例を挙げればきりがない。

それらはスクールアイドルに関するものだろう。

何せ中に『A-RISE』のポスタ―があるのだから。

 

「校外にもいろいろなスクールアイドルがいるんですね」

 

部室一面に飾られているポスターなどに思うところがあるようで、しみじみとした様子で園田さんはつぶやいていた。

 

「勝手に見ないで」

 

そんな僕たちに冷たい言葉がかけられた。

顔は見ていないが視線がものすごく痛かった。

まあ、わからなくもないが。

 

「こ、これは!?」

「どうしたの? かよちん」

 

何かを見ていた小泉さんが突然肩を震わせながら驚きに満ちた声を上げ、星空さんが声をかけると

 

「これは『伝説のアイドル伝説DVD-BOX』持っている人に会えるなんて!」

「ま、まあね」

 

興奮した面持ちで声を上げる小泉さんの手に握られていたのは『伝説のアイドル伝説 DVD-BOX』と記されたものだった。

 

「へぇ、そんなにすごいの?」

「知らないんですか!!?」

 

高坂さんが漏らした言葉に反応した小泉さんはこれまでよりも強い口調で声を上げた。

ちなみに簡単に説明するとこのDVD-BOXは各プロダクションが限定販売を条件に提携してさまざまなアイドルたちの映像を収録したものだ。

いわば、複数のアイドルたちのDVDがまとまったようなものだ。

とはいえ、その希少性からアイドル好きの者たちの間では伝説の伝説の伝説(通称伝伝伝)と呼ばれているとか。

さらにどうでもいい補足だが、このDVDの制作には僕が所属する事務所も携わっており、収録のプロデュースもしていたりする。

 

(それにしても本当にいろいろと……ゲッ!?)

 

興奮冷めやらぬ感じで解説をしている小泉さんをしり目に、部室を見まわしていた僕はあるものを見つけてしまった。

 

「あ、気が付いた? 秋葉のカリスマメイド、ミナリンスキーさんと伝説のプロデューサー、DKさんのサインよ」

 

そう、それはこの間喫茶店でのイベントの際に来店者に配った僕とミナリンスキー(南さんだけど)の連名でのサインだった。

 

「二人とも、知ってるんですか?」

「う、ううん」

「右に同じく」

 

園田さんからの鋭い問いかけに、南さんと僕は首を横に振ってこたえた。

 

(あそこには彼女は来ていなかったはずだ)

 

何度思い出しても彼女の姿はどこにもなかったはずだ。

何せ、あればいろいろな意味で目立つのだから。

 

「DKって誰?」

「知らないんですか?!」

 

そして高坂さんが再びもらした言葉に、なぜか小泉さんが反応した。

 

「数年前からいきなりあらわれたプロデューサーで、当時無名だったアイドルグループを超一流にまで導いたプロデューサーです! しかも、ライブの時にステージ上で生演奏をしたり、当時のライブの常識を打ち破るような演出を大量に行った手腕は、伝説のプロデューサーとまで言わしめているほどです!!」

 

(伝説って、僕はまだ死んでない!)

 

色々ツッコみたいがまさか口に出せる訳でもなく、全身をくすぐられているようなむずがゆさに襲われていた。

穴があれば入りたいとは、こういう状況を言うのかもしれない。

 

「ほ、本当に性格が変わってる」

「かよちんはアイドルのことが大好きだもんね」

 

目を瞬かせている高坂さんに、星空さんは笑みを浮かべながら相槌を打った。

 

「まあ、ネットで手に入れたものだから、実際に見たわけじゃないけど」

 

(やっぱりか)

 

アイドル好きの人の中にはやむを得ない事情で転売する人がいる、

きっと、彼女もその人の恩恵にあずかった人なのだろう。

 

「だったら、かなり高かったのでは?」

「……余計なお世話だし、そもそもどうしてそう思うのよ?」

 

僕がふと漏らした言葉に、部長の冷たい声がかけられた。

だが、その声は少しではあるが暖かくなっているようにも思えた。

 

「どうしてもなにも、50枚しかない色紙ですし、この二人のコラボはもう二度とないかもしれないので、かなり希少価値はあるかと思ったからですけど」

『……』

 

僕の答えに、部室内が変な雰囲気に包まれた。

そして全員の視線が僕に注がれている。

 

「な、何?」

「どうして浩介先輩が50枚限定だというのを知ってるんですか?」

 

小泉さんの控え目な問いかけで、僕はようやく自分の犯した大きなミスに気付いた、

色紙の希少価値や枚数は当事者でなければ知る術がない。

それが、希少価値はおろか枚数すらも正確にいうことはあり得ないのだ。

幸いなのは南さんが、何も言わないことだろう。

おそらくは南さんの中では”自分がミナリンスキーであること”を口にするのをためらっているのかもしれない。

理由は分からないが、南さんが何も言わなければ僕がどのような言い訳をしても無理やりそれを押し通すことは可能だ。

 

「いや、まあ……枚数は適当だよ。小泉さんの説明を奇異かなり貴重なものじゃないかと思ったから適当に言ってみただけ」

 

我ながら何とも醜い言い訳であろうか。

もう少しましな言い方もあったはずだが、今の僕にはこれしか思い浮かばなかったのだ。

 

「そ、それはともかく。いい加減本題に入らないか?」

「それもそうね」

 

部長が僕の提案に頷いたことで、なんとか話題を逸らすことに成功したのであった。

 

 

 

 

 

気を取り直して、僕たちは部室に置かれていた椅子に腰かけた。

とはいえ、あまりの散らかりように僕の席がないため、僕は経ったままだが。

手には手持無沙汰なのをなんとかするためにメモ帳を持っていた。

 

「それで、話は何よ?」

「アイドル研究部さん!」

 

部長の催促に、高坂さんが口火を切った。

 

「にこよ」

「本名は矢澤 にこだけどね」

 

高坂さんの呼び名に目を細めながら名前を告げるところにすかさず部長……矢澤先輩の本名を告げた、

 

「にこ先輩! 実は私たちはスクールアイドルをしておりまして―――」

「知ってるわよ」

 

どうやら僕の言葉は無視することにしたようだ。

とはいえ、それでいいのではあるが。

何せツッコまれた質問をされれば、そっちの方が僕にとっては困るのだから。

 

「どうせ部として認められたいのなら、話を付けてこいとか言われたんでしょ?」

「おぉー、話が早い。なら――「お断りよ」――え?」

 

頬杖をついて視線を逸らしながら相槌を打つ矢澤先輩に明るい表情をうかべる高坂さんの言葉を遮るようにして、矢澤先輩は言い放った。

 

「私たちはただ、練習する場所がほしいだけなので、廃部にしてほしいとは言っておりません」

「お断りって言ってるの!」

 

まさに取り付く暇がないといった状態だった。

 

「……ならば、理由を聞かせてもらおうか?」

「香月君?」

 

これ以上はらちが明かないと思った僕は、話し合いに参加した。

 

「そういえば、この間矢澤先輩は”僕たちはアイドルを冒とくしている”と批判しましたよね?」

「したわよ」

 

僕の問いかけに、矢澤先輩はうなづきながら答えた。

 

「ならば、なぜ冒涜していると思うのか、その理由を説明してもらいましょうか? 何が彼女たちに足りないのかを」

「………」

 

僕の問い掛けに何も言えない矢澤先輩に畳みかけるように、僕はさらに言葉を続けた。

 

「まさかとは思いますが。理由を説明することもできずに批判したばかりか、メンバーに対して脅迫や暴行をしたばかりか、人の食べ物を強奪した………なんてことは言いませんよね?」

「………ちょっと待ちなさい! 私は暴行なんてして――「してるだろうが!!」――っ!!」

 

矢澤先輩の差反論を遮るように大声をあげながら高坂さんを指さした。

 

「でこピンは暴行と言えるのでしょうか?」

 

園田さんから鋭い指摘が入った。

 

「で、答えは?」

「わ、私たちはちゃんと歌の練習やダンスの練習をしています。なので、いつかはうまく――」

「違うわよ」

 

張りつめた空気に耐えきれなくなったのか、高坂さんの言葉を矢澤先輩は否定した。

 

「あんたたち、ちゃんとキャラ作りをしてるの?」

「え?」

「あー」

 

矢澤先輩の問いかけに、高坂さんたちは首を傾げ、僕は責任から逃れるように視線を逸らした。

 

「お客さんがアイドルに求めtれいるのは夢のような時間。ならばそれ相応のキャラづくりが必要なの!」

 

(さ、さすがアイドル研究部。僕よりもアイドルについて詳しい)

 

矢澤先輩の説明に、僕は心の中で感心していた。

プロデューサーとしてどうかとは思うが。

よくよく考えてみると、それでよく人気が出るようになったと自分でも思ってしまう。

 

「あんた、プロデューサーなのにそんなことも知らなかったの?」

「いやー、面目ない。これでもなり立てだし、アイドルなんて今まで興味すらなかったから適当で。あはは……」

 

矢澤先輩の非難に、僕は笑うしかなかった。

 

「しょうがないわね。あんたたち見てなさい」

 

しぶしぶといった様子で僕たちに背を向けた矢澤先輩はそう告げた。

 

(何をするんだろう?)

 

僕はそんな矢澤先輩の行動に頭の中で疑問の声を上げていると

 

「にっこにっこに―!」

 

突然振り向いたかと思うと、両手の小指と人差し指と親指を伸ばし、中指と薬指を折りたたんだ独特な指の形を仕立てを頭に添えた。

 

「あなたのハートに、にこにこにー」

 

胸の前でハートの形を作る。

 

「笑顔を届ける矢澤にこにこー」

 

かと思えば今度は片手をぴんと伸ばして頭に添えて

 

「にこにーと覚えてラブにこ!」

 

最後は最初と同じポーズだった。

本人にしてみれば、非常に満足のいくものなのかもしれないが周りの反応は大きく異なっていた。

全員が目を瞬かせ顔をひきつらせていた。

それはもう部室の温度が一気に氷点下まで下がったのではないかと錯覚するほどに。

ちなみに僕は衝撃のあまりに手にしていたメモ帳が地面に落としていがそれを拾うこともままならなかった。

 

(違う、それはキャラじゃない)

 

説明はできないが、それはキャラというものではないのは確かだ。

唯一異なった反応をしているのは、仕切りに頷きながらメモを取っている小泉さんぐらいだろう。

 

(いったい、何をメモすることがあるんだろう?)

 

あまりにも熱心な様子の小泉さんの姿に、僕は思わず首をかしげてしまった。

 

「ちょっと寒いにゃ」

 

そんな中、星空さんが勇敢(ある意味無謀だが)にもすさまじい感想を口にした。

 

「そこのあんた、今なんて言った?」

「す、すごくいいと思います!」

 

矢澤先輩の般若のような表情に、慌てて本心とは違う感想を口にした。

 

「そ、そうですね、こういうふうに置くやくさんにも楽しんでもらうのもいいかもしれませんね!」

「さすがにこ先輩です!」

 

そんな星空さんの感想がきっかけとなったのか、次々に感想を口にし始める園田さんたちだが、当の本人の表情はどんどんと険しくなっていき、

 

「出てって」

「え?」

 

小さな声だったが、それはこれまでよりも強い拒絶のようなものを感じた。

 

「いいから出てって!!」

「ちょっと、押さないで! 危ない!」

 

そして僕たちは問答無用といわんばかりの勢いで廊下へと追い出された。

 

「あぁん。にこ先輩!」

「決裂か」

 

ある意味予想はできていたが、微妙に違和感が付いて回った。

 

(微妙に矢澤先輩からは嫌だという雰囲気はなかったような気がする)

 

本当に嫌ならば、もう少し口調はそっけなくなってもいい。

だが、そのような感じはなくどちらかという、それは―――

 

「やっぱり追い出されたんやね」

「東條先輩」

 

僕の思考を遮るように、声をかけたのは、話し合いを提案した東條先輩だった。

 

「希先輩は、こうなるのが予想できてたんですか?」

「まあね。あのにこっちが素直に頷くとは思えんかったし」

 

高坂さんの問い掛けに、東條先輩は微笑を浮かべながら答えた。

微妙にひどいことを言ってるような気がしたのは僕だけだろうか?

 

「ちょっとだけ話に付きおうて貰ってもええか?」

 

その東條先輩の問いかけに対する答えは、確認するまでもなかった。

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