ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
第21話です。
ヒロイン希望アンケートのほうも徐々に、差がついてきました。
アニメで換算すると一話分の内容が終了した際に、中間報告という形でお知らせする予定です。
とはいえ、まだ3分の1しか終わっていませんが(汗)
「うーん」
ある日、僕は自室で腕を組みながら悩んでいた。
その内容は
「カメラを15台。プロジェクターを3台は多すぎかな」
機材のことだった。
もちろん、遊ぶための物ではない。
μ'sのためだ。
「これだけの機材があれば、ライブでのPVはかなり良くなるはず」
前回のライブ映像(勝手に投稿されたが)は、三台のカメラで撮影を行っていた。
あの時はメンバーが三人だったので問題はなかったが、メンバーは7名にまで増えている。
その分PV撮影は難易度が上がっているのだ。
正直3台のカメラでは十分な撮影はできない。
「ライブ映像の要はカメラワーク。これを何とかしなければいけない」
もちろん、歌やダンスも重要だがライブ映像ではカメラワークが非常に重要な意味を持つ。
歌などがうまくても、カメラワークが良くなければ、評価自体が大きく下がる可能性もあるのだ。
それだけは避けなければいけない。
(まあ、ライブ映像とかのPVはこっちの管轄なんだし、これくらいはしないとね)
それはいわばプロデューサーとしての意地だった。
「よし、これで見積書を作成。いくらかな?」
必要な情報を明記した僕は、見積書をプリントアウトする。
すでに注文は終了したが、注文内容を忘れないようにするために見積書を作成しているのだ。
「って、90万円!?」
合計金額の項目を見た僕は、愕然とした。
当初は10万円台を予算として考えていたのだが、μ'sのためにと妥協しない商品選びをしていた結果のようだ。
「うーん。キャンセルしてほかの商品を選んだりカメラを減らすべきか……」
買えないわけではないが、このような大金は非常に予想外だった。
(さすがに、父さんに話を通しておかないとまずいよね)
仕事をしていたりするし、今自分の持っているお金はほとんどが自分で稼いだものなのだから、いちいち言う必要もないような気がするが確実に金欠になりそうな気がするので、あらかじめ言っておいて緊急時には援助をしてもらえるようにしておいた方がいいという結論に至ったのだ。
「よし、行こう」
そして僕は崖の上から飛び降りるような覚悟をして、父さんがいる書斎へと向かうのであった。
「失礼します」
「浩介か。どうしたんだ?」
中に入るとちょうど休憩中だったようで父さんは、コーヒーカップを片手に本を読んでいるようだった。
「これをちょっと」
「なんだこれは? 見積書か」
僕が手渡した、見積書のコピーを手に父さんは目を細める。
「一応聞くが、これはちゃんとした理由なんだろうな?」
「ええ。スクールアイドルのPV撮影でのカメラワークを充実させるための物ですので』
やはり料金が高すぎたようで父さんからつつかれるが、僕は慌てることなく正直に答えた。
「それならば問題はない。で、俺はこの資金を援助すればいいのかね?」
「いえ。ただ、次の給料日までに金欠になったら援助をしてもらえれば
僕の言葉を聞いた父さんは強張っていた表情を元に戻して聞いてきたので、僕は首を横に振りながら要望を口にした。
「いいだろう。金欠になったら言いなさい。援助してやろう」
「ありがとうございます」
父さんの決定に、僕は頭を下げてお礼を口にした。
「用件はそれだけかね?」
「はい」
「ならば、もう寝なさい。明日も学院だろ」
確かに時間を見ると、午後10時を回ろうとしていた。
明日も朝は早いのだ。
「そうします。お休みなさい」
「お休み」
僕は父さんに一礼すると、書斎を後にした。
(後は、肝心のライブの段取りを組むだけか)
一番難しいのがそれだったりもするが、僕は今後のことを考えながら別邸へと向かうのであった。
「取材……撮影?」
翌日の放課後、いち早く部室に来ていた僕のもとにやってきた高坂さんと星空さんに園田さんと南さんというお馴染みのメンバーに加えて、生徒会副会長である東條先輩がやってきてそうそう言われたのが今の言葉だ。
「正確には部活紹介の時に流す映像の撮影なんよ」
「協力してくれたらお礼にカメラも貸してくれるんだって!」
東條先輩の説明に補足するように、星空さんが言ってきた。
「なるほど。PV撮影のカメラは多ければ多いほうがいいし……悪い話ではないし僕はいいと思うよ」
おいしい話には裏があるという言葉に則ると、あまり乗り気はしないがまさかそのようなことはないと思うので、僕は賛成に回った。
「ちなみに、どんな感じに取材を?」
「ありのままの素顔ということで、こんな感じなんや」
そう言いながら僕の反対側の席に腰かけた東條先輩に倣い星空さんや南さんに高坂さんが腰かける中、僕は席を立って園田さんと高坂さんの席の間に移動した。
テーブルの上に置かれたビデオカメラの液晶ディスプレイを、僕たちに見えるように置くとそれを再生し始めた。
『彼女が、スクールアイドルの一人、高坂穂乃果である』
東條先輩のナレーションとともに始まった映像は、明らかに誰かが隠し撮りしたような移し方だった。
『スクールアイドルとはいえ、プロのアイドルのように早退は許されていない。よって、こうなる』
ナレーションとともに映像は授業中に居眠りをする高坂さんの様子が映し出された。
そのあとは昼食(パン)をおいしそうに頬張る姿があった。
『うん、今日もパンがうまいっ!』
もはや完全に色物キャラと化していた。
『居眠りををしては先生に見つかるというのを繰り返している』
そのナレーションとともに映し出された映像は、微妙に既視感のある光景だった。
(これって、どう考えてもあの時のだよな)
僕の頭にノートと教科書が降ってきたあの時の物だった。
(あの時、僕の後ろではこんなことが起こってたんだ)
今明かされた真実の映像に、僕は言葉も出なかった。
『これが15歳、高坂穂乃果のありのままの姿で――』
「「ありのまま過ぎる(よ)!!」」
思わずナレーションに高坂さんと声をそろえてツッコんでしまった。
「こんなの何時撮ったんですか!」
「そもそも、こんな醜態は没です!」
最悪の場合、μ'sの評判は地に落ちるだろう。
いや、ある意味受けがいいかもしれないけれど。
「よく取れてましたよ、ことり先輩」
「えへへ。ばれないかと思ってドキドキしちゃった」
星空さんの言葉に、南さんは嬉しそうな笑みを浮かべながら頬に手を当てて答えた。
「えぇ!? ひどいよ、ことりちゃん~」
「それじゃ、あれもあんたか」
ストーカーの類だと思っていた人物の正体は南さんだったことに、僕はいまさら気づいた。
よくよく考えれば教室を出たところから気配を感じた時点で気づくべきだった。
「日ごろからだらしないからで――「あ、海未ちゃんだ」――え?」
園田さんの言葉を遮るようにして高坂さんが声を上げたので、僕は再びカメラのほうに視線を戻した。
そこには弓道部の部活動を行っている園田さんの姿があった。
「へぇ、なかなか様になって……って、何をしてるんだ?」
ぶれない弓の構え方に、感嘆の声を上げた僕は、あたりを見回している園田さんの姿が映し出されている映像に首を傾げた。
周囲を見渡した園田さんは、鏡のほうへと向き直るとウインクのような感じで片目を閉じながら笑みを浮かべた。
「これは……かわいく見える笑顔の練習?」
そこで今度は映像が消えた。
どうやら、誰かが電源を落としたようだ。
誰が落としたのかは言うまでもないだろう。
「プライバシーの侵害です!!」
「それ以前に、部活中に何をやってるんだ?」
頬を赤く染めながら講義の声を上げる園田さんの、高坂さんと同じぐらいの恥ずかしい映像に、僕の視線もどこか呆れたようなまなざしになっているのかもしれない。
「こ、これはですねっ……お客さんに喜んでもらえるための練習なんです!」
「……まあ、ほどほどに」
それ以上ツッコむのはさすがに園田さんに気の毒なので、追及することはなかったが一遍この場にはいない三年生と同じキャラの扱いでプロデュースをしようかと考えたのは余談だ。
「そうだ! こうなったらことりちゃんのプライベートも覗いちゃおう!」
突然立ち上がった高坂さんは報復とばかりに、南さんのバッグを開けて中身を見た。
「あれ? 何だろう、これ?」
中に何かを見つけたのか首をかしげたところで、まるでひったくるかのような勢いで南さん鞄のチャックを占めると後ろ手に持ちながら部室の奥のほうへと後ずさった。
「どうしたの?」
「ナンデモナイヨ」
尋常ではない南さんの様子に首を傾げながら声をかける高坂さんに、南さんは早口で答えた。
「でも――「ナンデモナイノナンデモ」――」
なおも食い下がる高坂さんの言葉を遮るように、南さんはさらに早口でまくし立てた。
「ま、まあ、映像は各部でチェックを入れることになってるから問題があるときはそこで言ってもらえればええよ」
「でも、もしその前に生徒会長が見たら、怒られるんじゃ」
高坂さんの言うとおりだった。
もし、あの一連の映像が生徒会長の目に留まりでもしたら……
『あなたたちのせいで、音ノ木坂学院の校風が非常に損なわれています。一体どうするんですか?』
などと怒られること間違いない。
しかも、こちらに非があるのは明らかなので、反論することもできない。
「それは努力次第やね」
「えぇ!? 希先輩は手伝ってくれないんですか?!」
「高坂さん、生徒会とはいえさすがにそこまでさせるのは」
どこかショックを受けたような高坂さんの言葉に、僕は苦笑しながら高坂さんを戒めた。
「うちに出来るのは、誰かを支えることぐらいやから」
「支える?」
申し訳なさそうに東條先輩の口にした言葉に、高坂さんがきょとんとした表情をうかべる。
「うちのことは置いといてまずは他の人へのインタビューやね」
「あー、微妙にインタビューは難しいかと」
「どうしてなん?」
視線を逸らしながら棒が相槌を打つと東條先輩はきょとんとした表情で首を傾げながら問いかけてきた。
「メンバーの中に二人のダークフォースがいますから」
「ダーク?」
ある二名のことを指して言った言葉だが、非常に的を得ていると自分でも思う。
「一人は、インタビューを絶対に受けなさそうな人で、もう一人が珍妙なキャラを作って応じる人です」
「わかるような……わからないような」
「あはは……」
僕の述べた二人の性格に、高坂さんが首を傾げながらつぶやき、南さんは苦笑していた。
そんな時、部室のドアがやや乱暴に開かれた。
「はぁ……はぁ……」
息も絶え絶えで姿を現したのは、アイドル研究部部長の矢澤先輩だった。
そしてダークフォースの一人でもある。
「取材が来るってホント!?」
「来てますよ」
矢澤先輩の言葉に答える南さんは掌でカメラを指し示すと、星空さんがカメラを矢澤先輩に見えるように持ち上げた。
その瞬間、ドアを閉めて僕達に背を向けた。
「にっこにっこに―!」
そして矢澤先輩のトレードマークと化し始めた、両手を頭に添える独特のポーズをとりながら、キャラを変えた。
「みんなの元気にニコニコニーの、矢澤にこでーす!」
飛騨手を前に突き出す形で自己紹介をする矢澤先輩には、いたって普通だった。
「えっとぉ、好きな食べ物はぁ」
右手の人差指を頬に当てながら言葉を続ける矢澤先輩の口調は、明らかにうざ可愛い系統のキャラだった。
「あ、ごめん。そういうのはいらないんや」
「えぇ!?」
苦笑しながら東條先輩の一蹴する言葉に、驚きをあらわにする矢澤先輩。
「部活の素顔に迫るみたいな感じらしいですよ」
「あー、なるほどね。わかった、ちょっと待ってて」
いったい何がどうわかったのかが不安だが、僕たちは地面にうずくまった矢澤先輩が顔を出すのを待った。
「いつもの私はこんななんです。髪を結んだ時にきゅっと気が引き締まって」
髪をほどいた矢澤先輩は、どこぞの令嬢のような雰囲気を醸し出しながらポスターをやさしくなでた。
「それじゃ、他のメンバーのところに案内してもろうてもええ? こっちから外に出れるらしいから」
そんな中、それを見ていた東條先輩たちは、どうでもよさそうな感じで移動を開始していた。
ある意味大物かもしれない。
「あっ。いつもは自分のことは私って呼んでいるんです」
そういいながらこちらのほうに向き直った矢澤先輩は、顔をこわばらせる。
まあなんとなく理由は分かるが。
「って一人しかいない!?」
「どうでもいいんだけど、その珍妙なキャラはいくつあるんだ?」
頬をかきながら立ち上がりながら、僕は矢澤先輩に尋ねた。
「べ、別にいくつあってもいいじゃない!」
「出来れば、これ以上ハチャメチャなのは作らないで欲しいんだけど。というより、正直痛いし」
頬を赤くして反論してくる矢澤先輩に、僕はさらに言葉をつづけた。
髪を下している矢澤先輩の姿は、黙っていれば可愛いという典型的な例なのかもしれない。
……まあ、黙っていなくてもかわいいものはかわいいのかもしれないが。
「ぬぁんですってぇ!?」
どうやら余計なことを言ってしまったらしく、矢澤先輩の視線がかなり鋭いものに変わった。
明らかに怒っている。
「そ、それじゃ、僕はほかのメンバーの取材をしてくるんで……御免っ」
僕はできるだけ素早く矢澤先輩の横をすり抜けると、ドアを開けて廊下へと脱出した。
「待ちなさぁい!」
後ろのほうから矢澤先輩の声がするが、僕はとにかく走った。
(これを生徒会長が見たら、絶対に怒られるな)
まあ、僕の姿が見えるような動体視力が優れていればの話だが。
(とにかく、高坂さんたちと合流しよう)
それが僕の出した結論であった。
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