ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
急ぐあまりに描写が甘くなるのは本末転倒だということに、今更ながらに気付きました。
そんなこんなで、次話当たりに色々と入れていければなと思います。
カラオケで100点を取れる人の歌を聞いてみたいと思う今日この頃です。
どうして、高坂さんがリーダーなのか?
それは僕も感じていたものだった。
気が付けば、高坂さんがリーダーという形でメンバー内での位置づけが行われていた。
それはある意味資質ともいうし、才能なのかもしれない。
とはいえ、一度浮かんだ疑問は解消しなければいけないのが世の定め。
そんなこんなで、アイドル研究部のメンバー全員が席につき、話し合いを行うこととなった。
「誰がリーダーにふさわしいか。考えてみれば、私が部長になった時に考えるべきだったわ」
窓側の席に両腕をテーブルの上でのせながら組むポーズの矢澤先輩が口火を切った。
「私は穂乃果ちゃんでもいいと思うけど」
「ダメよ。この間の取材でもわかったでしょ? 彼女はリーダーには向いていない」
「そうね」
南さんの意見に、矢澤先輩が反論し、それに西木野さんも賛同の声を送る。
「とにかく、出来るだけ早く決めた方がいいわね。PVもあるんだし」
「PV? どういうことですか?」
矢澤先輩の言葉に矢澤先輩のほうを見ながら疑問の声を上げる園田さんに、矢澤先輩は口を開いた。
「リーダーが変わればセンターも変わるのは必然。センターはリーダーがするべきよ」
「そうね」
「西木野さん、興味がないのは分かるけど、もう少し言葉のレパートリーを上げてもいいんじゃない?」
先ほどから同じようなフレーズの相づちしか打っていない西木野さんに、僕は苦言を呈した。
「そんなことはどうでもいいのよ」
「でも、リーダーって誰が」
僕の言葉を矢澤先輩によって一蹴され、小泉さんがふと漏らした疑問の声に待っていましたと言わんばかりに、矢澤先輩が立ち上がった。
「リーダーとは、熱い情熱でみんなを引っ張って行ける人。次に精神的支柱になれるような懐の広さがある人。そして何よりメンバーから尊敬されるような人」
反転させたホワイトボードにリーダーとして必要な資質が三つほど書かれていた。
「そのすべてを満たす人は―――」
「「園田さん(海未先輩にゃ)だな」」
三つの条件に概ね合致するのは、園田さんだった。
「なんでやねん!!」
そんな僕たちに、矢澤先輩からキレのあるツッコみが入った。
(矢澤先輩、2番目のほうが若干不安定だからな)
ないとは言えないが、あるとも言えないという感じだった。
「わ、私ですか!?」
「そうだね。それがいいよ!」
そして驚くほどあっさりと高坂さんが頷いた。
「待ってください! 穂乃果は何とも思わないんですか? リーダーの座を奪われようとしているのですよ!?」
「え? でも、別にリーダーじゃなくてもμ'sとして踊ったりすることができるんだよね?
「まあ、別に脱退しろというわけじゃないからな」
園田さんの言葉に、不思議そうな表情で疑問の声を上げる高坂さんに、僕は頷きながら答えた。
「でも、センターじゃなくなるかもしれないんですよ!」
「おぉ! なるほど!」
身を乗り出しながら声を上げた小泉さんの言葉で、ようやく高坂さんは事態の重大さがわかったようで、腕を組んで考え込み始めた。
そして考えること数十秒。
「まあ、いいや」
『えぇ!?』
彼女が出した結論に、僕たちは驚きをあらわにした。
(な、なんという欲のなさだ)
高坂さんの無欲ぶりに、僕は感嘆の声を心の中であげていた。
「それじゃ、海未ちゃんがリーダーで」
「ま、待ってください! リーダーは無理です……恥ずかしすぎます」
笑みを浮かべながら早々に結論を出す高坂さんを止めた園田さんは頬を赤く染めながら、聞き取れる限界すれすれの声で反論した。
「面倒な人」
「それじゃ、ことり先輩?」
「え? 私」
突然名前の挙がった南さんはきょとんとした表情をうかべる。
「無理」
「副リーダーっていう感じだね」
申し訳ないと思いつつ却下する僕に続いて、星空さんが声を上げた。
2,3はあるとして南さんに情熱はあまり似合わないような気がした。
(牽引力はないけれど、サポート力は十分にあるんだよな)
それが、僕から見た南さんという人となりだった。
「仕方がないわ―――」
「だとすると、やっぱり穂乃果ちゃんのほうが」
「私は別に誰でもいいけれど」
矢澤先輩の言葉を遮るように、高坂さんたちは話し合いを進めていった。
「仕方が―――」
「私は海未先輩を説得したほうが早いと思うけど」
矢澤先輩の言葉を無視するというのはある意味すごいことでもあった。
「しーかーたーなーいーわーねー!!!」
「うるさいっ!」
どこから取り出したのか、拡声器を使って大声を上げた矢澤先輩に、僕は一喝した。
驚きなのは、それでも話し合いを進めていた高坂さんたちだが。
「仕方がないわね。こうなったら歌とダンスで決着をつけようじゃない!」
あのあと、部長命令ということでで外へと連れ出された僕たちがやってきたのは、カラオケ店だった。
「決着?」
矢澤先輩の言葉に、南さんが首をかしげる。
「歌とダンスがうまい人がリーダーになるのよ」
「なるほど、シンプルだ」
矢澤先輩gは口にしたルールに、僕は頷きながら相槌を打った。
矢澤先輩の思惑とは違って、こちらにもかなりの見返りがある。
「私は歌わないわよ」
「別にいいわよ。リーダーの権利がなくなるだけだから」
(本人がどうでもいいって言ってるのに、それは逆効果だと思うけど)
しかも、当の矢澤先輩はしゃがみこんで何かを呟いているし。
(何をたくらんでいるのか、容易に理解できるけど)
どうせ、自分の十八番曲でも選んで高得点を取ろうとしているのだろう。
カラオケなどは、曲を知らなかったり音程をうまく取れなかったりすると高得点をたたき出すのは難しい。
カラオケはいかに音程とビブラートなどをマッチさせるかの勝負なのだ。
その点、μ'syとして歌う曲は音程やビブラートなどはある程度は定められているとはいえ、彼女たちように作曲した曲だ。
高坂さんたちの歌声が一つの曲の基準となるのだ。
とはいえ、歌うことの難しさはカラオケとも大して変わらないが。
「でもカラオケって久しぶりだね」
「そうですね、一月ふりでしょうか」
そしてその間にも、皆は和気あいあいと話をし始めた。
それこそ、これからリーダーを決める選考のようなものをするのだとは思えないほどに。
「さあ、始めるわよ!!」
しゃがみこんでいた矢澤先輩が立ち上がったころには、すでに遊んでいるような空気になっていた。
「って、少しは緊張感を持ちなさいよ!!」
矢澤先輩の思惑とは違い、和気あいあいとリーダーを決める選考のようなものが始めるのであった。
カラオケも無事に進んでいき、現在は最後でもある園田さんの番となっていた。
興味なさげに携帯を見ていた西木野さんも、なんだかんだ言ってちゃんと歌っていた当たり、わかりやすい人だった。
「ふぅ……難しかった」
歌い終え、ため息を吐き出しながら大型の液晶画面から離れる園田さんをしり目に、カラオケの採点機能が93点という結果を告げた。
「おぉ、海未ちゃんすごい」
「これでみんな90点以上の点数よ」
結果はなんと全員が90点以上の高得点をたたき出すというとんでもない結果となっていた。
「皆、毎日歌の練習をしているものね」
「ま、真姫ちゃんが苦手なところや間違っているところを教えてくれるから」
それが主な理由だった。
ボイストレーニングやダンスのトレーニングなど、継続的にしているのが勝因となった。
(にしても、ここのカラオケはいろいろと興味深い)
採点機能は当たり前、演奏中に画面の隅の方に現在の順位がリアルタイムで表示されるのだ。
ある意味ものすごく臨場感があると思う。
「まあ、予想通りの結果かな。最高得点を出すのは西木野さんだって思ってたし」
「ふ、ふん。どうせそんなことはお持ってないんでしょ」
僕の言葉に、西木野さんはそっぽを向きながら声を上げるが、その表情からは嬉しいのか、それとも恥ずかしいのかどちらかの感情が読み取れた。
「いんや。音程のぶれも少ないし、ちゃんと伸ばすところは伸ばして区切るところは区切っているから、そう思ったまでだよ」
「そ、そう。ありがとう」
小さいながらもお礼の言葉を口にするところが西木野さんの魅力だったりするのかもしれない。
まあ、あれな方向だけど。
「対する南さんは、独特な声だから、機械とかは音程が外れているっていう判定になるから、しょうがない部分もあるんだよね。ただ下手というわけじゃない。それはこの僕が保証するよ」
「ありがとう、香月君」
このメンバーの中では最低の点数をたたき出した南さんへのアドバイスも忘れない。
そういった細かい部分での気配りが、今後のメンバーの士気を決めることにもなるのだ。
「矢澤先輩の歌は初めて聞きますけど、なかなかいいですよ。まあ、普通ですけど」
「最後のはどういう意味よ!!」
ぽつりと付け加えた言葉が聞こえたのか、若干怒ったような表情で立ち上がりながら講義の声を上げてきた。
「ふふん」
「何? 今の笑みは」
ふと矢澤先輩がうかべた何かをたくらんでいるような笑みに、僕は問いただす。
「ベッツに―。ただ、さっきから評価をしているプロデューサーの腕前を見てあげようって思ってるだけよ」
そういいながら曲を決める際に使っていたり古今を操作する矢澤先輩。
「おぉ! それはいいね!」
「私、香月君の歌聞きたいなぁ」
「そうね。一度聞かせてもらおうかしら」
なんだかみんなの間では僕が歌うことは決定事項となっていた。
これ以上の抵抗は無駄だと思い、僕は両手を上げて興産の意を表すと矢澤先輩が座っている席まで歩いた。
「それで、どの曲を歌わせる気だ?」
「ふっふっふー。それはね、これだっ」
そういって矢澤先輩がリモコンで指示したのは液晶画面だった。
「……」
その曲名に、僕は愕然とする。
「えっと……月に……なんて読むの?」
「月に叢雲華に風です」
表示された曲名が読めなかったのか園田さんに尋ねると、代わりに園田さんが読み上げた。
「あの、矢澤先輩」
「何?」
僕が言うべきことはいろいろあると思うが、あえて言うのであれば
「これ、女性ボーカルなんですけど?」
そんなことくらいだった。
「別にいいんじゃない? プロデューサーなんだし」
「そうだにゃ。歌うにゃー!」
僕に失敗させて笑いものにでもしようとでもいうのか、矢澤先輩と星空さんの浮かべる笑みが微妙に腹が立った。
「わかった。歌ってやろうじゃないか」
僕はそう言い切ってマイクを手にすると、皆のほうに向きなおった。
そして、曲が始まった。
僕は”いつものように”歌っていく。
この曲は、マイナーな曲だが、知る人は知るという感じの曲だ。
最初から歌うことになるので、初見だと絶対にミスをする曲でもある。
「え〝!?」
「うそ……」
「う、うまいにゃ」
最初の部分を歌っただけで、信じられないといった様子の声が聞こえてきた。
僕はそれを無視して、Aメロを歌う。
ちなみに、歌詞は一切見ていない。
何故ならば、歌詞を見る必要がないからだ。
(この曲を歌うのも久しぶりだな)
少し前は、ある企画のためにこの曲を歌う練習をしていたことを思い出した。
あの時の最高得点は97点だったと記憶している。
今回も、おそらくはそんな感じだろう。
気づけば2番のサビの部分となっていた。
「ウソ、もうベスト10!?」
なんだか高坂さんの声が聞こえてきた。
恐らく順位のことを言っているのだろう。
とはいえ、僕は画面を見ていないのでわかるはずもなく、2番を歌いきった。
間奏を終えれば残るのはサビだけだ。
「うわ、順位が上がった3位だって!」
「1位も夢じゃないです!」
次第にみんなの声も大きくなってくる。
(あんまり大きな声を出されると音程がとり辛くなるんだけどな)
思わず心の中でそうつぶやいてしまうが、さすがにそんなことを言うわけにもいかず、また言い訳にしかならないので、僕はそれを頭の片隅へと追いやった。
そして、何とか一曲を歌いきることに出来た。
「もうなんとなく結果がわかるんだけど」
皆の反応を見ていれば、自分がどんなスコアをたたき出したのかは手に取るようにわかった。
大方98ぐらいだろとたかを括っていた僕は、点数が出ているであろう液晶画面のほうへと視線を向ける。
「って、100!?」
そこに表示されていたのは、まぎれもなく100という数字だった。
(ちょっと加減するべきだったか、これは……)
最後に歌った時が97だったので、そのあたりだろうと思いこんでいた自分に、とてつもない怒りがわいてきた。
「満点だなんてすごいにゃ!」
「さ、さすがプロデューサーね」
「香月君ってすごいんだね!」
そして浴びせられる驚きを含んだメンバーの言葉の数々。
(もうこうなったらやけだ)
「ま、まあね。プロデューサーたるもの、ある程度のことぐらいはできて当然さ」
「すごいです! まるでプロデューサーの鏡です! 尊敬しますっ!」
僕の言葉に何故かものすごい反応を示した小泉さんのまなざしに、僕は非常に居心地が悪く感じてしまった。
(お願いだから、尊敬の眼差しは止めて)
それが、僕の心の声だった。
色々と活動している中、いまだに尊敬されることに慣れていない僕にとっては、尊敬のまなざしはある意味苦痛でもあった。
まあ、さすがに胃に穴が開くことはないけれど。
「こいつら、化け物か?」
そんな中聞こえてきた矢澤先輩の言葉に、僕はどう反応すればいいのかわからずに心の中で苦笑するのであった。
こうして、リーダーを決めるために始めたカラオケは幕を閉じるのであった。
今回登場した下記楽曲は、実在する曲です。
1:『月に叢雲華に風』 アーティスト:幽閉サテライト