ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
かなり短いですが、主人公の過去の話になります。
次回からはまた普通の話に戻ります。
それはいつのことかはわからない昔の話。
僕にとってそれはすべての始まりでもあり、終わりでもあるお話だ。
それは小学生のころのこと。
何年生かはわからない。
もしかしたら低学年かもしれないし高学年かもしれない。
そんなある日の朝のこと。
僕は当時通っていた、”神田第六小学校”にある自分の教室に入った。
「……」
僕が教室に入ったことで一瞬喧騒がなくなるが、再び何事もなかったかのように喧騒が戻った。
全員が僕を見るがすぐに視線を外したのだ。
当時の僕は、天才と呼ばれるほどに頭がよくて力がありそして、弱かった。
人知を超えた力、神力(霊力とも言うが)を扱えるのが僕たち高月一族の特徴だと父さんは言っていた。
僕も例に漏れずその力を扱うことができた。
特に得意だったのは手を触れずに、ものを吹き飛ばしたり払いのけたりすることだった。
前者はともかく後者は自分の身を守るのに使えたので、僕にとっては誇りでもあった。
それに付随して、幽霊も見えるようになった。
信じられないかもしれないが、僕には最初のころは友達がいた。
怖い話の話題の時に、僕があることを口にするまでは。
「僕も幽霊が見えるよ。例えば……君の後ろには単発の女の人が立っているよ」
それがきっかけだった。
たったそれだけで友達だと思っていた皆は一気に僕から距離を置くようになった。
そしていつの日にか僕は空気のような扱いをされるようになっていたのだ。
今思えばそれは当然の結果だったのかもしれない。
人は自分とは違う存在を畏怖を抱く存在なのだから。
担任の先生からは友達を作れ、人と話をしろと言われたが、そもそも話しかけられる相手がいないのだ。
僕はいじめを受けていた。
だが、それは暴言ではない。
暴力でもない。
ただ、僕の存在を無視するということだけなのだから。
このクラスに……この学校には僕の居場所などなかった。
恐ろしいのは、ほかのクラスや学年にまで僕のうわさが流れていることなのだ。
よくよく考えれば、よくPTAから僕を転校させろという声が出なかったと思う。
そんなわけで、僕はひっそりと静かに身を隠すように毎日を過ごしていた。
周りの喧騒は僕には関係のないもの。
最初は前を向いていたが、前で話をしているクラスメイト達の『こっち見てんじゃねえよ』と言わんばかりの視線によって今では机をぼーっと見つめているだけになった。
窓際の席だったらよかったのにと、思っていたことがあったのは余談だが。
だが、今日は何かが違っていた。
そう、それはチャイムが鳴ってしばらくして先生が入ってきた時からだった。
先生の後ろにy続いて入ってくる女子がいた。
僕の席からでは顔までは見えなかったが、薄い紫色の髪が見えた。
「今日からみんなのお友達になる子です。仲良くしてあげてね」
黒板には漢字とともに読み仮名が書き添えられていた。
だが、やはり僕の席からでは東という字だけしか見えなかったため、目を閉じた。
その時、僕は転校生には興味もなかったのだ。
どうせすぐに周りに溶け込むような存在だ。
そうなれば、僕のことはすぐに避けるようになるだろう。
だったら、関わらない方がましだ。
そう考えていたのだ。
この時、すでに僕は人と話すということが怖くなっていたのかもしれない。
「ねえ、ねえ。前の学校はどんな場所?」
「え、えっと……」
予想通り、休み時間で先生がいなくなるとクラスメイト達が一斉に質問の集中砲火を浴びせた。
彼女の席は僕のななめ左上の位置だったのが、僕にとっては幸いだったかもしれない。
もし隣ならば、暴言か暴力が加わっていたかもしれないからだ。
だが、僕にとっては騒がしいことこの上なかったので僕は席を立つと廊下のほうに出てぶらりと歩き回ることにした。
「………ん?」
ふと、何の気なしに転校生のほうに視線を向けると、一瞬ではあるが目が合った。
その時の彼女の目はどこか
――僕に似ていたのだ――
一週間ほど過ぎたころだろうか。
僕にとって予想外の事態がクラス内で発生していた。
それはこの間まで転校生に夢中だったクラスのみんなが、まるで転校生のことなど存在しないかのように話しかけなくなったのだ。
一日を通じて、誰も彼女に声をかけることはしなかった。
何も欠点のない人が僕と小名異常な状況になっていることが、僕にとっては不思議で仕方がなかった。
「あ、今日は日直だったんだ」
ふと、今日の日直が自分であることを思い出した僕は、黒板にけしを掃除した。
掃除を終えた僕が自分の席に戻る際、僕はふと彼女の席のほうに目を向けてみた。
(そういうことなんだ)
そこで僕は納得した。
転校生は、どのようなものかは分からないが本を読んでいたのだ。
その姿はまるで拒絶のようにも見えた。
外とのつながりすべてをはねのける鉄壁な壁に。
だからと言って、僕に声をかける勇気などもなくずるずると、時間だけが過ぎていった。
それはいつのことかはわからない夕暮れ時の教室。
僕は忘れ物をしたため教室に戻っていた。
(どうせ、教室には誰もいないもんね)
教室に誰かがいることを期待する自分に、僕はそう心の中でつぶやいた。
そして教室のドアを開けた時だった。
「へ?」
僕は目の前の後継が信じられずに思わず声を漏らしてしまった。
目の前にはただ一人で本を読んでいる転校生の姿があったのだ。
いくらなんでも家に帰っている時間帯のはずだ。
そして僕は、信じられないような行動をとった。
「ねえ、君」
今まで声をかけようとしなかった転校生に対して、僕は初めて自分から声をかけたのだ。
「え?」
「もう日が暮れて夜になっちゃうよ?」
反応してくれた転校生に、僕はオレンジ色に染まる窓の外を指さしながら告げた。
「そうなんだ。ありがとう」
そっけない返事だった。
それもそうだろう、全く知らないも同然の男子に話しかけられているのから。
帰り支度をしている女子に、僕はふとあることを聞いてみた。
「君はどうして、皆とは話さないでいつも本を読んでいるの?」
「……」
僕のその問いかけに、女子の手が止まった。
「あ、変なことを聞いてごめん」
「誰も私のことを理解してくれないから」
「え?」
気分を害したと思った僕の謝罪の言葉に返ってきたのは意外なものだった。
「私、今までいっぱい転校してきたの。だから友達なんてできないし、皆が私のことをわかってくれることもなかった。でも、本を読んでいればそんなこと忘れられるから」
「なんだ……」
転校生が答えたその言葉は、どことなく
「君も僕と同じなんだ」
僕と同じだった。
「え?」
「実はね……」
自然な流れで僕は自分のことを話した。
自分には幽霊を見たりする不思議な力があるということ。
そのせいで、周りからは避けられているということすべてを。
「それじゃ、あの白い服の女の人って幽霊なの?」
そんな僕の話に返ってきたのは、意外にもそんな問いかけだった。
「そうだよ。もしかして、君にも見えてるの?」
僕の問いかけに、女子は静かに頷いた。
「私、前に君と同じことをお父さんとお母さんに話したけど信じてもらえなかったの」
どこからどこまで僕と同じ境遇だった。
どっちがましだという話ではない。
「ねえ」
だからだろう。
僕がそれを口に出来たのは。
「僕と友達になってくれないかな?」
右手を差し出して、そう告げた僕は緊張と不安でいっぱいだった。
また拒絶されるのではないか。
怖がられるのではないか。
そんな言葉が脳裏をよぎる。
そんな時、僕の手を女子が握り返して
「もちろんだよ」
と、満面の笑みを浮かべて答えてくれたのだ。
もしかしたら同じ境遇ということで親近感がわいたからかもしれない。
僕は初めて、心の底から信じられる”友達”を作ることができたのだ。
だが、それはこの先に待つ天国と地獄の幕開けであることを、僕はまだ知らなかった。
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