ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
第28話になります。
今回もそこそこ長いです。
「なんだそれ?」
部室にやってきていた僕たちは、星空さんの口から出た言葉に首をかしげていた。
「だから、神社の呪いだにゃ!」
それが星空さんが力説していた言葉だった。
部室にいるのは僕と高坂さん、南さんに園田さん、そして星空さん4人だけだった。
小泉さんと西木野さん、そして矢澤先輩の行方は不明(とはいえ、失踪しているということではないが)だ。
メンバー全員がそろわなければ練習などを始めることもできず(というより、開始予定時間までかなり時間があるのだが)、僕たちが時間を持て余している中突如として話し始めた内容が先ほどの内容なのだ。
「こ、怖い話は……」
怖い話だと察知した園田さんは、星空さんから距離を取るように部室の隅の方に逃げていた。
とはいえ耳をふさいでいないあたり、話の内容に多少は興味があるような感じがするが。
「なんだかね、神田や秋葉原とかに白ずくめのコートを着た人が出るらしいにゃ」
(ん?)
星空さんの口にした謎の人物の特徴に、何かが引っ掛かった。
「その人がね、こう言うんだって『あなたはこの土地にとって有害な存在ですので、お命を頂戴いたします』って。そしてそのまま風のような速さでその人を刀で斬っちゃうんだにゃ!」
(それ、完全に僕のことだよね)
星空さんの話の内容は、この間処理した藤島 恭弥の一件と酷似していた。
まあ、顔は見られていないみたいだから放置しておいても問題はないだろう。
「でもそれと、神社の呪いがどう関係しているの?」
まったく関係がない話の内容に、高坂さんが首を傾げながら尋ねた。
「その人がね、自分のことを神社協同組合って名乗ったらしいんだって。だから、タイトルも”神社の呪い”ってなってるんだにゃ」
「神社協同組合……聞いたことがありませんね」
「ネットで調べてみたんだけど、それらしいのは出てこなかったにゃ」
(そりゃ当然だ。あそこはアングラ組織なんだから)
神社協同組合は、もともとはかなり昔に設立された組織だ。
当時は生贄を捧げることによって土地を守れるという宗教じみた危険な思想によって、村人を次々に生贄に捧げていたらしく、それが現代に引き継がれてあのような形になったのだ。
とはいえ、彼らは生贄というわけではなく、本当の意味でその土地にとって有害である存在として対処される。
秋葉原や神田のように無数の人が行き来するこの土地は、人々の欲望など、いろいろな思いが留まる。
幽霊やそれに付随するものは、そういった”淀み”が原因で発生したり引き寄せられることが多い。
通常は地脈によってそういった淀みは浄化されるが、その地脈が現在使い物にならないほどにまで悪化しているので、特にこの土地に負荷を与えるであろう存在を排除してしまおうというのが、神社協同組合の言い分だ。
とはいえ、表向きは神社が適正に運営できるように、神官を派遣させたり運営資金を無条件で譲渡したりする組織なので、組織名を知っている人でもまさか時代劇で出てくるどこぞの仕事人のようなことをしているところだとは思いもしないだろうけど。
ちなみに、組合員には超大物政治家がおり、その人物の力で殺人行為自体が許可されているのが現状だ。
処理が終わった際に、神合に電話をして、後処理を依頼して遺体を処理する。
そうすればいくら目撃者がいたところで遺体が出てこない以上、罪に問える可能性はかなり低くなる。
僕が刀などの刃物を所持・携帯できるのも政治家の人のおかげであったりもする。
向こう側に何のメリットがあるのかはわからないが、一度会って話をした限りではそのようなものは一切ないようにも思えたが。
それはともかくとして。
これ以上この話を続けられるのは少々分が悪い。
こちらに話を振られればぼろが出る可能性だってあるのだ。
(こうなれば、無理やりにでも話を変えるか)
そんなことを考えていたが、どうやらその必要はなかったみたいだ。
「うわ!?」
突然の大きな音とともに開け離れた部室のドアに、驚きながら視線を向けるとそこには走ってきたのか膝に両手を置いて息を切らしている小泉さんの姿があった。
「どうしたの? かよちん」
「た、助けて」
何事だと言わんばかりに尋ねる星空さんの問いかけに返ってきたのは、助けを求める声だった。
「何があったんだ?」
まさか変質者でもあらわれたのかと思い、小泉さんのほうに駆け寄りながら問いただすが、息を切らすだけでなかなか答えが出てこなかった。
だが、それでも少しは落ち着きを取り戻したのか、先ほどまでの息の乱れはなかった。
「ラブライブです! ラブライブが開催されるんです!」
「ラブライブ? ………それって何?」
小泉さんの言葉に一瞬真剣な面持ちをする高坂さんだったが、すぐさまその表情を崩して尋ねた。
ある意味高坂さんらしかった。
「知らないんですか!!」
「うわ!?」
そんな高坂さんの言葉に、目を光らせた小泉さんが詰め寄ると、素早い動きでPCの前に移動して何やら操作をし始めた。
(……何も言うまい)
実は僕も今の今までラブライブというものを知らなかったのだが、それを言ってしまうと何を言われるかがわからないので隠しておくことにした。
黙秘というのは、ある意味一番最強の一手なのかもしれない。
それはともかくとして、僕たちは小泉さんが操作しているPCの周辺に集まった。
しばらくしてモニターに表示されたのは、トーナメント表やラブライブに関する概要などが記された情報だった。
「ランキングで上位20位までのスクールアイドルが出場することができる、まさにスクールアイドルの甲子園なんです”」
「これは盛り上がること間違いなしだにゃ!」
(まあ、スクールアイドルは人気なわけだしそういうのが実施されてもおかしくはないか)
小泉さんの説明に、星空さんが元気よく相づちを打つのを聞きながら、僕は心の中でそうつぶやいた。
ふと見ればスポンサーとして明記されている企業名には、飲料メーカーをはじめとして有各なプロダクションやレーベル会社の名が占めていた。
思惑は見え見えだが、星空さんの言うとおり、スクールアイドルという存在自体に対していい活力剤になることは明らかだった。
「ランキング1位のA-RISEは出場決定として、上位20組は……初回特典は……」
何やら自分の世界に入り込んでしまった小泉さんに高坂さんが声をかけた。
「もしかして、見に行くつもりなの?」
「当然です! アイドル界にとっても歴史に残る催しです! 見逃せませんっ」
そんな高坂さんの問いかけに異常なまでの反応を示した小泉さんは椅子から立ち上がると高坂さんに詰め寄った。
「アイドルのことになるとキャラが変わるわね」
そんな小泉さんを興味なさげに離れた場所の席に腰かけていた西木野さんが漏らした。
(あの変貌には、慣れてきたとはいえ……)
変わりすぎだということこの上なかった。
「てっきり私はラブライブに参加しようって言うのかと思ってたんだけど」
「そ、そそそそそそんなこと、恐れ多くてっ」
先ほどまでの威勢はどこへやら、すっかりいつもの弱気(控えめなといった方がいいか)な性格に戻ってしまった。
「だから、キャラが変わりすぎ」
「凛はどっちのかよちんも好きだにゃ!」
(しかし、参加するというのはいいな)
そんな和やかな雰囲気が漂う中、僕はそんなことに考えを巡らせていた。
出場できるか否かは別として、もしうまくいけば廃校を防ぐことは可能になるだろう。
そんなことを考えていると、口を開いたのは南さんだった。
「でもせっかくなんだから出場してみるのもいいかもしれないね」
「というかしなくちゃダメでしょっ」
「そうは言うけれど、現実は厳しいわよ」
すでに出る気満々の高坂さんを落ち着かせるように、西木野さんが真剣な面持ちで口を開いた。
それもそのはずだ。
この大会の出場条件は、ランキングで20位に入らなければいけない。
この間見たところ、順位は200位ほどだった。
とはいえ、新曲でもある『これからのSomeday』によって順位変動が発生している可能性もあるが。
「そうですね、確か順位のほうは……」
西木野さんの言葉に園田さんは固い表情をうかべて頷くとパソコンの前に移動してマウスを操作する。
画面に表示されたのは先ほど話題に上がっていたスクールアイドルのランキングだった。
そして、園田さんの操作によって、μ'sの順位が表示された。
「っ!? 見てください! 順位が上がってます」
「え!?」
「ウソっ!?」
園田さんの驚きに満ちた言葉に、全員が驚いた様子でパソコンの前に駆け寄っていく。
その驚きは凄まじく、興味なさげにしていた西木野さんが大慌てで立ち上がるほどだったのだから。
最新の順位はついに100をきり、90位まで迫る勢いだった。
(新曲のPVが功を奏したみたい)
それしか原因は考えられなかった。
まだまだ課題は山積みだが、こうして結果が出ているというのはプロデューサー冥利に尽きるというものだ。
(って、そういえば)
ランキングとラブライブのことで忘れかけていたが、現在の時刻を確認してみると練習の開始予定時間に間に合わない領域にまで来ていた。
まだ10分ほどはあるが、着替えたりするのを考えるとかなりギリギリだろう。
「皆、早く着替えて屋上に行かないと」
「あ、もうそんな時間なんだ」
僕の呼びかけに、各々が時計を確認する。
「それじゃ、着替えましょうか」
「僕は先に屋上に行ってるから」
園田さんの言葉に続くように、僕はそう告げると一足先に部室を後にした。
部室は彼女たちの更衣室でもあるのだ。
練習を始めるたびに外に追い出される自分が、なんとなくあれな気もするが抗議して事態をややこしくするのもあれなので、何も言っていないのだ。
というか、言って何とかなるわけじゃないし。
(早く屋上に行くか)
非常に無益なことを考えている自分にため息をつきながら、僕は練習場所でもある屋上へと向かうのであった。
しばらくして屋上にやってきた高坂さんたちだったのだが、何かを思い出したように西木野さんの口から語られたのは、ここ最近の異変だった。
「出待ち!?」
なんでも、校門を出たところで少女に声をかけられて記念撮影をしたらしいのだ。
それはアイドルや芸能人などの有名な人たちが通る道だった。
「ウ……嘘」
「どうかしたのか? 高坂さん」
話を聞き終えると信じられないとばかりに声を上げる高坂さんに、僕は首を傾げながら声をかけた。
「私はまだされたことがないのに」
「そういうこともあります。アイドルは格差社会ですから」
「……」
ショックを受けるところが微妙にずれているようにも思えたが、それは口に出さないようにした。
願望を抱くのは自由なのだから。
とはいえ、小泉さんの言わんとすることもわかる。
同じグループでも、一部のメンバーのみの人気が上がることもしばしばある。
そういった格差がメンバー内での亀裂を生じさせる原因にもなったりすることも少なくない。
もっとも、それを回避するのもプロデューサーの仕事だが。
(そういえば、僕も最近あったっけ、そんなこと)
それは数日ほど前のこと、いつも通りに帰路についていた僕に
「あの!」
と声をかけてきた人物がいた。
声をかけてきたのは二人組の少女で、制服からしてどこかの学校の生徒だと思われた。
「なにか?」
「あ、あの……握手してください!!」
勇気を振り絞ったのだろう、僕の問いかけに鼠色の長めの髪の少女は突然僕に手を差し出してきた。
「は、はあ……これでいいのか?」
「は、はい! ありがとうございます!!」
まるで有名な芸能人に握手されたかのような嬉しそうな反応をする少女に、僕はさらに心の中で首を傾げた。
「これからも応援しているので頑張ってください!!」
「ど、どうも」
労いの言葉をかけると、少女はもう一人と共に嬉しそうに去って行った。
「………何あれ?」
そしてその場に残された僕は、ただただ呆然と少女たちの背中を見送るのであった。
(今思えば、あれも出待ちだったのかも)
というか、なぜその時に気づかなかったのかが疑問なのだが。
とはいえ、一番の疑問は名前すら公開していない僕が、どうしてμ'sの関係者であることがわかっているのかであることに違いはなかった。
(まあ、どうでもいいか)
「でも、写真だなんて真姫ちゃんも変わったにゃ」
恥ずかしさに目を閉じて頬を赤く染めている西木野さんに、星空さんは顔を近づけながら言葉を投げかけた。
「そ、それは……」
「あ~、赤くなったにゃ」
恐らくさらに顔を赤くしているのであろう西木野さんに、さらに顔を寄せる星空さん。
そんな彼女に対して西木野さんは
「にゃ!?」
頭にチョップを入れることで応じた。
チョップを入れられた星空さんはその衝撃で尻餅をつきながら頭を抑えていた。
「痛いよ~」
「あんたが悪いのよ」
「うん、確かにそうだけど、ものすごく大人げない」
頭を押さえて泣きじゃくる星空さんに、ぴしゃりと言いきって腕を組みながらそっぽを向く西木野さんに、僕はぽつりとツッコんだ。
「それだと、凛が子供っていうことになるんだけど?!」
「子どもでしょ?」
先ほどまでの泣きじゃくりは何だったのか、泣き止んで問い掛けてくる星空さんに、僕は当然だろと思いながら即答で答えた。
「二人ともひどいにゃ~」
そして再び泣き始める星空さんに、僕はどうしたものかと考えを巡らせたところで、屋上のドアが勢いよく開け放たれた。
「みんな聞いて驚きなさい!」
出てきて早々叫んだのは、我らがアイドル研究部部長の矢澤先輩だった。
「ついに……ついに開かれることになったのよ!」
屋上に躍り出てもったいぶるように僕たちに背を向ける矢澤先輩が言うであろう言葉を、僕たちはただただ待つだけだった。
気づけば星空さんは再び泣き止んでいた。
「スクールアイドルの祭典――「ラブライブですか?」――……」
両手を広げこちらに振り向いた矢澤先輩の言葉を遮るようにして告げられた南さんの一言に、矢澤先輩の動きが止まった。
屋上に何とも嫌な沈黙が漂う。
「知ってたの?」
「おしいね。後、数十分早かったらビッグニュースだったけど」
「う、うるさいわね!」
僕の言葉に、にらみを利かせながら声を上げる矢澤先輩に僕は軽く笑いながら”失敬”と答えた。
もはやラブライブ開催の知らせのニュース鮮度は限りなく中古レベルにまで陥っていた。
「まあいいわ。早速エントリーするわよ!」
「そうだね!」
「べ、別に私は興味ないけどね」
そんな中、矢澤先輩の号令に、相づちを打ちながら屋上を去って行く高坂さんたち。
「……今日の練習はなしだね。これ」
がっくしと肩を落としながら、僕もまた屋上を後にするのであった。
ところで、ラブライブに参加する条件として挙げられているのは先ほども話したと思う。
まず、ランキングで上位20位に入ること。
次にスクールアイドルとしての活動をしていること。
もっともこれは、していなければランキングの上位に入ることはほぼ不可能なので、あってないような決まりだが。
そして何よりも重要なのが……
『学校の許可を得ること』
なのだ。
つまりは
「結果なんてもう見えてるわよ」
生徒会室前で、ドアを叩こうとしていた高坂さんに、西木野さんが冷たい声をあげる。
「『学校の許可ぁ? 認められないわ』」
そんな西木野さんの言葉に反応した星空さんが両脇腹に手を当ててやや高圧的な態度で言い切った。
それはどう見ても生徒会長の真似だった。
(ものすごく、命知らずなことをするよな。星空さんって)
本人がこの場にいたら大激怒間違いなしのものまねをする星空さんには、ある意味敬意を払いたい。
しかも、似ていないとは言い切れないほどのレベルだが
そう。
今僕たちはラブライブ出場の許可を得るために、生徒会室を訪れていたのだ。
「でも、今度は生徒を集められるかもしれないのに」
「そんなことあの生徒会長には関係ないわよ。私たちのことを目の敵にしてるんだから」
浮かない表情をうかべる高坂さんに対して、どこかの部屋の中に入っている矢澤先輩は険しい表情で断言した。
「どうして私たちばかり……」
「さあね。どういうつもりなのやら」
今現在、僕が知る中で一番危険な爆弾は、あの絢瀬生徒会長だ。
このままでは、この学院は心霊スポットとして廃校となる可能性が高い。
それを防ぐための対策を、今日にでも実行するつもりなのだ。
それはともかくとして、まずはこの局面をどうするかだ。
「まさか、この私に嫉妬して」
「「それはない」」
矢澤先輩の口から出た推測に、僕と西木野さんはピッタリなタイミングで否定した。
「二人して即答!?」
素早い答えにツッコむ矢澤先輩の言葉を、西木野さんはドアを閉めることで遮った。
「もう勝手にエントリーしちゃえばいいんじゃないの?」
「ダメだよ! 参加するには学校の許可を得ることが条件になってるんだから」
西木野さんの言葉に、しっかりと参加条件を見ていた小泉さんが反論した。
「とはいえ、あれが素直に許可なんて出すはずがない」
誰かが言っていたように、結果はすでに見えていた。
「だったら、理事長に直接言うとか?」
「え?!」
ふと西木野さんがつぶやいた言葉に、高坂さんが驚いた様子でこちらに振り返った。
「確かに、『部活の要望は原則生徒会を通して』とありますが、禁止はしてないですし……」
「それに、もう何度も要望を理事長に出したりしてるしね」
HPとか、屋上の使用許可とか。
「だから大丈夫よ。それに、親族もいるんだしね」
そういって、全員の視線は高坂さんの横に立っている南さんに注がれた。
「ふぇ?」
当の本人は視線を集められたことに驚いた様子だったが。
そんなこんなで、僕たちは許可を得るため理事長室へと移動した僕たちだったのだが……
「こ、今度はものすごい重圧が」
「そんなことを言っている場合?」
理事長室のドアの前で、見えない重圧に怖気づいている高坂さんに、西木野さんが喝を入れる。
「いや、それが正しい反応かもしれないよ」
西木野さんの横に立っていた僕は、フォローの意味をかねて口にした。
だが、それはフォローの意味合いだけではない。
高坂さんたちには見えていないかもしれないが、理事長室からどす黒い邪気のようなものが発せられているのだ。
それが重圧の正体である可能性が高い。
高坂さんは直感か何かは知らないgは、それを感じ取っていたのだ。
(これも異界化の影響か?)
色々なことを頭の中でめぐらせている中、高坂さんは勇気を振り絞ってドアをたたこうと拳を振り上げた。
そんな時だった。
理事長室のドアが開けられたのだ。
「あれ? みんなおそろいでどうしたん?」
「副会長?」
現れたのは、不思議そうな表情で僕たちを見る東條先輩だった。
だが、理事長室を訪れていたのは彼女だけではなかった。
「生徒会長!?」
「タイミング悪」
まさにその通りだった。
ドアをさらに開けて出てきたのは、非常に険しい表情をうかべる渦中の生徒会長だった。
その姿は、まるでどこぞの魔王のようにも思えた。
「何の用ですか?」
「理事長に話があって来ました」
生徒会長から放たれるどす黒い邪気に怖気づいているのか、それとも別の何かによるものなのか、何も言えずにいる高坂さんを押しのけるようにして告げたのは西木野さんだった。
だが、彼女の進路を断つように生徒会長が立ちはだかった。
「部の申請は生徒会を通す決まりよ」
「別に申請とは言ってないわ。ただ話をするだけよ」
「それに、その生徒会の長が信用にも値しないほど最低なので、こうしてわざわざ遠い理事長室に来たわけだが?」
西木野さんの勇気に答えるように、僕も援護射撃を送る。
「二人とも、上級生だよ」
そんな僕たちに、高坂さんがたしなめるように注意してきた。
無言でにらみ合いを続ける中、それに終止符が打たれた。
「どうしたのかしら?」
南理事長のノック音によって。
「―――ということで、この学院にとっては非常にメリットがあると思います」
「なるほどね。事情は分かりました」
理事長室内に入った僕と高坂さんに園田さんに南さんは、生徒会のトップ2と矢澤先輩がいる中で要件を話し終えた。
「私は反対です。理事長は前に学院のために学院生活を犠牲にするべきではないと仰られました」
「わかりやす」
反対意見を述べる生徒会長の反応はすでに予想済みだった。
「でも、エントリーぐらいならいいのじゃないかしら?」
「ほんとうですか!?」
「ありがとうございます!」
理事長の出した結論に、表情を明るくする高坂さんたちだったが、納得がいかない人もいるようで
「待ってください! どうして彼女のかたばかり持つのですか!!」
「そんなつもりはないのだけれど」
猛抗議する生徒会長に、困ったような表情をうかべながら答える理事長に、なおも生徒会長は食い下がった。
「だったら、私たちにも廃校を阻止するための活動をさせてください!」
「それはだめよ」
生徒会長の要請を理事長は問答無用で切り捨てた。
「なぜですか!!」
「簡単なことだと思うけれど」
「しかも、非常に単純な理由だしね」
生徒会長に答える理事長に続いて、僕も告げた。
今のやり取りを見て、却下する理由がわかったような気がしたのだ。
「……」
「エリチ!」
納得がいかない表情をうかべたまま、生徒会長は踵を返すとそのまま理事長室を出ていった。
それは、僕たちの勝利を意味していた。
「ただし、参加には条件があります」
勝利の余韻に浸っている僕たちに、理事長は静かに口を開いた。
そして、僕たちに課された条件は、この後に大きな試練を巻き起こすことになるのであった。
次話当たりで多少オリジナルの話が入るかもしれません。