ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。

連続投稿第二弾です。
今回はオリジナル展開の話となります。
オカルト要素が非常に強いので、苦手な方はご注意ください。


第31話 疑問

「さて、ウチはそろそろ帰るけど、香月君はどうするん?」

 

あの映像を見た園田さんは、ひどくショックを受けたのか思いつめた表情を浮かべたまま先に帰って行ってしまった。

僕は、逆にショックのあまり動けずにいたわけだが。

どれだけの時間が経ったのか、気づけば空はすっかり夜の帳が降りており、周囲は薄暗くなっていた。

 

「こんな時間に、女性を一人にするのはあれですし、待ってますよ」

「嬉しいこと言ってくれるん。それじゃ、着替えてくるからちょっとだけ待ってて」

 

笑みを浮かべながら東條先輩はそう告げると、階段をゆっくりとした足取りで登って行った。

 

「あと数十分は待つかな」

 

巫女服に着替えたりするのにかかる時間は大体が十数分ぐらいだ。

着付けが難しいのか、それとも何かがあるのかはわからない(当然だけど)が。

僕は静かに待つことにした。

そんな時だった。

 

「っ!」

 

ふと、動悸のようなものが僕を襲った。

それに苦しさはなく、あるのは体中に走るゾクゾクとした感覚のみだ。

 

「これって……」

 

その感覚を僕は知っていた。

それは、幽霊や妖怪などの類のものが現れた時に感じるものだ。

そして僕には、その物の怪がどこにいるのかも手に取るようにわかった。

その方向は……

 

「おいおい、ウソだろっ」

 

階段を上がり切った先……神社の境内のほうからだった。

 

「っく」

 

僕は慌てて階段を駆け上がる。

階段を駆け上がり、境内にたどり着いた僕は、先ほど強い気配を感じた境内のわきにある社務室のほうに急いでかけていく。

なぜならばそこに着替え中の東條先輩がいるからだ。

彼女に危害が加わるのだけは避けなければならない。

それが、神主の役目だからだ。

 

(それにしても、まさか本当に出るとは)

 

周囲を警戒しながら僕は心の中で愚痴をこぼした。

 

(もはや聖域の機能すらも果たせないということか)

 

どうやら、事態は僕が思っていたよりもはるかに逼迫していたようだ。

地脈を確認したときに見立てていた状態よりも、かなり悪化しているのは明らかだった。

 

(姿を消している……いや、これはまだ具現化ができないのか?)

 

気配はするが周囲にそれらしき姿は見当たらない。

次の瞬間だった。

まるで、煙のように”それ”が姿を現したのは。

 

「っ……」

 

それは、言葉では形容しがたいほどの大きさだった。

身長にして僕の数倍はあるのではないかという巨体、まるで鬼のように威圧する眼が僕をにらみつけている。

 

(これは本気でまずいな)

 

今僕の目の前にいる物の怪はかなりの力を持っている。

一瞬でも油断をすればやられてしまう。

気が付くと体中から嫌な汗が出ているのを感じた。

恐怖を感じないと言えばうそになる。

だが、この場で逃げるわけにもいかない。

 

(ここは、浄化するしかないか)

 

僕は、目の前の物の怪に対する対抗策を決めた。

浄化とは文字通り、目の前の物の怪を完全に消滅させることができる力だ。

 

(久々に本気を出すか)

 

今回の規模だと、今の状態では効き目がないので僕は全力で浄化を行うことにした。

昔の出来事で、僕はいつもは力を封じているので、かなり抑えているのだ。

なので、いつもは出来ることは簡単な浄化や幽霊などの姿を見ることぐらいしかないのだ。

 

「すぅ……」

 

その力の解放の仕方は簡単だ。

ただ数回、自分の中にある力に意識を集中させて、深呼吸をするだけなのだから。

言葉では分かりづらいが、感覚の話になってしまうので、これが限界だったりもする。

閑話休題。

意識を集中させていると、徐々に自分の体の中に熱がのようなものがこみあげてくるのを感じた。

それが、僕が封じていた力なのだ。

 

「あれ、香月君。こんなところで何をしとるん?」

 

いよいよ力が完全に解放できると思った瞬間だった。

着替え終えたのか、社務室から出てきた東條先輩が、不思議そうな表情を浮かべながら尋ねてきた。

 

「っ!?」

 

そのことで集中力を切らしてしまったため、先ほどまで感じていた熱が一気に無くなっていった。

 

(なんでこんなタイミングで)

 

タイミングの悪さに、僕は心の中でため息をつく。

 

「もしかして覗きでもしようと思ったん?」

「違いますっ」

 

いつの間にか僕に覗き見という身に覚えのない疑惑がかけられていたので、僕は全力で否定した。

 

「それじゃ、どうして――――」

 

東條先輩が追及をしようとした時だった。

周りの空間が揺れたのだ。

だがそれは錯覚で、正体は僕が対峙していた物の怪が発した雄叫びだった。

それはどう見ても、動き出す直前だ。

 

「あ、あれは一体何なん?!」

「わ、分かりませんよ!」

 

東條先輩の前で自分の力を開放するわけにはいかない。

なので、僕は本当のことを言えず、知らないふりをするしかなかった。

 

「な、なんだか危なそうな雰囲気やん」

「に、逃げましょう!」

 

今やるべきことは、この場から東條先輩を逃がすこと。

そうすれば、僕は人目を気にせずに全力で浄化をすることができる。

そんな時、気配が一気に膨れ上がるのを感じた。

 

「危ない!」

 

それに気づいた時には、東條先輩が僕と物の怪の間に立ちはだかっていた。

見れば、物の怪がこっちに向かって突進してきていた。

だからこそ東條先輩の行動は、僕には自分の身を犠牲にするようにも思えた。

 

「香月君には、怪我なんてさせん!」

 

そう大きな声で告げた東條先輩は手拍子をした。

 

「え?」

 

手拍子特有の乾いた音がする中、僕は再び別の意味で衝撃を受けた。

それはただの手拍子ではない。

全力で浄化をする際に行う儀式のようなもので、浄化をする始まりをも意味する行為だった。

僕が唖然としている中、東條先輩を中心に白い光が僕たちを包み込んだ。

 

「――――――」

 

その時に、何かの断末魔のようなものが聞こえたような気がした。

白い光が消えた時、そこには何もなかった。

物の怪は一瞬で浄化されたのだ。

 

「だ、大丈夫?」

「ええ。助けてくれてありがとうございます」

 

東條先輩はどこか不安そうな表情を浮かべながら僕の安否を尋ねてきたので、僕はお礼を言うことでそれに答えた。

 

「歩きながら話でもしようか」

「構いませんよ」

 

東條先輩の提案に僕は頷くと、そのまま階段のほうへと歩いていく。

完全に家とは反対だけど、たまには遠回りをするのもいいかもしれない。

 

「それにしても、香月君にも見えるん?」

「ええ。昔からよく見ますよ。誰にも言ってませんけど」

 

階段を降り始めたところで投げかけられた問いかけに、僕は正直に答えた。

あれだけ派手な言動をしてしまえば、隠すのは無理だ。

それに、幽霊が見えることくらい僕の力に比べればどうってこともない。

行くある幽霊が見える人程度になるのだから。

 

「言った所でろくな目に合わないのは分かりきってますからね」

「そうやね……」

 

僕がつぶやいた独り言にも近い言葉に相槌を打つ東條先輩の表情に、僕は影のようなものを見たような気がした。

 

(一体、彼女はどんな仕打ちをされたんだろう?)

 

表情を見てもいいことがあったようには見えない。

もしかしたら、僕と東條先輩はそういう部分では気が合うのかもしれない。

傷のなめ合いのような気もするけど。

 

「それじゃ、ウチはあっちだから」

「僕はこっちですからお別れですね」

 

本当は全く違うが、これ以上行くとさらに遠回りになるのでキリのいい場所で別れることにした。

 

「それじゃ、失礼します」

「うん。またね」

 

東條先輩に一礼した僕は、そのまま彼女に背を向けて歩き出す。

何かを言いたげだったが、結局何を言いたかったのかを知ることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、これがこうだから……こうなって」

 

自宅に戻った僕は、夕食を済ませると別邸のほうで試験勉強をしていた。

 

「……よし、出来た」

 

うまく導き出した答えを正解と照らし合わせていく。

 

「正解率は9割か……まあまあいい感じかな」

 

試験範囲の正解率は何とか7割台まで乗ってきた。

あと少しだけ根を詰めればいい線まで行くだろう。

 

「そういえば、今は何時だろう」

 

ふと、僕は忘れかけていた時間が気になり時計を確認した。

 

「って、もう0時!?」

 

すでに時計の針はてっぺんを超えており、僕は慌てて教科書などの勉強道具を片付けると、袴の上から用意しておいた黒いロープ付きのマントを羽織った。

そして、茶色のアタッシュケースを開けて中に入っているものを確認するとそれを静かに閉じた。

 

(それにしても……)

 

そんな時、ふと脳裏をよぎったのは先程の神社での一件だ。

聖域の機能がなくなったことはもちろんだが、何よりも驚いたのは、東條先輩の力だ。

それはあの浄化の力だ。

 

(あのやり方は高月家が代々行っている浄化の儀式……それを一体どうやって)

 

浄化のやり方は人それぞれだ。

気合を込めるように手を掲げて浄化を行う者もいれば、実際に刀などで対象切り付けて浄化を行う者だっている。

 

(それにあの精度は普通の巫女ができるものじゃない)

 

実際に浄化をする際の力の強さは、この僕の全力とほぼ同じ……もしくはそれ以上のものだった。

 

(まさか、東條先輩は父さんの隠し子!?)

 

ふと浮かび上がった可能性だが、それならばすべての疑問の説明はつく。

高月の血を継いでいれば、あれだけの濃度の濃い力を発揮することも可能だ。

 

(ということは、東條先輩は僕の双子の姉弟になるということか)

 

一体東條先輩が姉になるのかそれとも妹になるのかは分からない。

尤も僕の推測が正しければ、確実に家庭崩壊の危機になりそうだが。

 

(って、それはないか)

 

そんな僕の推測だったが、ありえないことでもあったので、すぐに否定した。

なぜなら、父さんの母さんに対するゾッコンぶりは誰から見ても明らかだからだ。

母さんの母校である音ノ木坂を廃校にしたくないがために、強引に僕をここに連れ戻したりするのがいい例だ。

他にも毎朝料理を食べさせあったり(僕に隠れてだが)、毎朝出かけるとき(僕に隠れるようにしてだが)と帰ってきたとき(この間家政婦さんに教えてもらった)にはキスをしていたり等々。

新婚さながらのラブラブっぷりだ。

しかも隠しているようで、全く隠せていないところが手におえない。

 

(まあ、これはいつか分かるだろうし、今考えなくてもいいか)

 

僕はそこで考えるのをやめた。

時間にして0時30分。

そろそろ出る時間帯だ。

 

「それじゃ、行きますか」

 

部屋の電気を消した僕は、そのまま自室を後にすると別邸を後にした。

家の人は全員眠りについているようで、敷地内はとても静かだった。

僕は音をたてないように静かに門を開けると敷地の外に出た。

門には鍵をしておくことを忘れない。

そして僕は学院に向けて歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた」

 

時刻にして午前1時、5分前。

僕は目的地でもある音ノ木坂学院の、校門前にたどり着くことができた。

さすがに校門は閉じており、鍵もかかっているようで試しに押したり引いたり横に動かそうとしたが、びくともしなかった。

 

「開かないんなら、乗り越えればいいだけ」

 

僕はそうつぶやくと、門を軽く飛び越えて学院内に侵入した。

校舎内は誰かが警備している可能性も高いから、出来るだけ慎重に行こう)

 

校舎前で僕はそう考えると、持ってきていたアタッシュケースを地面に置いて開けると、中から先端に無数の鈴がついている杖を取り出し、さらに中からお札と清め塩の入った巾着袋を取り出す。

それらはすべて異界化しかけていたり霊的な怪奇現象のある場所に対する処置で使用するであろう道具一式でもある。

むろん、使わずに普通に浄化をすればいいだけだが、相手の動きを封じる必要がある場合もあるので、これらは意外と重宝する。

 

「さて、中に入るか」

 

そして僕は校舎内へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

「やっぱり、昼間とは雰囲気が違うな」

 

校舎内の雰囲気は昼間のそれとは大きく異なっていた。

昼間は、学び舎特有の優しく包み込むような雰囲気に満ちていたが、今の校舎内はそれと一変しており、僕そのものの侵入を拒絶しているようだった。

RPG風に言えば、いつどこから敵が現れるかがわからないという緊迫感に満ちている状態だ。

 

(昔から学校とかの教育機関には幽霊が出やすい傾向にあるからな)

 

こういった場所だからこそある特有の原因のために、教育機関は心霊スポットにもなりうるのだ。

例えば、いじめられた際の被害者の無念の気持ち、怒りの気持ちや先生に叱られた時の苛立ち等々。

ここはそう言った負の感情が渦巻きやすいのだ。

そしてそれに群がってくるのが物の怪というものだ。

特に現在この学院は異界化しかけている。

それが状況をより悪化させているのだ。

現に、僕は廊下の奥までを見ても、軽く50体の幽霊の姿を確認できるほどだ。

 

「さて、始めるか」

 

僕はそうつぶやくと、先ほど取り出した杖についている鈴を軽く鳴らした。

無機質な鈴の音が、周辺に響き渡っていく。

それに呼応するように、先ほどまで廊下にいた幽霊たちは、まるで尻尾を巻くように、外のほうに逃げていった。

これが僕の秘密兵器だ。

鈴の音で邪気を払い、同時にそれに群がっていた幽霊たちを表に追い出す。

浄化ではないため、根本的な解決にはならないがこれを根気よく繰り返していればここの異界化を抑えることができるのだ。

だが、それは応急処置でしかない。

根本的な原因を改善しない限り、異界化は進行する。

手っ取り早いのはこの学院自体を浄化することだ。

そうすれば、異界化はなくなる。

ただし、それには膨大なエネルギーを要する。

そして、浄化をしても原因を改善しなければ、再び異界化をし始めるため効率が悪くなる。

一番望ましいのは、原因を取り除き浄化をすることなのは言うまでもない。

 

(これで時間が稼げれば、生徒会長の猶予時間の繰り上げの可能性も低くなる)

 

とはいえ、それはあくまでも現状の速度で進行していればの話だが。

 

「さて、早くやっちゃうか」

 

僕は校舎内を歩きながら、鈴の音を鳴らしていく。

1階が終わったら2階へ、それを最上階まで続けていく。

 

「よし、これで一通りは大丈夫か」

 

約一時間ほどで学院の校舎内の作業は終わった。

今回の見回りは、僕に様々な収穫をもたらしていた。

例えば、どこが一番ケガレがひどいかなどが一番大きなものだと言っても過言ではない。

何せ、一番ひどいところを重点的に対処していけばいいのだから。

 

(まあ、トイレの中に入るのはさすがに堪えるけど)

 

トイレという場所柄、負の気である邪気が溜まりやすいため、そういった作業をするのに避けては通れない場所なのだ。

そういった理由で女子トイレに入ったわけだが、女子はいないのだから問題はないだろうと、僕は自分に言い聞かせた。

 

(しかし、トイレ以上に生徒会室がひどかったな)

 

やはりというべきかなんというべきか。

異界化している元凶の生徒会長がいる場所である教室と生徒会室が特に穢れが酷かった。

他の場所では邪気がさらに濃くなってできた存在である穢れはそれほど見られなかったが、生徒会室はそれが非常に多い状態なのだ。

穢れは邪気よりも祓うのが難しいため、非常に苦労した。

それは生徒会室などの穢れをすべて振り払うのに鳴らした鈴の音が、約500回ほど必要だったことがそれを物語っていた。

 

(とにかく、明日も頑張ろう)

 

そう自分に気合を入れた僕は、足早に夜の音ノ木坂学院を後にするのであった。




今年も残すところあとわずか。
一年間応援していただきありがとうございました。
来年も一年、よろしくお願いします。
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