ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。

連続投稿第三夜です。
今回は微妙に一部登場人物のファンの人から石を投げつけられそうな気がする内容だったりします。
そして、さりげなくオカルト要素がありますので、苦手な方はご注意ください。

それでは、第32話をお楽しみください。


第32話 問いかけと加速

「おはよう……」

「おはよう、高坂さん……って、大丈夫か? なんか覇気がないようだけど」

 

翌日(厳密には今日だけど)の朝、一足先に教室で勉強をしていると、どこかげっそりとした高坂さんが教室に入ってきた。

 

「大丈夫。ちゃんと勉強してるもん」

 

そう言って机に突っ伏したまま、高坂さんは動かなくなった。

寝ているというより、燃え尽きた感のほうが強そうな気もするけど

 

(初めて二日目で根を上げているようで大丈夫かな)

 

「ふぁ~」

「珍しいですね、香月君が欠伸をするなんて」

 

どこか不安に思いながら高坂さんを見ていると、思わず口から出てきた欠伸に、高坂さんよりも一足先に来ていたのか、園田さんが驚いた表情を浮かべながら声をかけてきた。

 

「ちょっと古典の勉強をしててね」

 

嘘は言ってない。

何せ、ちゃんと勉強はしたのだから。

 

「穂乃果も少しは香月君のことを見習ってほしいものです」

「まあ、人間すぐには変われないものだから。……いい意味でも悪い意味でもね」

 

何とも言えない表情で高坂さんのほうを見ながらつぶやく園田さんに、僕は視線を彼女たちから外すと窓の外を見ながらつぶやいた。

 

「あの、それはどういう―――」

「香月君! お客さんだよ」

「あ、はい! ただいまっ」

 

園田さんの問いかけを遮るようにクラスの誰かが僕を呼んだので、僕は席を立つと駆け足で訪問者がいるであろう廊下のほうに向かった。

 

「生徒会長?」

「ちょっといいかしら。話があるのだけれど」

 

拒否はさせないと言わんばかりの生徒会長の表情に、僕は頷くことで答えた。

それを確認した生徒会長は、僕に背を向けるとそのまますたすたと歩き始めた。

そのあとを僕は静かに追うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

「失礼します」

 

案内されたのは生徒会室だった。

中に入るがそこに人の姿はなかった。

 

(邪気と穢れはそれほど溜まってないみたい)

 

今から数時間ほど前に取り払ったので綺麗な状態だったが、夜になればここは邪気が濃く溜まって穢れが発生し始めているだろう。

 

「それで、用件は何ですか?」

「これを返しに来たのよ」

 

本題を切り出す僕に、生徒会長が差し出してきたのは先日生徒会長の妹に預けた僕の学院証だった。

 

「ありがとうございます」

「一つ聞いていいかしら?」

 

生徒会長から僕の学院証を受け取ると、まだ話は終わっていなかったみたいで鋭い視線のまま生徒会長は言葉をつづけた。

 

「あなた、一体何者?」

「……すみません、質問の意図がわかりかねるんですが?」

 

突然投げかけられた問いかけに、僕は首を傾げながら意図を尋ねた。

 

「あなた、ただのテスト要因の学院生ではないわよね」

「いえ。ただのテストで呼ばれただけですよ」

 

生徒会長の視線は一向に鋭いままだ。

 

「あなた、先日強盗犯を捕まえたそうね」

「ええ。悪運でも強いんですかね? 最近そういった事件にばかり鉢合わせするのは」

「その時に、それを妹に預けて、私に渡せと言ったのは間違いないわね?」

 

肩をすくませながら冗談交じりに言った僕の言葉を無視して、生徒会長は疑問を投げかけてきた。

 

「間違いないですが、何か問題でも?」

「あなた、どうしてその子が私の妹だって知ってるのよ?」

 

(なるほどそういうことか)

 

僕はそこで生徒会長の言わんとすることがわかった。

あの時点では面識のない僕が、彼女が生徒会長の妹であることを知っているはずがない。

それを知っているのだとすれば、前に一度会ったことがあるとなる。

 

「私、この間変な男の人におかしなことを言われたのよ。その時の男の人は、あなたなの?」

「……」

 

鋭い視線の中にどこかおびえたような感情を放ちながら、生徒会長は僕から距離を取り始めた。

それは普通の人間であれば当然の反応だ。

命を狙っているような人から逃げようとするのが当然なのだから。

 

「いいえ。何のことだかさっぱり分かりかねます」

 

僕の答えはとぼけることだった。

 

「それじゃ、どうして」

「園田さんから聞いたんです。妹さんに会ったって。その時に話してもらった特徴から、彼女があなたの妹だと判断しただけです」

 

これが僕の切り札だった。

園田さんからは実際に生徒会長の妹と会ったということは聞いている。

なので、仮に園田さんに確認をしてもウソがばれる可能性は低い。

そんな僕の応えに、納得がいったのか小さく気を吐き出した。

 

「そう、ならいいわ」

「それじゃ、失礼します」

 

生徒会長の一言に、僕は一礼すると、そのまま生徒会室を後にしようとしたところで

 

「あ、すみません。あと一つ」

 

僕は踵を返すと、生徒会長に一つという意味を込めて右手の人差指だけを立てながら近寄った。

 

「何? そろそろ予冷が鳴るから手短に」

 

要件を話すように急かしてくる生徒会長に、僕はそのまま直球で言うことにした。

 

「あなたが園田さんにされた主張”A-RISEやμ'sの皆が素人にしか見えない”についてですけど」

「私は間違ったことは言ったつもりはないわよ」

 

訂正するように言われるのかと思ったのか、生徒会長は険しい表情で断言した。

 

「いえ、別に。私も同じことを思ってましたから」

「え!?」

 

よほど僕の返事が予想外だったのか、生徒会長は目を見開かせて驚いたような表情を浮かべながら声を上げた。

 

「彼女たちの実力は、プロから見ればまだまだ素人レベルなのは揺るがない事実です。初めて意見が合いましたね」

 

よくよく考えてみると、これが僕と彼女の意見が一致した瞬間なのかもしれない。

 

「尤も私は、彼女たちの力を上げていくために尽力しています。そして、あなたはそれをせずに切り捨てる……そこが私の貴女の違いですよ」

「別に見捨ててなんか」

「ならば、なぜあの時にアドバイスをしなかった? 問題点を言わなかった? それこそが私が言ったことが正しいことである証拠ではないのか?」

 

僕の問いかけに、生徒会長は再び口を閉ざしてしまった。

視線は鋭いままこちらをにらみつけるような目で見ているだけという、どうしようもない拮抗状態になってしまった。

 

(ここが潮時か)

 

時計を見れば予冷5分前。

これ以上続ければHRに間に合わなくなる。

 

「まあ、いいです。それじゃ、僕はこれで」

 

なので僕は話を切り上げると生徒会長に一礼をして、そのまま生徒会室を後にした。

 

(これでまたカードを切った。これで少しでも変わる予兆が出てくれればいいんだが)

 

生徒会長を変えるために、見つけた矛盾点を突いていくというのは、我ながら実に性格が悪い。

だが、そうでもしなければ彼女は自分の問題点に気づかない可能性が高いのだ。

意外と自分の欠点というのは自分では見つけにくいもの。

見つけても、それは欠点の一部であり、本体はまた別にあるということがざらにあるのだ。

そして、その欠点をわからせることで、取る対応は人によって様々。

直そうと尽力する者もいれば、開き直る者もいる。

後者の人間はどうしようもないので放っておくのが僕の主義だが、前者であれば、ちゃんとわからせれば変えていくきっかけになる可能性が高いのだ。

そういう場合には、僕はできる限り協力していくようにしている。

そして生徒会長は、おそらく前者の部類だ。

 

(何かあるはずだ。生徒会長の致命的な問題点が)

 

そこさえ見つけられれば、今ある問題は解決できるのだ。

 

(まあ、焦らずに探していくとするか)

 

猶予期間は刻一刻と少なくなっている中、僕は冷静に観察を続けることにするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、僕たちは屋上にいた。

夏の季節となったこの時期、早くもセミの合唱が始まっていた。

 

「夏だね」

「そうだね」

「燃え尽きるまで行くわよ!」

 

そんな屋上で、練習着に身を包んでいる矢澤先輩に星空さんと高坂さんの三人を、僕は古典の参考書を片手に持ちながら見ていた。

 

「三人とも、後で東條先輩に地獄を見せられ……って、聞いてないよね」

 

忠告をしようとしたが、全く聞いているそぶりを見せなかったので、僕は静かにため息をつく。

説明するまでもないが、東條先輩によって、昼休みもテスト勉強をすることになっている。

当初は僕も勉強をするべく部室に向かおうとしていたのだが……

 

『いい? スクールアイドルのプロデューサーなんだから練習はするべきよ! え? 希が怒るんじゃないかって? 何言ってるのよ、希に怯えているようでプロデューサーなんて勤まらないわよ!!』

 

と言われて、ここまで連れてこられたのだ。

参考書だけでも持ってきた自分をほめたいぐらいだ。

そんなこんなで、三人が大きく息を吸い込んだ時だった。

 

「何をしてるん?」

『っ!?』

 

彼女たちに投げかけられた東條先輩の声に、三人が固まった。

 

(あーあ、言わんこっちゃない)

 

僕の言っていた通りのことが現実になろうとしている中、僕は心の中で他人事のようにつぶやいた。

まあ、実際に他人事なわけだが。

 

「え、えっと……体を動かした方が少しは勉強が捗るかなーっと思って」

「わ、私はこの二人と香月に無理やり連れてこられただけよ」

 

まるで鬼のような雰囲気を漂わせながら出入り口のドアから屋上に出てくる東條先輩に、高坂さんたちは恐怖に震えながら体を寄せ合うと釈明し始めた。

 

(僕を巻き込むなよ)

 

完全に僕は被害者だ。

 

「あー! ひどいにゃ! にこ先輩が最初に誘ったのに!」

「そうだよ! 希先輩の目に怯えているようじゃ、アイドルは務まらないとか――」

「別にええやん、そんなこと」

 

ものすごく惨めな言い争いを始める三人に東條先輩の冷たい声が止めさせた。

 

「どうせ四人まとめてお仕置きやから」

「あ、あの? その四人って僕も入ってます?」

 

東條先輩の言葉が聞き間違いであることを祈りつつ、僕は先輩に尋ねた。

 

「当然やよ。香月君も部室に来なかったんから、同罪や」

「そ、そんな……」

 

気が付けば、僕は東條先輩に追い込まれるような形で、三人のほうへと誘導されてしまった。

まさしく絶望しかなかった。

だが、隙を突けば逃げられる。

後は、その隙を見破るだけだ。

そしてその時は訪れた。

東條先輩が少しではあるが僕たちから見て右側に移動したのだ。

それによって、出入り口までうまくすれば一直線に駆け抜けられる状態になったのだ。

 

(よし、今………え?)

 

東條先輩が生み出したすきを突く形で、駆けだそうとした僕は、信じられないものを目の当たりにした。

それはほんの一瞬の出来事だった。

 

(今透けて……なかったか?)

 

再び東條先輩の体が透けているように見えたのだ。

しかも今度は何度目をこすってみても、体が透けていた。

その証拠に東條先輩の後ろにある壁がぼんやりと見えていた。

 

「う、うそ……」

 

そして、それが見えていたのかどうかは知らないが、後ろから高坂さんたちの驚きに満ちた声が聞こえてきた。

 

「さあ、ワシワシMAXやよ」

 

東條先輩が両手を僕たちに向けて、不気味にワキワキさせながらこっちに近づいてくる。

気が付けば東條先輩の体は透けてはおらず、ちゃんと元に戻っていた。

 

(この間といい今回といい……本当にどうなってるんだ?)

 

「さあ、遺言があるんなら聞いてあげるよ」

「というか、ただのエロじ――――婆じゃないか」

 

先ほどのことを考えていたため、言ってはいけない余計な言葉を投げかけてしまった。

 

「ほぅ。どうやら香月君にはワシワシだけやなくて、もっと別の物が御所望のようだね」

「いや、いらないですから!」

 

慌てて逃げようとするが、すでに東條先輩の腕によって僕は簡単に捕らえられていた。

 

「わし!!」

「「ぎゃーーーー!!」」

 

器用にも、僕と高坂さんの胸の部分を鷲掴みにした東條先輩は、ワシワシをし始めた。

 

「うーん、穂乃果ちゃんのもなかなかやね。それに香月君のはたくましいわ」

「褒められてもうれしくない! というか、痛い痛い痛ーい!!」

 

男の僕の胸には揉むほどの物はついていないため、つねられているような状態になっている。

それはある意味地獄でもあった。

それから後のことは記憶にはない。

ただ、気づいたら屋上に倒れていたのだ。

 

(東條先輩、おそるべし)

 

僕は東條先輩の恐ろしさを身に染みて思い知るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、寄り道をせずに部室に集まった僕たちの前に姿を現した東條先輩の手には、数えきれないほどの本があった。

その本を僕たちの前に降ろしていくのを数回ほど繰り返すと

 

「今日のノルマはこれやね!」

 

と、両手を脇腹に当てながら言い放った。

 

『お、鬼』

 

どう見ても一日分の勉強量ではない。

 

「あれ? まだワシワシが足りない子がおるんかな?」

『ま、まさか―』

 

一瞬にしてトラウマ級の物となった東條先輩のワシワシを受けるのは絶対に嫌だったので、僕はみんなに倣うように答えた。

実際問題、集中してやればそれほど時間もかからない分量だ。

とはいえ、確実に数日分の勉強量だが。

 

「ことり、穂乃果の勉強をお願いします」

「あ、うん」

 

そんな中、一人思いつめるような表情を浮かべたまま立ち上がった園田さんは、それだけ告げると部室を後にしていった。

 

「どうしたんですか? 海未先輩は」

「やれやれ」

 

誰から見てもわかる程の園田さんの異変に、僕はため息しか出なかった。

 

「それじゃ、ウチは生徒会の仕事があるから戻るけど、さぼったりしたら………分かるよね?」

『も、もちろんです!』

 

園田さんの後を追いかけるように部室の出入り口に歩み寄ると、僕たちに片手を掲げながらワシワシと動かしながら聞いてきた。

どう見ても東條先輩の目は、本気だった。

さぼりでもしたら更なる地獄を見せられるのは火を見るよりも明らかだった。

だからこそ僕達は再び声をそろえて頷きながら答えた。

それに満足したのか、東條先輩は部室を後にした。

 

「それじゃ、頑張ろう! 穂乃果ちゃん!」

「はーい」

「凛もよ」

「はーいにゃ」

 

(行動を起こすには、まだまだ時期尚早だよ。園田さん)

 

東條先輩が出ていったことで、各々が勉強を始める中、僕も積みあがった本に手を伸ばしながら心の中でつぶやいた。

今はまだ生徒会長に手を出すには早すぎるのだ。

ここで手を出せば、どうなってしまうかがわからない。

それを考慮して、決定打となるようなことはせずに、ねちねちと細かい矛盾などを指摘したりしているわけなのだが、自分でもこの行動が正しいのかどうかは分からない。

どちらにせよ、園田さんの行動を止めておくのが無難だ。

それは東條先輩に任せることとし、僕は試験勉強に集中することにした。

僕はそこでいったん区切りをつけるとノルマを解消するべく、勉強の方に力を入れていく。

 

「穂乃果ちゃん頑張って」

 

ふと、南さんの声が聞こえてきた。

 

「もうダメ……」

「限界にゃ……」

「穂乃果!!」

 

本から視線を外して二人のほうを見ると、高坂さんは机に突っ伏して、星空さんと矢澤先輩は浮かない表情で勉強に取り組んでいた。

二人が根を上げ始めたところで、園田さんが高坂さんの名前を呼びながら勢い良く部室のドアを開けた。

 

「あ………海未ちゃん」

 

(ほんの数分のはずなのに、なぜそこまでやつれるんだ?)

 

時間にしても10分には満たない長さだったはずが、まるで一晩徹夜したような顔色の高坂さんの様子に、僕は心の中で疑問を抱いていた。

 

「今日から穂乃果の家に泊まり込みます! 勉強です!」

「うぐ……ことりちゃん」

 

高坂さんに指を突き付けながら告げられる園田さんの言葉に、高坂さんは南さんにすがるような視線を送るが、苦笑するだけで園田さん止めようとはしなかった。

まあ、それが正しいのだが。

 

「香月君」

「高坂さんの場合、そこまでしといた方がいいだろうから、頑張れ」

 

南さんの援護をあきらめたのか、こちらに視線を向けてきた高坂さんに、僕は一刀両断で見捨てた。

 

「三人の鬼っ」

「さあ、行きますよっ」

 

頬を膨らませて両手の人差し指をくっつけたり離したりしながら非難の眼差しでこっちを見てくる高坂さんを引っ張るようにして、園田さん達は部室を後にした。

 

(高坂さんは園田さんに任せておいて充分だろ)

 

星空さんも同じく西木野さんと小泉さんの二人がいれば十分だし、矢澤先輩も東條先輩が適任だ。

つまり、僕のやるべきことは足を引っ張らないようにするべく勉強に励めということだ。

 

試験まで残り五日。

僕は試験勉強と異界化阻止の二つに力を入れていくのであった。




新年あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。
2015年もよろしくお願いします。
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