ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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連続投稿最終夜になります。
これにて応援感謝キャンペーンは終了となります。

今回は説明回になっております。
そして今回で一つの章が終わりを迎えます。
次の章で、ここまでのごたごたに決着がつきますので、楽しみにしていただけると幸いです。

そしてUAがついに5万を突破しました。
本作をお読みいただきありがとうございます。
ささやかなお礼ではありますが、記念小説なるものを執筆中です。
完成し次第投稿いたしますので、今しばらくお待ちください。


第34話 テストと……

「うん。恐らく過労だね。今日は早く帰って寝ること」

「ありがとうございます」

 

保険医の診察が終わり、出された結論は過労だった。

保険医はほかに用があるらしく、すぐに保健室を後にした。

 

「ごめんなさい、希に負担をかけすぎていたのね」

「そんなことはないよ、エリチ。ちょっとした寝不足だから大丈夫やよ。心配してくれてありがとう、エリチ。香月君もありがとう」

 

申し訳なさそうに謝る生徒会長に東條先輩は首を静かに横に振りながら生徒会長と僕にお礼を言ってきた。

 

「僕にお礼を言うよりも、彼女に言ってください。ここまで運んだのは彼女なんですから」

「べ、別に私はっ」

 

突然自分のことが言われたことに驚いたのか、黒っぽい髪を後ろに流すような髪型をした女子学院生が謙遜するように両手を振ることで反応した。

 

「皆もごめんね、心配かけて」

「……それじゃ、僕はこれで失礼します」

 

若干、僕はこの場にいるのが不自然な風に見えてきたので、僕はその場を後にしようと東條先輩たちに一礼をして彼女たちに背を向けた。

 

「待って」

「何ですか?」

 

そんな僕を呼び止める生徒会長の声に、僕はまた何か嫌味のようなことでも言われるのかと思いながら振り返ると、僕の予想とは違い柔らかい笑みを浮かべながら

 

「ありがとう」

 

と、お礼を言ってきた。

 

「別に、お礼を言われることはしてませんよ」

 

そんな予想外のことを言われた僕は、そっけなく答えると再び彼女たちに背を向けてそのまま保健室を後にした。

放課後なのと、テスト前日ということもあり、人の気配がそれほどしない廊下を僕は静かに歩いていた。

 

(あんな表情も、出来るんだ)

 

生徒会長にはかなり失礼なことを考えてしまったが、もしかしたら僕はここに来てから初めて生徒会長のあの表情を見たような気がした。

 

(とはいえ……状況はあまり芳しくない、か)

 

生徒会長の新たな一面を知ることができたのはかなり大きな収穫だったが、事態はかなり深刻なものになってきている。

 

(東條先輩が倒れたのは、ただの過労ではない。霊力の不足による消失現象)

 

それが僕の出した最終的な結論だった。

これが起こる原因は、力を使うための核に欠損があるからだ。

この欠損を治す方法はあることにはあるが、かなりのリスクを伴う。

最悪の場合は治そうとした人諸共、死亡する場合だってあるほどだ。

欠損とはいっても、どこまでその影響下にあるのかも判別ができないため手の出しようがないというのが現状だ。

先ほども説明したように、霊力は通常眠っていれば大抵は回復する。

大体の目安で言えばその人の霊力の総量の4~6割ほど。

 

(それができなくなった原因は、おそらく霊力の過剰使用で、回復の許容範囲を大きく上回ったから)

 

例えば、100の霊力があったとして、回復量を60とした時、一日当たり70の霊力を使っていけば、最初は大丈夫にしろ、いずれは0になる。

このきっかけを生み出したのが、神社での浄化だ。

無意識かそれとも意図的なのかはわからないが、東條先輩は高月家の浄化術式を使って物の怪の浄化を行った。

あの時、僕は東條先輩からすさまじい力の放出を感じていた

それは比喩ではなかった。

現に、物の怪に対して放出する霊力の数倍程の量を使用していた形跡があるのを、僕はこの間確認している。

 

(おそらく東條先輩は、力の出力調整の仕方とかを教えられていない)

 

霊力を譲渡する際に、軽く確認をしてみたので、これは間違いがないはずだ。

通常は、浄化などのやり方を習う際に自然と力の出力量の調整方法も会得していく。

調整の方法は人それぞれ。

水門をイメージする人もいれば、蛇口をイメージする人もいる。

そもそも霊力自体が形のないものなのだから、本人の感じ方によって鍵は異なってくるのだから致し方がない。

東條先輩は恐らく、僕か父さんの浄化の儀式を見てそれを覚えていたのか、それ以外の理由で知った浄化の儀式を行ったがために全力放出での浄化となってしまったのだろうと推測できる。

 

(そして次の原因は絢瀬 絵里)

 

生徒会長は、現在死神化(大量の邪気を発して周囲の人たちに悪影響を与える存在)している。

浄化とは厳密に言えば邪気や穢れなどを自らの霊力と混ぜることで、無害なエネルギーに変換(というよりは中和といった方が妥当だろう)する儀式のことだ。

つまり、邪気や穢れの量によって使用する霊力も変わってくる。

しかも、東條先輩は出力調整の方法を知らないため、常に浄化をしているような状態になっていたと思われる。

 

(そしてそれは、東條先輩が絢瀬 絵里と接触しているときが一番のピーク)

 

何度も繰り返すが、ちゃんと指導を受けている僕たちは、いくら邪気や穢れなどがそばにあろうとも、意識的にそれを浄化していくので、勝手に浄化を行うということはない。

あったとしても、それはちゃんと浄化をやった方がかなりましだと言えるレベルだ。

だが、東條先輩はそれがないので、常に浄化の儀式を意識的に行っているような状態となってしまっているのだ。

もっとも、大規模な浄化に関しては意識的にやらないと不可能みたいだが。

そして学院もそうだが、生徒会長は穢れ自体をまとったような状態だ。

そんな彼女の近くにいればいるほど、浄化に必要な霊力の量も増えてくるのも当然のこと。

そうして、毎日毎日大量の霊力を使用していき、ついに危険領域(レッドゾーン)にまで減少した。

それが今回起きた出来事だろう。

東條先輩の無意識での浄化は奇しくも、生徒会長の死神化の進行を遅らせる枷になっていたのだ。

 

(こりゃ、あの時東條先輩に触らせなくて正解だった)

 

もしあの時生徒会長が東條先輩に触れていれば、浄化によってさらに霊力が消費されていた。

危険領域(レッドゾーン)に到達した状態でのそれは、致命傷にもなりかねない。

とはいえ、現在は僕の霊力を分け与えたので、その問題はほとんどなくなったが。

 

(これは、猶予期間を大幅に繰り上げる必要があるな)

 

心なしか最近生徒会長の死神化の進行速度が、上昇してきているような気がする。

もう、これではどうしようもない。

はっきり言うと、夜に見回りをして邪気や穢れを取り切れなくなってきた。

一部の穢れが凄まじい濃度になっているため、簡易式の浄化では効果が出にくくなっているのだ。

 

(とにかく、今はテストのほうに集中しよう)

 

それさえ終われば、いくらでも策を講じることはできる。

 

「よし、それじゃ、試験を頑張ろう!」

 

僕は自分に気合を入れながら、学院を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、HRはここまで」

「起立、礼」

 

それから数日が経過した放課後のこと。

今日ですべての教科の試験の結果が返ってきた。

 

(さて、部室に……ん?)

 

部室に行こうと荷物をまとめたところで、クラスの話声が聞こえてきた。

 

「ねえねえ、知ってる? 3階の音楽室のうわさ」

 

話をしているのは黒髪を長く伸ばした女子と、灰色っぽい髪の女子に赤い短めの髪の女子の三人だった。

 

「知ってる知ってる。髪の長い女の幽霊が出るんでしょ?」

「おととい、友達のキヨミも見たって言ってた。でも、キヨミはなんだか具合が悪くなったらしくて寝込んでいるんだって」

「まじ? それヤバいじゃん」

「……」

 

その噂話はつい最近されるようになったものだ。

夏という季節を考えると、そういう類の噂は出てくる物であるということは言うまでもないが、これは少しばかり違っていた。

確かに音楽室からは妙な気配を日中感じているし、夜になればそれが一気に強まっているのも認識していた。

これまで何度も対応しようとしたが、色々な気配が混じり合ってしまって対処が難しくなってきているのだ。

これまでは、一体のみの対応を考慮したものだったが、現在では一つの部屋に複数の幽霊がいるようになってしまった。

それは最高で一部屋に数十体の幽霊がいるくらいだ。

そうなれば、少しばかり規模を大きくした浄化を行わなければいけなくなる。

 

(テストが終わったあたりから、この状況になっているのは何か関係でもあるのかな)

 

テストからの解放感がそういうものに影響を与えているのかもしれない。

今現在、この学院にいる幽霊の総数はおよそではあるものの軽く300を超える数がいるはずだ。

 

(ここまで来ると、もうどうしようもない)

 

もはや普通の浄化では、もうどうにもできないレベルにまで異界化は進んでいた。

 

(完全に異界化すれば、昼夜問わずにそこに1時間いただけで最大60%の確率で死を迎えることになる)

 

それは、この学院の廃校にさらにとどめを刺すようなものだ。

それを免れるには、異界化の原因を排除して、大規模な浄化を行う必要がある。

原因の排除はできたとして、大規模な浄化を行うには僕一人ではなく父さんと、巫女でもある母さんの助力が必要になるので、すぐに出来るものではない。

 

(とにかく、早めに対処しよう)

 

そう心の中で決めた僕は、今度こそ教室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

「おはよう……って、重!?」

 

アイドル研究部の部室に足を踏み入れた僕は、部室内の空気の重さに思わず叫んでしまった。

そしてこちらに向けられるみんなの視線。

 

「どうだったんですか?」

「あー、そういうことか」

 

園田さんの問いかけの意図を悟った僕は、鞄の中から一枚の紙を取り出すとそれの表面をみんなに見えるように掲げた。

 

「この通り、何も問題はない」

 

それは僕の苦手科目でもある、古典の答案用紙だった。

ちなみに、遅いがこの学院の成績評価について説明しよう。

ここでは5段階評価制をとっている。

最高でもある5が90点以上、そして赤点である1が39点以下だ。

つまり、39点をとった瞬間に赤点が確定になってしまうということだ。

ちなみに、前の高校では29点以下が赤点という評価方法になっている。

しかし、僕の答案を見たみんなの表情が何故か絶望に染まっていくのはなぜだろう?

 

「問題なくないわよ!」

 

テーブルをたたきながら席を立つ矢澤先輩に、僕は一歩後ずさった。

 

「そうよ。折角みんな赤点は取らなかったのに」

「香月君……信じてたのに」

 

僕に向けられる全員からの冷たい視線。

とりあえず高坂さんたちが赤点をとっていなかったのはよかった。

 

「どこを見てるんだ。赤点じゃないぞ」

 

そう思いながら僕は、少しだけため息を漏らしながら、自分の答案を確認する。

そこには確かに、赤文字で大きく”30”と記入されていた。

 

「あ、そうか。ごめん大事な部分を隠してた」

 

そこで僕は謝りながら持つ箇所を変えてもう一度彼女たちに答案を掲げた。

 

「70点になってる」

「一問20点の配点問題が二つとも採点ミスになっていたから、訂正してもらったんだよ。ちなみに、成績の記録には青文字のほうで登録されてるから」

 

古典の先生も、かなり投げやりになっていたのだろう、一問20点の配点が二つもあったのだから。

 

”古典の赤点率が多くて困る”というのが採点ミスを直して貰った時の古典の先生の話だった。

 

「なんだ、びっくりした」

「もう、ひやひやさせないで」

「ごめんごめん」

 

ぐったりと椅子に座る矢澤先輩と呆れた表情でため息を漏らす西木野さんに僕は平謝りした。

まさか持つ場所ひとつでここまでのことになるとは想定外だった。

まあ、僕が80点をとっていればそんなことはなかったのかもしれないけれど。

 

「これで、全員が赤点じゃなくなったね」

「ということは……」

 

全員が顔を見合わせながら表情を明るくしていく。

全員が赤点を取っていないということは、それはつまりラブライブにエントリーができるということ。

 

「それじゃ、練習着に着替えて理事長室に行こ!」

「うんっ」

「それじゃ、僕はは外にいるから」

 

高坂さんの提案によって、中に入ってからわずか数分で僕は外に出る羽目になった。

 

(もう更衣室を作ってほしい)

 

一度生徒会にでも申請をしてみようかなと、どうでもいいことを考えながらみんなが着替え終わるのを待つこと数分。

 

「よぉし! 今日から練習を頑張るぞー!」

「ら、ラブライブ……」

「にゃ~!」

「にっこにこにー」

 

突然開け放たれたドアから次々にみんなが駆け出してくる。

小泉さんは感無量といった様子でその場にとどまっていたが。

 

「って、廊下を走るな!」

 

廊下を走っていく皆に注意をしながら後を追いかける僕も、十分廊下を走っていた。

もしかしたら自分でも知らないうちに、エントリーを楽しみにしていたのかもしれない。

そんなこんなで、訪れたのは理事長室。

要件はもちろん、正式なラブライブへのエントリーの許可をもらうこと。

 

「それでは……」

 

高坂さんは改まった様子で、静かに理事長室のドアをノックするが、中からの反応がいつまで経っても返ってこなかった。

 

「あれ、いないのかな?」

「どういうことですか!」

 

どうやら来客中だったようだが、どうも様子がおかしい。

中から生徒会長の怒鳴り声にも似た声が聞こえてきたのだ。

 

「な、何?」

 

中から聞こえる声に首を傾げた高坂さんは、何の躊躇もなく理事長室のドアを開けた。

しかも、ばれにくいように中の様子が辛うじて見えるスペースを確保するようにだ。

本当はいけないことだが、中の様子がになるため、僕も高坂さんに倣うように中を覗き込んだ。

理事長室内では生徒会長が理事長の席のテーブルに手をついていた。

ドアの隙間から伺える理事長の表情は、僕が今までで見たことがないくらいに真剣で力強い眼差しだった。

 

「穂乃果ちゃん?」

「香月君、一体何をしているのですか?」

 

そんなことをしていると、途中で追い抜いた南さんと園田さんがやってきて僕たちに疑問の眼差しを向けながら聞いてきたので、僕は一歩引くことで覗けるスペースを作った。

二人は首を傾げながら僕が引いたことによってできたスペースから、中の様子をのぞき込んだ時だった。

 

「ごめんなさい、これは決定事項なの」

 

その時、中から真剣な声色の南理事長の声が聞こえてきた。

何となく。

そう、なんとなくだ。

嫌な予感めいたものを感じた。

そして、それは現実のものとなる。

 

「音ノ木坂学院は今年度をもって、生徒募集をやめ廃校とします」

 

南理事長の一言によって。




現時点をもちまして、ヒロイン希望アンケートの集計をとります。
投票はできますが、中間報告には反映されませんので、予めご了承のほうをお願いします。
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