ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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突然失礼します。
今回よりUAが規定値を達成するごとに、読んでいただいた読者の方へのささやかなお礼として、記念小説を書くことにしました。
内容は主人公の過去の話となっております。
色々と伏線もどきを張っていたりしますので、楽しんでいただけると幸いです。

なお、ネタバレやオカルト要素がふんだんに存在しておりますので、苦手な方はご注意ください。


幕間2(UA通算5万達成記念)

「何かいいことでもあったのか? 浩介」

 

家で食事中、僕に声をかけてきたのは父さんだった。

食事中は一言も話さない主義の父さんが口を開くというのはとても珍しい光景だった。

 

「うん。友達ができたんだ」

「そうか。それはよかったな浩介」

 

僕の報告に、父さんは静かに頷くと優しく微笑みながら祝福の言葉を投げかけてくれた。

思い返せば、これまで友達ができたことはなかったはずだ。

我ながら、実に寂しい学校生活を送っていると思う。

確かに祝福の言葉を送りたくなる気持ちもわかる。

 

「よし、明日の朝は浩介の新しい門出を祝って赤飯にするか」

「それはいいね」

 

二人して明日の朝食についての献立に盛り上がっている様子だったが、僕は深く気にすることもなく料理を口にしていく。

この翌日の朝食の時に、本当に赤飯が出てくるということを知らずに。

父さんと母さんのくすぐったくなるような笑みに見守られるようにして、僕は赤飯を平らげることとなったのは、また別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後の昼休み。

いつもは一人で寂しくとっていた昼食だったけれど、それは一気に変貌を遂げていた。

 

「高月君のお弁当っておいしそうだね」

「そういう君のもおいしそうだよ」

 

昼休みは、人気のない場所で食べるのが僕と彼女の日課となっていた。

ちなみに、ここの学校は保護者からの”給食費が高すぎる”という苦情が来たので給食は一切ない。

数年後に保護者からの”お弁当を作るのが面倒だから給食を出せ”という苦情が来たために給食が復活することになるのは余談だ。

 

「もう。いい加減名前を覚えてよ。私の名前は東―――だよ」

「ごめん。なんだか苗字だと変な言い方をしちゃいそうだから」

 

彼女の名前は、とても独特なものだった。

間違えると、○○登場みたいな言い方になってしまいそうで怖かったのだ。

もっとも、僕が気を付ければいいだけの話だけど。

 

「だったら、名前で呼んでいいよ。私も名前で呼ぶから」

「そんなっ。女子の名前を呼ぶなんて恐れ多いことはできないよ!!」

 

前にテレビで亭主関白な夫が妻の名前を、呼び捨てで呼びながら奴隷のように働かせている場面が強く記憶に残っていた僕は名前で呼ぶことであのような人になるという謎理論を展開していたため、僕は全力で断った。

 

「そんなの私は気にしないのに……だったら、あだ名はどう?」

「あだ名?」

 

頬を膨らませ不満そうに口を開いていた彼女だったが、何かを思い出したのか見を乗り出して提案してきた。

 

「そう。あだ名だったら恥ずかしくないでしょ?」

「確かに」

 

あだ名は友達であれば普通につけているかもしれない。

 

「それじゃ、決まりだね」

「そうだね。えっと……」

 

僕はふと考え込んだ。

内容はもちろん、彼女のあだ名だ。

 

(えっと、彼女の名前は――――だから)

 

「それじゃ、"のぞちゃん"なんてのはどうかな?」

 

彼女のあだ名で出てきたのは、それだった。

 

「それって私の名前からだよね?」

 

首を傾げながら投げかけてくる疑問に、僕は無言で頷いた。

彼女は、そんなあだ名に嫌な顔もせずに

 

「なんだかあだ名っぽくていいね!」

 

と嬉しそうに感想を口にした。

 

(名前の二文字を取っただけの幼稚なあだ名なのにここまで喜んでくれるのは、嬉しいというより少しだけ恥ずかしいね)

 

そんな彼女の姿に僕は、心の中で苦笑するしかなかった。

 

「それじゃ、私は”たっくん”で」

「た、たっくんですか……」

 

のぞちゃんの決めた僕のあだ名に、僕はただただ苦笑するしかなかった。

どう考えても恥ずかしすぎだ。

 

「今考えたんだけどさ」

 

だから僕はのぞちゃんにあることを提案することにした。

 

「この呼び方は二人だけの時にしようよ。だって、さすがに恥ずかしすぎるし」

「むぅ……」

 

僕の提案にのぞちゃんは不満げに頬を膨らませる。

 

「で、でもね。その代わりと言ったらあれだけど今度の日曜日一緒に遊ばない?」

「え?」

 

思わず口から出た代案に、のぞちゃんは目を瞬かせた。

 

(ちょっと急すぎたかな)

 

そんな様子に、僕は自分の出した代案が間違っているのではないかと不安になった。

 

「いいよ」

 

そんな僕にのぞちゃんは笑みを浮かべながら頷いてくれた。

どことなくその表情は恥ずかしげにも見えた。

そのあと、僕達は昼休みが終わるまでの間集まる場所と時間を決めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遊びに行く日当日。

待ち合わせ場所に向かうとそこにはすでにのぞちゃんの姿があった。

ピンク色の上着に白色のスカートを着込んでいるその姿はいつも見ているはずなのに違った感じを思わせる。

 

「ごめん、待ったよね」

「ううん。待ってないから大丈夫だよ。たっくん」

 

待ち合わせ時間には遅れていない。

女性を待たせてしまうのは悪いことだと父さんに言われていた僕は、のぞちゃんに謝った。

でも、のぞちゃんは首を静かに横に振りながら許してくれた。

 

「それじゃ、たっくんのおすすめの場所に連れて行って」

「うん」

 

どちらからともなく、気が付けば僕たちは手を握っていた。

恥ずかしさはあった。

でも、

 

「ぼ、僕たちは友達だもんね」

「う、うん。そうだよね」

 

―――ならば手をつなぐぐらいは当たり前

そんな考えを信じていた僕たちにしてみれば、それは一種の儀式のようにも思えた。

友達でいるための儀式に。

それはともかく、僕たちは歩き出した。

東條先輩を連れて行ったのは、色々な気が集まるところの数々だった。

そしてそこの前に行っては、”ここには幽霊がよく出る”やら”ここには守護霊がいる”などなど。

聞く人がいれば胡散臭そうに顔をしかめる内容だったが、のぞちゃんは興味深そうに僕の話を聞いていた。

その眼はどことなく輝いているようにも見えた。

それがのちに言う、パワースポットの数々だった。

 

 

 

 

 

「ここって神社だよね?」

「うん。神田明神っていうんだ」

 

最後の意味を込めて連れてきたのは自分の家が神主を務める神社だった。

階段を上るコースもあるけれど、さすがに女子をそこに向かわせるのは憚られたので、正面の鳥居から入ることにした。

 

(あの階段は鬼畜だと思う)

 

僕もここに来るときは大体あの階段を利用しているが、笑い話にもならないほどに厳しかったのを覚えている。

とはいえ、最初は上がるだけで息が上がっていたのも最近は特に息が上がることもなくなったので、慣れというのは恐ろしいと思っていたり。

それはともかく、下り坂を下って鳥居をくぐる。

ちょうど参拝者が少ない時間帯だったのだろうか、沢山というほど人の姿はなかった。

 

「僕のお父さんが神主をしてるんだよ」

「へぇ。なんだかすごいね」

 

僕の説明に、のぞちゃんは神社の周辺を見ながらつぶやいた。

それは僕に対して言っているわけではないというのは分かっていた。

神社から発せられるオーラのようなものだということが。

それは幽霊が見えるのぞちゃんだからこそ、わかることなのかもしれない。

 

「あ、ぎゅーたんだ」

「ぎゅーたん?」

 

神社の中に足を踏み入れたところで策の中にいる馬を見つけた僕はとてとてとぎゅーたんへ駆け寄った。

 

「元気だった? ぎゅーたん」

「たっくん、馬だよね?」

 

頭をなでていると後ろのほうから不安そうな声で疑問が投げかけられた。

 

「そうだよ」

「なのに、どうしてぎゅーたんなの?」

 

言われて気づいたが、確かに馬につけるな名前ではない。

でも、僕は胸を張って答えた。

 

「鳴き声が牛みたいだったから」

「そ、そうなんだ」

 

名前の由来を知ったのぞちゃんがひきつったような声色で相槌を打ってきた。

 

(ちょっと引かれちゃった)

 

もしかしたら名前は大失敗だったのではないかと思ったが、もうどうしようもないので忘れることにした。

 

「なんだかすごいね。向こうとはもっと雰囲気が違う」

 

境内に足を踏み入れると、のぞちゃんが感嘆の声を上げた。

向こうというのは、おそらく鳥居をくぐったあたりのことだろう。

 

「ここには色々な気が集まってくるからね。良いものも、悪いものも」

「……折角だからお参りしていこう」

 

境内を見ながらふと父さんがいつも僕に言い聞かせているフレーズを口にすると、のぞちゃんは僕の手を引きながら提案してきたので、僕もそれに応じるように本殿のほうにかけていった。

 

「確か、二礼二拍手でよかったんだっけ?」

「うん、それでよかったと思うよ」

 

まだ朧気ではあったお参りの作法だったけれど、僕はのぞちゃんに頷き返すとお賽銭を入れて二礼二拍手をしてお願い事を心の中でつぶやいた。

”これからも、楽しく過ごせますように”と。

 

「それじゃ、行こうか」

「うん」

 

そして、僕たちは神田明神を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夕方。

周囲がオレンジ色の明かりに包まれる中、僕とのぞちゃんは公園にいた。

 

「ねえ、たっくん」

 

特に何もせずに、ただただベンチに座っていると、のぞちゃんから声がかけられた。

 

「たっくんの言う”力”って、どんなものなの?」

 

それは、純粋な疑問だったようにも思える。

のぞちゃんには、僕が幽霊を見るだけではなく、それ以上の力を秘めていることを話していた。

だから、疑問を持つのも不思議ではない。

 

「えっと、お父さんが言うにはね――――」

 

僕は何のためらいもなく、高月に伝わる力のことを話した。

この時、僕は自分の中で枷のようなものが無くなっている状態だった。

今まで隠していなければいけないことを隠さなくてよくなったという喜びと開放感から七日、それとも初めてできた友達に対する物なのかは知らないけれど。

 

「みたいな感じなんだけど」

「ごめん、よくわからない」

 

一通り話し終えたところで、のぞちゃんから申し訳なさそうな反応が返ってきた。

確かに、普通の人にはわかり辛いものかもしれない。

なにせ、当時の僕ですらあまりその力の持つ意味が分かっていなかったのだから。

 

「えっと、例えば……」

 

何かいい例がないかと思い周囲を見渡していると

 

「見て見て!」

「怖いよ! ―――のかちゃん!」

「怖い―――っ」

 

公園で遊んでいたのだろうか、女の子の声が聞こえてきた。

その声の一部はどこかひっ迫しているような感じだった。

気になって視線を声のした方に向けてみると、そこには木の枝にぶら下がっている女の子と、木の幹にしがみつく二人の女の子の姿があった。

 

(どうすればこういう状況になるの?)

 

全く読めない状況に、僕は心の中で首をかしげた。

 

「どうしたの? って、大変! 早く誰かを呼ばなくちゃ!」

 

僕の視線の先に気付いたのか、のぞちゃんが慌てた様子で声を上げながらベンチから立ち上がった。

 

「たっくん?」

「大丈夫。見てて」

 

そんなのぞちゃんを片手で制しながら、僕はできるだけ安心させるように笑みを浮かべながらのぞちゃんに言葉をかけた。

 

「「「きゃー!!」」」

 

僕は両掌を前の方で合わせたのと、女の子たちが地面に落下し始めたのはほとんど同時だった。

目を閉じていた僕が聞こえたのは、乾いた音と、それと同時に体の中から力がみなぎってくる感じだった。

 

(あの子たちを守ってっ)

 

心の中でそう念じるだけでよかった。

目の前が一瞬白に染まったのを感じた僕は、静かに閉じていた目を開けると、木の根元にはあの三人の女の子たちの姿があった。

三人はいまだに茫然としていた。

それもそうだろう。

地面に落下していたと思ったら、気づいたら無傷で地面に座り込んでいるのだから。

 

「すごいっ。まるで魔法使いみたい!」

 

その光景を目の当たりにしていたのぞちゃんは感極まって僕の手を取りながらピョンピョンと飛び跳ねていた。

 

「ねえねえ、今のってどうやったの?」

「ごめんね、分からないんだ」

 

力の意味すら理解できていない僕が、この現象の意味を説明することも理解することもできる訳がなく、のぞちゃんの疑問には全く堪えられなかった。

 

「あと、ここから離れた方がいいかも」

「どうして?」

 

僕の促しに、はしゃいでいたのが一変しきょとんとした表情で理由を聞いてきたので、僕は周囲を見ながら言葉をつづけた。

 

「大人の人が集まってきてる。このままだと僕たちは悪い人にされちゃうから。だから、逃げようっ」

「うんっ」

 

ちなみに、当時の僕にとって大人はほとんどが敵だという妙な設定を作っていた。

なので、のぞちゃんの手を取って逃げているときは、当時有名だったアクション映画の主人公のような感じを抱いていた。

ちなみに、この時に使った力が後の”気功術もどき”の原型になるわけだが、それはまた別の機会に話すとしよう。

 

 

 

 

 

「今日は楽しかったよ」

「ありがとう、のぞちゃん」

 

公園から逃げ出した僕は、いつもの分かれ道である横断歩道前まで来ていた。

のぞちゃんは横断歩道を渡り、僕は横断歩道を渡らずに右手に折れれば家に着く。

 

「それじゃ、また明日学校で」

「うん。またね、たっくん」

 

僕たちは笑顔で手を振りながら別れた。

また明日も会えると信じて。

 

(僕、今がとても幸せ)

 

初めて力のことを受け入れてもらって、そしてできた友達。

いまだにクラスの皆は僕を無視するけれど、それでも僕はこの幸せをかみしめていた。

お昼休みには一緒にお弁当を食べ、放課後は一緒に本を読む。

そんなささやかな幸せがこれからもずっと続くと僕は思っていた。

そう―――

あの事件(・・・・)が起こるまでは。




次はUA通算6万を達成したときになります。

これからも本作をよろしくお願いします。
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