ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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大変お待たせしました。
今回より新章に突入しました。

ここでは、ようやく絵里と主人公との確執に決着がつく予定です。



第7章 『一つの区切りと真なる始まり』
第35話 次の手


「音ノ木坂学院は今年度をもって、生徒募集をやめ廃校とします」

 

その言葉を聞いた時、僕はいったいどんな表情をしていたのだろうか?

驚きに満ちたものなのか、それともいつも通りの表情なのか。

それがわからないほど、自分の中には様々な感情が入り乱れていた。

だが、きっと僕はこの状況の中、こう口にするだろう。

”ついにこの時が来たか”と。

 

「二週間後のオープンキャンパスのアンケート調査でよい結果が出なければ、ここは廃校確定ということになったみたい」

 

先ほどまで理事長に聞かされた話の概要を、後から来た矢澤先輩たちに伝えた。

その反応は様々だった。

 

「そ、それじゃ、本当に私たち後輩ができないんですか!?」

 

と、焦燥を感じながら声を上げる者

 

「そうなるわね」

 

冷静になろうとしながらもどこか声が震えている者

 

「まあ、私は別にそれでもいいけど」

 

戸惑っているのを隠そうと、壁のほうに顔を背けて髪の毛をいじりながら口を開く者。

実に様々な反応だった。

ただ、共通しているのは誰もがその結果を望んでいないことと

 

「とにかくオープンキャンパスでライブをやろう!」

「うん、そうだね」

「今は、それしかないですね」

 

そして誰もが希望を失っていないということだ。

 

「でも、そうは言っても曲のほうは全く聞いてないわよ」

「真姫ちゃん、曲のほうはどうなってるのかな?」

 

戸惑ったような表情を浮かべた矢澤先輩の言葉を受けて、西木野さんのほうを見ながら小泉さんが聞くと西木野さんは

 

「もう元の曲はできてるわ。ただ……」

「ただ、何よ?」

 

言葉を濁して視線を逸らす西木野さんに今度は矢澤先輩が目を細めて口を開く。

 

「ライブでやる曲のほうができてないのよ」

「はぁ? 何それ」

「もしかして、編曲みたいなもの?」

 

目を細める矢澤先輩の反応に、僕は西木野さんへのフォローのつもりで言葉を変えて訊ねてみると、西木野さんは静かに頷いた。

それを見た矢澤先輩は今度はこちらのほうに視線を向ける。

その視線は”どういう意味よ?”と聞いているようにも思えた。

 

「主旋律や歌メロにそれ以外の音をくっつけて幅を持たせる……まあ、アレンジみたいなものだよ」

 

僕の説明に矢澤先輩はおろか高坂さんまで首を傾げだしてしまったのを見た僕は、どう説明したものかと考えを巡らせる。

 

(具体的な例を言った方がわかりやすいか)

 

そのような結論に至った僕は、西木野さんの場合の具体的な例を使うことにした。

 

「西木野さんの場合、主旋律はピアノと歌だから、それ以外の音……ギターとかドラムの音は編曲によってつけられたものとなるわけ」

 

それは、彼女から送られてきたメールに添付されていたデータから見ても間違いないだろう。

 

「それはともかく、編曲のほうをはやく完成させるようにお願いしてもらっていい?」

「え、ええ。わかったわ」

「それじゃ、とりあえず練習だけでもしちゃおう」

 

歯切れの悪い西木野さんをしり目に、僕は、皆に言えたのは練習をするということだけだった。

 

(それにしても、さっきの彼女は……)

 

全員が練習場所である屋上に移動する中、僕は先ほど理事長室で会った生徒会長のことに考えを巡らせる。

生徒会長は死神だった。

もちろんそれは比喩だが、生徒会長を纏う黒い穢れは、周囲へと浸食(穢れがその場に定着し、普通の浄化では取り除くことができない状態のこと)していた。

それは先程、生徒会長がいた理事長室の穢れの量が増加したことを見て間違いない。

 

(穢れは簡単に浄化したけど、あきらかに悪化してるよな)

 

これまでは生徒会長が長時間いる部屋のみが浸食されており、それ以外の場所に関してはその余波でしかなかった。

現に生徒会室や生徒会長のクラスと思わしき教室は、穢れに浸食されているのだから。

それが、今はどうだろうか。

今ではほんの数分程しかいなかった場所にもかかわらず、穢れに浸食されている状態だ。

それだけならまだいい。

一番最悪なのは

 

(ただ普通に通った場所が、浸食される状態になること)

 

簡単に言うと、自宅から学院までの通学路を歩くだけでそこが穢れに浸食されてしまうということだ。

 

(これ以上は無理……か)

 

今はまだ間接的に影響を及ぼしているが、それがいつ直接影響を及ぼすことになるかがわからない今、このまま彼女を放置することはできない。

 

「はぁ……」

 

ため息を漏らしながら、僕はポケットから携帯を取り出すと会長の番号に電話をかけるのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

周囲の道がオレンジ色の明かりに照らし出される中、金色の髪の少女……絢瀬 絵里は自宅に向けて足を進めていた。

 

(どうすればいいの?)

 

彼女の脳裏によぎるのは、数時間前に理事長から言われた言葉だった。

 

『音ノ木坂は生徒募集をやめ、廃校とします』

 

彼女としても、廃校という結末だけは避けたい。

では、どうすればいいのか?

そこが一番の問題だった。

 

(彼女たちを認める訳にはいかない)

 

一番の思い浮かべたのは、同じ目的で動いている七人の少女達の姿。

彼女達のダンスのレベルが低すぎるという理由から、彼女はそれを認めるわけにはいかなかった。

そしてもう一人の顔が浮かぶ。

それは、自分に対して失礼な言動を繰り返す青年だった。

 

(なんで彼の顔が)

 

そんな彼女の思考を遮ったのは、突如目の前に立ちはだかるようにして現れた人物だった。

 

「あなたはッ!」

 

その人物の姿は彼女にとっては忘れられないものだった。

 

「数日ぶりですね。絢瀬絵里様」

 

柔らかい口調で挨拶をする白のフード付きのコートを纏った人物はその口調とは裏肌に、感情を感じさせない声色だった。

 

「な、何しに来たのよっ」

「何を? と言われれば一つしかないと思いますが」

 

声を荒げて目の前の人物から感じる恐怖を払拭しようとしたが、それも機械のように感情を殺した声で無駄なものとなってしまった。

 

「非常に残念ですが、あなたはこの土地に置いてさらに危険な存在として認められました。よって、あなたに残されていた猶予期間(モラトリアム)を大幅に繰り上げさせていただきます」

「っ!!」

 

その言葉に、彼女は息をのんだ。

まるで壁と壁の間に自分が挟まれているかのような圧迫感のようなものを感じながら、彼女は先の言葉を待つしかなかった。

 

「あなたの猶予期間(モラトリアム)は、三日後の17:00(ヒトナナマルマル)です。どうぞ、悔いのない時間を送ってください」

「待ってっ!!」

 

要件を伝えるだけ伝えた男性が、自分に背を向けて立ち去ろうとするのを絵里は呼び止めた。

足は震え、声にも怯えの色が見える中、彼女はどうしても聞いておきたいことがあったのだ。

 

「どうして私なのっ」

「………」

 

その問いかけに、男性はため息をつくように静かに息を吐き出すとおもむろに絵里のほうに振り返った。

 

「それは、ご自分の胸に手を当てて考えてください」

 

それが、男性の答えだった。

絵里が目を瞬かせている間に、男性は風のごとくその場を去って行くのであった。

 

「一体、どうすれば」

 

結局のところ、すべての問題はそこに集結するしかなかった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「さて……」

 

練習を終え、自宅に戻った僕は、本邸の自室にいた。

というのも、曲の編曲をするためだ。

 

(曲のコンセプトはまとまった。後はそれを形にするだけ)

 

コンセプトは”真の始まり”。

μ'sはすでに始まっているが、今のこの状況を考えれば、真の始まりであると考えられる。

スクールアイドルを始めるきっかけが”廃校阻止”で、この曲をお披露目するステージの催しであるオープンキャンパスで、廃校か否かが決まる。

それが主な理由だった。

 

(曲調は明るいものにするとして……)

 

とりあえず、ピアノの音を聞きながら、ドラムやベースなどの音色を肉付けしていく。

そのあとは園田さんからもらった歌詞を曲に埋め込んでいくことで、”曲”として完成形に近づける。

 

「よし、終わったっ」

 

コンセプトさえ決まれば、あとは簡単な単調作業だ。

曲作り(特に音色の肉付け作業)は理屈ではなく直感がものをいうことが多い。

もっとも、音楽の基礎知識を学んでいることが絶対条件だが。

 

(ボーカルは……入れなくていいか)

 

これは彼女たちの曲だ。

つまり、彼女たちの歌い方が正しいことになるのだ。

それに私が変な正解もどきを用意するのは彼女たちの長所を伸ばす面で見れば、あまりよろしくないことだ。

 

(まあ、彼女たちに歌わせてみて細かいところは調整するとしよう)

 

そう結論付けた僕は、完成した曲をCDに焼くとそれをケースにしまい、鞄に入れた。

僕が自分で渡すつもりだ。

僕がDKであることが皆に知られる危険性もあるが、それは問題ないだろう。

なにせ、西木野さんの依頼メールにはμ'sというグループ名とプロデューサー(まあ、僕なわけだが)が使っている携帯のメールアドレスも明記されているのだから。

理由など、どうとでも作れるものだ。

 

「さてと、次の仕事をやりますか」

 

僕にはまだ仕事がある。

僕は弓を片手に窓を開けると、予めおいておいたバルコニー用の靴を履いてバルコニーに出た。

バルコニーはやや広め(2~4畳程度)で、真ん中のほうに木製のテーブルといすが置かれている。

使うことは早々ないが気分転換には十分だ。

普段はビニールシートで覆って雨風に触れないようにしている。

バルコニーに出た僕は、上のほうにある屋根の端のほうを見ながら軽く片足とびの要領でジャンプをする。

もちろんこれは準備運動のようなものだ。

そして僕が何をしようとしているのかは、言わずもがなだろう。

 

「ふっ!」

 

短い掛け声とともに、僕は大きく飛び上がると屋根の上に着地した。

 

「大成功っと」

 

うまく着地できた喜びを噛みしめながら、僕はさらに屋根の上のほうに向かって足を進める。

屋根の傾斜はやや急だが、転げ落ちるほどではない。

そもそも屋根に上ること自体過去に何度も経験し、そして成功させている。

もっとも、父さんたちにはその都度、辞めるようと怒られているが。

 

閑話休題

 

屋根の頂上に到着した僕は、弓と一緒に持ってきていた小型の双眼鏡をのぞき込んだ。

 

「彼女の家はこの方角だったはず」

 

やるのは覗きではなく、ターゲットの位置特定。

さすがの僕でも数キロも離れた場所をはっきりと識別することは不可能だ。

今回は穢れを放っているのでそれを使えば特定できるのだが、どういうわけか住宅や建物からは穢れの反応を感知することができなかったのだ。

こうなると、目測での特定しか術はない。

 

(白い外壁に、青い屋根……見つけた)

 

僕が狙うのは、数キロほど離れた白い外壁の二階建ての一軒家だ。

そこは”絢瀬 絵里”の自宅だ。

狙いさえ定まればもう双眼鏡は必要ない。

たとえ識別ができずとも、対象が分かればそれが目印となり、それを狙うだけでよくなる。

今回の目印は屋根の色と、その付近に建てられている電柱などだ。

もっとも、これが人に対してなら大幅に距離を縮める必要があるが、今回の場合は万が一当たっても人的被害が限りなくゼロに近いので距離が離れていても問題はない。

そして僕は、持ってきていた弓を前方に構えた。

矢はない。

だが、矢をつかむようなしぐさをするだけで青白く光る矢が現れた。

それが高月家に伝わる霊矢と呼ばれる矢である。

霊感がない普通の人には、それを目にすることができない代物で、対象以外に当たってもその人物をもすり抜けるらしい。

父さん曰く、心で生み出された矢のために心の中で射たいと思った人物にしか当たらないらしい。

だからこそ、今回は人に当たっても問題はないのだ。

そして、僕が行おうとすることは霊矢を絢瀬家に向けて放ち、浄化することだ。

浄化などの儀式は現場に赴く必要があるが、そのようなことをすれば目立つゆえに大がかりな儀式になってしまうため簡単に行うことはできない。

だが、この霊矢での浄化であれば効率的に浄化の儀式が行えるのだ。

しかもどのような穢れすらをも浄化できるという一石二鳥だ。

もっとも、そのためには毎日霊矢を射る必要があるので、画期的とは言い切れないが今回の場合はこれが最善の策だろう。

 

「……っ」

 

僕はその矢を絢瀬家に向けて放つのであった。

放った矢は見事に絢瀬家の外壁に命中した。

命中した箇所から青白い光が絢瀬家を覆っていくのが見え、その光は次第に弱まっていき数秒後には矢が命中する前の状態に戻った。

 

(絢瀬家から穢れのようなものがあふれ出している様子はなかったからよかった)

 

僕はほっと胸をなでおろす。

彼女には妹がいる。

もし生徒会長の穢れによって彼女に何らかの被害が出ていれば、それは由々しき事態だ。

だが、今のところそれは起こっていない。

ひどい酷いとは言いつつも、自宅から穢れがあふれ出ていないのであれば、まだ抑えられる可能性はある。

 

(臨界点まであと三日)

 

三日という長くも短い日にちで、僕がしなければいけないのは、死神化の進行を止めること。

 

(どうやってする?)

 

一番の問題はそこだった。

僕がたとえ策を巡らせようとも、彼女を救うことはできない。

僕のように”型にはまった”動きしかできないタイプには。

もしできるのであれば、それは……

 

(型破りな方法を行う人物だけ)

 

そして、それが可能な人は、僕の思いつく限りで一人しかいない。

 

(高坂穂乃果か)

 

スクールアイドルの発起人であり、リーダーでもある彼女。

彼女ならば、この局面を一気に好転させる奇抜な作を思い浮かべることができるかもしれない。

 

(とりあえず、今のところは現状維持で行くか)

 

それが、僕の出した最終的な答えだった。

 

 

猶予期間まで、後三日




ヒロイン決定アンケートですが、今のところ次々章でいったん締切とさせていただく予定ただく予定です。

一人何度でも投票はできますので、よろしければ、活動報告か自サイトのほうへどうぞ。


感想やアドバイスなどお待ちしております。
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