ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
大変お待たせしました。

今回は、オカルト要素が存在しますので、苦手な方はご注意ください。


第36話 悪意と予言

「曲ができたって、本当っ!?」

「え、ええ。今朝届いてたのよ」

 

高坂さんの迫力に圧されるように答える西木野さんに、僕は心の中で一息つく。

場所が場所ならば汗を拭う仕草も入れるところだが、ここでするのはやめておこう。

 

「早速、聞こう! 今すぐ聞こう」

「きゃぁ!?」

「落ち着いてください、穂乃果。ここじゃなくて部室で聞きましょう。人の迷惑にもなりますし」

 

手を取ってすさまじい迫力で提案する高坂さんに、園田さんが周囲を見渡しながら諭すように声を掛けた。

 

(そう言えば、ここって廊下だったっけ)

 

太陽がこれからさらに上へと昇り始めようとする朝の時間帯。

授業が始まるまで1時間ほどはあり、本来であれば神社などで早朝練習をしているころだが、集合時間の少し前に来た

 

『新曲が届きました』

 

という件名のメールで集合場所が変更となったのだ。

主に高坂さんの”学院で聴かせてっ”というメールによって。

そんなこんなで冒頭に至るわけだが、廊下で大騒ぎをしている僕たちを見た学生たちはどんな目で見るのだろうか?

 

(というより、僕のことは忘れられているよね)

 

終始無言だったから仕方がないかもしれないが、若干寂しさを感じる。

 

(僕って、ここまで影が薄かったっけ?)

 

ふとそんなことを考えてしまうが、目立つことはあまりしたくないしなおかつ今は少しだけ重要な用があるのでこれはこれでよかったのかもしれない。

 

「さて、早く用事を済ませようか」

 

曲もでき、次のライブの計画も整いつつある中、唯一の壁は生徒会を率いる絢瀬 絵里だ。

彼女自身の問題のほうが大きいような気もするが、なんとしてでもライブを行う許可を得ることができなければライブのラの字も出ないのは明らか。

 

(ここは僕の力の見せ所だね)

 

これまで大したことができていない(というよりライブ自体は高坂さんたちの努力が実っただけで、僕はその道を作っただけ)ので、こういうところでプロデューサーとしての役割を全うすることが僕に出来ることだ。

そう考えながら、僕は生徒会室へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、生徒会室についたわけだけど……」

 

上から目線で畳みかけるように言うべきか、それとも下手に出て会長の機嫌を取るか。

この二つの方針のうちどちらをとるのかを決めていないことに気付いた僕はすぐに決めようとするが、これは考えるまでもないだろう。

 

(前者のほうが色々と都合がいいか)

 

今後の展開を考えると、向こうの怒りを買うようなやり口で行く方が、自分に出来る最善の方法であるからだ。

 

『皆、聴いてくれるかしら』

「ん?」

 

いざドアをノックしようと腕を振り上げた僕の耳に、中から生徒会長の声が聞えてきたので、僕はノックするのをやめて続く内容を聞きもらさないように耳を澄ませる。

 

『これから生徒会は独自に動きます。皆で廃校を食い止めましょう』

 

(ふーん。独自行動を認めさせたか)

 

一体どのような交渉を行ったのか、理事長は彼女たち生徒会の独自行動を認めたことに驚きを隠せなかった僕は続きを聞くべく、気配を消してから静かにドアを開けると生徒会室に入り込んだ。

中ではホワイトボード前に立っている生徒会長と、ドア側の奥のほうに座る肩まで伸びた茶色の髪の女子学生と、手前に座る副会長である東條先輩、窓側の奥のほうに腰掛ける青髪を真ん中で分けている女子学生に、その隣に座っている黒髪を腰まで伸ばした女子学生、さらにその隣に腰掛けている銀色の短髪の女子学生の計6名の姿があった。

全員が生徒会長のほうに顔を向けており、僕が入ったことに気付いている様子はなかった。

もっとも、気配を消しているので、よほどのことがない限り、僕は背景の一部にしか認識できないだろう。

……たぶん

 

「それでしたら、もっと楽しいことをアピールしたらいいと思います。伝統や校風でもいいんですが、正直ちょっと堅苦しいなって思っていたんで」

「それだったら制服とかはどうですか? 意外と制服がかわいいと評判なんですよ」

 

青髪の女子学生を皮切りに、次々と案を出していく生徒会メンバー。

ある者は自分の制服のセーターを軽くつまみながら提案をしてみたり、またある者はそれに賛同してみたりと中々に和気あいあいとした雰囲気が流れ始めるが、それとは真逆の方向に進んでいる人物が一人いた。

 

「スクールアイドルも人気があるよね」

「そう言えばここにもいたよね、スクールアイドルっ」

 

銀色の髪の女子学生の提案に、話の流れが一気に変わり始める。

 

「そうだ! スクールアイドルにお願いをしてライブを―――「他にはっ!!」えぇっと……」

 

彼女たちの提案を眉をひくつかせながら聞いていた生徒会長だったが、とうとう我慢の限界に達したのか声を荒げた。

その声には若干ではあるが怒りのようなものがあるような気がした。

 

「私たちの意見に問題がありましたか?」

「それは――「合理性の問題だと思うよ」――っ!?」

 

茶色の髪の女子学生が生徒会長に問い掛ける疑問に、会長の言葉を遮るようにして僕が応えた。

もちろん、気配を隠すのをやめて。

今までいないと思っていた場所にいるために、当然のごとく、全員の表情が驚きにそまりやがて……

 

「あなたっ、一体いつからいたのよっ」

 

悲鳴ではなく詰問が飛んできた。

……生徒会長の。

 

「最初のほうから。ちなみにちゃんとノックはしました」

 

聞えないようにだけど。

 

「しましたって……だったらちゃんと声を掛け――」

「それはともかく、制服や楽しいところを紹介するというのも、素晴らしいの意見だけど」

 

生徒会長の言葉をスルーして、僕は制服関連の提案を出していた生徒会メンバーのほうに顔を向けた。

……まあ、生徒会長は視界に入っているのだが見ない方がいいだろう。

顔が般若のごとく怖くなってるから。

 

「それらはすでに他校でもアピールされているからあまりインパクトがない」

「インパクト……ですか?」

 

青い髪の女子学生は生徒会長の顔に気付いていないようで首を傾げながらもこちらに聞き返してくるので、僕は頷きつつ言葉をつづけることにした。

 

「そう。何事もインパクト。他の学園にはない魅力を、うまくアピールすることができるか否かが一番重要。とはいえ、興味がなければそういったものを見ないし、見るであろう人の層も大体区切られてしまうからそういう意味では意味がないと言えるかもしれないね」

 

インパクトもあまりやりすぎると引かれるが、ある程度であればかなり有利になるかもしれない。

 

「興味がなくても、自然と誰もが見るかもしれないものがある。それが……」

「スクールアイドル、ですね」

 

僕の言葉に銀色の髪の女子学生がなるほどという表情で相槌を打つ。

 

「そうっ」

 

両手を叩きながらおもわず大きな声を上げてしまった。

それを気にも留めず、僕はさらに言葉をつづける。

 

「今やスクールアイドルは一つの宣伝……CMのような存在へとなりつつある。スクールアイドルの動画を見てそれを気に入れば自然と学園の名前を調べる、名前が分かれば見た人の知り合いにここが紹介される。例えば、”音ノ木坂学院のスクールアイドルがいいよ”という感じでね。こうして興味を持ってもらえれば、純粋に入学希望者が増える可能性が広がる」

 

これこそが、僕の狙いだ。

現にUTXではこのようなやり方で入学希望者を集めているのだ。

ならばここでもできないことはない。

 

(この子……)

 

そんな中、僕はスクールアイドルの意見を出していた銀色の髪の女子学生のことが気にかかっていた。

彼女を見ていると、体中がまるで電気が走ったように軽くびりびりとしびれてくるからだ。

しびれるとはいっても肌が日焼けしたようにひりひりするような感覚が近いかもしれない。

それはともかく、このような感覚を一言でいうのであれば”悪意”だろう。

それが何に対してかはわからないが、彼女は現在何らかの悪意を秘めている可能性があるということだ。

人の悪意を見ることができるのも僕の力のようで、これのおかげでプロデューサーでの活動が非常にうまくいっている。

アイドルともなればいろいろな場所に害虫がおり、そいつらは表向きは善良ぶるので注意していないとあっという間にアイドルの花を散らされてしまうことになるのだ。

アイドルの世界は無法地帯。

そんな世界で防御率(力ともいうが)が一番高いと言われているのが僕であり、実際にこれまで数多の害虫を駆除したり追い払ったりしてきた。

それを可能にしているのが、僕の悪意を見ることができる力のおかげなのだ。

これさえあれば、たとえ善良な人間を装っても一発で悪意があるか否かを見分けることができるのだから。

そんな僕の力が彼女に反応を示したのだ。

他の誰かという可能性もあるので、それを確認するべく僕は彼女に声を掛けてみることにした。

 

「そういう意味では君の案は素晴らしいともいえる。まあ、ここのトップがあれだから実現するのは難しいかもしれないが、会計という役職なのにこれを思いつけたところはすごいと思うよ」

「ありがとうございま……あの、私役職を言いましたっけ?」

 

僕の賞賛に、銀色の髪の少女は一度は頭を下げてお礼を言おうとするが、不審な点に気が付いたのか目を瞬かせながらこちらに尋ねてきた。

 

「いや。ただそれっぽい人だと思ったから言ったまで」

 

その問いかけに僕は心の中でほくそ笑みながら応える。

本当は適当に言ってみただけだが、それでも二つも情報を手に入れることができたのは幸運に近かった。

 

「それでっ。一体ここに何の用?」

「あっ。すみません、大事な要件を忘れてました」

 

大げさに両手を叩きながら、僕は生徒会長の前に一枚の用紙を差し出した。

 

「これは……」

「オープンキャンパスでの部活紹介の申請です」

 

オープンキャンパスなどでは部活紹介の場が大抵の場合は設けられている。

無論、すべての部活ができる訳ではないが、アイドル研究部にもその資格があるのは明らかだ。

そこで、先手を打つべく申請用紙を提出しに来たのだ。

 

「受け取っていただけますよね?」

「………」

 

言葉の裏に受け取れという意味を込めて訊ねる僕に、生徒会長は無言でこちらをにらみつける。

まさしくけん制し合っている状態だ。

そんな長く続いたようにも感じたやり合いも、

 

「わかりました。受け取りましょう」

 

生徒会長が折れてくれたことですんなりと幕引きとなった。

 

「ありがとうございます」

 

やけにあっさりと引き下がる生徒会長に、僕は不自然に思いながらも一礼するとドアのほうへと歩いていく。

 

「あ、そうでした」

 

ドアの前で足を止めた僕は生徒会長のほうに振り向く。

 

「生徒会長、一つだけ忠告があるんです」

「……どうぞ?」

 

いつもの皮肉かと思ったのか鋭い視線を向けてから先を促す会長に、僕は先程視えた未来を予言するべく口を開いた。

 

「”白と茶の交わりし場所にて、言動に気をつけよ。さもなくば大いなる災いが訪れる”」

「は、はい?」

 

突拍子もない言葉だったためか、生徒会長は目を大きく見開かせて聞き返し、隣にいた東條先輩は苦笑を浮かべていた。

 

(うーん。やっぱり格好つけすぎたかな)

 

そして僕は自分の言葉のチョイスに心の中で首をかしげる。

 

「忠告しましたからね」

「あ、待ちなー―――」

 

恥ずかしく感じ始めた僕は、その場から逃げるように再度一例をして生徒会室を出ると、全力で階段を駆け上り屋上へと退避した。

 

「なぜ僕が逃げる必要が?」

 

自分の行動に疑問を抱いたのは、屋上についてから少ししてだった。

時間は授業が始まる20分前。

屋上のフェンスから下のほうを見ると、ちらほらと登校する他の学生たちの姿もあった。

 

(皆の様子から今日は朝練はしなさそうだし、かといって教室に行けば怒られそうな気もする)

 

いくら気づかれなかったとはいえ、抜け出していることには違いないため、確実に怒られる。

主に先輩とは思えないような容姿をしている部長とか。

 

「だったら、たまには堂々とサボるか」

 

その方が例え皆に怒られても納得がいく、自業自得ということになるし。

そんなわけで、僕は屋上からの景色を堪能することにしたのだが

 

「ん?」

 

ふと、下のほうにいる金髪の髪の女子学生の姿が僕の目に留まった。

それは確実に生徒会長の姿だった。

 

(僕の視界外だというのに)

 

気配という生易しいレベルではない”何か”が僕に彼女の存在を気付かせている。

そう考えるだけでも末恐ろしいが、それを本人ですら自覚していないことのほうがよほど恐ろしいことだろう。

よく見ると、会長は周りにいる生徒会のメンバーに案内されるような形でどこかへと向かっている様子だった。

 

「どこに向かって……まさか、ね」

 

方角的には、何故かここで飼われているアルパカがいる場所だった。

そうこうしているうちに、いつの間にかアルパカ小屋の前まで移動していた。

僕があの時視た、会長の未来の光景……それは、アルパカに唾を吐きかけられるというものだ。

僕はポケットから、遠くの獲物を見るときに使う小型の双眼鏡(悪用厳禁)を取り出して会長たちの姿を見続けていた。

 

「あーあ、本当に吐き掛けられてるし」

 

何があったのかは知らない(大体の想像はできている)が、僕の予言通りになってしまったようだ。

唾を吐きかけられたことであたふたとする生徒会メンバー(会長や副会長を除く)様子に、僕は双眼鏡を覗くのをやめてポケットの中にしまった。

 

「……行くか」

 

予言が当たったことを喜んでいいのか、それとも予言通りになってしまったことを残念に思うべきなのか、よくわからない心境で僕は屋上を後にするのであった。

ちなみに、これは余談だが。

 

「あれ、香月君。今までどこにいたの?」

 

教室に戻ってから少しして戻ってきた高坂さんたちの問いかけに、屋上で空を見ていたと答えたところ

 

「さっきまで新しい曲をみんなで聴いてたのに」

「正々堂々と悪びれせずに言い切りましたね」

「あ、あはは」

 

頬を膨らませる高坂さんと、表情は笑顔だが目が笑っていない園田さんに苦笑しかしない南さんと、何とも異様な反応が返ってきた。

次からはちゃんと言ってから離れよう。

そう心の決めた瞬間だった。




ご意見やご感想などがあれば何なりとお聞かせください。

*ヒロインアンケートは継続して実施中です。
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