ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
第40話になります。
時間がかかってしまいましたが、原因は時間がないのと予想以上に長くなってしまったことだったりします。
なんだかいろいろな意味で物議をかもしそうな内容となっております(主に最後のほう)
次回はついに8(9)人目……まで行ければいいなと思っています。
何とか生徒会長をコーチとして迎え入れたことで僕達(主に僕だが)の放課後の動きは大きく変わることになった。
「それじゃあ、暇な僕は生徒会の手伝いに行ってくるよ」
「うぅ、まだ香月君怒ってる」
「あの、先ほどのことは謝りますからいい加減許してもらえませんか?」
僕の言葉に二人とも(南さんもだけど)申し訳なさげな表情を浮かべているが、別に怒ってなどいない。
「許すもなにも、怒ってないんだから。まあ、一緒に練習したりステージに立ったりもしないからそう見えてもしかたがないとは思っているけどね」
「でも香月君、さっきからずっとそれを言い続けているよ」
「………」
南さんの言葉を受けて、昼休みから今までの自分の言葉を思い返してみる。
(確かに、ずっと言ってるような……)
僕としては暇人のように言われたことに頭にきて、嫌味を言っていたつもりだったが、いささか言い過ぎてしまったようだ。
「すまない。少し言い過ぎた」
「いえ、私こそ配慮が足りませんでした」
こちらに非があるはずなのに律儀に謝ってくれる園田さんを見て、僕とは違いとても優しい人なのだと思ってしまう。
「プロデューサーとは何たるかを話したいけど、お互い時間がないからまたの機会と言うことで、新コーチが来るまで柔軟なり何なり自主練をしておくように、他のメンバーに伝えて貰ってもいい?」
「わかりました」
園田さんに伝言を頼んだ僕は生徒会長が待つ生徒会室に向かうべく歩き出す。
「香月君」
「何?」
僕を呼び止める高坂さんに用件を尋ねると両手でガッツポーズをとりながら
「ファイトだよっ!」
とエールを送られた。
そんな彼女に僕は肩をすくませると、再び生徒会室へと歩き出すのであった。
「今日からしばらくの間生徒会活動を手伝ってくれる人です。自己紹介を」
生徒会長の言葉で、生徒会メンバー4名の視線が僕に向けられる。
こうなった経緯を説明すると、生徒会室前に到着した僕がドアをノックすると、あれよあれよという間に中に招き入れられ今に至るものだ。
そして僕は自己紹介を求められている。
(こういうの苦手なんだけどな)
高月の跡取りがそんなので良いのかと思ってしまうが、人のからあまり注目されることはやりたくないのが、″私″の本音だ。
だが、やらないといつまで経っても進まないので、僕は簡潔にすることにした。
「本日から、皆さんのサポートをする香月 高輔です。至らぬ所があると思いますが、よろしくお願いします」
一礼をして自己紹介を終えると、生徒会室の雰囲気がどことなく微妙な物になっていた。
それは、戸惑いのようにも思える。
そんな雰囲気の中、一人が拍手をするとそれにつられるように他のメンバーも拍手をする。
「香月君には前・今年度の予算編成に関する全資料の総チェックのサポートをして貰います。転校前での経験に期待します」
「分かりました」
ここでは僕は一番下の立場だ。
たとえ相手がいけ好かなくても敬語くらいは使う。
それに、生徒会長としては非常に優秀だ。
ぜひとも彼女から何かを学べれば良いのだか。
「それで、資料の総チェックと言っても具体的に何をすれば良いのですか?」
それはともかくとして、僕は具体的にするべきことを聞くべく口を開いた。
恐らくは、予算の使用用途について不審な物がないかを確認するといったものだろう。
……そうであってほしい。
「そうねぇ……予算の使い道に関して不審な箇所がないかを探してもらえるかしら」
僕は予想通りと心の中でカッツポーズをとりながら、″分かりました″と返事をする。
「それじゃ、今日はこれをお願いね」
そう言って渡されたのはやや厚めのバインダー3つだった。
背表紙には『予算申請書』と『決算報告書』そして『四半期決算報告書』と記載されていた。
「それじゃ、皆も始めて」
生徒会長の言葉に全員が返事をすると各々が作業のほうに取りかかる。
僕も生徒会長に指定されたイスに腰掛けると、チェックを始めるべくバインダーを開く。
(それにしても、ここまでうまくいくなんて)
僕は資料に目を通しながら心の中でほくそ笑んだ。
今回の一件の下手人は、小林さんなのは間違いない。
だが証拠がない状態ではどうしようもない。
だからこそ、彼女には登校できないようにしておき、そのすきに彼女が担当した資料を全て確認することにしたのだ。
(まずは不正が行われているという確たる証拠を見つけないと)
僕がやらなければいけないことは次の二つだ。
最初が不正が行われているという確たる証拠を見つけること。
手の感触が違うという物では、気のせいだと言い逃れされてしまえばそれまでとなってしまう。
不正経理が行われていることを証明するには、別の形で言い逃れのしようがない証拠を見つけなければいけないのだ。
次に、それを行った人物の特定だ。
不正経理が行われていることを証明できても、それを行った人物が分からなければ意味がない。
尤も、人物が特定できなくても生徒会を解散させれば良いのでたいした問題ではない。
でもそれでは、悪いことをしていない人が不憫だ。
だから、しっかりと犯人を特定させる必要がある。
(やはり、後者のほうが大変だな)
やるべきことを整理して、改めて難易度の高さを知るところとなった。
不正経理が行われている証拠を見つけるのは、それほど難しくない。
何故なら、こういったことは余罪があることが非常に多いからだ。
二期連続就任した役員によって常習的に。
または、前の役員から手口を伝えられて実行する。
人は甘い誘惑に簡単に負ける。
それが今まで僕が見てきた人達の共通点だ。
だからこそ過去の不正経理を発見することは比較的に簡単なのだ。
だが犯人の場合はそうはいかない。
その人が行ったという確たる証拠を見つけるのは簡単ではないのだ。
(とりあえず、できることからコツコツとやっていこう)
何事もこつこつと行うことが一番だ。
僕は自分に気合を入れて目の前の書類の山に手を伸ばすのであった。
「それでは、私は少し抜けます。後をお願いします」
「いってらっしゃい」
しばらく時間が過ぎて、生徒会長は東條先輩に見送られる形で生徒会室を後にする。
どこに向かったのかなど簡単だ。
「副会長」
「ん、どうしたん?」
手にしていた書類から目を離してこちらを見る東條先輩に、僕はたった今目を通し終えた『四半期決算報告書』を確認済みの書類を置く場所に戻しながら
「私も抜けさせてもらってもよろしいですか?」
と尋ねた。
「ええよ」
その答えは条件反射のように返ってきた。
まさか生徒会長の流れでうっかり承諾してしまったのではないかと不安になる。
「えっと、本当にいいんですか?」
「どうして? ちゃんと今日決められた分は終わってるんだし、もう帰ってもええんよ」
人当たりのいい笑顔で答える東條先輩に、僕は一礼をすると生徒会室を後にする。
(なんだかなぁ)
もう生徒会活動にはかかわらない。
そう決めていたのだが、結局は関わってしまうこととなった。
だが僕の気分は憂鬱であるということでもなく
どこか達成感めいたものさえ感じている。
そんな自分のぶれまくりな感情に苦笑しつつ、僕は彼女たちが練習をしているであろう屋上へと向かうのであった。
「それじゃ、まずは今の状態を知りたいから、踊ってもらえるかしら」
屋上についたときにはすでに期待の新人コーチ(生徒会長だが)による練習が始まろうとしていたようで、その場にいた全員の視線がこちらに向けられるが、”どうぞ、初めてください”と促すように手を差し出すと、僕は出入り口の横の壁に寄りかかる。
まずは彼女たちの実力を知るということにしたのだろう。
(いい判断だ)
実力を知らずして練習メニューは組めない。
当たり前のことのように思えるかもしれないが、これを無視して練習メニューを組み込んだ挙句に挫折するという例も少なくはないのだ。
『はい!』
「リズムは4分の4拍子、BPMは210でお願いします」
生徒会長の言葉に全員が返事を返したのを見計らって、僕はオープンスクールでお披露目となる新曲のリズムを伝える。
どうせ実力を知るのであれば新曲の振り付けを踊ってもらうほうがいろいろといいだろうと思っての判断だ。
「……わかったわ」
まさか事細かに指示を出されるとは思わなかったのだろう、生徒会長の表情が驚きに染まるがすぐに真剣なおももっとなり返事を返してくる。
「それじゃ、始めるわよ」
そう言う生徒会長の表情はいつものしかめっ面ではあったが、その表情にはどことなく生き生きとしているようにも見えた。
こうして始まった現状の見極めのためのダンスだったが、
「にゃぁ!」
「全然だめじゃない!」
屋上に生徒会長のダメ出しの声が響き渡る。
右にステップを踏んだ際にバランスを崩した星空さんが、地面に尻餅をついたのだ。
星空さんはこのメンバーの中では一二を争うほど運動神経がいいはず。
その彼女が転倒するということは問題であった。
(この場合は体が硬いか、曲のレベルが彼女に不相応であるかのどちらかなんだが)
果たしてどうアプローチをするのかと生徒会長の出方をうかがう。
「うぅ~、いつもはうまくいってたのに~」
「ちょっと両足を開いてみなさい」
悔しげにぼやく星空さんの言葉を無視して、生徒会長は彼女の背後にしゃがみ込むと指示を出す。
(あー、なるほど)
生徒会長のやろうとしていることは、両足を左右に広げて前方に体を寝かせる……いわゆる開脚前屈というものだ。
体が柔らかければ全屈した際におなかが地面とくっつき、逆に体が硬いとおなかが地面とくっつかなくなる。
「こう? えぐっ!?」
さて、両足を開いた星空さんだったが、生徒会長に背中を押されて前方に体を倒させたまではよかったが少しだけ倒させた時点で、苦しげな声をあげその動きを止めた。
「嘘だろ……」
その惨状に、思わず目を覆いたくなってしまった。
「全然だめじゃない! よくそれで今までやってこれたわねっ」
「すみません」
もっとも、生徒会長の場合は目を覆いたくなる以前に呆れた様子だが。
星空さんの”痛いにゃー!”という悲鳴がむなしく感じられた。
「その状態でおなかが地面にくっつかせられるくらい体を柔らかくする必要があるわ。柔軟性を上げることはダンスのパフォーマンスにも影響するのよ」
「えいっ」
生徒会長からの叱咤を受ける中、一人だけ軽々と開脚前屈でおなかを地面にくっつけることができる人がいた。
「ことりちゃんすごいっ」
「えへへ」
「感心している場合じゃないわよ! 全員これをできるようにするんだから」
一人軽々と成功させている南さんに賞賛の言葉を贈る高坂さんに続くようにして、生徒会長の声が響く。
「ダンスで人を魅了したいんでしょ!」
『はいっ!』
こうして、今のメンバーの問題点がはっきりとさせることに成功した生徒会長に、僕は心の中で拍手を送っていた。
(さて、原因は分かった。残る問題は”どうやって改善するか”だな)
ある意味これが一番の関門だ。
どの世界でも”指摘”をすることは簡単だ。
ただ、そこから”どのように改善”するのかを考えることが難しいのだ。
「これから筋力トレーニングを始めるわよ。これまでのトレーニングをすべて見直したほうがいいわ」
「……嫌な予感的中」
生徒会等の出した案に、矢澤先輩がぽそっとつぶやく。
「何か言ったかしら?」
「い、いや、そこにいる人も一緒にやるべきだと思うって言ったのよ!」
生徒会長の視線に顔をこわばらせながら、取り繕うようにこちらのほうに指をさしてくる矢澤先輩。
ちゃっかりとこっちを巻き込むところ、ある意味すごいなと感心してしまう。
「そうね。いい機会だから高月君も一緒にやりなさい」
「……わかりました」
絶対に後でプロデューサーとは何たるかの講義をしてやると心に決めながら、僕は一番後ろのほう……小泉さんの隣に移動する。
(しかし筋トレをするのもいつ以来だろう)
友人とちょっとしたおふざけをする際にしたが、それがどこか懐かしく思えてきた。
そして始まった筋トレは腹筋に背筋、腕立てに片足立ちで両手を横に広げたまま体を前に傾けるのを5セット行うという本格的なものであった。
まずは基礎体力をつけていく。
それが生徒会長の方針だった。
筋トレも4セットが終わり、いよいよ最後のセットに突入した。
メンバーのほとんどが足元がおぼつかず、何時ダウンするのかわからない状態になっていた。
(久しぶりにやると結構くるな)
さぼってきたわけではないが、久々にちゃんとしっトレーニングを行うと、若干ではあるが体が硬くなっているなと感じていた。
別にアイドルをやるわけではないのでいいかもしれないが、鍛えておくに越したことはないだろう。
僕以外のメンバーは、ダウンするかしないかのぎりぎりのラインを維持しながら腕立てまで終わらせることができた。
だが、そのバランスが一気に崩れたのは、最後の片足立ちに差し掛かった時だった。
「うぅ……」
隣のほうから苦しげな声が聞こえ始めてきたのだ。
見れば小泉さんの体は大きく揺れておりバランスを崩しているのは明白だった。
そして、この先どうなるのかもまた然り。
「きゃぁっ!」
「っと」
予想さえできていればあとは簡単だ。
後ろに倒れそうになった小泉さんの体を素早く彼女の背後に移動した僕が両肩をつかむことで支えたのだ。
「大丈夫か?」
「ひゃ、ひゃい。大丈夫です」
倒れそうになったことに動揺しているのか、それとも筋トレの疲れからか、声を上ずらせて答える小泉さんに僕はほっと胸をなでおろす。
この角度で倒れれば最悪の場合頭を打っている可能性だってある。
体が資本の僕たち(というよりは彼女たちだけど)は、骨折などのけがなどに細心の注意を払わなければならない。
そういう意味では今の自分のとった行動は、ある意味ファインプレーなのかもしれない。
「かよちん、大丈夫?」
「花陽ちゃんケガとかない?」
息を切らせながら筋トレをしていて体がほてっているためか、顔が赤くさせながら心配そうに声をかけてくる星空さんたちに律義に答えている小泉さんを見ながら思っていた。
「もういいわ」
そんな心配ムードを一気に消し去ったのは、ため息交じりに吐かれた生徒会長の冷たい一言だった。
「このくらいのことができないようでは、スクールアイドル以前にうまく踊るなんて無理ね」
「……」
生徒会長が口にした”無理”という言葉に、僕は自分でも表情がきつくなるのを感じた。
(落ち着け落ち着け)
いつもならば、ここで僕がバシッと生徒会長に言ってやればいいのだが、今回に限っては分が悪い。
生徒会長は、こちらからお願いしてコーチという役職についてもらっている(厳密には立場はこちらのほうが上なのだが)状態だ。
ここで僕が不用意に動けば、何もかもがパーになってしまうのだ。
彼女が自分の役割を逸脱していればまだしも、言い方はあれだけど言っていることはちゃんとコーチとしての役割の範囲内であり、正論でもある。
筋トレのメニューがちゃんとできなければ、うまく踊るなど夢のまた夢だ。
「ちょっと、そんな言い方ないんじゃない」
そう自分に言い聞かせていると、険しい表情で西木野さんが反論し始める。
気づけば先ほどの僕が浮かべていたようなきつい表情で、ほかのメンバー(といっても主に矢澤先輩だけど)と、生徒会長が向かいあって対峙するという、一触即発の状態となっていた。
「本当のことを言ったまでよ。このままオープンスクールを迎えても失敗するのは明白。やっぱりあなたたちは解散し――――」
「まあまあまあ。みんな落ち着いて、ね」
一歩も引かずに”解散しなさい”と言い切ろうとする生徒会長の言葉を遮るように、割って入った。
「なによ、香月。あんた生徒会長の肩を持つ気なの?」
仲裁に入る僕に矢澤先輩が鋭い視線を向けてくる。
その視線は明らかに”裏切者”と言いたげな感じった。
「まあ、生徒会長の言っていることは正しいわけだからね。筋トレは基礎中の基礎だから、それができないのであればそういわれても仕方がないよね」
僕はできる限り柔らかい表情を浮かべながら矢澤先輩をなだめるように言うと、彼女たちに背を向けた。
そして、生徒会長のほうに一歩近づいて、
「調子に乗るのはそこまでだ。綾瀬絵里」
「っ!?」
ドスの利いた声を上げると、生徒会長が息をのむ。
「お前は確かにこちらからお願いしてコーチとなった。したがって、練習メニューの決定権や練習の中止などの権限はそっちにある。だが……いつ誰がお前に”解散権”まで与えた?」
「そ、それは……」
小さな声ではあるが、生徒会長はまるで崖っぷちまで追い詰められた小鹿のように体を諷わせる。
これが僕の彼女たちがつぶされないようにするための秘密兵器だ。
通称、ヤクザモード。
声にドスを利かせて相手できる限りの殺気をあてることで、怯ませることができる。
怯みさえすればあとはこっちの物。
自分のやりたいように事を進めることができるという寸法だ。
これも過去の一件がもたらしたものなのだが、それは割愛することにしよ。
このデメリットは、友人がいなくなる(もしくは離れていく)ことだ。
もっとも、最初から友人などいない(作ろうとしないだけだが)の僕にとってはデメリットでも何でもなかった。
(これじゃ、街一番の不良少年の称号は消えないわな)
なんとなく、今の自分の境遇の原因が分かったような気がしたが、今更動向もできないので放っておくことにした。
「あくまでもお前の地位は私の下であることを忘れるな。自分の役目を全うしろ。余計なことはするな。これは最終警告だ。次は……潰す」
最後まで言い切った瞬間、生徒会長は顔面蒼白で唇を震わせていた。
ここまでやっておけば大丈夫だろう。
それに何より、少しやりすぎた。
僕は彼女から一歩離れると軽く深呼吸をして気持ちを入れ替える。
「ということで、今日のところはいったん終了して、明日改めて練習をするというのはいかがでしょう?」
「え……えぇ。そうね。そうしましょう」
僕の豹変ぶりがさらに恐怖心を増させたのか、視線をあちらこちらに向けて落ち着きのない様子で答える。
「生徒会長」
「え?」
そんな震えている生徒会長に力強い口調で呼びかけたのは、高坂さんだった。
彼女は生徒会長に一礼して
「よろしくお願いします」
と告げた。
『よろしくお願いします』
それに倣うように他のメンバーも声を上げていく。
その言葉をかけられた生徒会長は、何も言うことなくこちらに背を向けると早々に屋上を後にした。
……よろよろとおぼつかない足取りで。
「香月、さっき生徒会長に何を言ったのよ」
「えっと……もう少し様子を見てもいいのでは……と」
生徒会長が去っていったのを見計らって疑問を投げかけてきた矢澤先輩に、僕はしどろもどろになりながら嘘をついた。
「あの生徒会長を頷かせるなんて、すごいじゃない」
「あはは……まあね」
西木野さんのその言葉を皮切りに次々にかけられる称賛の言葉は、僕を何とも言えない気持ちにさせていく。
人を脅すような真似をして言い合いで勝ったとして、それは本当に”勝利”といえるのだろうか?
今の僕の心にあるのは何とも言えない虚しさだった。
「何をやっているんだろう。僕」
「香月君、何か言った?」
「え?! ううん。何でもないよ」
思わず口に出していたのであろう。
首をかしげながらこちらに聞いてくる高坂さんに、僕は笑みを浮かべながらごまかした。
高坂さんはそれほど気にも留めていなかったようで、僕の答えに”そうなんだ”と返して話は終わりとなった。
そしてこの後、軽くダンスの練習をして僕たちは解散となった。
いろいろと不安しかないが、何とか無事に初日の練習を終えるのであった。
感想やアドバイスなどをお待ちしております。