ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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今回は記念小説となります。

内容は前回の続きからとなります。
かなり胸糞悪い話になっております。

そしてちゃっかりと、オカルト要素がありますので、苦手な方はご注意ください。


幕間5【UA通算8万達成記念】

「ぅ……ん」

「浩介!」

 

目が覚めると、最初に見えたのは涙を浮かべながる母さんの姿だった。

 

「ここ……は」

 

どうしてここにいるのか。

ここはどこなのか。

状況が全く呑み込めなかった僕は、ただただ困惑して父さんと母さんの顔を見比べるばかりだった。

 

「彩音、先生を呼んできてくれるか」

「あ、はい。あなた」

 

そんな中、父さんは冷静な感じで母さんに指示を出すと、母さんは目元をぬぐいながらどこかに行った。

母さんがいなくなると、たちどころに重苦しい雰囲気に包み込まれた。

 

「浩介」

「は、はいっ」

 

そんな中、最初に口を開いたの父さんだった。

 

「何があったのか覚えているのか?」

「……うん」

 

父さんの言葉に、僕はうなだれるように頷いた。

最初は混乱していたが、少しだけ落ち着いた今はちゃんと思い出せる。

あの時、自分が何をしたのか。

そして、今僕がいるのは、病院だと思われるということも。

 

「少ししたらお巡りさんが来る。そのときは、正直に話すんだぞ」

 

この時、父さんは何があったのかを悟っていたのかもしれない。

父さんの怒るでもなく慰めるわけでもない言葉に、僕は静かに頷いて答えた。

 

 

 

 

 

少ししてやってきた白衣を着た男性医師の診察を受けた僕は、立て続けに入ってきた二人組の男性と警察官と向かい合っていた。

診察を受けるべく起き上がった姿勢のままだったが、そんなにつらくはなかった。

実際、先生の診断も異常なしというものだった。

 

「それじゃボク。おじさんたちに何があったのかを聞かせてもらえるかな?」

「は、はい」

 

そして、僕は何があったのかをすべて話した。

クラスの人たちから集団でいじめられていたこと。

そして、それから身を守るために言霊の力を使ってクラス全員をこの世から消したこと。

すべて正直に話すと、心にのしかかっていた重りのようなものが軽くなったような気がした。

 

「なるほど」

 

すべての話を聞き終えた警察官の一人が、感慨深げに声を漏らした。

 

「つまり、君の呪いでみんなが消えたっていうんだね」

「はい……」

 

僕はいったいどうなってしまうのか。

このまま警察官に連れていかれる尾ではないか。

そんな不安が僕を押しつぶさんとひしめきあっていた。

だが、警察官の口から出た子叔母は、僕の予想を大きく超えているものであった。

 

「わかった。話を聞かせてくれてありがとね」

 

ただそれだけ言って二人は病室を出て行ったのだ。

 

「……」

 

怒られるのではないかと思っていた僕は、お咎めなしだったことに素直に喜べなかった。

なぜならば

 

「あの子、ちょっと頭がおかしくなったんじゃないっすかね? 呪いなんてあるわけないでしょ」

「そうだな。つらい目にあって記憶が変になってしまったのかもな」

 

外のほうから、先ほどの警察官の心無い言葉が聞こえてきたから。

僕の話は全く聞いてもいなかったのだ。

それどころか、子供の作り話として切り捨てられていた。

そのことがとてもショックだった。

父さんと母さんが何かを僕に言っていたようだけど、その内容は全く覚えてもいなかった。

結局、この日は様子を見るということで入院することとなった。

 

 

 

 

 

「……」

 

真っ暗な病室で、僕は少し前のことを思い出していた。

それは警察官に言われた、”事件”の概要だった。

 

・主犯は担任の先生。

・生徒全員をどこかに拉致監禁したのちに行方をくらませる。

・僕は犯人の監視の目をかいくぐり何とか神社まで逃げたところで、パトロールしていた警官に発見・保護される。

 

驚いたことに僕は1週間ほど行方不明だったらしい。

どういうことなのかはさっぱりわからなかったが、もしかしたら神隠しのようなものかなと結論付けた。

 

(もうみんな戻ってこない)

 

クラスメイト達は僕の言霊によって消された。

彼らは今後一生見つかることはない。

 

(僕は、いったいどうすれば)

 

罪悪感という重しに、僕は押しつぶされそうになっていた。

その罪を償うにはどうすればいいのか。

そのことを考え続けていたが、答えなど出るはずもなく、結局どうすればいいのかの結論が出ることはなかった。

 

 

 

 

 

翌日、僕の心境とは裏腹に、雲一つない晴天の日に、僕は病院を退院して家に帰った。

家の車に乗り込んですぐに眠ってしまったため、気が付くとすでに家の敷地内であった。

遊び疲れた子供かと(確かに子供なのだが)自分にツッコミを入れるというのは、何とも微妙な気持ちだったのを覚えている。

閑話休題。

 

「ただいま」

「ご飯を作るから部屋で休んでいなさい」

 

僕は母さんの言葉に頷いて、本邸にある自室に向かった。

なんだかんだ言って1週間ぶりのおふくろの味。

うれしいことこの上ない。

本艇の自室に戻った僕は、ご飯ができるまでどうするかを考えた。

 

(そうだ。新曲でも作ってみよう)

 

その結果が作曲であった。

いろいろとあれな体験もしたのだから、新曲のネタも十分にあった。

何より、作曲をしていれば今の憂鬱な気持ちを少しの間とはいえ忘れることができるかもしれない。

そんな心境で、僕はすぐさま椅子に腰かけると、机の引き出しから筆箱と真っ新な楽譜を一枚取り出す。

そして筆箱からボールペンを手にして、音符という名の命を注ぎ込んでいく。

作曲をしている時だけ現実を忘れることができる。

気分はこれから作ろうとしている曲の世界観にいるような、心地よい感じだ。

そして僕は、新曲を完成させることができた。

 

―――はずだった。

 

それは突然のことだった。

数小節ほど音符を書き込んだ時、まるでフラッシュバックのように頭の中にあの時の光景が浮かび上がってきたのだ。

それは、僕がクラスメイトたちから、殴られ続けていた場面だった。

 

『うわぁ。みなさーん! ここにいる高月浩介君は極悪非道の大泥棒ですよ~!!』

『嘘をつくとはさすが盗賊一家だな』

 

(やめて)

 

頭を抱えて必死に願ったが、それとは裏腹に頭の中に響き渡るクラスメイト達の罵詈雑言は止まらない。

 

『嘘つき』

『クズ』

『死ね』

『化け物』

『消えろ』

 

「イヤァァァァァァァァ!!!」

 

そこから先の記憶はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……れ?」

 

気が付くと、僕はどこかの部屋にいた。

そこはどことなく僕が入院していた病院の病室と似ていた。

横を見ると、まるで少し前のを見ているかのような光景だった。

涙を浮かべている母さんと、どことなくピリピリした雰囲気をまとっている父さんの姿だった。

 

(夢?)

 

先ほどまでのはすべて夢だったのだろうか?

そう思えてしまうほどに、今の光景に対して既視感を感じていたのだ。

 

「大丈夫? 突然叫び声が聞こえたと思って部屋に行ったら倒れてて……お母さん本当に心配したのよ」

「……ごめんなさい」

 

でも、母さんの涙声が”あれは夢ではなかった”というのを物語っていた。

 

―――僕は倒れたという事実を。

 

その後病室をやってきた先生が僕の容態を見た後、父さんたちを外に連れて行ったのを見て、今度は深刻な状況なのかもしれないと悟った。

 

 

 

 

 

その日の夜、僕は病室にいた。

前の時と違うのは、帰る日までの期間が少し長くなったことくらいだろう。

早い話が入院することになったのだ。

 

寝ないといけないのだがなかなか寝付けない。

 

(作曲をしようとしたら、倒れた……)

 

そのことが意味をするのは、”もう二度と曲を作ることはできない”という残酷なものだった。

そんなことばかりを考えてしまうのが理由の一つなのかもしれない。

作曲ができないというのは、あの独特な世界に二度と浸ることができないことを意味していた。

僕の唯一の取柄であり、楽しみでもあったことができないという事実は、言葉には言い表せないほどショックだった。

僕という存在価値が一気になくなってしまったのだ。

そして、もう一つの理由が、僕の寝ているベッドの前で優雅に踊っている二人組の老人たちの存在だった。

よく見ると、体が透けていることから、この者たちが幽霊だというのはすぐにわかった。

幽霊を見たからと言って、テレビ番組のように叫び声をあげるような真似はしない。

幽霊を見慣れているというのはもちろんだが、こういう場所は一番生と死が近い場所なのだ。

ゆえにこういった幽霊が現れても、何もおかしくはない。

ただ、優雅な曲を流しながら踊っていられると、なかなか寝付けないのだ。

 

「あのー」

 

僕は寝るために、勇気を振る絞って声をかけることにした。

幽霊に話しかけるのは、あまりお勧めはしない。

理由として挙げられるのは、向こう側からこっちに近づいてきてしまうからだ。

適当に相手をしていたり、ちゃんとした護身術を身に着けていないと、そのまま一緒になってついてきてしまったり、なにがしらかの危害を加えられる可能性があるからだ。

とはいえ、僕には護身術がちゃんとあるので、声をかけtも問題はないのだが、あまり気のりはしない。

なぜならば

 

『どうしたのかね?』

「あの、寝たいので静かにしてもらうか別の場所で――『ちょうどいいから、坊やにもダンスを教えてあげようかね』――いや、あの……」

 

ほぼ確実に、僕は彼らがやってることに巻き込まれてしまうからだ。

 

『ささ、早くおいでなさい』

「うわっ」

 

老婆が僕のそばまで来たかと思うと、腕をつかんで強引に彼らがいるダンス会場(?)に連れていかれた。

幸いなのか、それとも不運なのか。

この病室は個室のためどんちゃん騒ぎをしない限り、周囲への影響を抑えられる。

そんなわけで

 

『はい。坊や。まずは左足をこうやって――――』

 

老人(幽霊)たちによる特別ダンスレッスンが始まることとなった。

教えてもらったのはステップ……足さばきについてだった。

当時はダンスなど自分とは無縁の世界だと思っていただけに、困惑していたが唯一心の中に刻まれた言葉がある。

 

『ダンスで大切なのは”型”を守ることではなく、自分を外に出すことじゃ』

 

それがダンスをやるうえでの心構えで出てきた言葉だった。

その言葉を聞いて、僕は作曲と同じだと気づいたのだ。

ダンスが自分を表に出すのであれば、自分の世界を外に出す作曲もまた同じなのかもしれない。

ダンスというのが奥深いジャンルであることを知りつつ僕は、ダンスレッスンを受けていく。

それがのちに、とんでもないことにつながるとも知らずに。

 

 

 

 

 

数日間の入院を経て、僕は無事に退院することとなった。

治療を受けた記憶が全くないので、僕としてはどこが悪かったのか、良くなったのかという実感が全くない。

今回は最初とは違って出入り口まで主治医でもあり、この病院の院長が直々にお見送りに来てくれていた。

 

「退院おめでとう、浩介君」

「あ、ありがとう……ございます」

 

自分はこんなにも人見知りだったのかと、院長のお祝いの言葉にお礼を言いながら思っていた。

それほどまでに、大人に対してある種の恐怖心があったのだ。

父さんと母さんが何やら先生と話をしているが、子供の僕にはその内容が何がなんやらさっぱりわからなかった。

話はさほど長くもなくほんの数分で終わり、僕たちは再び車で自宅へと向かう。

 

「浩介、眠くないか?」

「眠くないよ。今日こそは最後まで起きているよ」

 

父さんのからかうような言葉に、僕は頬を膨らませながら宣戦布告をした。

寝るに決まっていると言いたげな父さんの表情が、僕の闘争心に火をつけたのだ。

僕は何が何でも眠らないようにと、あれこれ策を練りだす。

すべては睡魔という敵に打ち勝つためだ。

だが、当時の僕は気づいていなかった。

父さんの言葉がからかいからではなく、ただの確認であったということに。

そして何より、寝るに決まっていると言いたげな父さんの表情はむしろ、寝ていてほしいと言いたげであることに。

結局、今度は最後まで寝ることはなかった。

そして気づいてしまった。

 

「あれ……どうして表側やなくて裏側から?」

 

車が正門ではなく、裏口の門のほうに向かっていることに。

高月家は正門と裏門が存在する。

住宅街側が正門、神田明神や商業施設などがある場所が裏門になる。

裏門は正門よりも小さくみすぼらしいため、よほど高月家の敷地に詳しくなければ、わからないようになっている。

よって大体の人は門は正門のみと思っているらしい。

これは後程分かったことだが、敵襲があった際に裏から逃げられるようにとかなり昔に作られたものらしい。

その裏門に車をつけると、ドライバーの男性が素早く車のドアを開けていく。

父さんは僕の疑問に答えぬまま僕を半ば強引に引っ張って、裏門より高月家の敷地内に足を踏み入れさせた。

 

「父さん?」

「早く家に入るんだ。それでしばらくは横になって休んでいろ」

 

有無も言わさぬとは、まさにこのことだろう。

父さんは言うことだけ言ってそそくさと歩いて行ってしまった。

 

「……」

 

僕は言い知れぬ不安を感じながら、建物に向かって足を進めた。

やがてたどり着いたのは、一昔前の古風な家をほうふつとさせる建物であった。

 

(旧邸か。久しぶりだなぁ)

 

数年前まではここで寝泊まりしていたが、いつの間にか洋式の立派な建物で父さんと母さんが眠るようになってしまったため、誰も入ることがなくなってしまった建物だ。

なつかしさのためか、僕は旧邸内で休息をとることにした。

ガラガラという音を立てながら引き戸を開けると、中から漂う畳の香りが僕を出迎えた。

屋敷内は誰かが定期的に清掃でもしているのか、それほど汚れてはおらず、きれいな状態だった。

これならばすぐにでもこっちで寝ることができそうだ。

記憶を頼りに廊下を進み、ある一室のふすまを開ける。

そこには勉強机とタンスに小さなテーブルが置かれている6畳程度の部屋だった。

そこが僕の部屋だ。

いや、部屋になるはずの場所といったほうが正しいだろう。

急きょ本邸のほうで生活をすることになったためだ。

そんな部屋には先客がいた。

 

『おかえりなさい。坊ちゃま』

 

テーブルの前に正座をしている白髪の老婆は、こちらに気づくや否や柔らかい表情で僕を出迎えてくれた。

だが、その者は生きてはいない。

体が半透明なのが証拠だ。

 

「坊ちゃまはやめてください」

『それでは、当主様?』

 

僕の言葉に相槌を打つ形で天井から躍り出てきた老人に、僕は首を振ることで答える。

そう、この旧邸はまるでそれが当然のように幽霊たちが住んでいるのだ。

もはや幽霊屋敷といっても過言ではない。

後ほど聞いた話だが、この屋敷には数十体の幽霊がいるらしい。

 

『今日はここでお休みなさるのですか?』

「うん。久しぶりにここに来たくなったの」

 

優しい笑みを浮かべる老婆に、僕はそういいながら押し入れから布団を取り出す。

布団があることは僕も知っている。

というより、ここに住んでいる幽霊の人たちに教えてもらったのだが。

手早く布団を敷き終えた僕は、靴下を脱ぐと、布団の横にそろえておく。

 

『早く眠られたほうがいいですよ。そうしないと』

 

いざ眠りにつこうとした僕にかけられた言葉が気になった僕は、動きを止めて問いかけようとすると

 

「極悪非道の、高月浩介に次ぐ!!」

 

それを遮るように、外のほうから凄まじい音量で男の声が聞こえてきた。

 

「盗賊一家はここから出ていけっ!!!」

 

そして始まったのはテレビなどでよく見る、デモ活動で行われるシュプレヒコールのようなものだった。

 

「殺人鬼、高月浩介には死刑を!」

「疫病神は、この町から出て行け!」

 

永遠と繰り返される罵詈雑言のシュプレヒコールに、僕は怒るでもなく、悲しむでもなくただただ無感情で聞いていた。

それどころか、どうすればあのような大きな声を出せるのだろうかと、場違いなことを考えていると

 

「高月は疫病神~、人を呪うことしかできない~」

 

今度は歌が聞こえてきた。

しかも超下手な。

 

「浩介に呪われて~ 、俺たちはー、死んでしまった~!!」

「みなさーん、ここに住んでいるのが、あの史上最悪なペテン師、高月浩介ですよー!」

 

その歌とは別に、今度は女性の声まで聞こえてきた。

 

「高月は自分の意にそぐわない人たちを呪いで殺してしまう恐ろしい集団でーす。この間も、怒られた腹いせに~、何の罪もないクラスメイト達を呪い殺しました~」

 

(ああ。なるほど)

 

その時、父さんがどうして正門ではなく裏門を使ったのかが分かった。

きっと正門には大きな声で叫んでいる人達が待ち構えていたのだろう。

家に早く入るように言ったのも、この声を聞かせないようにするためだったのかもしれない。

 

『当主様。ちょっとしめてきましょうか?』

 

一人で納得していると、目元に縦向きで傷跡をつけている、いかにも任侠の世界の人だといわんばかりの風体の男が、殺気を隠すことなく聞いてくる。

 

「大丈夫。放っておけばすぐに帰ると思うから」

 

僕はそう答えると、幽霊の人たちに寝る旨を伝えてそそくさと布団に入る。

そして、外からの声をすべて遮断するように、掛布団を頭までかぶると、僕は目をつむる。

 

 

 

この時の僕は、まだ気が付いてなかった。

これはまだほんの序の口であるということに。

そして自分が壊れ、狂い始めたということを。




次回はUA通算9万達成後となります。
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