ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
第4話になります。
原作キャラが続々登場しています。
ちなみに、担任の先生の名前は生徒の名前は完全にオリジナルであり捏造です。
担任の先生の名前が原作のほうで判明している場合は修正いたしますので、ご指摘のほうをお願いします。
「ただいま……」
「おかえりなさいませ」
自宅である高月家本家に戻ると、門前で家政婦の人が僕を出迎えてくれた。
その横には父さんと母さんが立っていた。
ものすごく心配そうな顔をして。
「浩介。こんな時間まで一体どこに行っていたの?」
「ごめんなさい。ちょっと神社の方によってました」
秋葉原でのことはさすがに隠したけど。
「そう……まったく、あと少し帰ってくるのが遅かったら捜索隊を出すところだったんだから」
(ほ、本当に出すつもりだったんだ)
ある意味、すごくいいタイミングで帰ってきたみたい。
「……おかえり、浩介」
「ただいま。母さん」
やわらかい笑みを浮かべた母さんに、僕は改めて戻ってきたという実感を持った。
「さあ、夕食も準備ができてるわ。行きましょ」
「あ、荷物お持ちしますね」
「すみません」
家政婦の人に荷物を預けて、僕は父さんたちについて家の中に入っていくのであった。
「それじゃ、浩介の帰宅を祝して、乾杯」
「「乾杯」」
既に用意されていた夕食を前に、僕たちはグラスを重ね合わせてそれに口を付けた。
ちなみに、全員ただのお茶だ。
夕食もステーキなどと豪勢な料理が並んでいる。
ただのステーキなどと侮るなかれ、おそらくはかなり高級な肉を利用しているはずだ。
僕はナイフでステーキを切り、それを口に運ぶ。
「おいしい……」
「そうだろ。このために最高級の牛肉を取り寄せたのだからな」
やはり、高級なお肉を使ったみたいだ。
「して、神社に行ったとのことだが、どんな様子だ?」
胸を張って応えた父さんだったが、表情を一変させ真剣な面持ちで尋ねてきた。
父さん達も神主の家系の者として、気にしていたのかもしれない。
なので、僕も食事の手を止めてそれに受け応える。
「見た目はとても良好です。バイトで雇った巫女の方々がちゃんと手入れしているようなので」
「”見た目は”……か。内面的には?」
僕の言葉の意味をくみ取った父さんはさらに踏み込んで聞いてくる。
「最悪と言っていい。現在は祭られている神がいることで何とか機能していますが、地脈は完全に歪んでいます。実際に神社内で不穏な気配を感じました」
「そうか……」
僕の言葉を聞いた父さんは頭に手をやった。
強権ふるってふんぞり返っているように見えて、ある意味責任感が強いのは父さんのいいところでもある。
……本人には口が裂けても言わないけど。
「先ほど、浄化の方を軽くしました」
「何?」
僕の言葉に、父さんと母さんは目を見開かせて驚きをあらわにする。
「浩介、体は平気なのっ!?」
「ええ。全く異常はありません」
母さんが取り乱して聞くのも無理はない。
浄化というのは、とても体に負担のかかる危険な行為だと倉に仕舞われていた書物に記されていたのだから。
「そう……ならいいのだけど」
「これから1年をめどに浄化を行い地脈の正常化に努めます」
「そうか……迷惑をかけるが、よろしく頼む」
いったん間をおいて口を開いた父さんからは当主としての威厳が感じられた。
「明日からは浩介も女性の園か……明日はお赤飯でも焚くとしよう」
「焚いたら承知しませんからね?」
なれないウインクをしながらからかう父さんに、僕は目を細めて警告した。
そんなこんなで、本家に戻って初めての夕食を済ませるのであった。
「それじゃ、俺たちは出るが大丈夫か?」
「もう子供じゃありません。心配しなくてもいいので行ってきてください」
夕食を済ませて少しして、父さんと母さんを見送るべく僕は門の前に立っていた
なんでも、夕食を一緒に取るべくいったん帰宅しただけで、これからまた仕事なのだとか。
「私たちにとってはいつまでたっても貴方は子供よ」
「むぅ……」
優しい笑みを浮かべながら頭を撫でてくる母さんに、僕は反論の言葉を失くした。
「それじゃ、行ってくるわね」
「明日の朝食と夕食は一緒に食べられるからな」
「行ってらっしゃい」
二人が車に乗り込むとすぐに車は走り去っていった。
「さあ、お坊ちゃま。中に入りましょう」
「はい」
家政婦の人に言われるがまま、僕は門の中に入り家の中に入るのであった。
突然だが、高月家の家について軽く説明をしたいと思う。
高月家の土地は坪とかはわからないが、東京ドーム数個分だと父さんから聞かされたことがある。
その敷地内には洋式の建物がある。
そこが先ほど夕食を食べた場所だった。
それとは別に和風の屋敷もある。
昔はそこで寝たりしていたらしいが、神社の神主ではなく高月財閥としての一面が強くなった際に洋式の建物が建てられてからは使われていない。
ただ、僕はベッドよりも布団の方が落ち着くので屋敷の方で寝ている。
なので、屋敷は事実上僕の物とかしていた。
父さんたちも来ればいいのだが、なぜか断られているのでこのようになっているのだ。
(そんなに和風が嫌いなのかな?)
ちなみに洋式の建物にも僕の部屋は用意されている。
寝泊まりはしていないがベッドもある。
僕は現在その自室にいた。
机の上に置かれているのはたくさんのPCとモニター。
「えっと……メンテナンスの方も大丈夫みたいだから、あとは保守の方を……」
そのモニターの前でやっているのは仕事だった。
後攻に入ってから社会勉強だとのことで、高月家の経営する会社の一つの運営を任せられている。
数百人規模の部下と数千万人以上の利用者のために、社長として尽力しているのだ。
最初は戸惑うことも多かったが、今ではすっかり慣れた。
そんな僕が運営しているのは大手の動画サイトだった。
一日に数千、数万本の動画が投稿されており、それに対して申告された削除要請やサーバートラブルなどが起こらないようにすることも僕の仕事であった。
とはいえ、この会社は僕がいなくとも機械的に動いているので保守業務の方が主な仕事内容だが。
「それにしても、この曲は……」
何となくかけたのは、朝に届いたアレンジ依頼の楽曲だった。
著作情報が記されていないため、仕事を引き受けるわけにはいかない。
そしてそう言った結果の曲のデータは抹消するのがいつもの僕の対応だった。
だが、なぜかこの曲にはそれをさせたくなくなる何かがあった。
(全く、どうかしてる)
自分でもわからない感覚に、僕はため息交じりにつぶやくと、パソコンの電源を落とした。
そして、仕事部屋と化した自室を後にすると、洋式の建物と別邸である屋敷の方とつなぐ通路を通って屋敷へと移動する。
そして自室に入ると、既に敷かれている布団にもぐりこんだ。
「おやすみ」
誰もいない部屋で、僕はそうつぶやくと目を閉じる。
『おやすみなさい』
どこからともなくそんな声が返ってくるが、いつものことなので気にも留めない僕は、そのまま眠りにつくのであった。
こうして、僕は転入日を迎えるのであった。
「……………」
翌日の朝早く。
朝日が出始めたころ、僕は高月家の敷地にある庭で袴を身に纏った僕は、目を閉じて気持ちを落ち着かせる。
全ての意識を手にしている刀に集中させる。
風の流れる音、舞い散る木の葉の動き。
全てが僕の頭の中に浮かび上がってくる、
「…………はぁっ!!」
そして自分のタイミングで目を開けると、僕は手にある刀を目の前に振り下ろした。
僕が見たのは前に置いてあった木の棒が3等分に切断されている物だった。
「お見事」
そんな僕に声を掛けたのは、父さんだった。
「腕は鈍っていないみたいだな」
「鈍っていたら浄化なんて大それたこと、できません」
父さんの言葉に、僕は肩をすくませながら答えた。
「神社を経由してのランニングはいい鍛錬になった。浄化もできるし、一石二鳥だから毎日続けるとするよ」
高月家は神田明神から数キロほど離れた場所に位置する。
神主がそれでいいのかと思うが、聖域を汚すことになるなどの理由で、それほど距離を取ったらしい。
真偽の方は定かではないが。
しかも道中には下り坂と上り坂が適度にあるので、ランニングには十分だった。
走って神社まで向かい、御神木を介して地脈の浄化を行いそのまま引き返して、自宅の庭で精神統一をする。
どうやらこれが今日から僕の日課になりそうだ。
「さあ、汗を流しておいで。朝食にしよう」
「まさかとは思うが、お赤飯焚いてないだろうな?」
「ははは。まさか」
父さんの不気味な笑みを不審に思いながら、僕は汗を流すべくお風呂へと向かうのであった。
ちなみに、この日の朝食にお赤飯はなかった。
「本当に歩きでいいのか?」
朝食を終え、ちょうど余裕がある時間に僕は学院に行くべく門の外まで出ていた。
「ええ。車はほかの生徒の視線が気になりますから。登下校は歩いていきます」
「そうか。気を付けて。行ってこい」
きっぱりと告げると、父さんは特に反論することもなく僕を送り出した。
「……行ってきます」
そして僕は父さんたちに一礼すると、音ノ木坂学院に向けて歩き出した。
ちなみ制服は南理事長の好意で女子の制服の男子版である、紺のブレザーに黒っぽいズボンというものだった。
これも一種のモデルなのだとか。
夏服の方も検討中らしい。
そんな新しい制服に身を包んだ僕は、新たな学校生活が始まろうとしていた。
「覚悟はしていたけれど、ここまで来るだけで視線がきつい」
どうやら僕がここに転入することは知れ渡っているようで、いきなり犯罪者扱いにされるようなことにはならずに済んだ。
とはいえ、視線が問題だった。
視線には僕に対する悪意は一切ない。
あるのは好奇な感じだけだ。
まるで珍しい動物を見るかのような感じだ。
こればかりは居心地が悪い。
逆に悪意の方がましなほうだ。
悪意であれば、無視すれば済む。
だが、そうでない視線は無視する理由がないので、対処に困る。
(とにかく、中に入ろう)
南理事長から、当日は職員室に向かうようにとの連絡が来ている。
何でもそこで僕が転入するクラスの担任の先生が待っているらしい。
「失礼します」
ノックをした僕はドアを開けるとそのまま中に入った。
「………」
職員室に足を踏み入れた僕に向けられたのは、好奇とは言わないが、関心を持ったようなまなざしだった。
「お、君が噂の転入生か」
「はい。香月 高輔と申します。よろしくお願いします」
僕に声を掛けたのは蒼い髪を後ろの方に立ばれた何となくボーイッシュな雰囲気を纏う女性教師だった。
「そう一々畏まるな。私は、香月が転入するクラスの担任の河原だ。周りが女子ばかりだからとはいえ特別扱いはしないから、そのつもりで」
「望むところです」
河原先生の言葉に、僕は頷いて答えた。
逆に、特別扱いをされる方が迷惑だ。
「本当に、おかしなやつだな」
「よく言われます」
苦笑する河原先生の言葉に、僕は相槌を打った。
「さて、クラスの方に向かうぞ。ついてこい」
「はい」
そして僕は河原先生の後をついて行くようにして職員室を後にするのであった。
「これからHRを始めるぞ」
教室のドアの前で待つように言われた僕は、中から聞こえてくる河原先生の声を聴いていた。
(あれ? そう言えば、僕って自己紹介をするんだっけ……)
今になってようやくそのことに気付いた僕は、目を瞬かせる。
(何て言えばいいんだ?)
僕は自己紹介がとても苦手だ。
そもそも何を言えばいいのかがわからないのだ。
(趣味は……音楽演奏?)
ふと頭の中に考え付いた案を片隅へと追いやった。
どう考えても、弾いてほしいと言われるに決まっている。
僕はH&Pに所属するDKとしてギターを弾いているが、それを隠しておきたいのだ。
そのためには、むやみにギターを弾くのは避けたかった。
(それじゃ、どうすれば……)
音楽鑑賞が趣味と言えば、どんな曲がいいだとかツッコまれる。
確実に、ぼろを出しそうだった。
そんな理由はあくまでも建前にしかすぎず、自己紹介が苦手だというのが一番の理由だった。
「さて、知っているとは思うが今日このクラスに転入生が来る」
河原先生の言葉に、教室が一気にざわついた。
”やっぱり男子だよね?”やら、”イケメンかな?”などといった声が聞こえてくる。
「ほらほら、落ち着け。香月、入れ」
「………失礼します」
僕は深呼吸をして覚悟を決めると、教室の扉を開いた。
教室は、前にいた場所とそれほど変わらない作りだった。
(覚悟はしたけど、視線が)
好奇なまなざしが僕を射抜く。
僕は何とかそれを無視して中央まで歩く。
そして、置かれていたチョークを手にすると、黒板に自分の名前を書いていく。
「本日付で、このクラスに転入した香月 高輔と言います。右左分かりませんが、どうぞよろしくお願いします」
「…………………」
自己紹介を終えた僕は、軽くお辞儀をするがクラス中が沈黙に包まれた。
「以上か?」
「ええ。自分を語るのは苦手なので」
見かねた河原先生が尋ねてきたので、僕は頷いて答えた。
「仕方ない、この時間を質問タイムにする。聞きたいことがあるやつは手を上げろ」
「へ?」
『はいっ!』
ため息をついた河原先生の言葉に意味が分からないでいる僕をよそに、クラスの人たちは素早く手を上げた。
「よし、それじゃ……前田」
「はい! ズバリ、香月君の好きな女子のタイプってなんですか?!」
前田と呼ばれた女子は、いきなり切りこんだ質問をしてきた。
そんな質問に、ほかの女子から歓声がわいた。
「知らない」
だが、その質問に、僕はバッサリと切り捨てた。
「ワイルドだ」
どこからかそんな声が聞こえてくる。
「それじゃ次。新田」
「はい。……えっと、香月君は休日は何をしてますか?」
新田と呼ばれた女子の問いかけは、定番中の定番だった。
「休日は特に課題がなければ読書をして過ごしている。今お気に入りなのは、過去の偉人が残した書物」
「あ、ありがとうございます」
満足したのか、新田さんは席に着いた。
「こんなものでいいだろう。香月、お前の席は……園田、手を上げろ」
「あ、はい」
園田と呼ばれた青色のロングヘアーの女子が控えめに手を上げた。
「今手を上げている奴の隣だ」
「分かりました」
河原先生の言葉に応じた僕は、しっかりとした足取りで指定された席に着く。
「えっと……よ、よろしく……お願いしま……す」
「……よろしく」
なぜか僕はかなり怯えられているようだった。
「よし、では連絡事項を言うぞ」
こうして、僕の新たな学院生活が幕を開けるのであった。