ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結) 作:TRcrant
お待たせしました。
原作キャラも続々と登場し、ようやく話が流れ始めました。
少し強引かなと思ったりしますが、どうぞ。
第5話 変わること
2時間目が終わり、生徒たちにとっては束の間の休み時間が訪れた。
授業の範囲は、幸いにもそれほど差は無い為、少し予習復習をすれば問題がない状態だった。
(問題があるとすれば)
先ほどから僕に注がれる視線だろう。
今ある視線は戸惑いの色が強かった。
どうやら、朝の一連の行動で、僕は怖い人認定をされたらしくどう接すればいいのかがわからないといったまなざしが向けられ続けていた。
”隣の席だなんて羨ましい”と、同じクラスの女子が隣の席の園田さんに言っている声が聞こえたが、僕にはどうでもいいことだった。
(はぁ……本でも読もう)
僕はすべての視線を避けるようにいつも持っている百科事典サイズの本を取り出すとそれに目を通す。
本日2度目だ。
ちなみに、本の内容は高月家が昔使っていた力などに関する記述だ。
それを応用すれば、いかなる事態にも対応ができるようになれるかもしれない。
常に進歩を忘れないのが、僕のモットーだ。
そして、こんな感じで時間は無情にも流れていく。
次の休み時間も同じように本を読んで過ごしたのだ。
もしかしたらこのままずっと本を読んで、過ごしていくことになるかもしれない。
確実に現実になりそうな予感を僕は感じていた。
4時間目も終わり、昼休みとなった。
僕は足早に教室を後にすると、適当に移動を始めた。
場所はもちろん、人気のない場所だ。
(そう言えば、ここって屋上は解放されてるんだっけ?)
前いた学校でも屋上は解放されており、もしかしたらここもそうなのではと思った僕は、ダメもとで屋上の方に向かうべく階段を上がっていく。
「お、開いてる」
どうやら解放されていたようで、僕はドアを開けると屋上に出た。
そこは入り組んではいるが広々としている場所だった。
柵もあり安全対策も十分だった。
ベンチのようなものや雨よけのようなものがないが、わりと絶好のスポットかもしれない。
人の姿も見かけないしかなりの穴場かもしれない。
「この上とかは良さげかな」
出入り口の上ならば誰かが来ても見つかりにくいしいいかもしれない。
「よっと」
そう判断した僕は、出入り口の屋根の部分に飛び上がった。
「うーん……暗い」
とてつもなく自分のことが暗く思えてきた。
「どうしようかな……」
自分から話しかけに行くなどのアクションを起こせば手っ取り早いのだろうが、それができれば苦労はしない。
「せめて誰かから声を掛けてさえくれれば……あいつみたいに」
今思えば、慶介が声を掛けてきてくれなければ、僕はずっと一人だったかもしれない。
そう言う意味では慶介はある意味すごい人なのかもしれない。
「あれ、電話だ」
そんな時、ポケットに入れておいた携帯電話が着信を告げたので、僕は携帯を取り出した。
『佐久間 慶介』
ディスプレイには電話をかけてきた相手の名前が表示されていた。
「もしもし」
『お、出た出た』
とりあえず電話に出ると、昨日と同じ軽い声が聞こえてきた。
「何の用だ?」
『用ってほどじゃないんだが、うまくやれてるか?』
慶介の言葉に、僕は何も答えられなかった。
『その反応だと、うまくいってないようだな。しかも、誰とも話してないだろ?』
「よくわかるな。その通りだ」
『親友だからな』
まさしく慶介のその一言に尽きた。
まるで見てきたかのように言い当てる慶介のそれは、親友だからこそできる芸当なのかもしれない。
『高輔ってさ、暇だとよく本を読む癖があるだろ?』
「癖って……まあ、本は読んでるかな」
本には色々な有益なことが記されている。
そして色々な世界がある。
だからこそ本は好きだし、よく読んでいる。
『高輔は知らないかもしれないけど、本を読んでいる時の高輔ってさ人を引き寄せない雰囲気を放ってるんだよな』
「そうなのか?」
今初めて知る驚愕の真実だった。
『生徒会のメンバーも言ってたぞ。”香月先輩はいつもはそうじゃないのに本を読んでいるときだけ怖くて近寄れない”って』
「………」
慶介から聞かされた真実に、僕は言葉も出なかった。
『高輔が人と接するのが苦手なのは知っているつもりだけどよ、時には自分から一歩前に出てみたらどうだ? 絶対にうまくいくから。そうだな、まずは誰かに話しかけてみるってのはどうだ?』
「他人事だと思って……何を話せと言うんだ? 天気のことでも言えと?」
慶介のアドバイスに、僕はついつい語尾を荒くしてしまう。
自分で言っておいてあれだが、天気のことを話のネタにするというのはおかしすぎるような気がする。
『それでいいんだよ。重要なのは、”会話を始めること”始めてしまえばこっちのもんさ。大抵は向こうも話題を振ってくるだろうから』
「………そういうもんか?」
分かるような分からないような。
要するに複雑な心境だった。
『そうそう。だから高輔もやってみようぜ――「やっぱり無理です!!」――おいおい、やる前に無理とか言うなって』
「いや、今のは僕じゃない」
慶介の言葉を遮るようにして聞こえてきた声に、慶介は若干呆れながら言ってくるが、それは僕の物ではない。
声の前に聞こえたドアの階へのんから察するところ、誰か来たらしい。
『それじゃ、一体誰だって言うんだ』
「知らない。それよりも、こっちも少し立て込んでるからまたあとでな。アドバイスありがとう」
『あ、おい―――』
僕は一方的にお礼を言うと、慶介の呼び止める声を聴かずに電話を切った。
さらに携帯電話の電源も切る。
これで電話はかかってこないだろう。
(一体どんな奴が来たんだ?)
気になった僕はそっとしたの方……出入り口のドア付近の様子をうかがった。
人影は二人だった。
こちらからは確認できないが、二人とも同じ方向を向いているので、そこにもう一人いるのだろう。
(しばらくここで待つか)
さすがに慶介のアドバイスを今すぐに実践する覚悟は持てなかった僕は、身をひそめることにした。
「うーん、やっぱり緊張するよね」
ふわふわしたような声が聞こえてきた。
「人前でなければできるんです」
続いて聞こえてきた声には聞き覚えがあった。
おそらくは園田さんのものだ。
「だったら、”手にやさいと書いて飲み込む”のはどう?」
「ほ、穂乃果ちゃん……」
”穂乃果”と呼ばれた女子生徒の提案に、僕は唖然としてしまった。
だからつい
「それを言うなら、”掌に人という字を三回書いて飲み込む”だ」
「え!?」
声を出してツッコんでしまった。
「い、今声がしたよね?」
「だ、誰もいないはず……だよ」
「ま、まさか……お化け!?」
今僕がいるのは彼女たちの位置からは死角にあたる場所。
つまり、三人には僕の姿は見えていない。
だからこそ、その反応も納得できるのだが
「勝手に殺すな」
「うわ!? 空から降ってきた!」
「違います、穂乃果。屋根から降りたんです」
屋根から降りて彼女たちの前に姿を現した僕に、明るい茶色の髪を後ろで括っている女子生徒が僕を指差しながら驚くが、そこに園田さんが冷静に指摘した。
「あ、君は香月君だったよね?」
「そうだけど。こんなところで何をやってるんだ?」
名前を知っているということは、同じクラスなのかもしれない。
よく見ればクラスで見かけた顔だし。
「それは香月君もだよ?」
「僕はのことはどうでもいい。中に入りたいから退いてくれるとありがたい」
明るい茶色の髪の女子学生の反論を切り捨てた僕は、その場を退くように告げた。
「あ、すみません」
園田さんは素直にその場を離れ道を作るが、逆に明るい茶色の髪の女子生徒は僕の前に立ちふさがった。
「……さっきの僕の言葉、聞こえていなかった? 中に入りたいから、退いてって言ったんだけど」
「香月君にお願いがあるの」
「穂乃果ちゃん?」
目を細めて、控えめに退いてと言うと、明るい茶色の紙の女子生徒は突然そんな話題を切り出してきた。
「実はね、私たち”μ's”っていうスクールアイドルを結成してて、その初ライブが明日にあるんだけど……」
「……まさかとは思うが、僕もそこで踊れとかいうんじゃないよな?」
そこで言葉を区切った女子生徒に、僕は嫌な予感を感じたので、聞いてみることにした。
「ううん、違うよ。メンバーの方も足りないんだけど、アイドルとして必要な存在がいないなって思ってね」
「…………」
僕は無言で続けるように促したが、何となく彼女が言いたいことがわかったような気がした。
「香月君、私たち”μ'sのプロデューサーになってくれないかな?」
「…………」
それはまさしく予想通りの言葉だった。
周りの二人を見てみる。
二人の表情から、彼女と同じ気持ちであることが伺えた。
「えっと……君は、確か」
「私、高坂 穂乃果」
僕の言いたいことを組んで、明るい茶色の紙の女子生徒……高坂さんは自己紹介をした。
「私は南ことりです」
「私は園田 海未と言います」
続いて銀色の髪の女子生徒と園田さんが自己紹介をしてくれた。
これで名前は分かった。
(にしても、理事長の関係者がスクールアイドルか)
同じ苗字なので、家族か親戚のどちらかだろう。
どちらにせよ、すごいメンバーのような気がした。
このメンバーであれば僕がプロデュースするのにふさわしいグループかもしれない
「高坂さん、君の提案は分かったけど、一つだけ聞いていいか?」
「うん、良いよ」
だが、僕は確認しなくてはいられないことがあった。
「僕は沈みゆく船に乗るようなバカではない。君たちはその”沈みゆく船”ではないのか?」
「……………」
僕の問いかけに、高坂さんが息をのんだ。
「まあいいけど。どうせ明日にはそれが証明されるんだし、その時に判断させてもらう」
「それじゃ、ライブに来てくれるんだね」
高坂さんの言葉に、僕は静かに息を吐き出した。
「さあ? いいライブならば噂で、すぐに伝わってくるだろうから行かないかもしれないし、そう言うのはしっかり見ないと判断ができないから行くかもしれない」
「ねえ、もしかして私たちのことをからかってる?」
遠まわしな言い回しをしていると、高坂さんがジト目で聞いてきた。
さすがに、やりすぎたかもしれない。
「そう思うのであればこちらは構わないけど。まあ、とにかく”沈みゆく船”なのかどうか、明日のライブではっきりするだろうから、その時までプロデューサーの件は保留。それでいい?」
「私はそれでいいよ」
「私も」
「私も異存はありません」
高坂さんに続いて南さんに園田さんも続く。
彼女たちの目は本気だ。
決してお遊びではない。
確固たる信念を持って、このスクールアイドルを結成している。
僕にはそう見えた。
「それじゃ、明日のライブを楽しみにしてるよ」
だから、僕は彼女たちにそう告げてその場を後にするのであった。
「……全く、あの糞親父め。本当に赤飯炊きやがって」
夕食後、僕は怒り冷めやらぬと言った様子で、仕事場でもある自室に来ていた。
というのも、夕食の際に用意したのが”お赤飯”だったからだ。
あれだけするなと言っておいたのに本当に炊くあたり、父さんの執念には驚かされる。
「にしても……」
思い出すのは昼間の出来事。
高坂さんたちが結成した、スクールアイドル”μ's”だ。
「あの”T-princess”の依頼で出てきたアイドル名がここでつながるとは……」
そうなると、今持っている音源はかなり重要なキーアイテムではないだろうか?
「…………」
僕はパソコンのモニターに、音源データファイルを表示させた。
(一歩を踏み出せ……か)
慶介に言われたことを思い出す。
僕にできるかどうかは分からない。
でも、それでも。
何もせずに後悔をするよりは、失敗して後悔する方がましだ。
そう言うことを誰かが言っていたような気がした。
「はぁ……仕方ない。ルール違反だけど、やるか」
本当は著作情報がしっかりしていない音源のアレンジ依頼はやってはいけないのだが、僕はやらずにはいられなかった。
だが、これが僕が踏み出す一歩目なのかもしれない。
僕はドアに”仕事中”の立札をかけてドアを閉めると鍵をかけた。
こういったことは集中力がモノを言う。
だからこそ、できる限り邪魔されないような環境を整える必要があるのだ。
「この曲調だと、やはりほかの楽器もほしいな」
もう一度曲を聴き、レイアウトを決めていく。
「それじゃ、ここにドラムとピアノを入れて、ベースとギターも入れようか」
最終的なレイアウトが決まればDTMによって新たな曲へと進化させる。
ちなみにDTMとは、デスクトップミュージックの略で、簡単に言えばPCで音楽を作ることを言う。
昔は楽器などがなければ作曲はできなかったので、時代はいい意味で進歩しているのかもしれない。
それから数時間後。
「よし、これで一通り完成かな」
何とかライブ用の曲のアレンジをし終えることができた僕は、腕を伸ばして固まった筋肉をほぐしていく。
「それじゃ、これをCDに焼いて高坂さんの家に放り込んでおくか」
彼女たちにとってはぶっつけ本番になるが、テンポなどや曲調は大きく変えていないので、練習さえしていればそれで対応できるはずだ。
「さあ、お手並み拝見と行こうか」
そうつぶやいた僕は焼き終えたCDを手ごろな封筒に入れ、宛名には『μ's 高坂 穂乃果様』と明記する。
これですべての準備は完了した。
「うわっ!? もう2時か。仕方ない、ここのベッドで軽く仮眠をとっておくか」
毎朝4時にはランニングや浄化を行うために起きなければいけない僕は、2時間という限られた時間しか眠ることができない。
「ははは。色々と間違えてるよね。これ」
僕の本業はあくまでも勉強なのだが、若干音楽家の方ではないかと思える状態だった。
とりあえず、仕事中の立札は取り除いておき、僕は仮眠をとるべっくベッドに潜り込むのであった。
そして、ついにスクールアイドル"μ's"の初ライブの日を迎えるのであった。