ラブライブ!~たった一人の男子とスクールアイドル~(凍結)   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
大変お待たせしました。

ライブの描写はかなり難しいです。
ただでさえ音楽の病者ができない状態で、振付の描写をするとはまさしく鬼畜っ!

それはともかく、今回もオカルト要素がありますので、苦手な方はご注意ください。


第7話 選択と……

予感はしていた。

楽器を取りに行くときも楽器を持ってきたときも、周辺では吹奏楽などの部活が勧誘を行っていた。

”初ライブ”ということで期待値が不安定な彼女たちを見ようと集まる人が来る可能性は低いこともわかっていた。

ステージの幕が開く前に、人の気配が感じられない時点で予感はしていた。

でも、心のどこかではそれを信じたくないという気持ちも存在していたのかもしれない。

だがそれは、目の前の観客のいない観客席という現実によって脆くも打ち破られることになった。

 

「ごめん。無理だった」

 

協力者なのか、紙の束を手に悲しげな表情で戻ってきた女子学生たちの姿が、結果を物語っていた。

 

「これが、現実か」

 

近年スクールアイドルは一種のブームとなりつつある。

スクールアイドルによって生徒数を大幅に増やしたところも存在する。

だが、現実は残酷だった。

 

「そうだよね。現実は甘くない!」

 

僕のつぶやきが聞こえていたのか、肯定するように高坂さんが明るく相槌を打つが、声色からどのような表情を浮かべているのかが容易にわかってしまった。

 

「穂乃果……」

 

そんな高坂さんの様子に、園田さんが彼女の名を呼ぶ。

 

(少しだけ心苦しいけど、やるとしたら今か)

 

元々ここに来たのは、彼女たちが”沈みゆく船”なのかを見極めるため。

まあ、完全に沈没船なのだが、それはいいだろう。

 

「それで、どうするんだ? 続けるの? それとも、やめる?」

「………」

 

僕の問いかけに、高坂さんは反応を示さない。

 

「できれば早く決断してほしいんだけど。辞めるのであればすぐに撤退した方が傷口は浅くなるだろうから」

「香月君、そんな言い方は―――」

 

僕の言葉に、非難の声を上げようとする南さんの言葉を遮ったのは、力強く開けられたドアの音だった。

僕はその方向に視線を迎える。

黄色っぽい茶色の髪を右斜めに分けた髪形に眼鏡をかけた女子学生の姿が見えた。

 

(…………何だかどこかで見たような気がするんだけど)

 

とりあえずそのことは関係ないので、頭の中片隅へと追いやった。

 

「あれ? ライブは……」

 

やってきた女子学生はあたりを見回している。

どうやら、たまたま来たわけではなくこれを目的に来てくれた観客のようだ。

 

「………歌おう!、全力で。そのために、今までいっぱいがんばってきたんだもん。それを無駄にしたくない!」

「穂乃果ちゃん。海未ちゃん、香月君」

 

高坂さんのそれは、僕の問いかけへの答えだった。

南さんの呼びかけに、僕は頷くことで答えた。

もうこれで僕の知りたかったことは分かった。

後は目の前にいる観客を楽しませるだけだ。

僕はステージ奥に移動して、目立たない位置に立った。

 

(よし、大丈夫。後は僕の腕の見せ所)

 

自分のせいで失敗するというのは、絶対に避けたい。

幸い、譜面の構成は頭の中に叩き込んである。

後はその通りに演奏をするだけ。

やがて、照明が落とされ青色の明かりがステージを照らし出す。

 

(さあ、始めよう!)

 

三人も最初のポーズなのか、観客席に背を向けた状態で立つ。

そしてついに始まった。

ピアノのソロから始まり、ドラムの音が加わったところで、三人が歌声を奏でだした。

それと同時に僕も右手をストロークさせる。

誰かが考案したのだろう、ダンスもちゃんとしていた。

サイドステップや両手を上にあげたりといった簡単そうな振付だが、曲に合わせてリズミカルな動きは簡単にはできない。

きっと高坂さんの言うとおり、これまで練習を重ねてきたのだろう。

 

(しかし、所々変な振り付けが)

 

人数不足が原因なのかもしれないが、寂しさを感じさせた。

とはいえ、それでもリズムを崩さずに踊ったり歌えたりすることは驚きだった。

なにせ最初のライブというのは大抵が緊張のあまりに歌詞を間違えたり、ダンス自体が不自然になったりするのだが、彼女たちはその様子は微塵も感じられないのだから。

 

(って、今度はコンビネーション!?)

 

コンビネーションとはいえ、ただのハイタッチなのだがそれを行うというのは難易度も高い。

何せ、コンビネーションは自分だけではなく相手もそれに合わせて動かないといけないからだ。

 

(こりゃかなりの上物だ)

 

少なくとも、期待値ではA-RISEを大きく上回る出来だった。

 

(これは、僕も頑張らないと)

 

意識を軽く自分の楽器の方に戻す。

現在はサビの部分。

ギターのパートは非常に少なくなっている状態。

 

(それにしても、演奏が始まったとたんに人が集まりだしてきたな)

 

ざっと見ただけでも約2,3人が来ているのは把握していた。

サビが終わり、弦を弾いていくことで音を奏でていく。

そして最後はギターの音を伸ばすことで曲は終わった。

そして彼女たちに贈られるのは、見てくれた人たちの拍手だった。

人数としてはそれほど多くはない。

だが、初めてのライブでこのような反応をされるのは、彼女たちにとっても一種の励みになるのではないだろうか?

そんな拍手の音を遮るように聞こえてきたのは足音だった。

その音源はこちらに向かってくる髪を後ろで束ねた金髪の女子学生だろう。

 

(あの人は確か、生徒会長とか言ったよな)

 

その女子学生は、今日新入生歓迎会であいさつをしていた生徒会長だった。

 

「それで、どうするつもり?」

 

鋭い目で高坂さんにかけられたのは、問いかけだった。

 

「続けます!」

 

その問いかけに、高坂さんの答えはそれだった。

 

「なぜ? これ以上続けても意味はないと思うけど」

 

そう言って周囲を見渡す生徒会長。

確かに、言ってることは正しい。

現状は、チラシを配っていたりした人に生徒会長を除くと5人にも満たない。

 

「やりたいからです! 私、今とても歌いたいと思っています。それはきっとことりちゃんたちも同じだと思います。誰も応援も見向きもしてくれないかもしれない。でも、私はこの気持ちを大事にしたい」

「…………」

 

高坂さんのその言葉は、僕の心に響いた。

理想論でしかない言葉だが、僕の心に響かせる何かがあった。

 

「だから、きっといつか……ここを満員にしてみせますっ!」

 

それは一種の宣戦布告だった。

既に僕の答えは決まっていたが、これには思わず拍手を送ってしまった。

僕はギターをステージに置いて彼女たちの横まで歩み寄る。

 

「素晴らしい。今日ここに立てた僕は非常に幸運だ。とんでもない逸材を目の当たりにしたんだから」

「香月君?」

 

今日はとてもいい日なのかもしれない。

 

「僕はスクールアイドルをプロデュースしたことはない。だから、常識外の手を打つこともしばしばだ。それでもいいのであれば、プロデューサーになってもいいけど」

「……え、いいの?」

 

だが、返ってきたのは微妙な反応だった。

 

「……そっちが嫌だと言うんならやめるけど」

「ううん。嫌とかじゃなくて」

「沈みゆく船には乗らないって言っていましたけど?」

 

高坂さんの言葉に続くように園田さんが訊いてきた。

 

「ああ、確かに言ったけど君たちは”沈みゆく船”ではなく、”浮上し始めている船”だ。それは君たちのライブと、心意気。どれをとっても正しい表現だと、僕は自信を持って言える。だから、僕も浮上をするお手伝いをしたいんだ」

 

僕の言葉に、三人の表情からは拒絶の色はうかがえない。

 

「これからも、よろしく」

「……うん。よろしくお願いします!」

 

差し出した手にしばし呆然としていた彼女たちだったが、すぐに正気を取り戻した高坂さんが手を取った。

それは一種の契約だった。

 

「私は反対よ」

 

そんないい空気流れているところに水を差す人がいた。

 

「この状況で続けても意味はない。むしろ逆に学院にとってマイナスになるわ」

「なあ、生徒会長さん。一つだけ言っていいですか?」

 

あまりな言い草に、僕は言葉では敬語だが内心は穏やかなものではなかった。

 

「確かに、何の実績を残せない可能性は少なからずあるでしょう。ですが、それでも彼女は諦めずに前へと足を進めた。私は昔誰かが言っていた”失敗を恐れて何もしないより、失敗して後悔した方がましだ”という言葉はまさしくその通りだと思っています。彼女たちは、失敗を恐れずに前に歩んだ。それは、有能な人間と言っても過言ではないでしょう」

「私って、有能なんだ」

「な、なんだかとても恥ずかしいんですが」

 

僕の言葉に反応して横で何か言っているが、それは無視することにした。

 

「でも、失敗を恐れて”どうせ”とか言って何もしないあんたは、ただの無能……いや、無能中の無能だ!!」

「なっ!?」

 

僕の暴言に、生徒会長は目を見開かせて驚きをあらわにした。

僕に友人ができない原因の一つが、今のような暴言を目上の人だろうが誰であろうが簡単に言い切ってしまうところにもあるのだが、それは今はどうでもいいだろう。

 

「僕がプロデューサになった暁には、半端な結果は許さない。今後は100%の結果を残せなければ成功ではない。こっちでも手は考えるが、それを活かすか殺すかは君たち次第だ。とりあえず、次の手は明日までに考えておくから、練習はしっかりするように」

「おぉー、まるで本物のプロデューサーみたい」

「穂乃果、少し話してください」

 

僕の言葉に、驚きながらも軽い言葉で相槌を打つ高坂さんに、園田さんが肩を落としながら注意した。

 

「それじゃ、僕は片づけて先に帰るから。お疲れさま」

「あ、うん。またね」

 

生徒会長が正気に戻るといろいろ面倒なことになるので、僕は逃げるようにステージを後にした。

 

「それにしても、おそれ知らずだよね。あの生徒会長に向かってあんなことを言うなんて」

 

放送室にマイクを返すために行くと、そこにいた女子が驚いた様子で話しかけてきた。

 

「誰であろうと言うべきことはしっかりというさ。余りにもひどいものに関してはなおさら」

「絶対に、目をつけられたよ。あれ」

「だろうね」

 

女子学生の言葉に、僕は頷きながら返した。

それは百も承知だった。

 

「それじゃ、僕はこれで。今日はお疲れ様」

 

僕は女子学生にそう告げると、放送室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ちなさいっ!!」

 

建物を出たところで、後ろから僕を呼び止める声が聞こえた。

声の主は、あの生徒会長。

振り返ると、怒りに染まった表情で僕を睨みつけている生徒会長の姿があった。

 

「何か?」

「さっきのあれはどういうことよ」

 

やはり、あの言葉はかなり頭にきたようだった。

とはいえ、こっちは訂正する気は微塵もないけれど。

 

「そのままの意味だけど……あ、一応言っておくけどここのことは言ってませんから」

 

そう言いながら僕は自分の頭を人差し指で突いた。

 

「ふざけないで!」

「ところがどっこい、僕は本気で言ってるんですけど……貴女はもともとはダイヤのように輝いていたのでしょうけど、今はその輝きは失われている。目は濁って死にかけているのがその証拠」

 

僕が見ていたのは生徒会長の頭のよし悪しでも、言葉を聞いているわけでもない。

ただ、彼女のオーラを見ていたのだ。

目は心の窓。

極論を言うと、目を見ただけでその人の心がどんな状態なのか、その本質を知ることができる。

そして、雰囲気。

生徒会長の纏う雰囲気はマイナス方面の暗いもの。

そして目は濁っている。

それらが示すことは一つだけだった。

 

「あんたの心は完全に死んでいるのさ!」

「……」

 

生徒会長に向けて指さしながら告げたその言葉に、返す言葉も内容でただただ口をパクパクさせているだけだった。

 

「違うというのなら聞くけど。あなた、生きてて楽しい? 何を糧とし、何を楽しみに毎日を送っていますか?」

「……………」

 

その問いかけに、生徒会長は答えることはなかった。

これは答えられなくて当然の質問だ。

そもそも答えられた方が問題がある。

その問いかけをわざわざ選んだのは、彼女に問題定義をするため。

今の状態が問題だというのを知らせなければいけない。

 

「それが答えられない時点で、貴女は無能中の無能であることは確定してるんですよ」

 

僕はそれだけ告げると、一礼してその場を後にした。

 

(あ、カメラ忘れた)

 

校門の方まで歩いたところで僕はカメラを撤去することを忘れていた。

 

(今引き返して生徒会長と鉢合わせになったら最悪だな)

 

あれだけの暴言を吐いたのだから、確実に目をつけられているのは確実だ。

それが嫌ならそもそも言うなよという話だが。

 

(いないことを祈るか)

 

そんなことを思いながら、僕は行動の方へと引き返すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。何とか回収できてよかった」

 

何とか行動から回収できたカメラ三台を手に、僕はほっと胸をなでおろしていた。

何より、生徒会長に鉢合わせにならなかったことの方が大きい。

 

「さて、とっとと帰ろう」

 

見れば周辺は徐々に暗くなり始めている。

あまり遅くなるとまた父さんたちが心配することになる。

今度は大丈夫かもしれないが、また捜索隊を出されでもしたら大変なことになる。

 

「その前に早く帰ろ………ん?」

 

帰ろうと口にしようとした瞬間、視界の端に人影のようなものが見えた。

気になった僕はそれが見えた方向に視線を向ける。

 

「子供?」

 

小さな赤い髪の女の子が校舎内の角を曲がっていくのが見えた。

 

「って、ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだぞ」

 

迷い込んだのか、それとも冒険のつもりか。

定かではないが早く見つけ出して外に連れて行った方がいいのは確かだ。

僕は女の子の後を追うことにした。

 

「何故だ?」

 

女の子を追いかけている僕は、首を傾げずにはいられなかった。

 

「いくら何でも追いつけないなんてことがあるはずない」

 

先ほどから全速力で追いかけているが、女の子との距離は縮まる気配がない。

まるで影のように一定の間隔を保ち続けている。

しかも、相手もまるでこの校舎について知り尽くしているかのように左に曲がったり右に曲がったりと、僕を振り切ろうとしている。

それでも僕は見失うことなく追いかけ続けているのは奇跡にも近かった。

 

(今度は左か!)

 

女の子が角を左に曲がったのを確認した僕は、そのまま角を曲がる。

 

「なっ!?」

 

角を曲がった僕は、驚かずにはいられなかった。

なぜなら曲がった先にあったのは道でもなく、ドアでもなく。

壁のみだったからだ。

 

「確かに、ここを曲がったはず……」

 

見間違えたという可能性はありえない。

何せ、ドアはおろか違う場所に続く道はない一本道だったのだから。

だが、女の子はどうやって僕の前から消えたのだろうか?

 

「天井に張り付いているわけでもないし」

 

試しに上を見るが人の姿はない。

 

「…………」

 

僕は壁の前に歩み寄ると、壁に手を当てて目を閉じた。

それは壁から先の気配を読み取るためだ。

僕は、これを一種の怪奇現象ではないかと踏んでいた。

だが、気配どころか怪しげな雰囲気は一切感じない。

 

「………………帰るか」

 

これ以上ここにいるのもあれなので、僕は早々にその場を立ち去ることにした。

結局、小さな女の子の姿を見かけることはなかった。




今回登場しました下記楽曲は、すべて実在する曲です。

1:『START:DASH!!』 ラブライブ! 劇中歌より
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