ダンジョンで百鬼夜行するのは間違えているだろうか 作:匿投稿
極東を発って約二ヵ月。彼らは都市外からでもしっかりと見える塔、バベルを見上げ唖然としていた。故郷にも五重塔といった高い建物は存在するが、今ならばあれはまだ人の手で建てられたものだと納得できる。
なるほど、これは確かに人に成せるものではない。異形達は各々の認識を改め気を引きしめた。
同時に皆、不思議に思った。真っ先に騒ぎそうな主がこれまでにないほど静かなのだ…。
あまりの光景に臆したか?と邪推する者もいる中、小豆色の着物を着た幼い子供がちょこちょこと近づき袖を引く。
「若様!オラリオだよ?楽しみにしてた…「あれが…あれがオラリオ、そして噂に聞くバベルか。」でしょ…。」
少女は思わず語りかけるのを止めてしまった。
酷く落ち着いた声に驚いたのは勿論だがそれだけではない。ふと覗いた彼の顔の笑み、そしてギラギラとした眼を見てしまったからだ。未知に対する強い探求心を宿しながらも純粋な子供のような眼を。
それに気が付いた一同は「やれやれ、またか」といった空気を醸し出す。
「なんだ?どうした、呆れたような目でみて。」
「「「…なにも?」」」
「そうか、オラリオに入るのに関所があるらしい。お前達はまあ…いくら人に化けれるとはいえ駄目だろう?すまないが、いつも通り隠れてくれ。」
白髪の初老のなりをした男が代表するかのように前に出てくる。
「承知した。合流は三日後、それまで我々はオラリオに紛れ、馴染むとしよう。それで良いか?」
「ああ、緊急の時は分かっているな?」
「理解している。そちらについても問題は無い。」
「任せるぞ大天狗。じゃあ三日後…。」
そう言い関所へと行こうとする。
「若、待って…。」
「……今度は何だ…アマビエ。」
艶のある長髪を下ろし藍色の長羽織を着た幸の薄そうな女だ、もう待ちきれないのだが一体なんだというのか。
「護衛連れていかないと面倒なことに…なるよ?」
「視たのかよ…面倒なこと、か。分かった、酒吞!」
酒吞は最も付き合いの長いヤツだ。変に気を張らなくて良いし腕もある。角を隠すだけだし適任だろう。
「はいはい、面倒やわぁ…。坊?わかっとるよねぇ?」
「あいよ、オラリオの酒巡りでどうだ?」
「のった!坊は話がわかるから楽でええわぁ。」
「じゃ、行ってくるわ。後は頼んだ。」
「「「(お)気を付けて行ってらっしゃいませ(こい)」」」
見送りの言葉を背に関所に続く道を酒呑と歩く。
「久々にちゃんと帯締めたさかい。動きにくうて、敵わんわぁ……」
「ありゃ着てねえだろ、いつぶりだよまともに着たの。」
「そやねえ…坊が13になった時やから二年前、昨日のことみたいやわぁ。」
「ああ…13歳はお前達でいう成人の歳だと宴会やった時か懐かしいな。数百年生きてるお前からすれば昨日のようなものか。種族の違いはやはり大きいな。」
そうこうしているうちに関所にたどり着いた。
「止まれ!なんの目的でオラリオへ来た?」
「冒険者になる為に極東からやってきた。隣のやつも同じだ。通過料でも払うのか?」
「いや、そういうことなら問題ない。念のため【ステイタス】の有無を確認するから背中を見せてくれ。」
「分かった、よろしく頼む。」
「……良し、【ステイタス】は無し。これで以上だ。改めて、ようこそ迷宮都市オラリオへ!我々は新たな同業者を歓迎する!」
「ありがとう!酒吞行くぞ。」
「お兄さん、おおきに~」
「まずはギルドに行った方がいいぞ!ファミリアを紹介してくれるからな!」
いい人だったな…ああいう人は人気があるだろう。
「さて、行くかギルド…、酒吞!露店に寄るな!ほら行くぞ。」
「あぁ~見いや若様ぁ。ほらあれ!オラリオのお酒やん?買うてや!約束したやろ!」
「普段言いもしないのに突然呼ぶな。行くぞ。また今度な。」
「坊のいけずーーーー!」
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タケミカズチ様との買い物を終え往来の多い道を歩きホームへと帰る途中、突然強い風が吹きとっさに顔を庇う。
視界が遮られるなか「チリン……」。まだ私が極東にいたころ、偶にどこからか聞こえていた懐かしい鈴の音色が小さく響いた。
風が収まり、視界も戻る。しかし私は姿勢を戻すことも忘れていた。
サァ…と吹く心地よい風、ちらちらと陽が当たる木陰、心地の良い水の流れる音。ぼやけていて誰か分からない人影。記憶にない光景が頭をよぎっていた。
「………と!……こと!…みこと!」
「…っは、はいっ!何でしょう!?」
「大丈夫か?突然放心して気分が悪そうだが。」
「大丈夫です!桜花殿や千草殿もお腹を空かせて待っているでしょう!早く帰らなければ!」
「…そうだな、命!今日は鍋にしよう!」
「いいですね!では… …!」
「おお!… …。」
……私は一体なにを忘れているのだろう?
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