ダンジョンで百鬼夜行するのは間違えているだろうか   作:匿投稿

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最初の受難?

街へと入り、大通りに出た。お上りさんだと思われるのは癪なので不自然にならない程度に辺りを見渡し観察を行う。

様々な種族が入り乱れており、田舎者であれば余りの情報量に圧倒され立ち竦んでしまうだろう。

 極東の服は珍しいのか、チラチラと少なくない視線を感じる。男の視線が多いのは気のせいではない。

 なんせ妖艶な雰囲気を纏う美しい女が男にしなだれ掛かるようにくっつき歩いているのだ、あれに興味を持たないのは不能か男色家くらいなものだろう。

 彼自身、口には出さないが噂に聞く女神フレイヤも酒呑には勝てないだろう、なんて思っているのだ。

 そんな彼の思いを知ってか知らずか彼女は妖艶さと意地悪さを強めた目でこちらを振り向いて語りかけてくる。

 

「若ぁ、こらまるで逢引の様やねえ?女狐におつかい行かされた時以来やないの?黄昏時に恐がって裾掴んで離さなかった坊、愛らしかったわあ。」

 

ちっ!!

 

周りで視線を送っていた男達が揃って舌打ちをした。ケラケラと笑う酒吞に苦笑いを送り反論する。

 

「いやいや、ギルド行くだけだし。…お前まだ九尾と仲悪いのか。」

「なんや、冷たいなあ。……女狐と仲良うするんは、気が進まんなぁ。」

「あのな…「酒が飲みたいならそんなやつほっといて俺達と来いよ!」あ?」

 

 いかにも戦士といった装備を身に纏い下卑た笑いと視線を隠さず4人の男が近付いてくる。

 アマビエが言ってた面倒な事って…これか?確かに面倒だが大したことじゃない。万一に備えて気を抜かないようにしなければ…。

 

「ん~?あんさんらがうちにお酒飲ましてくれるん?」

「ああ!満足させてやれると思うぜ…色々とな…。」

「ほなら、およばれしよかなぁ。」

 

 彼女は愉しそうに口元を隠し嗤う。ついでとばかりに此方に視線を送りより笑みを深める。

 ……こいつ人が警戒してるって言うのに反応見て楽しんでるな?そうと分かればこっちにも考えがある。

 

「そうか、せっかくのお誘いだ行ってこいよ。良かったな酒飲めるぞ。」

「………?え、ええん?うちほんまに行くよ?」

「おう、行ってこい。好きだろ?タダ酒。」

「好きやけども…、よう考え?絶対手ぇだされるんよ?」

 

 良いって言ってるのに何なんだ?途端に止めさせようとしてくるな…。そもそも手を出される前に喰うだろこいつ。

 

「姉ちゃん、そいつも良いって言ってんだ早く行こうぜ!」

「……坊、怒っとる…?冗談や?…ギルド行こか、な?」

「なに言ってんだ、ほら!行くぞ!」

 

なかなかついてこないことに痺れを切らした男が少し強めに彼女を引っ張った。

 その瞬間

 

「やかましいわ!!!」

 

叫び声と同時に轟音。近くにあった壁が吹き飛び、土煙が舞う。何事かと見物人がその場を見ると、そこには先程女を掴んだ男が倒れていた。

 沈黙が辺りを包み込み、仲間の男達は壊れた玩具のようにギギギと此方を振り向き腰の剣を抜いて叫ぶ。

 

「やったな?!面が良いからって調子に乗りやがって!!どこのファミリアかは知らねえが俺達はLv.2だぞ!!」

「こっちは今大事(おおごと)なんよ!ぶんぶんうるさい羽虫の相手なんかしてられへんわ。…いねや。」

 

 そこまで大きくもない声が異様な程に通って聞こえた。彼女の顔を見た見物人は声を上げることなく黙ることしかできない。美人ほど怒ると恐いとはまさにこのことだろう。

美しい花には棘がある。とはうまく言ったものだよなあ…などと現実逃避をしてしまう光景が目の前に広がっている。

ギルドに行くだけなのにどうしてこうなった…。目立ちたく無いから護衛にこいつを連れてきたのに逆に目立ってるではないか。

 

「坊、すぐ終わらすから待ちいね…。」

「…阿保か、もう終いじゃ。行くぞ。」

「いやや、しばかんと気がすまん!」

「……終いじゃと言うたぞ、酒呑。」

 

 酒呑のみを威圧し動きを止める。頭が冷えたのか俺の喋り方が変わっていることに気がついたらしくバツの悪そうな顔をして大人しくなった。

 

「無視してんじゃねえぞ!!」

 

 無視されていることに我慢の限界が来たであろう冒険者3人は各々の武器を構え彼らへ攻撃しようとする。

 そのときだった。

 

「なにをしている!冒険者同士の街中での戦闘は規制されてるだろう!」

「ちっ!ガネーシャ・ファミリアだ!逃げるぞ!」

「「くそっ!」」

「待て!くっ、逃げ足の早い奴らだ…!」

「お前達も冒険者同士の戦闘は規制されてるだろう!しっかり守ってくれ!」

 

 あまりの素早い撤退に驚きを隠せず固まっていたら、エレファントな彫刻の入った武器を持つ冒険者がやって来て怒られた。見るに街の警備でもしているのだろう。

 

「いや、俺達は冒険者じゃないぞ。今日オラリオに着いたばかりの田舎者さ。」

「嘘を言うな、冒険者でもない人間があんなのとはいえLv.2を吹き飛ばせるものか!被害者なのは分かっているが着いてきて貰う!」

「ちょっと待ちいや!その子供は嘘言うてないで!」

 

赤髪の…女?が割り込んでくる。

 

「誰だあんた……女?だよな?」

「だぁれが無乳女神やねん!!しばくぞ!」

「いや、言ってないが…。」

「ははは、すまないね。こういう神なんだ。」

 

声だけが聞こえ首をかしげていると、「下だよ、下。」

見れば小柄な金髪の少年が無乳女神?の横に立っていた。

 

 ザワザワ…、見物人達は彼を見て安心したように会話を始める。

 

「ロキファミリアの【勇者】(ブレイバー)だ。一安心だな…。」

「ああ、良かったよ…街中でされちゃ敵わないもんな…。」

 

この男がロキ・ファミリアの【勇者】(ブレイバー)フィン・ディムナか…。つまりこの無乳が主神のロキで間違いない、と。敵対は避けたいな…さて、どうしたものか。

 

「すいません、助かりました。証明しようにもどうしたものか悩んでいたものですから…。」

「たまたま通りかかってな!おもろそうやったから首突っ込んでしもうたわ~。」

「ははは、連れが悪目立ちしたようで…。」

「ファミリア入ってないんやろ?それならロキ・ファミリア(うち)に来んか?あの娘も可愛ええから大歓迎やで!!」

「ありがたいお話ですが…「坊!怒っとるよな?ごめん~~。」怒ってないから離れろ!」

「……坊、誰やこの女は泥棒猫か?」

「いや、神ロキだ。今二人一緒にファミリアに加入しないか誘われたところだ。」

「そんなんええから、ギルド行くで。」

「あ、おいっ!えーーっと…そういうことなんでご縁があれば、ということで。失礼します。」

 

 ギャアギャアと大きな声で会話をしながら遠ざかっていく二人を唖然とした顔で見つめポツリと一言。

 

「嵐みたいなやつらやったなあ…。」

「良いのかいロキ?振られてしまったようだけど。」

「ええわええわ、ご縁ってやつに期待しとこか。」

「分かったよ、じゃあホームへ帰ろうか。」

 

 夕暮れを背に彼らもまた帰るべき家へと歩みを進める。彼らの影はまるで親子のように並び揺れていた。

 

 

 

=================

 

 

 

 一方そのころ、とあるファミリアにて。ギルドの紹介で1人の少年が入団を希望しやってきた。

 門番の男は白髪に紅色の瞳を持つひ弱そうな少年をあざ笑い、男娼の方が似合っているなどど心無い言葉を浴びせる。

 そんなことを言われたにかかわらず、服の汚れをはたき落とし一礼してからそこを離れる少年。根がとても優しい子なのだろう。

 

「ここも駄目だったかあ…お爺ちゃん、オラリオは厳しいところだね…。」

 

手にある紙には多くのファミリアの名があり、そのほとんどに×印がつけられている。ようするに彼はファミリアへの入団連敗記録の更新中なのだ。

 

「あとは、ロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアか…僕冒険者になれるのかなあ…。」

 

トボトボ、と肩を大きく下げ現在泊っている宿への帰路へとつく。

未だ彼の背を追う女神は現れず、少年の苦悩の日々は続く…。

 

 

 

=================

 

 

 

 ようやくバベルへと到着することができた。そこまでの距離でも無いのにとてつもなく疲労を感じる。

 なのにその元凶ときたら…。

 「ここがバベルであこがギルドかいな。なにがあるんか楽しみやわぁ。」

 悪びれもせず満喫しているのだ、ちょっとくらい折檻しても怒られないのではないか?と危険な思考が頭をよぎる。

すれ違った冒険者の顔が引きつっていたのが印象的だったが知ったことではない。かの鬼を折檻せねば、許してはならぬ。その思いを胸に彼女へと近づいてゆく。

 

 共に歩いてきた少年が何も言わぬことを不思議に思った彼女が振り返ると、そこには鬼のような形相の少年がいた。一歩一歩ゆっくりとこちらに近づいてくる彼に言いようのない恐怖を感じ後ずさる。

 

「ぼ、坊?なぁにそないな恐い顔してるん?鬼のようやで?」

 

鬼は自分であるのに一体なにを言っているのか。そんなことを思いながら後退していると背が壁にぶつかる。知らぬ間に端まで追いやられていたことに今更ながら気が付き焦る。慌てて正面を向き止めるように言うが、今の彼に言葉が届くことは無い。

 ガシッ、ぷらーん。

 頭を鷲掴みにされ、小柄な彼女の身体は宙に浮いてしまう。

 

「や、やめようや?な?これからはおとなしゅうするさかい…。」

「……本当に?」

 

彼の問いが最後の救いだと理解した彼女は折檻を回避しようと懸命に言葉を紡ぐ。

 

「ほ、ほんまや?なんなら反省の証で一週間禁酒するわ!だから、な?離そや。」

 

彼の瞳に理性が戻ったことを確認した彼女は己の勝利を確信した。このまま押し切れば逃げ切れる。そう思い最後の言葉を言おうと彼を見ると眼が合う。

ニヤリと笑う彼をみてバレていることに気が付き必死に身をよじるが時すでに遅し。

ミシリ、と嫌な音を響かせながら頭蓋を握られる。

 

「あたたたたたたっ!痛い!痛いって!堪忍や、今後は控えるから堪忍や!」

 

 ぱっ、と手放され危なげなく着地する彼女、心なしか潤んだ眼で彼を睨みつける。

 が、しかし今のを見てしまうと子猫が威嚇をしている様にしか見えないのも事実であり、周りの目は非常に暖かいものになっていた。

 苦笑しながら辺りを見渡し、ピンクの髪の小柄な女性が窓口で待機してるのを見つけそちらに歩いてゆく。

 

「失礼、ギルドはここであっているか?」

「はい、こちらがギルドですがどういったご用件ですか?」

「冒険者登録をしたいんだが大丈夫だろうか?」

「はい、では出身地、名前、所属ファミリアの記載をお願いします。」

「ファミリアには所属していないんだが登録は出来ないのか。」

「申し訳ありません。【恩恵】(ステイタス)を持っていない場合の登録は出来かねます。」

「そうか…。では少人数のファミリアをいくつか紹介して欲しい。」

「えっ、有名ファミリアじゃなくていいの!?あっ!……失礼しました。」

「楽ならそっちで話してくれ、その方がこっちも楽だ。」

「分かった!よろしくね!」

「言ったのは俺けど対応早いな…。」

「ところで名前はなんていうの?」

「そうだ、申し遅れた。俺の名前は、イズモ・葉月だ。」

 




ようやく主人公の名前を出せました…。ここからが本編開始なのにやりきった感が凄いです。ピンク髪のギルド職員…いったい何フロットなんだ?
エタらないよう、頑張ります!
評価、感想お待ちしてます!
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