ジュジュ様にお兄ちゃんがいたら   作:さっきのピラニア

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プロローグ

 

 

カチ……カチ……

マウスのクリック音が部屋の中に響く。煌々と輝く画面が閉め切った部屋の中を淡く照らす。ここは現実か、もしくはバーチャルか。どちらかさえ曖昧な薄暗さに身を任せ包まれながら、モニターに映し出された映像とヘッドホンから聞こえる演技に、ただひたすらに没頭していた。現実から全てを切り離して。逃げられないと、向き合わなければいけないと分かっていながら。

 

ん~良かった。良いアニメは何度見ても良いものだ。一気に見られる休日は至福の時間であるが、気づけば深夜で寝なければいけない時間だったり、明日は学校だったりもする。芸能ニュースと先程やっていたらしい人気のドラマの内容まとめとSNSの感想に目を通す。クラスのほとんどがこのドラマを見ているらしいが、中身を見なくてもこの程度の知識で大体の話にはついていける。

 

PCの電源を落とし、布団へと潜る。学校とは億劫なものだ。でも人として生きるからには行かなければいけない。そして学生として学校の中でその役割を演じるのだ。年を取り、立場が変わり、人は形を変えて別の役割を演じなければならないのだ。そんな陳腐な役割を演じなければいけないんだったら明日なんて来なくても良いんじゃないかな、と思いながら、俺は瞼を閉じた。

 

ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ。

枕の隣で震えるスマホの振動に強制的に意識を覚醒させられる。また朝が来てしまったか。

スマホのアラームを止め、洗面所に向かい顔を洗い歯を磨き、髪を整え、飯を食う。リビングから玄関に向かう途中、眠そうに目を擦りながら階段を下りて来るちっこい人物と目が合う。乾紗寿叶。俺の妹である。

「おはよ。」

「ん。」

「…ちゃんと挨拶くらい返しなさいよ。バカ兄貴。」

眠そうな目はジトーとしたものに変わり、こちらにごもっともな文句を放つ。悪いとはほんの僅かに思っている。反省はしていない。つまり歴史は繰り返すし、この小言は耳にたこが出来る位には聞いている気がする。

「…おはよう。」

ご覧の通り、俺と紗寿叶の兄妹仲は良いとは言えない。つまるところ微妙である。

昔はもう一人の妹である心寿を含めて仲良し兄妹だと近所の人々には見られていたと思う。今はどうだかは分からない。その実、不仲の原因は俺にあったりするのだけれど。

 

挨拶はそこそこに俺は玄関へと向かい、ローファーをつっかけ家の扉を押す。

扉の先には現実が待っている。いつ自分に刃を向けて来るかも分からない、非情な現実が。

 

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