貴方の為の交響曲   作:冬樹 蓮

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第2話:赤い焔

 

 

 

「ダークロケット団?」

「我々はそう呼んでいる」

 

あの後懸命な捜索も虚しくミュウツーは見つけられなかった。

しかし、きっとミュウツーによって倒されたのだろう伸びた敵とそのポケモンは捕縛されている。

ついでに言うなら、此処はサカキのアジトらしい。

 

 

帰り道がわからない。

 

 

どうやって来たのかも謎。

むしろ、この世界の人間じゃない。等々。

 

いくらポケモン世界と言えど馬鹿らしい私の訴えを「そうか」の一言であっさり飲み込んでくれたサカキには本当に驚かされた。

ゲームやアニメ。

私の知っている "サカキ" と、この世界の "サカキ" はどうやら随分違う様だ。

この世界にいる悪も。

 

「じゃあ、そのダークの連中がミュウツーを捕獲しようと?」

「ああ。我々がダークを追っていたのもそれが理由だ」

『……』

「良かったね、リザードン!サカキは味方だって!」

『信用できるか』

「……」

 

そう吐き捨てながらもリザードンの目は焦げたサカキのスーツを盗み見た。

素直に「ごめんなさい」は言えないのか。

 

『何か言ったか?』

「別に」

 

リザードンから目を逸らしてジュースを一口。

ふと、ノックの音に振り向いた。

サカキが入室を促すとそこにいたのは女性の団員だ。彼女から荷物を受け取って、私に差し出す。

 

「?」

「ところで、リク。このアジトに身を置く間、組織の一員として手伝う気はないか?」

「手伝う?」

「悪人退治だ」

 

言われて、ポカン。

悪人っぽい人が悪人退治とか言ってる。

 

「何か言ったか?」

「別に?」

 

心を!読まれた!!

 

「で、どうなんだ?」

「いやあ、そんなの‥」

 

改めて言われて、窓の外を見つめた。

 

美しい景色。

私が憧れ、焦がれてきた世界。

大好きなポケモンの世界を守る事が出来るなら…

 

「やる!」

「よし」

 

そんなの考えるまでもない!

荷物を受け取って、数回頷いた。

 

「ならば、リク。お前にはミュウツー救出の任務についてもらう。ミュウツーをダークから守りながら、奴らを殲滅してくれ」

「わかった!……へ?」

「我々の世界の事を知っているならバトルも慣れたものだろう?」

「は?ちょっ…」

 

待て待て待て。

一人でその任務をやれって?しかも、何の躊躇もなく命令してきたって事は最初から私に拒否権無かったですよね?

無茶を言いますねこの御仁‥!

 

「ちょ、私、手持ちも居ない‥!ってか、一人でそんな連中に挑めってミッション厳し過ぎやしません!?」

「それは問題ない。この任務に参加しているのはお前を初め複数人居るからな」

「……それは早く言って欲しい…」

「お前のような子どもを一人に責任重大な任務をさせるか。準備も必要だろう。暫くはこれを私服にすればいい」

「これ着替え?」

「ああ。部下に用意させた。流石に子どもサイズの制服は用意していないからな」

「うん?」

 

荷物の中は‥うん‥言われた通り子ども服だ。

ポケモン世界の女の子が着るような可愛らしいワンピースから、シンプルなシャツやショートパンツまで。

だが、待て。

いくら私が身長的に少々小柄の部類に入るとは言え、このサイズは流石に無理がある。

 

「どうした?」

「あの、サイズ」

「サイズ?制服ならばお前が旅に出る前に女性職員が採寸してしっかりとした制服を‥」

「ちがっ」

「?」

「……えっ」

 

え?

何その反応?

 

「リク!?」

『っ、おい、どうした?』

 

あゝ。

嫌な予感がする。

 

 

………。

 

 

違う。

嘘だと信じたかったのだ。

 

 

いつもより低い世界。

背の高いサカキや他の団員。

何より明らかにサイズの合っていない元々着ていた私の制服。

 

突然走り出した私を追いかけるサカキとリザードンなんて構っている余裕もなく、広い階段を駆け下り、踊り場に立った。

元悪の組織のアジトだったらしいコンクリートが打ちっ放しの廊下。その一つの階段に鏡があったことは覚えていたのだ。

意を決してその前に立った私は、しかし、無情にも信じ難いリアルが叩きつけられる。

 

 

「あ‥」

「どうした?」

『何なんだお前』

 

 

あゝ。

 

 

 縮 ん で る 。

 

 

見た目10~12歳。

18年間という人生を歩んできたのに、その内半分近くが無かった事にされている。気分はまるで某小学生探偵だ。

ゲームの主人公と年齢が近くなったのはある意味喜ばしい事なのかもしれないけれど。

 

「リク?」

 

体の力が抜けた。

突然目の前で床に両手を突いた私を、果たして背後の二人はどう思ったのか定かじゃないが、確かに言えることは。

 

 

 

この後、私は気を失った。

 

 

 

---

 

 

 

ミュウツーを保護し、ダークロケット団を殲滅する事。

 

 

それが私に与えられた任務だ。

幼児退行(物理)と言う逆境を乗り越えた私はサカキのアジトの一部屋を自室として与えられ、そこで数日を過ごして今日に至る。

鏡の中の私の姿にももう慣れた。

真新しい制服に袖を通して、首を縦に振る。

 

「なかなか可愛いじゃないか。この制服!」

 

お腹を出すのはロケット団の趣味なのかはわからんが、ムサシと同じ白のトップスに、ふわりと揺れる同色のミニスカート。

黒のロングブーツ。

胸元の大きな "R" の文字はまるでコスプレでもしている気分になる。

 

ロケット団の一員になったのだと実感が突然沸いた。

ちょっと楽しいぞ。

 

「用意は終わったか?」

「はーい」

 

それに、ノックをして入ってきたサカキも納得の顔をしていた。

「馬子にも衣裳」とか言うな。心の中に留めておけ。

 

「荷物はもう纏めたのか?」

「うん。抜かりはないよ!多分!!」

「多分?」

「た、旅なんてした事無いもん。わからん!」

「はぁ…見せてみろ。私が見てやる」

「へぁ!?あ、ありがとう??」

 

親切なサカキはこの数日何回か見てるけど違和感すごい。

そうは言っても、自分じゃ本当にわからんので最終チェックはサカキに投げるつもりでいた。

キャンプならともかく何日も続く、下手をすれば年単位で掛かる旅だ。そんなの知らん。

いや、直ぐにでもミュウツー助けてダーク殲滅するけどさ?

 

……。

 

サカキが荷物を確認する為に一度全部ひっくり返して眉を寄せる。

そして、荷物に彼が必要と判断したらしい物が増やされ減らされて‥ほら見ろ!やっぱり問題あったじゃん!

チェックが終わったのか、サカキは次々荷物をバッグに戻していく。

この世界のバッグの驚異的な収納力に戦慄する間もなくその作業は終わり、隣で覗いていた私の前にスマホが差し出された。

 

「なにこれ?」

「お前のスマホにトレーナー登録をしておいた」

「スマホに登録!?」

「それがどうした?」

「い、いや。てっきりポケギアとかかと思っていたんだけど‥この世界にもスマホあるんだ‥?」

「ポケギア?そんな昔の物、今は誰も使ってはいないが?」

「そ、そう‥」

 

他の世界の人間をどうトレーナー登録したのか甚だ疑問ではあるが、そこは元・マフィアたる所以だろう。敢えて追及はしない事にする。

私が少女に見えるからだろうスマホの色は赤。元の世界の物と大差無く馴染むそれを早速開いてみると確かにサカキの番号が登録されていた。そして、私のトレーナー画面も。

 

………。

出身地はトキワシティ。

ジムリーダーサカキが保護者ってまじか。すげえな私のステータス‥。

 

「どうした?」

「何でもない。とにかく、色々ありがとう、サカキ!」

「構わない。そういった案件は慣れている」

「悪い事してたんだねぇ」

「今は足を洗ったぞ。安心しろ」

 

もうマフィアではない。それは嘘ではなく、「使える物は使う」と、そういう事だろう。

自分の目的の為には方法を選ばない部分はまさに私の知る "ロケット団のサカキ" その人で、何処か安心しつつも末恐ろしさを痛感した。

そんな戦慄を他所に、ふと、サカキが窓の外で待つリザードンを見下ろし目を眇める。

 

「リク‥本当にアレを連れていくのか?」

「うん!そうだよ!」

 

アレ。とは、勿論ミュウツーが生み出し、つい先日最悪な出会い方をしたコピーリザードンの事だ。

当然だがジムバッチをまだ一つも獲得していないからリザードンを従える事なんて出来る訳なく、私自身、あんなに高レベルのポケモンが簡単に仲間になってくれるなんて思っていない。

だって、彼はボールにすら入っていないのだ。

 

ただ、 "ミュウツーを助け出す" と言う目的が一致しているだけ。

 

ミュウツーに危害が無いとわかるときっと去ってしまうんだろう。

そんな曖昧な所謂同盟だ。ポケモンは私がゲットして強くしなければならない。

しかし、サカキはそんな私に渋った顔を見せるばかりだったけれど。

 

「……何よ‥」

「いや‥」

 

ほら、やっぱり苦い顔する。

 

「何度も言うが、本当に良いんだな?ボールにも入らないようなポケモンだぞ。旅のパートナーならもっと慎重に考えて決めた方が‥」

「サカキ」

「………」

 

これ以上は言わせない。

話を遮ると、サカキは口を閉ざして私を真っすぐに見てくれた。

心配させているのがすごくわかる。でも、ごめん。これは譲れない。

深く息を吐き出してギアを手首に戻し、訝しむサカキをじっと見つめた。

 

「サカキ。リザードンとは同盟関係だよ?お互いにミュウツーを見つけたら解消される関係だろうと、ミュウツーを本当に想ってくれてる仲間と旅をしたいの。勿論、パートナーはちゃんと見つける」

「お前はそれで良いのか?」

「うん。それで十分!まずは、ミュウツーを探さないとね!」

 

同じ目的があるリザードンとなら達成するまでは良好な関係で居られると信じたい。

ダークはリザードンにとっても敵なんだ。きっと、力になってくれる筈。

サカキもそれを感じていたようで、渋々ながら頷いた。

 

「なら、せめてトレーナーとしてモンスターボールを持っていけ。パートナーは多い方が心強い」

「うん!ありがとう!」

「あと、コレを‥」

「うん?マント?」

「ダークの影響で我々ロケット団は未だ悪の組織と誤解を受けるからな。街ではコレを着ていろ」

「へぇ‥」

 

渡されたのはモンスターボールを10個。

それに、上質な黒地のフード付きマントだ。

防水加工がされているが滑らかで暖かな生地。丈は足元までしっかり隠してくれる程。

何より、首元に施されたマントには大きな赤いリボン。真ん中にモンスターボールを嵌め込めるようになってる。

 

「か、可愛い‥!」

「気に入ったか?」

「う、うん‥!気に入った!」

 

正直、本当に可愛い。

こんなマントを選ぶセンスがあるなんて、まさかサカキはロリコンだったりするんだろうか?

 

「ニドキング、じしn‥」

「行ってきます!」

 

おっと!うっかり口に出してしまったようだ!

やる気満々のニドキングが(ご主人様そっくりの顔で)ニヤッと笑うのを目に慌ててバッグを引っ掴んで飛び出した。

 

 

 

---

 

 

 

「良い天気~」

 

空は高く。青くて風は穏やか。

慌ただしくアジトを飛び出した世界は旅の始まりに相応しく絶好の旅日和だ。

 

『早くしろ、人間』

「人間じゃない。リク!」

『人間で十分だ』

「あ"?」

 

リザードンの態度を前にしなければ。

 

前途多難。

自分で納得した事だけれど、当然ゲットしている訳じゃないリザードンはボールに入る事も無く、好き勝手に歩いて行ってしまう。

 

此方は子どもの体。

子どもの歩幅だ。

 

勿論、追い掛けるのだって一苦労。

 

『なんで俺がこんなガキと‥』

「ミュウツーとダークの情報を知りたくて私と行動しているんでしょう?」

『チッ!』

 

態度悪い。

唾を吐き捨てるように赤い火の粉を吐き捨てたリザードンは決して私を見ようとはしなかった。

 

「はぁ…」

 

リザードンは私に不信感を持っているのは間違いない。

"ポケットモンスター" を知っている異世界人で、しかも、ポケモンと話せるなんて普通の人間じゃないんだから当然だ。

まだポケモン扱いされないだけ良いのかも。

 

そうとはわかっているけど。

 

「あんまりだぁ」

『あ?』

「なんでもない」

 

苛立ちながらも振り返ったリザードンを足早に追い越す。

 

「先が思いやられるなあ」

 

せめて、早くポケモンを捕まえなければ。

ポッポ。コラッタ。比較的捕まえやすいだろう野生を育てないとダークに対抗なんて出来やしない。

不安しかない旅を憂うも状況が好転する訳じゃないけれど、今だけは頭を抱えたい気分だ。

 

 

 

『人間!!』

 

「へ?」

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「サカキ様。本当にリクにリザードンを預けたのですか?」

「あの子が自分で言い出した事だ。私はこれ以上の口出しをするつもりはない」

「ですが‥」

 

書類を睨む目をそのままにナツメへ返事を返す。

訝しむナツメの心境は、彼女と同じエスパー能力を持たない私であっても容易に想像出来る。

 

「不安か」

「はい」

 

異世界からやってきたリクという少女。

あの子がアジトを離れて数時間。早ければ明日の昼には近くの街につくだろう。

何も問題が無ければ。だが。

 

それはナツメも理解しているだろう。

だからこそリクが心配らしく、表情を暗く眉を寄せた。

 

「…サカキ様‥リザードンはあの子の手持ちではありません。せめて、一匹だけでもポケモンを貸し与えるべきではありませんか?」

「必要ない」

「ですが、野生に遭遇した時、危険な目に遭うのはリクです」

「必要はない」

「サカキ様!」

 

勿論、ナツメの心配は尤もだ。

しかし、私は出来るだけリクの意思を尊重してやるべきだと思った。

 

リザードンがコピーポケモンであると察したのはリク。

何より、彼女はポケモンと人間の言語で会話が出来る。

それは、誰よりもポケモンと心を通わせる事も可能だと言う事だ。

ナツメもそれはわかっているだろう。しかし、それでも心配なのだと語る瞳に首を振った。

 

「大丈夫だ」

「しかし‥」

「あのリザードンはミュウツーが生み出したコピー。奴と共に過ごしていたのなら其処らの野生ポケモンよりも遥かに知能は高い筈だ。奴にとって最善が何か。同じ目的を持っているのなら猶更あの子を無碍にはしない」

「…成程‥」

 

ミュウツーを救おうと抗い。

勘違いだろうがたった一人で我々に立ち向かったのだ。リザードンならリクの力になるだろう。

 

 

 

「私は、リクの判断を信じるさ」

 

 

 

きっと、大丈夫だ。

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「ハッ‥!はぁッ…!」

 

ポケモンに追われる。

それがこんなに怖いなんて想像もしていなかった。

 

『町まで急ぐぞ』

「う、うん‥!」

 

オニスズメとオニドリルの群れ。

私が遭遇してしまったのはそんな凶悪だ。

群れになって襲い掛かってくる奴らを蹴散らすリザードンの後ろを追い掛け、零れた嘴を払った。

 

「…っ」

 

爪が。

嘴が痛い。掠めた腕には赤い筋が残り、次の瞬間には赤く血が飛ぶ。

 

「い、いたっ」

『……貧弱だな』

「私はか弱い女の子なの!……ってか、なんでこんなに居るのよ!?」

『ダークの連中が乱獲していたエリアだ。縄張り広げに来てんだろ!』

「碌な事しないなあ!」

 

改めて心に決めた!殲滅決定!!

 

なら、まずは目の前の障害を乗り越えなければならない。

目前に迫ったオニスズメを寸でで避け、安心したのも束の間、次の瞬間にはなんとも不甲斐なく足を取られて盛大に転倒。肩を強打して息が詰まった。

 

『人間!』

「う‥」

 

なかなかに痛む。

衝撃でくわんと揺れた頭を振って、ふと、置かれた状況に息を呑んだ。

 

「やば‥」

 

ぐるりと私を囲む殺意。

翼を持ち上げ威嚇する姿。向けられた嘴は確実に子どもを一撃で殺す凶器だ。

しかし、それよりも目を惹いたのは戻ってくるリザードンと、彼を狙う数羽の敵。

 

「リザードン!」

『ッ、グッ?!』

 

リザードンが気付くより早く何本もの嘴が衝突し、倒れた隙に囲まれている。

 

「ッ!」

 

確かに、数分前まで私たちは喧嘩していた。

でも、そのリザードンが今は私を助けようとしてケガをした。

私が居なければ、無かったケガを。

 

「ッ!くそ!」

 

リザードンに気を取られた隙にオニスズメの攻撃を許してしまう。

スカートを掠めた爪に。しつこく受ける嘴に悲鳴を上げる事すら出来そうにない。

 

「リザードン‥!」

 

痛い。

怖い。

でも、それ以上にリザードンをこれ以上傷付けたくはない!

 

「リザードン!!」

『!』

 

その衝動のまま、リボンに嵌めていた空のボールを外して翳した。

 

「リザードン、お願い!ボールに入って!!」

『はぁ?!』

「お願い!今だけ、私に貴方を守らせて!!」

 

ボールの中ならきっと安全だ。

今この時を乗り切ってすぐに逃がしてあげるから。と。

掠める攻撃をそのままに強く叫んだ。

 

「わかって」

『………』

 

祈る様に告げる。

その瞬間、姿勢を低くしたオニドリルが私に狙いを付けた。

 

『ドリルくちばしだ!逃げろ人間!!』

「……」

『おい!!』

 

あゝ。

ダメだ。逃げられない。

 

 

 

『リク!!』

 

「!」

 

 

 

名前を呼ばれたその瞬間。

私の周りを強力な火柱が囲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何がおかしい』

「えへへ」

『気持ち悪い』

 

頬が緩む。

そっぽを向いて悪態つくリザードンに寄り掛かったまま手の中でボールを転がした。

 

「強いね、リザードン」

『当然だ』

 

私も。リザードンもボロボロ。

ふたりとも体中傷だらけで痛かったし怖かった。

けど、それ以上に名前を呼ばれた事がこんなにも嬉しい。

今はリザードン専用になったモンスターボールをみつめて咳払いの声に仰ぎ見る。

 

「どしたの?」

『…その名前で呼ぶのを止めろ』

「ん?」

 

脈絡のない文句に我ながら頭悪そうな声が出る。

リザードンの目は真剣そのものだ。だからこそ、わからない。

 

「何が?」

 

わからなければ聞くしかないので教えてくれと見上げていればため息ついて頭を抱えた。

 

『…リザードンは種族の名前だ。俺が気に入る名前を付けられたら仲間で居てやるよ』

「え?それ‥」

『ニックネーム?とやらを寄越せ』

「!」

 

恐らくリザードンの精一杯なんだろうぶっきら棒なセリフ。

けど、あまりに "らしい" 乱暴なセリフが今は嬉しくて顔がニヤけてしまいそう。

 

『何がおかしい』

「いやあ。君と仲良くなれるなんて嬉しいに決まってるじゃない」

『はぁ!?』

 

 

 

「火焔」

 

 

 

『…ヒエン?』

「貴方の名前よ。私の国で火。焔。と、書くの。強力な焔を操る貴方にはピッタリだと思わない?」

『…焔か‥まぁ、いいさ』

 

くつり。笑う火焔に安堵した。

 

「火焔」

『なんだ?リク?』

「呼んだだけ!」

『あっそ』

 

あゝ。

嬉しい!

ポケモンと心を通わせられた事が!私と旅を続けてくれる事が!

 

「よろしくね、火焔」

『ああ』

 

前途多難?

勿論、前言撤回!!

 

丘の上は満点の星空がとっても綺麗だ!

 

 

 

-to be continued-


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