楽しい楽しい料理人修行生活   作:食戟のソーマはいいぞぉ

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1日2話投稿を目指してます……(瀕死)。


第9話

『お待たせしましたー!食戟管理局よりこの勝負が正式な"食戟"であると認められました!まもなく開戦しまーすぅ♡』

 

━━ワアァァァアァァアアァァアッ!!!

 

すごい盛り上がり。ただの料理対決なのにどデカい会場、司会者……テレビのクイズ番組か何か?

そんなことを思いつつ会場の通路を歩く。そーまくんが出るってことで来た訳だが……座れる席がない。満席だ。

 

まあ、歩きながらぼちぼち見ていくか。

 

審査員は3人、テーマは丼物、メイン食材は肉。シンプルだね。

そんなこと思っているとそーまくんの対戦相手、確か水戸?……下の名前が分からない。とりあえず響き的に黄門と呼んでおこう。

 

黄門ちゃんが出てくるのが見えた。

褐色肌にビキニスタイル。……油はねには気をつけて欲しい。あちいあちいだからね。

 

「お、そーまくん出てきた」

 

黄門ちゃんが出てきてすぐに反対側の通路からやってきた我らがそーまくん。……ブーイングがすごい。ここは手を振っておこう。

……あ、気づいた。めぐちゃんもいる。あ、頭下げてきた。そーまくんは手を振ってる。ここはピースを返しおこう。

 

『さあ、改めて勝負の条件を確認しよう!水戸さんが勝てば丼物研究会は廃部、かつ、幸平くんの退学!』

 

……ま?そーまくんすごい。退学かけてまで……か。

 

『そして!幸平くんが勝てば丼研の部費増額、部室の拡張と調理設備の増強!さらに━━水戸さんが丼研に入ることになりまーす!』

 

はあ……なんか釣り合ってない気がするのは俺だけなのかな?

そーまくんの退学はどこから出てきた?

 

……そういやあの黄門ちゃんってえりなちゃんの手下なんだっけ?

 

「………」

 

なんとなーく掴めてきたぞ。えりなちゃんってばそーまくんを目の敵にしてる節があるからな。そういうことなのかもしれんな。

 

顎に手を当てそんな考えをめぐらせていたその時、会場がざわめき始めた。

 

「ん?」

 

みんなの視線の先、俺の歩いてる通路の奥側から歩いてくる2人の影。

えりなちゃんと秘書子ちゃんだった。

 

「……やっぱ来んのね」

「っ、あなたは……」

「そんな睨みなさんな。秘書子ちゃんも牙剥く犬みたいに構えないの」

「だ、誰が秘書子だ!」

 

俺を睨みがましく見ていたえりなちゃんはスっと視線を外し、綺麗な髪をたなびかせ通路に置かれたソファに腰かけた。

……もしかしてここVIP席とかだったのかなー。迷子?いやいや、道が俺を導けなかっただけだよ。

 

つか、観客席からの死線すげー。何あれ人殺せる目だよ。そんなに皆えりなちゃんのこと好きなん?俺に離れて欲しいのかい?

 

「それなら隣に座るよねー」

「「っ!?」」

「お隣失礼ね」

 

近くのパイプ椅子をえりなちゃんの横に並べ背もたれを前に、それにひじとあごを乗っけて座る。

 

「……どっか行きなさいよ」

「もう歩きたくない」

「はぁ…」

 

さて、観客席からの憎々しい視線を無視しつつそーまくんと黄門ちゃんの勝負を見る。

 

『では!双方調理台へ!それでは参りましょう!負けたものは全てを失う舌の上の大一番……!食戟……開戦!!!』

 

始まった。

アナウンスを合図に両者早速調理へと取り掛かる。

うん、さすが早い。

 

そんな中、黄門ちゃんが初めに出したものは、

 

「……牛一頭まるまるかい」

 

小型とは言え牛一頭。しかも見るからにA5ランク。

 

「馬鹿だね」

 

黄門ちゃんの用意した肉を見て呟いた言葉。横で聞こえていたえりなちゃんはそれに反応してきた。

 

「……何がかしら」

「まじ?わからん?」

「……っ」

「ま、見てれば分かるよ」

 

クレーバーナイフで牛を解体していく黄門ちゃん。

パワフル、かつ繊細。技術に関しては申し分無し。さすがの一言。

 

さて、そうしてそんなに時間も掛からず取り出せた霜降り肉。それを早速焼き始める。

表面に焼き色をつけ、

 

「……バターか」

 

溶けたバターを掬い、肉全体に。

あれはいいね。食いてえな。腹減ったな。

 

「バターで肉汁を閉じこめる壁を作ったって感じね」

「あら、分かるのね」

「……そりゃね」

 

"二流のくせに"分かるのね、って感じかな。まったく、

 

「いちいち皮肉を言わんと死ぬ病気なのかね」

「っ」

 

お、オーブンにぶち込んだか。もうあれ焼きあがったやつだけで美味いだろ。もう食わせろ。丼には勿体ないからよ。

 

さて、そーまくんは……と、

 

「玉ねぎの大量みじん切りか……」

 

……なるほど。いい選択肢を取った。

そんなそーまくんはついに肉を取りだした。その肉は、

 

「スーパーの肉ですか…」

「……舐めてるわね」

「いや、正解だ」

「……それは、なぜ?」

 

睨んでくる2人の女子。人によっちゃご褒美になり得る構図だが、俺は違います。

 

「なぜも何も考えてみようよ、そこはさ。答えをすぐ聞かない。……ね?」

「「………」」

 

さて、なにか黄門ちゃんがそーまくんに言ってる。

勝負降りろとかそう言う所かな?

……A5ランクの肉使って勝ち確信してるようじゃまだまだやで。

 

そんなA5ランクの肉が焼きあがった様だ。

取り出し、机に置き、針を指し肉汁まとった尖端を唇につけていた。

ほう、面白い。

 

「緋紗子、彼女の料理を支えるもの……何か分かる?」

「……枝肉をも自在に取り扱うあのパワー、でしょうか?」

「それもあるわ。けど━━」

繊細さ(センシビリティ)……でしょ?」

「……ええ」

 

話に割り込ませてもらうぞ。俺はお前が嫌いだから嫌がらせをしたい。

 

「唇は人体の中で特に熱を感じやすいところ。つっても正確な温度……つまるところあの肉が今65℃っていうのまでわかるって言うのはそうはいない」

「っ!?」

「……あなた、分かるの?」

「ん?……あー、まああの子見てればそれくらいは「じゃなくて!」」

「触れもせずに温度がわかるの?」

 

目を見開くえりなちゃんに俺は笑った。

 

「さてね?勘かもよ?」

「……っ」

 

それにしても……そーまくんの方からすごいいい匂いがする。

……うん、美味いねこれ。

 

「そろそろ互いに仕上げだね。……食いてぇなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは黄門ちゃん。

白米に花の花弁のように並べられた肉の切り身。

見た目はよし、味もいい。

 

実際に審査員たちの食いつきもなかなかのものだった。

俺も食いたいって思うもん、"あの肉"。

 

「ふっ、勝負あったわね」

「ですね」

「………」

 

ご飯は……ガーリックライスか?遠すぎてわかりづらいな。

ガーリックライスとA5ランクの肉か。

まあ、無難っちゃ無難かな?

 

お次は我らがそーまくん。

恐らく出してくるのは、

 

「シャリアピンステーキかな?」

「……シャリアピンステーキ。玉ねぎで肉を柔らかくした、と」

「ふん、それだけでは彼女を越えられないわよ」

「……それだけなわけないでしょうよ。まったく」

 

早計がすぎるぞ。

 

「ま、見てれば分かる」

 

その一言を言った時、ほぼ同時に審査員たちが1口、そーまくんの丼物を食べていた。

それを皮切りに箸をとめずに掻き込み始める3人の審査員たち。

 

「なっ!?」

「……っ」

 

驚く秘書子ちゃんに目を見開くえりなちゃん。

 

「丼物はあくまで丼物」

「……何が言いたいの?」

 

俺の口にした言葉に睨みを聞かせ問うてくるえりなちゃん。

 

「丼物は一椀の料理だよ?A5の肉は美味い。当たり前のことよ。でも、だからこそ圧倒的に丼物には不向き。味の強い和牛に対抗してご飯まで強くしたら当然味は喧嘩する。味はまとまらず一椀にはならない。あくまで肉とご飯だ。だからこそ安物の肉。味は薄いがその分タレとご飯で味をひきたて合わさることが出来る。………安いからこそ生まれる美味さもあるってこった」

「……クッ」

 

悔しそうな顔。その顔を見れただけで満足だよ。

 

「勝敗はもう決まったし、俺はもう行こうかな。じゃねーえりなちゃんに秘書子ちゃん」

「……ええ、さようなら」

 

冷たい声。怒りも含まれてる。……も少し優しくしてくれたっていいじゃない。

 

「そんな不機嫌にならずに、えりなちゃんが思うより料理は奥が深くて広い世界だってこと……今日はそれを知れてよかったじゃない」

「っ!」

 

うお、すっげー眼光。

体に穴空いてない?大丈夫?

 

とりあえず俺は小走りでその場を後にした。

あー、こえーこえー。




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