楽しい楽しい料理人修行生活   作:食戟のソーマはいいぞぉ

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暇つぶしで書き始めたものがランキングに入ってて、しかも2位とか驚きすぎて腰が吹っ飛んだ。
たくさんの人に見られてもう怖い。


宿泊研修
第10話


「よし、ハンカチは持ったかー!」

「……おー」

「ティッシュは持ったかー!」

「……おー」

「着替えは持ったかー!」

「……おー」

「ぃよーし!行ってこい!」

 

そう言って背中を思いっきり叩かれる。

 

「……いってぇ」

 

そんなこんなで朝の早い時間。俺は竜胆に送り出されていた。

 

「お土産よろしくなー!」

「いやでーす」

 

 

「宿泊研修?」

 

数日前の昼休み。例に漏れず竜胆と二人で歩きながら授業で俺が作っていたツマミを食べていた時だった。

竜胆から言われた言葉、"宿泊研修"。響きはとても楽しそうなものだが、

 

「おう、もうそろそろその時期になってきてるだろ?……あれ?連絡とかまだ来てない感じか?」

「なーんも知らん」

 

そう言うと懐から出した1つのしおり。

そこには【友情とふれあいの宿泊研修】と書かれていた。

……クシャクシャになってるけど。

 

「おま、相も変わらず物の管理が……」

「別にいいだろ読めんだから。ほら」

 

手渡されるそのしおり。中を開いてみると持ち物や宿泊場所の情報が書かれていた。

 

「……パッと見楽しそうだねこれ」

「おう、実際楽しかったぞ」

 

宿泊場所は遠月の運営するリゾートホテル。一泊で8万くらい持ってかれるかなりの高級ホテルで少しワクワクする。が、その楽しみに満たされた心が次の言葉で消えた。

 

「まあ、それでアタシたちの学年、半分以上は退学くらったけどな」

「……はあ?」

 

半分……1学年千人近くと考えても五百人?しかもそれ以上?

あれ?地獄かな?

 

「いやー、仲良くなった人たちも退学していって残念だったけどまあ普通に楽しかったぞ」

「……いや、なんかもう行きたくなくなったなこれ」

「周りが言うには【友情とふれあいの宿泊研修】ならぬ【無情と篩い落としの宿泊研修】だってよ」

 

……この先こんな地獄が沢山待ってるならここで篩い落とされた方が幸せな気がしてきたぞ。

 

「てなわけで頑張ってこいよー」

「うーん、軽いなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスに揺られ目的のリゾートホテルに向かう中で数日前の竜胆とのやり取りを思い出していた。

 

「無情の篩い落としねぇ……」

 

今どきの料理業界はおっかないね。

なんというかもっとこう手心というか……。

とそんなことを思っている中その目的のリゾートホテルが視界に入ってきた。

 

「……でっか」

 

土地も建物も合わせていくらつぎ込んだのだろうか。

ホテルと言うよりもほぼ城みたいなそんな建物がドドドンと構えられていた。

 

某県某郡、富士山と芦ノ湖が一望でき、避暑地として名高いこの地に構えられたホテル。そりゃリゾートだわ。

 

「そろそろ降りる支度をしといてくださーい」

 

どうやらそろそろ着くらしい。俺は手を組み上にあげ、伸びをしながら骨を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっす」

「お、奏も到着か」

 

バスを下り集まっていた極星寮生たちの元へ。どうやら俺で最後だったらしい。

 

「それにしてもデカイねー」

「一泊8万らしいぜ?」

「しかも一人分で!」

「らしいねー」

 

そーまくんとお団子ちゃんのテンションがすごい。是非とも試験中もそんな感じでいて欲しい。

 

「ここに泊まれるとかマジでテンション上がるよねー!」

「アゲアゲ?」

「アゲアゲェー!」

「……今日の試験を生き残れたらな」

 

お団子ちゃんとそうやって拳を突き上げあっていたらしゅんくんが現実を見せてきた。

……さすがはしゅんくん。俺たちが直視したくない現実に目を向けてやがる。

 

「……伊武崎ってボソッと冷めたこと言うよねー」

「現実主義なんでしょうね。さ、張り切っていこー」

「……橘は橘で呑気だよねー」

 

何を馬鹿な。俺ほどきっちりした男はいないぞ。多分。

 

 

ピリッとしてる。

会場について真っ先に思ったことだ。

これから始まるのは篩い落としの地獄の合宿。そりゃここまで張りつめるものだが、ちと、張りつめすぎてるな。

 

「そうは思わないかねお団子ちゃん」

「……うえ?な、何が?」

 

ここまで張りつめててもいいことは無い。大事なのはリラックス。そう、脱力して━━

 

「……zzz」

「……あれ?橘?……立ったまま寝てる…!」

「ん?寝てたか」

「……気、ぬきすぎじゃない?」

 

お団子ちゃんのジト目。……ふむ、なかなか可愛いものだな。

 

「……料理する時肩に力入れる?」

「え?」

「力入れない方がいい料理は作れる。……そういうこと」

「……はぁ、やっぱり橘って変なやつだよねー。ま、でもありがと」

 

そう言って笑うお団子ちゃん。

うんうん、いい顔になった。それでいい。

 

とそんな会話をしていた時だった。

 

『おはよう諸君。ステージに注目だ。合宿の概要について説明する』

 

始まったか。

ステージに立ちマイクを手に口を開いたのは遠月講師、ローラン・シャペル先生。

先生の話を要約すると、

 

日程は5泊6日。

連日料理関連の課題が出され、課題内容は毎年違う。

初日は20のグループに分けられ、各々指定された場所にレッツらゴー。

講師の評価ラインを下回ったらバスに乗せられ地下労働行き……改め学園に戻され退学と。

 

「……なるへそ」

『さて、最後に審査に関してだがゲスト講師を紹介しよう』

 

ゲスト講師……有名人?

 

『多忙の中集まってくれた、"遠月学年、卒業生"たちだ』

 

先生の言葉にざわめき出す会場。

卒業生。ほかの学校だと何の変哲もない言葉だがここ遠月だと話が違う。

一桁の卒業率、それを勝ち抜いた人達ってことだ。料理の腕はモチのロン一流。

それはそれは、

 

「……面倒くさそーな合宿になりそうだな」

 

そういった途端にゾロゾロとステージ上に現れた男女の集団。

あれが卒業生か。……親父たちと同じ雰囲気を感じる。

 

「ンー……前から9列目……、眉に傷のある少年」

 

唐突に口を開いた先頭のメガネさん。

眉に傷と言えば……そーまくん?え?なんかやったのあの子?

 

「あー、悪い悪い隣だ」

 

あ、隣か。良かった良かった。またそーまくんトラブルを起こしたかと思った━━

 

「オマエ、退学ね」

 

……へぇ。なるほど、こういう感じね。

退学を言い渡された生徒が反論する中、俺は1人この合宿について納得していた。

 

退学を言い渡された生徒は柑橘系の整髪料を使ってた。その匂いは料理の香りを邪魔をする。故に退学。

1発退場。2度目も何も無い。失敗は即ゲームオーバー。

 

そりゃ半分退学くらうわけだ。

 

「ヒィー、きっつ……」

 

小声で俺はそう呟いた。




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