楽しい楽しい料理人修行生活   作:食戟のソーマはいいぞぉ

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料理の構想が浮かばない。


第4話

編入試験から約ひと月。俺は今、遠月学園にいた。

……なんで?

 

いやわからん。あの時俺は料理を作ってなかった。なのに何故かあれから1週間後に合格通知届いてなんか遠月に入ることになってた。

怖い。なんだ?俺は騙されてるのか?

 

そんなことを思いつつ入学式の今日、ここに来たが、職員たちからはすごい歓迎されたし多分合格してるんだろう。

……いやなんで?

 

『━━学年章の授与に移ります。新1年生総代、薙切えりな』

「はい」

 

あ、あの試験官ちゃんだ。

相変わらず可愛いね。……いや、待て俺はあいつにイラついてたはずだ。

可愛くなんてねーよ、ばーかばーか。

 

そんなことを思ってる間に試験官ちゃん……えりなちゃんが教師から学年章を受け取り壇上から降りていっていた。

 

『続いて、式辞を頂戴します。遠月学園総帥、お願いします』

 

そのアナウンスの後に壇上に現れたのは髭面の渋い強面なおじいちゃんだった。

確か名前は……仙左衛門(せんざえもん)?すごい名前。古風だね。

 

『諸君、高等部進学おめでとう。諸君は中等部での3年間で調理の基礎技術と食材への理解を深めた。実際に料理を行う調理教練と各種の座学。栄養学、調理理論……公衆衛生学、栽培概論、経営学……、そして今、高等部の入口にたった訳だが、これから試されるのは技巧や知識ではない。料理人として生きる気概そのもの━━』

 

━━諸君の99%が1%の玉を磨くための捨て石である。

 

……なんともまあすごい競争主義。じいさんの話を聞いていて率直な感想だ。

ここまで行くと狂気だね。

 

『昨年の新1年生812名のうち2年生に進級できたのは76名。無能と凡夫は容赦なく切捨てられる。千人の1年生が進級する頃には百人になり、卒業までたどり着くものを数えるには片手を使えば足りるだろう。そのひと握りの料理人に君が……君が成るのだ!!!』

 

 

 

研鑽せよ

 

 

 

『……以上だ』

 

そうして壇上をそでから降りていくじいさん。なかなかの激励。カリスマ性は流石のものだ。

見るからに生徒たちの顔も引き締まってる。

 

『━━えー、最後に高等部から編入する2名を紹介します。まずは……幸平創真』

 

……へ!?何!?編入するってなると壇上でなにか言わなきゃいけないの!?聞いてない!聞いてないんだが!?

何か言うこと…!と、とりあえず俺以外に編入生いるらしいし、そいつが話してる間にまとめておいて…、

 

『やー…、なんか高いところからすいませんね、へへ。所信表明でしたっけ?参ったな、やんなきゃダメすか?だ、壇上でとかこそばゆいっすわー』

『い、いいからさっさとしなさい』

 

…!この声。

俺は思わず壇上の方に目を向けた。

そこに居たのは、

 

『えっとーじゃあ、手短に二言三言だけ……』

 

あの時の受験生だった。

 

『えっと、幸平創真って言います。この学園のことは正直……踏み台としか思ってないっす。思いがけず編入することになったんすけど、客の前に立ったことも無いような連中に負けるつもりはないっす。入ったからには、テッペン獲るんで。……3年間よろしくお願いしまーす』

 

……耳塞いどこ。

そうして受験生、そーまくんの所信表明が終わって俺が耳を塞いだ瞬間。

 

「ふっざけんな!!!」

「ぶっ殺すぞテメェ!!!」

 

うわぁー怖。

在校生側から聞こえてくるブーイングの数々。俺この中で次所信表明するの?気まずいし嫌なんだけど。

 

そんな思い虚しくアナウンスは流れた。

 

『え、えーでは続きまして……橘奏』

 

呼ばれた。呼ばれてしまった。

まあ行くしかないか。

そう思いつつ重い足を引きずりながら壇上へと登った。

在校生たちを見れば血走った目。なんともまあ料理人らしからぬ表情だ。

てか何を話すか。まとまって「ピュゥーイ!」……え?

 

在校生側から聞こえてきた指笛の音。思わずそちらに目を向けてみたら。

 

「あ」

 

めっちゃ笑顔で手を振る赤毛の猫目の妖精が見えた。幻覚だ。ウンソウダ、キットソウ。

さて、ついにマイクにまで来てしまった。とりあえず手に取る。

 

「ん?」

「〜〜〜!?!?!?」

「!」

 

思わず顔を上げてみると俺のいた舞台袖の反対側の舞台袖から覗く2人の人物。手を振るそーまくんと驚いてあわあわしてるえりなちゃん。

表情豊か。百面相?

一応手を振り返しておこう。お、親指立てられた。ピースしとくか。

 

『あ、あのー…』

「ん?ああ、そっか……とりあえずこっち終わらせなきゃか」

 

アナウンスに注意されてしまった。

ちゃんと挨拶はしなきゃな。よし。そうして咳払いをひとつ、俺は口を開いた。

 

「初めまして、橘奏です。よろしく。……うーん、そうだなぁ。はっきり言えばこの学園興味とかなかったんだけどいつの間にか流れ流れで来ることになったって感じで……ま、いつも通り料理を楽しむをモットーに頑張ろうかなって…、トップとか、そーいうのは興味無いんであんたらで好きに競えばいいと思います。応援してるよ。頑張ってください」

 

そう言ってマイクを元に戻す。

ふぅーこれでよし。……あ、忘れてた。

 

「あ、最後に……3年間よろしくね。今度こそ終わりでーす」

 

よーし、完璧。さっさとトンズラこくか。と、小走りでその場を後にする。

 

「「「━━━━っ!!!!!!」」」

 

うおっ!すげぇ怒声。ビビるわ。いっぺんに叫ばれて何喋ってるかわからん。

と、まあそんな怒声をバックにあの2人がいる舞台袖へ来ると、

 

「━━あんたの口からはっきり美味いって言わせてやるよ。俺の料理の限りを尽くして」

 

……なんか青春してるー。

さて俺は気づかれんうちに移動しよう。こういう時に影のうすさは便利だな。

 

「あ」

 

と近くに総帥のじいさんがいた。怖い。もうマフィアの首領感が凄い。子供見たらちびるんじゃね?

 

「ども」

「……うむ」

 

そんな短い言葉を交わし横を通り過ぎる。その時、

 

「……あの余り物のハンバーガー、頂いておいた」

「っ!?」

「美味であったぞ」

「……そすか。どーも」

 

まさかの俺のあの置いてきてたハンバーガーを食ってたのか。

……俺を合格にしたのはあのじいさんなのかもしれんな。

 

てか、この後は普通に授業あるんだっけ?

向かっとくか。




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