誤字脱字の報告待ってます。
ガベルの村には、ジャガイモやテンサイなどを育てる畑作や小麦を育てている稲作のほかに、二人しかいないが、村の東にある森で、獣を狩る狩人もいる。
その二人のうちの一人、ウォルハは、今日も今日とて、自分の食い扶持を探していた。
(今日も、ウサギの一つも気配がしねぇ。)
ウォルハは、最近の森の様子に、違和感があった。
ここ1週間ぐらい、獣の姿を見ていなかった。
木にある真新しい傷、土に紛れて見えづらいフンなどの獣がいる証拠も一つもない。
(ナックルのやつも、罠にかかったのはいなかったらしいし、何か見つけねぇと。)
もう一人の狩人ナックルは、罠を仕掛けて捕らえる方法で、直接弓矢を使って仕留める俺と、いつも不気味なほど同じ数を捕えてくる。
そのナックルも、ここ一週間ほど成果なしでかえって、酒を飲みながらこのことを愚痴っているらしい。
しばらく気配を消しながら普段は絶対に行かないさらに奥の方を散策していた。
すると正面からガサガサと音を立てながらこちらに近づいてくる気配がある。
すわ熊かと弓を構えていると、ナックルが出てきた。
「おいウォルハ!やべえっ!大変なことが分かった!」
「なんだ、クマにでも求愛されたか、これはカリーナに言っておかねぇとな。」
「馬鹿言ってるんじゃねぇよ!
あと、もしその嘘を本当にあいつに言ったらお前を呪ってやる!」
ついて来いと言ってきた道に戻っていったナックルの背中を、周りに注意しながら追いかける。
ナックルは時たま変なことに頭を突っ込んで、周りを巻き込むバカだ。
この前も、あいつの妻のカリーナにいい所見せようといろいろ不便だと漏らしていたキッチンを改造して土まみれにして怒られていた。
今回もそれだと思いついていく。
途中からナックルも気配を潜めて歩き出し、徐々に進行が遅くなった。
おそらくもうすぐ着くのだろう。今回は何をやらかしたのか。
「ついたぞ、あれだ、あの群れだ。」
「っ!?……あいつらはここにいなかっただろ、もしかして森の奥からここに住み着いたのか。」
「多分な。だからここ最近、何も取れなかったんだな。」
「”オーク”もいる、ありゃ男ども集めても無理だな。
何人か犠牲になっちまう。」
「俺たちの村からそう遠くねぇぞここ。
放っておくと森から村にくるぞ。」
「とりあえず、かえって村長にこのことを報告するぞ。」
「了解、音を立てんなよ。」
「ナックル、お前に言われたくはない。」
……大変なことになった。
まさかー---------
----”ゴブリン”の群れだなんて
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剣を教わり始めてからは地獄だった。
ティムじいは俺の体が成長するのを想定して5歳の俺の身長と同じ高さの木の直剣を渡してきた。
そして何の手本も見せずにただ剣を振れと言われた。
当然俺は剣を振る時のコツなんて知らないし、最悪なのは、その剣は当時の俺にとって重く、剣を振り下ろした数を、10を数える前に、腕が悲鳴を上げていた。
それでも何度も何度も振り続けた。
腕が疲れ、誤って剣が地面に当たり、剣から伝わるジーンとくる痺れ、腕の感覚がなくなっていき、握る力が弱くなり、剣がすっぽ抜けることがなんどもあった。
なのに俺は、ティムじいが止めるまで剣を振るのをやめさせてくれなかったので、痛みに泣きながら耐えて振っていた。
日が赤に染まるまで続き、ようやくこの日の訓練は終わりを告げた。
半年で手に入れた体力なんてあまり役に立ったように感じなかった。
荒い息で地面に倒れこんだ俺は、ここまでしてくれやがったティムじいの方を見た。
ティムじいは何も言わずに去っていった。
これが半年続いた。
訓練の内容が変わったのは突然のことだった。
がむしゃらに剣を振り続ける俺の隣に、鞘に納められたままの剣を片手に、ティムじいが来て、俺と同じように剣を振り始めた。
俺の目を背けるぐらい歪な振り方では比較にならない洗練されたものを披露するティムじいに声をかけるも、無視して剣を振り続けていた。
訳が分からず、とりあえずいつものように振っていた。
だが、視界の端に入るティムじいの剣が、俺を邪魔した。
音も違う、早さも違う、体格のせいにできない剣の構え方、どれもが俺に劣等感を植え付け、集中できない。
それが嫌で嫌で、自分が奏でる音がティムじいの奏でる音を邪魔するのが嫌で、むきになって、自分もきれいな音を出したくて、ティムじいの真似をすることにした。
1か月、出ない
2か月、出ない
3か月、まだ出ない、いやになってくる
3か月半、もう少し、もう少し
4…いや4か月半、出た!少し出た!
5か月、だんだん出せるようになってきたぞ
半年、横薙ぎ!?やめろよ新しいの出すの!え、できないのか?って?
……やってやるよ
剣を教わり初めて3年、俺はティムじいの剣を見よう見まねで振り続けて、だんだんと上達しているのがわかった。
ティムじいは俺が上達したのがわかると、唐突に新しいものを出してくる。
振り下ろしだけだったのに、横薙ぎに、切り上げ、上段、中段、下段……、さらには連続で、様々な構えで、早さで、俺に見せてくる。
幸い、振り下ろしができた時点でコツはわかってきていたので、その後はそこまで時間がかかることなくできるようになった。
その時には新たな『スキル』を手に入れていた。
『剣士 lv1』
1.剣の丈夫さ+10
2.剣の切れ味+10
3.斬撃攻撃力+10%
4.刺突攻撃力+10%
熟練度 105/250
条件:剣を100,000回使う 1,900,200/100,000 達成済み
:剣で敵を倒す 0/1
どの効果も、今には必要のないものばかりで、確認したとき落胆してしまった。
それに、『足軽』よりも遅く手に入れたことも落胆を増大させた。
「おい、スキルは手に入ったか?」
「取れたけど、それが何?」
「じゃあこれは終わりだ。
儂と剣を打ち合うぞ。」
「……ようやくか、今までの分、たっぷり返してやる。」
「やってみろ、できるものならな。」
またもやティムじいは唐突に訓練の修了を告げてきた。
次の訓練は実際に剣を打ち合うようだ。
ルールは簡単、何でもいいからティムじいと1対1で勝負すること。
俺はここまででだいぶ力をつけてきた。
だから、これまでと違って俺だけが苦い思いをして、ティムじいが飄々とすることはない。
かけっこは結局、捕まえることができなかった。
この3年半の怒りをぶつけてやる。
ティムじいはそう言って、俺から離れていった。
俺は、その背中を見ながら、3年間で随分なじんだ木の剣を、中段に、剣先を目の高さまで上げ、右足を下げる。
ティムじいは、俺から数十歩歩いた先で止まり、左腰にさげた、いつも使っている鞘入り剣に手を添えるだけで構えてもいない。
合図はない。ティムじいも自分から動く気配がない。
俺から行かなければならない。
右足を踏み込み、ティムじいに近づく。
剣先を地面に向けて、右斜め下から切り上げる。
「ハアッ」
ティムじいは、剣を抜き、これを防いだ。
だが、俺の攻撃は終わらない。
そこから横薙ぎ、振り下ろしからの突き、今までに身に着けたことを最大に発揮していく。
ティムじいは、それをことごとく防いでいく。
今までの鬱憤をようやっと晴らすことができないこと、ティムじいの表情に全くと言っていいほど変わらないことが、俺を苛立たせ、攻撃が雑になっていく。
その堅牢な防御を崩して、すぐさま攻撃を加えるという思いが強くなり、大きく振り上げた剣を思いっきりティムじいの頭に向けて振り下ろす。
「アアァッ!」
「ふっ」
「!?」
今度も剣で防いでくると思ったが、違った。
振り下ろされた剣の軌道に剣をじっと置いて待たず、剣を下から振り上げて、パリィをした。
振り上げられた剣によって体勢を崩した俺は、思わずたたらを踏んで、ティムじいから距離を離した。
体勢を直して剣を構えていると、一歩も動いていないティムじいが、ものすごい勢いで剣を構えながら踏み込んできた。
「ふんっ」
「ぐおっ」
仕掛けてきたのは俺と同じように右斜め下からの攻撃。
とっさに剣を盾にして防ごうとしたが、攻撃が重く、腕をあげさせられた。
ティムじいの攻撃は終わらず、俺と同じ順番で仕掛けてくる。
重い一撃一撃は、剣で受けきることができないとようやく悟り、持ち前の反射神経を使って、必死に避けていく。
手加減しているのがわかるほど、攻撃の速度が遅いが、それでも避けるのが精いっぱいだ。
「どうした、どうした、避けてばっかりか。」
「うるせぇクソジジイ!くたばれヤァ!」
「なら早く打ち込んで来い。
ほら、ほら、ほら」
結局この日は、避け続けるのに疲れて頭に一撃をもらう対戦を何度も繰り返した。
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「ここまで」
「あーい……。」
剣を教わり始めて5年の月日がたった。
今日も今日とてティムじいとの訓練が終わった。
2年間もティムじいとの打ち合いは、俺を確実に強くさせた。
だが、ここまでで俺はティムじいに一度も攻撃を与えられていない。
それもそうだろう、1か月ほど前に分かったが、ティムじいは俺のレベルに合わせて、体の出力や剣術の質を上げてきている。
目の前にある壁を突破できるようになった瞬間に、壁が成長するのはおかしいと思う。
また、あちらがこちらの強さに対応するように、こちらも対応しなければならない。
攻撃を躱す、そらすことはいいとして、まともに剣で受け止めることは厳しかった。
一度剣が半ばからぽっきり折れたから、あまりそれをしなくなった。
だが、もうそろそろ一太刀を入れたい。
この連敗記録を終わらせるように強くならなければ。
「……て……が…………。」
「わか……うち……」
帰路についている途中、ウォルハとナックルが、村長と話をしているのを見た。
ウォルハとナックルは、この村の気さくでノリのいい狩人で、子供のころに何度も遊んでもらったことが何度もある。
ここ最近調子が悪いのだという。
一度そのことについて、本人達に聞いたが、森の中に生き物一匹もいないらしい。
そのことについて、村長に泣きついたのかと思ったが、三人とも表情が険しい。
村長はいつも朗らかに笑っている人で、あんな顔は一、二回しか見たことがなかった。
「どうしたんだよ村長、そんな顔して。
こいつらに泣きつかれたんじゃないのか?」
「そんなこと、最近してないし、そのことじゃねぇ。」
「村長に泣きつくのはティアナさんが俺たちに雷落とす時だけだ。」
「泣きついてんじゃん。」
少し気になって、話しかけると、俺に気づいた二人は、俺の相手をしてくれる。
村長は考え込んでいて反応しようとしてない。
「なあ、どうせ村のみんなに話すんだから、ベルに教えてもいいんじゃないか?」
「いいだろ別に。村長、ベルに話していいか?」
「…………あぁ、……えっ?あぁベルかティムのけいこは終わったのかい?」
「うん。」
「気づくのおそっ」
「村長、あの事ベルに話していいか?どうせみんなに話すだろ?」
「いいともいいとも。
それじゃあ私の家に行くか。」
先ほどまでの険しい表情は何だったのか。
ここで話すことではなかったと感じて、不思議に思う。
村長の家に着いて、いい香りのする部屋を通り過ぎ、4人が十分はいれるところにたどり着く。
大人に混じって子供一人で話を聞くのは、変な緊張感がある。
「それじゃあもう一度確認しようか。
ウォルハ、森でなにがあったんだい。」
「森の奥にゴブリンの群れが住み着いていた。それもたくさん。」
「ゴブリン?ゴブリンって森にいたんだ。」
「本当はもっと奥の方にいるはずなんだよ、あいつらは。」
「それがなぜか奥から出てきたんだ。」
ウォルハとナックルが交互に俺の質問に答える。
異世界ものの冒険作品には必ずと言っていいほど出てくるゴブリン。
この世界のゴブリンは、大半の作品に出てくるゴブリンと同じような見た目である。
子供ぐらいの高さの瘦せぎすでカエルのような黄色い目を持つモンスターである。
3歳児の知力を持ち、普段は群れで生活している。
一体だけなら十歳の男の子ひとりにも負けてしまう脆弱な魔物だが、そんなものはめったにいない。
武器を持ち、集団行動で、好戦的。
たまにいる強力な集団は、一体一体に役割があり、クマぐらいはタコ殴りにできる。
「それがなんだっていうの。
ゴブリンがこっちに少し近づいただけじゃん。」
「今森の中にゴブリンの餌になるものは少ない。
動物たちは怖がって逃げちまった。」
「だから俺らは捕れない状況が続いてる。」
「しかも、ナックルと確認したら、大移動の真っ最中。
進行方向にはこの村がある。」
「しかもしかも、奴ら、オークを従えていた。」
「まずいじゃん!それ!どうすんのさ!」
ようやっとどれだけやばいのか理解できた。
ゴブリンは雑食で、食べれるものはなんでも食べる。
森に食べるものが少ないとなると、危険を冒してでも豊富な食糧を求めて森の外まで行ったとしても捜索するだろう。
ちょうどいい食料はここにある。
子供たちをさらう、農作物を掘り返すことは当然として、村自体が全滅する。
俺はどうすればいいか考える。
「俺たちが撃退すればいいじゃないか!
男たちを集めて、ティムじいもいるしさ!」
「ベル、それは無茶だよ。」
「村長!どうしてさ!」
「今聞いた通り、ゴブリンの群れの規模は大きい。
オークを従えているなんて相当だ。
もし撃退できたとしても被害が大きい。
人手が足りなくって冬を越すための蓄えが準備できないとどっちみち全滅する。」
村長が固い声音で冷静に答える。
「じゃあどうするんだよ!村長」
「それを今から考えるんだよ、ベル。
で、村長、考えはあるのか?」
「もちろんさ。ここは領主様に兵を派遣してもらおう。
聞いた限りだと、十分間に合うと思うよ。」
「領主様?
ここって治めている人いたんだ。」
予想外な言葉が出て、驚いてしまった。
今の今まで、物語以外で村の外のことを知りもしなかった。
村長が言うには、ここはグオリサーロ子爵の領地だそうだ。
グオリサーロ子爵は、軍力に力を入れているらしい。
理由としては、ほかの貴族の領地と比べて魔物や魔獣が生息する地域が多くあり、被害の報告が来ると、すぐに出動できるようになっているらしい。
この村に名前がない理由は、領民に課している税の中に、小麦などを納める、特産品を納める項目がないからだ。
その代わり、男には18歳から21歳の約三年の徴兵が課せられている。
そのため村の男どもは、必ず一度は命を奪う経験をしているのだとか。
だがそれでも、今回のゴブリンの群れは、今まで経験したものは誰もおらず、こうして兵を派遣する流れになった。
「この村にいる男どもは、俺もナックルも含めて兵役を終えて、家を継いだ長男がほとんどだ。」
「ほかのやつは、出稼ぎに行ってるんだ。
何年も帰っていないはざらにいる。」
「そんなことより、兵を派遣してもらうのはいいとして、ホントに間に合うのかよ、村長。」
「あぁ、大丈夫だろう。
遅くなっても、ゴブリンたちが大勢で襲撃する前には連れてこよう。」
「けど、誰も経験したことがないんでしょ?
だいぶ遠いとはいえ、間に合わないんじゃないの?」
「その時はティムに頼るさ。」
どうしてここでティムじいの名前が出るのだろうか。
確かに稽古ではいつもコテンパンにされているけど、あの人はこの村の中でも長く兵役をやめてから時間がたっているはずだ。
俺の疑問を村長はわかっているようで、自慢げに答えた。
「ティムは私の弟さ。
そして弟は30年以上グオリサーロのところで軍に勤めていたんだ。」
「へー。じゃあ、安心…かな?」
もう少し驚いてもいいのに…
村長の言葉を無視しておく
「しかし、兵士が来るまでどうするか…」
「ウォルハ、そこは考えてあるから大丈夫だよ。
よし、じゃあ次の朝に村のみんなをこの家の前に集めてくれ。
そこで話そう。」
「あぁ。」「おう。」「うん。」
そして次の日に告げられたのは以下のようなことだった。
兵隊がここに来るまで、1か月ぐらいはかかること
子供の遊び場は、親が見張れるよう村の外からは出ない
大人たちは交代交代で見回りをする
緊急時は、ティアナ、ティムなどに伝える
そう伝えた村長は、そのまま荷物をまとめ、伯爵のところへと向かいに行った。
ここから俺たちは、1ヶ月間非日常が日常となる。
殴り書き
村長の口調が若くなってしまった…
ティムじいの年齢は18+35+5=58歳の予定。
58歳で剣を振りまわせるとかスゲー
村長との年齢差は3歳差ぐらいかなぁ
見た目的には70前半の兄と40後半の弟のイメージ
ガベルの兄たちをどこで出そうかな…
もっと情景描写をかけるようになりたい!なりたい!