とある山村に巨大な湖が存在する。一つの観光名所として有名なその湖は、実はとある『いわく』がある。
それは、『人食いの湖』と呼ばれる怪異である。
江戸時代から語られてきたこの怪異は、満月の深夜、湖の中心に聳える岩石の上に目を見張る程の美女が現れるのだそうな。しかし、その美女に見とれる事なかれ。その美女は人とは思えない動きで人へ近づき、その豊満な身体は溶けて獲物の肉体に纏わりつき、その肉を、骨を溶かしていくという。
異種族が世間に現れてから数世紀、その正体は異種族の一種である『スライム』という種族である事が判明。更に、スライムの発生する湖の水は、実は全てスライムの一部だったのだ。江戸時代、水の貴重な村ではその湖の水を重宝し、行方不明者が現れた時には「水神さまに見初められた」と寧ろ自分の事のように喜んだ。
湖が封鎖されて幾年。湖の怪異はオカルトとなり、ネット上のオカルト掲示板で話題になる。その怪異を知り、それが地元の伝承であると知った少年が、今封鎖中の看板を越え、件の湖に来ている。
「ここが……話の湖……」
山の中だというのに大きく開けた湖は、月明かりに照らされて水面が美しく煌めいている。そして、オカルト掲示板に書かれていた伝承通り、『それ』はいた。
「ほお……ここにまだ人間が来るとは……なんとも分からぬものだな」
恐ろしい存在は、それに反するように美しいという。それを体現するかのように、その身体は人が思う美を余す事なく盛り込み、透けた身体を月明かりが照らしている。外灯も何もない山奥であるにも関わらず、彼女の周囲だけは昼間のように明るかった。
「ここは人間共が立ち入りを禁じている。その中で入ってくるとは…養分にでもなりにきたか?」
岩石から降り、少年のいる岸まで悠然と近づいてくる。少年はその身の美しさと、溢れ出る狂気に思考がまとまらなくなっていた。この怪物は自分を餌としか見ていない。何も言わず、何もせずにいればまず間違いなく無感情のままに溶かされ、少年の存在はこの世から消えてしまうだろう。
だからこそ、少年の行動はある意味正鵠を射ていた。
「……なんのつもりだ?」
「……僕を食べるなら、デュエルに勝ってからにしてください」
江戸時代から続く怪異に突然何を言い出すのかと、この場面を見た者は困惑するだろう。しかし、実はこのスライム、オカルト目当てで訪れた人間の落としたデッキとデュエルディスクを所持している。カードの正体を気になりだした彼女は、町へ降りてカードの正体をしり、デュエルのルールを知ったのだ。
「ほう、このカードで私が勝てば、貴様を食ってもいいと?」
「その代わり、僕が買ったらこのまま帰らせてください。僕は食われに来たんじゃなくてただオカルトが気になっただけなんです」
「そのような者は数多くきたが、デュエルを挑んできた者は貴様が初めてだ。貴様が如何様に抗うのか、試させてもらおう」
「「デュエル!!」」
ワリウネクルワッカ
「先攻は私。私はカードを3枚伏せ、モンスターを1体場に伏せる。番を終了する」
「ぼ、僕のターン。先ずは『ふわんだりぃず×ろびーな』を召喚」
嘗て、多くの人間を喰らい、神とまで信仰された異種族の前に姿を現したのは、小さく愛らしい小鳥であった。ピィピィと鳴く姿は見る人によっては黄色い声援を送る事だろう。
「ほう?そのような小鳥で何をするというのか?そのような雑魚では餌にもならんぞ?」
「ろびーなは召喚に成功した場合、デッキからレベル4以下の鳥獣族モンスターを手札に加えます。これで『ふわんだりぃず×いぐるん』を手札に。その後、ろびーなの効果で通常召喚します。召喚するのはいぐるん。いぐるんの効果でデッキからレベル8の鳥獣族モンスター『ふわんだりぃず×えんぺん』を手札に加えます」
「そして召喚か。しかし、アドバンス召喚はモンスターのリリースを必要とする。ならばそのモンスターを取り除かせてもらおう。
水の神は太古の水生生物にも縁があるのか、バージェス期の生物がモチーフとなったモンスターがカードから現れる。触手を蠢かせ、獲物を捕らえ引きずり込んでいった。
「召喚するのは正しい。しかし、打つタイミングは正しくなかったようです。いぐるんの効果は継続。召喚するのは『ふわんだりぃず×すとりー』です。そしてすとりーの効果発動。互いの墓地に存在するカードを1枚、ゲームから除外しますあなたの墓地にあるゾンビキャリアを対象に選択」
ふわんだりぃずはその程度では止まらない。その愛らしい姿からは想像もつかない程、その効果は他の追随を許さない。
「そして除外されているいぐるんの効果を発動。自分が鳥獣族モンスターの召喚に成功した場合、自身を手札に加えます。チェーンは?」
「チェーン?ああ、発動するものか。無いぞ」
「…なら処理です。いぐるんを手札に戻して、ゾンビキャリアを除外。召喚するのは、ろびーなとすとりーをリリース。ふわんだりぃず×えんぺんを召喚!」
ふわんだりぃず×えんぺん 風 ☆10
ATK2700/DEF1000
「えんぺんの効果。デッキから『ふわんだりぃず』魔法・罠カードである『ふわんだりぃずと夢の町』を手札に加えます。そして鳥獣族モンスターを召喚できる。再びふわんだりぃず×いぐるんを召喚です。フィールド魔法『ふわんだりぃずと謎の地図』を発動します。効果で手札の『ふわんだりぃず』モンスターである『ふわんだりぃず×とっかん』を見せて召喚し、デッキから名前の異なる『ふわんだりぃず』カードである夢の町を墓地へ送ります」
「おいおい、まだ続くのか?これでは朝になってしまうぞ?」
「もう少しです。とっかんの効果発動。自身の除外されている『ふわんだりぃず』を手札に戻して鳥獣族モンスターを召喚します。すとりーを対象。更にろびーなの効果も発動して除外されているこのカードを手札に加えます。とっかんの効果でいぐるんととっかんをリリース。『烈風帝ライザー』をアドバンス召喚!」
烈風帝ライザー 風 ☆8
ATK2800/DEF1000
「烈風帝ライザーの効果でフィールドのカード1枚と自分か相手の墓地のカード1枚を対象に発動。それらをデッキの1番上に置きます。僕から見て右のカードとディノミスクスを選択します。それと風属性モンスターを素材に召喚したので追加効果の発動。もう1枚の伏せカードも手札に戻します」
「発動できるカードは…『バージェストマ・ハルキゲニア』発動。ライザーの攻撃力を半分にし、更に墓地のディノミスクスの効果も発動。自身を守備表示で特殊召喚する」
「バトルです。えんぺんでセットモンスターを攻撃」
「モンスターは『メタモルポッド』。効果で互いに手札を全て捨てて、デッキからそれぞれ5枚カードを引く」
「烈風帝ライザーでディノミスクスを攻撃!」
彼女の場は更地となったが、まだライフは無傷。余裕の表情は健在だった。
「カードを2枚伏せて、永続魔法『ふわんだりぃずと未知の風』を発動。ターンエンドです」
しかし、侮りに侮っていた人間の子供が用いているデッキの回転は彼女に初めて焦りを生み出す。しかし、彼女はまだ終わっているとは考えていなかった。
「私のターン。私はカードを3枚伏せ、ターンエンド」
「エンドフェイズに入る前に
「こ、このタイミングでまだやるの!?」
最早素が出てきているが、風斗の握っているデッキはこんなものではない。
「いぐるんの効果を発動して、『
「そ、そのモンスターにも増やす効果があるの?」
「いいえ、このターンはもうしません」
「ほっ……ターンエンド」
彼女の顔に疲労の表情が見えてきたが、風斗はこの時点で勝ちを確信した。
「僕のターンです。『ハーピィの羽根箒』を発動。相手の魔法・罠を全て破壊します」
「ならそこに
「烈風の結界像がある限り、互いに風属性以外のモンスターを特殊召喚できません。伝え忘れてました」
「なああああああああああああああああああああああ!!!!???」
「他はありますか?」
「……『バージェストマ・ハルキゲニア』を発動。ライザーの攻撃力を半分に」
烈風帝ライザー
ATK2800→1400
「バトルです。全モンスターででダイレクトアタック!!」
「そ、そんなあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ワリウネクルワッカ
LP8000→7000→5600→2900→200→0
「ううう……うえええええええええええええん!!!」
最初の神々しい雰囲気はどこへやら。騒々しい泣き声をあげ、地面にへたり風斗へポカポカと力なく拳を押し付ける。
「なんなのよそのデッキはああああああ!私なんてこれが初めてのデュエルなのに……初めてはカッコよく勝って昔みたいに人間を恐れさせてやろうとしたのに…したのに……!」
涙を浮かべながら風斗へ睨みつける。最初の頃なら恐怖で怯み上がっていただろうが、今となっては可愛げがあるくらいとなった。
「いや、あれがこのデッキの動き方だし…」
「デッキの特徴聞いてるんじゃない!そんなの友達いなくなるでしょ!」
「グハッ!!」
吐血(ただの咳)しながらうずくまる。どうやら図星だったようだ。
「ふんっ!自業自得よ。もう食べる気も失せたからさっさと帰りなさい」
シッシッと手で帰宅を促す。風斗はグギギ…と歯噛みしながら歩きだした。
「……あいつ、また来るかな」
風斗の消えた道を眺めながら、彼女は呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
母親にこっぴどく叱られた翌日、いつも通り小学校へ一番に到着しデッキを広げている風斗に近づいてくる一つの影があった。
「おい木山聞いたか?今日転校生が来るんだってよ」
「転校生?こんな田舎にか?」
風斗自身思っている事だが、彼の地元は限界集落程ではないが、それなりに過疎化の進んでいるド田舎である。この小学校も、低学年と高学年で分けられているが、それでも他学年が一緒になっている程には子供の数が少ない。
「それでよぉ、転校生って女なんだってよ!もしかしたらさぁ、転校生と田舎でお近づきの関係に…なんてななんてな!」
「ネット小説の読みすぎじゃねえの?そんな展開ねえよ」
友人の妄想に呆れながらデッキの調整を進める。しかしいつの間にか時間となっていたようで、チャイムが鳴り先生が教室に入ってきた。
「ほらーカード広げてるやつは早くしまえー。今日のホームルームですが、今日は転校生がいます」
「先生ー!転校生は女子って聞きましたー!」
「耳が早いな。その通りだ。ほーら入ってきなさーい」
教室の扉を開く音が響く、風斗も気になってはいたためにそちらへ向くが
「……っな!」
「転校生の『ワリウネクルワッカ』だ。彼女は異種族でありながら日本の文化を学びたいと両親に無理を言って留学したそうだ」
「ワリウネクルワッカです。でも、長いのでワッカとでも呼んでください」
「じゃあ、君の席は木山の隣だ。あの空いてる席」
彼女は悠然と風斗の隣の席へ座る。他の生徒が好奇の目を向ける中、風斗にあったのは疑問だった。
「な、なんで…」
「私、思ったことがあるの」
ゆっくりと彼女は語りだす。風斗の頭をよぎったのは昨夜の復讐。一緒にいる事で捕食するタイミングをうかがうのではないかと背中を冷や汗が伝う。しかし、それはすぐに杞憂へ変わる。
「あんたに勝って負けを清算するには、あんたの近くにいればいいとね」
「……は?」
「だ・か・ら!これからあんたにバンバンデュエルを挑んで、いつか勝ってやるから!
それまで負けんなよ!風斗!」
吊り橋効果って橋が揺れた時の恐怖からくる動悸を恋と勘違いするやつって聞いた事あります。え?何が言いたいのかって?負けた時の悔しさが憧れになったってええやろって事。そして憧れがいつか恋心になったってええやろ!
スライム女子がキャラブレなのは許して…許して……
性癖開拓アンケートやってます。今回のもここからやりました。アンケートしてくれたニキありがとナス!他のニキもできる限りやるのでお待ちになって…
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=290661&uid=195719