真・女神転生 〜派遣サマナーの戦い〜   作:石川源流

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一人称増やしてます


第8話

「じ、神社のコマ犬?」

 

ジロキチの前に現れた謎の悪魔。

その姿は神社の入口に向かいあって並ぶ『狛犬』にしか見えなかった。

ギョロリと光る大目玉、巻いた尻尾に大きく開いた口、全身は白く胴体からはみ出た足は短い。

赤いヨダレ掛けが特徴的で、それがまた怖さよりもユーモラスさを醸し出していた。

 

「チィィッス、話は聞かせてもらったス。どうやらお困りなようで」

「お、おう」

 

狛犬が喋りかけてくる。見慣れているだけに違和感しかない。

しかも妙になれなれしい。なんだこの距離感は?

 

「にいさん、アンタ……運がいい」

「へっ? おれの運がいいって、どういうことだ」

「いやねぇ、ちょうど空いてるんですよ、完全フリーで有能かつ性格のいい悪魔が!」

「なに! 本当か。で、どこにいるんだ。その有能悪魔は!!」

「───いやですねぇ目の前にいてるじゃないですか? ほら、ここに。オレっちがそうですよ!」

「えええぇぇぇ、おまえかよ」

 

すげえ胡散臭い。大丈夫なのか。

 

「う〜ん、どうすっかなぁ〜」

 

 

こいつの狙いがわからん。

なぜ、食い気味に仲魔アピールしようとするのか。

何かがおかしい。あまりにも都合が良すぎる展開で、はいそうですかとは簡単に頷けない。

仲魔になろうとしたがるぐらいだ。サマナーにレベル制限があることはあの狛犬も重々承知しているだろう。

なのにコイツは俺のレベルを確認すらしようとしない。

 

うまい話に飛びついて失敗する。よくある話だ。

ここは慎重に探るべきだろう。

 

「……分かった。じゃあ、自己アピールしてくれ。お前のことを何も知らないのにいきなり仲魔するのは抵抗ある」

 

なにも焦る必要はない。話を聞いてから判断すればよいのだ。

 

「ああ、そうっすね! ご挨拶が遅れました。オレっちはコマイヌのタマキチ。わけあって神社のお役目から外れ『男を磨く旅』を続けてましたが、そろそろ1人で取り組むことに限界を感じてた次第ッス」

「そんなときに現れたのが兄貴ッス。一目見た瞬間、タダ者ではないとに気づきました『あっ、この人だ。この人に着いていけば間違いない』と、だから今回ご迷惑を顧みず、兄貴の仲魔に応募させて頂いたんですよ!」

 

謎の高評価は不可解だが、感触は悪くない。むしろ良い。

少なくとも会社勤めしていたころに、新人教育を受け持った学校を出たばかりの新卒より格段に印象がよい。自分が会社の面接官なら「おっ、コイツは」と思うところだ。

明るく元気よくハキハキと名乗った点もよかった。

挨拶ができるやつは総じてコミュ能力も高い。そしてコミュ能力が高いやつは仕事ができる傾向にある。

 

悪魔にしては常識がありそうだし、こりゃ拾い物だったか。

 

「へぇぇぇ、おまえコマイヌのタマキチっていうのか。結構いいじゃん。言うだけあって有能そうだ」

「へへ、ありがとうございます!! それでは契約してくださるんで?」

「ああ気に入った。契約してやるよ。こっちへ来い」

 

胸を撫で下ろした様子でタマキチが近寄り、仲魔になった際に告げる例の定型文を口にしようとしたその時、黒い笑みを浮かべたシロキチが右手に持ったバールを振り下ろした。

 

「コンゴトモ、ヨロシ…ギャァァァァー! な、なにをするんで!」

「残念だったな、俺を騙せると思ったのか?」

「いやいや騙してないッスよ! 本当にこれはと思ってお仕えしようとしたんです!!」

「いーや嘘だ。嘘の臭いがする。俺はこれでも嘘つきが判る。なんたって騙されて巨額の借金を背負わされたぐらいだ。てめえのウソなんてお見通しだ!」

 

遠藤の言っていた通り、マグの保有量が人より多い自分はそれだけ悪魔から狙われやすい体質だ。

俺が油断したところを食い殺そうとするつもりだろう。

 

所詮、悪魔は悪魔だったか。

悲しげにタメ息をつくと、吹き飛ばされたタマキチに歩み寄る。

 

「はぁ〜神社の狛犬が人間をだまし討ちなんて………世も末だわ」

「そ、そんなー、お願いします信じてください!!」

「ウソの次は泣き落としかよ。ふてぇ野郎だ! とっちめてやる………!!!」

 

もう一度バールを振りかぶる。今度こそ致命の一撃でコマイヌを倒すつもりだった。

 

「ま、待ってください。これには事情があるんです……討伐は勘弁してください。この通りです…お願いします…!」

 

自己紹介していた時とは打って変わって、かしこまって神妙な表情で訴えかけるタマキチに、振りかぶったバールは降ろされなかった。

 

非情には馴れた。が、無情にはなれない。

悪魔に情けは無用かもしれないが、ただ不要と切って捨てるほど薄情になるつもりはなかった。

 

「おう、話だけは聴いてやる。話せ」

 

射殺すような視線が少しだけ和らぎ、顎でしゃくってタマキチに続きをうながす。

 

「実は恥ずかしながら、お世話になっていた神社を不祥事でクビになりまして………他の神社のお世話になろうと考えたんですが…狛犬の採用枠はどこもまったく無くて………行くアテもないままトボトボと異界をさまよい歩いてました」

「残量マグネタイトもいよいよ残り少なくなって………ビクビクしながら……グスん、これでオレっちも終わりだなぁと、怯えていたら、サマナーの兄貴が現れて、それで…………つい…」

 

悪魔が現界するには生体エネルギーであるマグネタイトが必要だ。

もし、マグがなければ悪魔は肉体を維持できない。消滅する。それはすなわち悪魔にとっての死を意味する。

そうならないために悪魔は人間を襲い人体からマグネタイトを補充するのだ。

 

「……それで無理やり仲魔になろうとしたのか。」

「はい。背に腹は代えられず、結果的に騙すようなことになってしまいました。」

「てか狛犬に採用枠なんて無いだろ」

「へいどこも不景気でして…」

 

そういう問題なのか

心の中でツッコむが口には出さない。

しかしながら事情を把握したことでジロキチの腹は決まった。

 

「しゃあねえな。仲魔にしてやるよ」

「ええええぇ本当ですか!!!」

「戦力が不足しているのは事実だしな。今後もサマナーとしてやっていくために1体でも多く仲魔が必要だ」

「ありがてえ! 兄貴、一生着いていくッスよ」

「勘違いするなよ。まだお試し期間だからな。舐めた真似しやごがるとそっこーで合体材料だかんな」

「と、当然です。肝に命じておきます! じゃあ、アレやっていいいッスか」

「おう!!」

 

消滅の危機から一転、綱渡りで生き延びた安堵感とこれからの期待に胸を膨らませながら、タマキチは大声で宣言した。

 

「聖獣コマイヌのタマキチ! コンゴトモヨロシク!!!」

 

 

こうしてジロキチは初めての仲魔を加えることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

超どうでもいい蛇足

 

 

 

 

 

「で、神社で何をやらかしたんだ?」

「……まあ、アレっスね。アレ」

「なんだよ。仲魔になったんだぜ、ハッキリ言えよ!」

「いやねぇ、なんと言いますか、その〜神社の境内でメス犬と盛ってるところを神様に発見されまして…」

「おう…まじかよ……」

「えーしかも初犯じゃなかった…感じッスね!」

「やべえな、お前。ちょっとアグレッシブ過ぎだろ」

 

なぜか誇らしげな顔で告白するタマキチ。

 

「神聖な神社でヤる。その背徳感とヒヤヒヤ感が病みつきなんスよ…!」

 

当時の情景を思い浮かべているのたろうか。タマキチは何かに取り憑かれたように表情をみせる。

しかしそんな表情は一転して険しいものに変わった。

 

「……ただ、ここ最近スランプ気味で………」

「交尾にスランプもクソもねえと思うが…?」

 

一体なにがタマキチをそこまで突き動かすのか皆目検討つかないが、タマキチにとって譲れない一線があるのだろう。

 

「メスとやっても楽しくないし気持ちよくもない。そんな状態が続いてるんスよ…」

「へぇー、死ぬほどどうでもいいが一応聞いてやる。」

「マンネリともちょっと違うように感じなんですが、メスの反応が()()ちゃうんス。それがつまんなくて…」

「展開が想像できてつまらんみたいな感じか?」

「そうッス。それで悩んでるんスよ」

 

ギャンブルや女遊びで借金を抱えたどうしようもないクズやゲスは何人も見てきたが、タマキチはどうやら一味違うようだ。

むしろヨゴレでありながら求道者的な清々しさを持っていた。

野球少年が甲子園を目指すような、そんな純粋でひたむきな熱意をタマキチから感じる。

 

イクのは甲子園ではないが。

はっきり言おう。

 

 

 

 

 

こいつコマイヌじゃねえ! コマしイヌだ!!!

 

はやまったかもしれん。

 

「悪いがオレは交尾の専門家じゃねえ。的確なアドバイスは出来そうにない」

 

交尾に専門家が存在するのだろうか。自分で言っておきながらツッコミたくなる。

 

「いえお気持ちだけで十分です。オレっちは交尾を極めるつもりです。誰かに理解してもらおうとはこれっぽちも思ってません。理解者が欲しくてチョメチョメしてるワケじゃ無いんすヨ」

 

鉄よりも硬い意志なのだろう、断言されてしまう。

だからどうなのだ。と、言われてしまえばおしまいなのだが…

少なくともジロキチはタマキチのヤりたい事を否定するつもりはない。

 

他人の性癖をとやかく言うほど偉くもないし野暮でもない。

 

「そうか……ま、いいんじゃね。他人に迷惑掛けなければ、だが」

「…兄貴はやっぱり良い人だ。初めて偏見の目を向けてこなかった……オレっちの目に狂いは無かった」

 

理解して欲しいわけてはなく、見守って欲しいだけ。そういうことだろう。

人間にも悪魔にも個性がある。それぞれ嗜好も違う。であるならば法に触れない限り尊重すべきだ。

他人を思いやれる程度の苦労をジロキチもまた積んできたつもりだ。察してやることはステータスに載らない大事なスキルである。

 

「事情は了解した。好きにしろ。俺は何も言わん」

「あざーす! 兄貴の許可が出たので攻めてイクッすよ 」

「………ま、まあ、ほどほどにな。ただし、さっきみたいな隠し事やウソは駄目だぞ。嘘つきは信頼されない。俺達は仲間だ。それだけはやめてくれ」

「はい、兄貴の信頼を損なうような真似は決していたしません。誠心誠意お仕えすることを誓います」

 

雨降って地固まる。

 

ジロキチとタマキチ。

種族が違う2つの個性はここに固い絆で結ばれた。

 

「こちらこそ頼むぜ、タマキチ!」

 

よほど初めての仲魔が嬉しかったのか、子供のような笑顔をみせるジロキチ。

サマナーとしての第一歩は順調だ。嬉しくないはずがない。

当面の目標はレベルアップしながら借金の返済だ。前回で完済出来なかったのは痛いが、そう遠くない内に終わるような気がする。

 

「タマキチはメス。俺はカネ。お互いロクでもねえ理由だが、

のし上がってやろうぜ!」

「うっす! 兄貴!! 一生ついて行くっス!!」

 

紆余曲折あったが出会って1時間も経たないうちに呼吸が合う。

これが俗に言うウマが合うというものなのか。

不思議な感覚に少しだけ戸惑いながら、長い付き合いになりそうだとジロキチは感慨深く思うのであった。

 

 




書き直し3回。でも微妙。続かないかも
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