デート・ア・ライブ~破戒~   作:Kyontyu

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プロローグ

「悲劇、開演」

 

 

 アメリカ合衆国 ニューヨーク

 

「準備はいいか? ミスター・タチバナ」

 人気の無い都会を走っている黒いバイクに乗っている茶色いコートを羽織った青年のヘルメットからオペレーターの声が聞こえた。

「もちろんだ」

 そしてそれを運転している青年が応える。

「目標ポイントまで、あと500メートル。避難は既に完了しているが、今回の空間震の規模はまだ特定するに至ってない。しばらくそのまま待機だ」

「了解、任務を続行する」

 ヘルメットの向こうには高くそびえるビル群が見える。

「今日で何回目の出撃?」

 そこでバイクを止め、青年はバイクから降りた。

「さぁな。俺はただ、命令に従うだけだ」

 女性は小さな声で溜息をついた。

「随分と愛想が無いのね。これでもあなた達のリーダーなのよ?」

「分かっている。だからこそだ」

「ん? どういう事?」

「俺は俺なりの礼儀を尽くしているつもりだ。助けられた礼をな」

 女性がはぁ~、と溜息をつくと真上のビルの景色が歪んだ。

『タチバナ!』

 女性は彼の名を叫んだ。

「了解」

 立花はコートを空高く投げ捨てた。その体は全身を白の特殊装甲と灰色の筋繊維に覆われたCR-ユニットを身に纏っており、両腰には鞘があり、顔はフェイスマスクによって隠されていた。そして立花は壁を物凄いスピードで駆け上がり始める。

「一発で、仕留める」

 居合の体勢をとりつつ歪みが発生した方向に登って行く。そしてついに空間震が発生し、ビルの一部が爆散した。ビルを登っていた立花は降ってくる瓦礫に当らないように身をよじった瞬間、CR-ユニットが作動を停止した。

「くっ……EMPか……」

 そして速度を失った立花は瓦礫に当り、きりもみ回転しながら斜め下に落下してビルの窓ガラスを突き破り、デスクを派手に吹き飛ばして、倒れた。

「くぅ……」

 立花は起き上がりながら作動しないフェイスマスクを横にスライドさせて開き、遠くを見た。そこには紫色のパーカーを着た小柄な少女が浮かんでいた。そのパーカーの裾は幾何学的な模様が光っており、その体は青白いプラズマが走っていた。そしてその少女は手をこちらに差し伸べてこう言った。

「あなたも……私を壊しに来たの?」

 その時ユニットが息を吹き返し、通信機からさっきの女性の声が聞こえる。

『タチバナ!!』

「了解!!」 

 そう言って立花はフェイスマスクを閉じて突入した場所から飛び降りる。そして元いた場所が爆発し、コードなどで造られた大蛇のようなものが出てきた。

「…! 天使かっ!!」

『違うわ、まだ精霊は天使を顕現させてない』

 立花は地面に着地する。その時の衝撃で地面に小さなクレーターができた。すると大蛇が上からこちらに口を大きく開いて肉迫するが、立花は落ち着いた様子で左腰から刀を引き抜き、一閃する。そして大蛇は口が裂けるようにして切断された。上を見上げると精霊がビルの上に浮かんでおり、こちらに向けて不敵な笑みを浮かべていた。

「うおぉぉぉぉ!!」

 立花は刀を持ったまま小規模なテリトリーを展開、重力を前面に集中させてそのまま壁を登る。そして屋上に着くと同時に足を踏みこんで精霊に向かって跳んだ。

 俺は大きく振りかぶって精霊を袈裟掛けに斬りつける。そして俺の予想外な行動に驚いた精霊はとっさに腕で防ぐ。刀は霊装と接触し、火花を散らす。するとその時、精霊に何か大きなものがぶつかり、精霊は飛ばされた。再び屋上に着地した俺は空を見ると、そこには羽を生やした大きな黒いライオンが浮かんでいた。その大きさは小さなビルに匹敵する程の大きさだった。

『あれは……キマイラ!!』

 俺は右耳の通信機に手をあてる。キマイラは飛ばした精霊に向かって機関銃による掃射を始めた。

「知ってるんですか?」

『ええ……あれはアメリカの国防省が極秘に開発していた無人対精霊殲滅兵器(DASD)、キマイラよ』

「DASD、キマイラ……」

 立花は上を向く。キマイラは搭載された機関銃を乱射しながら精霊の方へ飛んでいった。それを見た精霊は焦りの表情を浮かべ、右手を空に突き出す。

「……電子操縦〈アルマロス〉!!」

 そう言うと精霊の左腕に紫色のマニュピュレーターが顕現した。そして向かって来るキマイラに手を伸ばし、頭部に接触させる。すると周りにプラズマが走り、俺は顔を手で庇う。閃光が止んだと思うとキマイラはピタリと攻撃を止め、俺の方に向いた。

「まさか……乗っ取られたのか?」

 立花は刀を構える。キマイラは咆哮し、空気が震え、窓ガラスが割れていく。

「さぁ、かかってこい」

 

キマイラはこちらを機関銃で掃射するが、立花は刀で全て弾きながらキマイラに向かって走る。頭部には天使を顕現させて張り付いている精霊の姿が見えていた。そして飛びあがり、キマイラの翼を斬り付けて奥のビルの屋上に着地する。するとキマイラは切断した部分から煙を出しながら落下していった。

「おいおい、まさかこれで終わりではないだろうな?」

 立花はビルの屋上から飛び降りる。そこには落下したまま動かないキマイラの姿があった。

「まさか本当に終わったのか……?」

 立花が近付くと、キマイラの目が急に赤く光ったと思うと前足で弾かれる。は空中で体勢を立て直しビルの壁に着地する。

 筋繊維が唸る。全身に力を込め、歯を食いしばる。

「うおぉぉぉ!」

 壁を蹴ってキマイラの前足を斬る。片方に前足を失ってバランスを崩したキマイラは飛びあがり、後方に下がると、口を大きく開く。

『まずい!! 高出力魔力砲が来るわ!!』

 そして開口部が白く臨界し、ビームが放たれる。立花は走ってそれを回避するが、キマイラは首を横に振ってビームの軌道を変える。しかし、さっきと同じように壁の方に重力を集中させて壁を登る。そしてビームは途切れ、登っているビルが崩れ始めた。立花は再び前面に重力を集中させて精霊の方へ跳ぶ。だが、足場が不安定だったため軌道が少しずれてしまった斬撃は精霊でもキマイラでもなく、空を薙いだだけだった。

「くっ……!」

 立花は着地し、キマイラは再び機関銃を掃射しながら後退して距離をとろうとするが、飛べないキマイラは銃弾を弾きながら走る立花に追いつかれそうになっていた。しかし急に止まったかと思うと尻尾の先にある赤熱したブレードを振り下ろしてくるが、俺は刀で防ぐ。弾き返すが、もう一度振り下ろして来る。今度はそれを抱え込むように受け止めた。筋繊維が負荷でビチビチとプラズマを奔らせる。

「あああああああああ!!」

 そして一本背負いの要領で投げ飛ばす。立花は跳んでキマイラの腹部に乗り、腹部を斬り付けながら走る。

「その喉を掻っ切ってやる」

 そして最後に首に一閃を加え、跳び上がる。キマイラは脳天から地面に激突し、大通りに長い抉られた跡をつけた。

 着地した立花はこれならいくら精霊でもただでは済まないと思い、刀を鞘に納めようとするが、突然キマイラの目が赤く光り俺に噛みつく。

 そのまま噛み千切るように首を振りまわすが、刀をキマイラの顔に何度も突き刺す。噴き出した人工血液が立花を青く染める。前でニヤニヤ嗤っていた精霊は俺の様子を見て危機を察知したのか、張り付いていた手を離す。そのチャンスを見逃さず、拘束から抜け出し、頭部から脊髄をなぞるようにキマイラのボディを刀で両断する。そして着地して刀を鞘に納めると同時にキマイラは爆発した。それを見ていた精霊は天使を装着した手を突き出す。すると周りに複数の魔法陣のようなものが形成され、その中心からさっきビルの中から現れた機械で造られた蛇が再び襲うも、俺は鞘に手を添えたままそれを足場にして精霊の元へ昇っていく。蛇たちは空中では動けないのかそのまま落下していく。そして跳び上がって精霊との間合い一気にを詰め、鞘に付いているトリガーを引く。すると刀の柄が弾丸と同じスピードで飛び出し、精霊は顎を強打した。そのスピードを殺さぬまま抜刀し、逆袈裟懸けに斬り付ける。超高速で抜刀された魔力を纏う刀は絶対防御の霊装を切り裂き、精霊の命を奪った。

 ビルの屋上に着地した俺は血を噴出しながら落下する精霊を見て、哀れみの視線を向けていた。こんな世界、来るべきではなかったんだ、と。どんな理由であれ人類に害をなすモノは全て、人類の敵とみなされ、淘汰される世界。どんなに綺麗ごとを並べても、結局異種のものとは分かり合うことは出来ない世界。

 落ちてしまった精霊を見ながらそんなことを考えているとリーダーから通信が届いた。

『タチバナ、任務完了よ。後始末は下請け組織が何とかしてくれるから。もうすぐあなたのところに〈ミズガルズ〉が到着するから、そこで次の任務を説明するわ』

「了解」

 立花は刀を振って付いた血を払った。

 

 落下した精霊の死体付近に一機のヘリコプターが着地し、中から髪の毛をオールバックにした黒いスーツを着た若い男と禿げ頭と右目に付けられた義眼が特徴的な白衣を着た妙齢の男が降りてきた。そして白衣の男は降りてすぐに興味深そうに精霊に触り始めた。

「実験は成功だったようだな。ドクター」

 若い男は精霊の血をなにやら触っているドクターと呼ばれた男にそう言い、ドクターは手に付いた血を舐めると、義眼が赤く光った。

「ふむ、確かに量産型といえば申し分ない性能を発揮してくれましたよ。<マーメイド>は。しかし、欲を言えばもう少し高性能を目指したいところですねぇ。しかし、あなた達には時間が無いのでしょう?」

 若い男は頷いた。

「その通りだ。我々には時間が無い。国防省の中には既に薄々気付いている輩がいるからな。他に何か要望は?」

 ドクターは立ち上がり、人差し指を立てた。

「一つだけ、気がかりなのは、精霊の力を封印する存在のことです。一体どうやって力を封印するのかによっても、対策が大きく変わりますからね」

「それには心配及ばん。既に実行部隊を集めている、直に解るはずだ」

 ドクターは安堵した。

「なら良かった。私としても、早く完成させたいところですからね」

 若い男は右手を頭上で回転させてこう言った。

「精霊を回収しろ!」

 そしてヘリコプターの中から沢山の武装した兵士が出てきて、ブルーシートを被せた精霊を担架に乗せ、ドクター達と共にヘリコプターに乗り込んだ。

 




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