「起、終わりと始まり」
「先日の作戦中、五河士道から強力な霊波が観測されたわ」
目の前にあるデスクから五河士道から観測された霊波の数値を示したホログラム画像が表示された。
『ミズガルズ』内にある第一会議室には俺と天話とリーダーが今回の作戦の報告会の為に集まっていた。
天話は立ち上がり、報告を始める。
「今までの研究結果から、人類は霊力を操ることが出来ず、生成する事も出来ないという事が分かっている。よって、五河士道が精霊である可能性が極めて高い」
天話の声に合わせてデスクに表示されていたもう一つの画面に士道のパーソナルデータが表示される。
「そのデータを見て分かる通り、本人はまだ自分の正体を自覚していない……おそらく、『ラタトスク機関』がわざと気づかさせないようにしているか、『ラタトスク機関』でも把握しきれていないのだろう。しかし、先日の作戦中、グラフの通り本人から観測された霊波が異常な数値を示した」
表示されていたグラフをある一時を境に急上昇していた――そう、士道が俺の目の前に立ち塞がったときだ。士道があの吹雪の中を通ることが出来たのはおそらく精霊の力だろう。
天話は続けて自分の考察を話す。
「彼はその身体の中に精霊の力を封印しているわけだから普段から少量ではあるが霊波が観測されていた。しかしこの一時だけは普段から観測されない量の霊波が観測された。これはおそらく何らかの精霊の力を発揮したと言っていいだろう」
天話は椅子に座り、報告終了の意を示した。
リーダーは頷き、目線を前に戻す。
「――以上のことから、これより我々は五河士道を識別名『スティーラー』として精霊と断定します」
「士道が精霊、か……」
立花が呟いた後、リーダーが口を開く。
「彼を精霊と断定した以上、『クリフォト』の規範に則って抹殺対象となりますが、五河士道を殺せば、他の封印済みの精霊が反転する恐れがあるので現段階では抹殺命令を出さず、この事も伏せておきます。しかし、彼の力が暴走した場合には――」
リーダーが立花の目を見据えた。
「――全精霊を敵に回してでも、彼を抹殺して」
何故そこまで士道の力を怖れているのかは分からないが、俺はこう答える。
「了解した」立花は頷いて、立ち上がる。
タマちゃん先生が教室に入るなり、教卓に出席簿を乗せて開こうとするが、やっぱり閉じた。
「あぁ! そうでした! 今日はまず転校生を紹介するんでした! それじゃあ、入って来てくださぁい!」
すると教室の戸が開かれて長い黒髪を二つにくくった少女が入って来る。少女は季節は夏だというのに冬服のブレザーを着込んでいる。
また転校生か、俺もまだ入ったばかりだというのに……そんな事を考えていた立花の思考は少女が発した次の言葉によって停止した。
「わたくし、『精霊』ですのよ」
「こちら立花、『ミズガルズ』応答願う」
昼休みに立花は右耳にヘッドセットをあてて校舎裏で『ミズガルズ』と通信していた。
『声紋認証――確認。こちら『ミズガルズ』ブリッジ、用件を」
「任務領域内に精霊と名乗る人物が侵入した。確認を求める」
『了解しました。目標の名前は分かりますか?』
「時崎狂三だ」
『……読取性随意領域(リード・テリトリー)展開、バイオコード確認。対象の霊波……観測結果から精霊の可能性ありです』
「識別名は?」
『待ってください……出ました。識別名〈ナイトメア〉です』
「了解した。オプション3を要求する」
『……受理されました。立花一未の現在位置に転送開始』
そして目の前に黒いスポーツバッグが転送された。俺はそれを見てニヤリと口元の端を吊り上げる。
「さぁ、狩りの時間だ」
沙耶との会話の後、遼子は急な案件があるということで、霊波観測室に呼ばれていた。
「精霊が現れやがったんです。ぶっ殺す以外ねーでしょう」真那はディスプレイに表示された狂三を見て言う。
「そりゃあそう……だけど。一般市民に被害が出たらどうするの? それに顕現装置(リアライザ)は秘匿技術なのよ?」
「大丈夫です。私にまかせやがってください。――あいつの処理は私の専門ですから」
「なっ、ちょっと!?」
真那は遼子を無視して観測室から出た。するとそこには沙耶が立っていた。
「祟宮真那!?」
「どきやがって下さい。私は出撃します」真那は沙耶を押しのける。
沙耶は真那の腕を掴む。
「おい、出撃命令は出ていないぞ」
「精霊が出やがったんです。行く以外ねーでしょう」
「お前の会社は上司の命令をロクに聞かないのか?」
「………」
「今はおとなしくしてろよ。一応あんたは陸自の所属なんだ。規律を破るような行為は慎め」
「その手を離して」真那は手を振りほどく。
そして真那は振り返って全員に聞こえるように言う。
「私は『会社』からの出向で来ました。その気になれば陸幕長の承認で自由に行動する事も出来ますので」
「……分かってるわよ」遼子はつまらなそうに後頭部を掻く。
「……では、失礼します」
真那は歩いてどこかに行ってしまった。
「……隊長、これで良かったのでしょうか」沙耶は遼子を見上げる。
「まぁ、相手はスポンサーだし、それに今顕現装置(リアライザ)を失うことは避けたい。最近は精霊の現界数が上昇しつつある。もしかしたら二体同時、なんてことがあったら頑張らなきゃいけないのは私達よ。沙耶も、しっかりと肝に銘じておきなさい」
「了解しました」
遼子もどこかに歩いて行ってしまった。
本当に人類が精霊に敵うのだろうか……?
沙耶の胸中には未だにそんな疑問が渦巻いていた。
元々『ハーレム、転生? んなモンくそくらえ!』みたいな勢い(というか自己満)で書いた本作ですが、果たして終わるのだろうか……?
こんな作品ですが、感想等をくれるととてもうれしいです。
あと、同時連載の方も読んでみてください!