デート・ア・ライブ~破戒~   作:Kyontyu

12 / 26
第9話

「起、狩人の光」

 

――現在位置、来禅高校二階西階段前廊下。

 仕掛け、配置済み。

 装備、追加顕現装置(リアライザ)搭載型<イェーガーTypeG>と、オプション3。

 対象、前方に徒歩で移動中、武装類は見当たらず。

 障害物、目の前の女子生徒二人。

 対象の霊波、感知。簡易解析の結果から〈ナイトメア〉と断定。

――ミッション開始。

 立花は<イェーガーTypeG>を使って恒常性随意領域(パーマネント・テリトリー)を展開して自分の姿を消す。そして足音を消しながら清掃用具入れの裏側に隠れている二人の女子生徒――鳶一折紙と夜十神十香――の背後に迫り、スポーツバッグから<イェーガー>に搭載されている物と同じ形のヘッドセットを取り出し、二人に被せた。

『……!』

 おそらく声を発したつもりなのだろうが、声はヘッドセットに搭載された小型顕現装置(リアライザ)によって遮断されるようにセットされている。

 ……それにある仕掛けも施しておいた。

 二人は暴れ出そうとしたが、すぐに二人は動きを止め、折紙は正座になって前方を注視し始め、十香は「おぉ~」と口を開けてHUDに表示されている映像をおとなしく見始めた。

 実は折紙のHUDには五河宅に潜伏中の諜報員が集めた士道の秘蔵画像集が優雅な音楽と共にスライドショー式で表示され、十香には……おいしそうな食べ物の特集映像が映し出されている。

 あの二人が対象を追跡していた事を知った時は本当にヒヤリとしたが、備えあれば憂いなし、とは正にこのことだった。

 姿を消したまま左腰の刀を抜き、対象の背後に近寄る。顕現装置(リアライザ)によって足音は消されているが、もし気配を気づかれれば精霊との一騎打ちに突入してしまう。自信が無いわけではないが、こちら側としても出来るだけ精霊の存在は秘匿したい。

 対象は士道を見つめている。何とも言えぬ甘い空間がそこには広がっていたが、そんなものを気にしている暇は無い。

 対象は気づいていない。

 頬に汗が伝う。

 俺は深く息を吸う。

 ……一撃で、仕留めるんだ。

 そして恒常性随意領域(パーマネント・テリトリー)を解除して対象の左肩を掴んで刀で心臓を思いっきり突く。

 対象は「ぐえっ」と奇妙な声を発してこちらを見るが、遅い。

 さらに対象の胸から刀を引き抜いて対象の胴体と下半身を斬り離す。

 夥しい量の血液がそこら中に撒き散らされ、黒い装甲と辺りを真っ赤に染めていく。そしてグチャ、という嫌な音と共に対象だった物が今も拡大を続けている血の海に沈んだ。

 俺としたことが……派手にやり過ぎてしまったか……

 俺は少々後悔しながら刀に着いた血糊を刀を振って払い、鞘に納める。

 不意に、今まで茫然としていた士道がはっとして口を開く。

「お、お前……?」

 士道には血の一滴も着いていなかった。なぜなら俺が事前にもしもの事があればと思って防性随意領域(プロテクト・テリトリー)で包んでおいたのだ。

 立花は対象の残骸と自分を恒常性随意領域(パーマネント・テリトリー)で包んで姿を消し、窓の外に飛んだ。

 窓には士道が窓枠に身を乗り上げる士道の姿が見える。

 そのまま転送地点である海岸線の廃倉庫に向かった。

 ちなみに先ほどの様子は立花と士道以外には見られていない。なぜなら常に〈フラクシナス〉の通信を傍受し、相手のルートを先回りして偽装用の小型顕現装置(リアライザ)を配置したのだ。これにより外から見れば工事中の看板が立っている無人の廊下に見えていたはずだ。だから誰も近寄ることが無いまま抹殺することが出来たのだった。

 廃倉庫に到着した立花は穴の空いた天井を見上げながら『ミズガルズ』に通信を入れる。既に背部に搭載されていた追加顕現装置(リアライザ)のエネルギーが底をついていたので自爆装置を作動させて海に投げ捨てた。全身に付着していた対象の血痕は随意領域(テリトリー)を使って全て弾いた。

「こちら立花、ミッション完了。目標物の転送を頼む」

『こちら『ミズガルズ』ブリッジ、了解。転送を開始します。立花は周囲への警戒を続けて下さい』

「了解」

 そして対象だった残骸はその場からかき消えるようにして転送された。

『転送が完了しましたので急いで帰還を……っ! レーダーに魔力反応! ASTです!』

 すると周囲でざわめく音が聞こえ、音声が切り替わった。

『立花、緊急事態よ。本艦はこれより機密保持のため再上昇します。立花もどうにか敵をまいて安全な場所に移動してちょうだい。では、安全を祈ります』

 そこで通信が途切れ、倉庫の入り口の方から少女の声が聞こえる。

「こんな所にいやがりましたか。〈ナイトメア〉はどうしたんです?」

 刀に手をあて、後ろに下がる。

「さぁ、どうだろうな」

 そして立花は小声で「イェーガーシステム起動」と言った。すると装甲の一部がスライドし、内部の真っ赤に染まった機構が剥き出しになる。

 倉庫の入り口には白いCR-ユニットを纏った青い髪の少女が立っていた。

「言わないのならば言わせるまで――」

 すると少女の両肩の装甲が外れて両腕に装着され、レイザーブレイドを出力する。

「――『剣士(サムライ)』の実力、見せていただきやがりますよ!」

 そして少女は二本のレイザーブレイドを構えながらこちらに突進して来た。

 立花は腰から刀を抜き、シノギの構えをとった。

 三本の刃がぶつかり合い、火花を散らす。少女は二本のレイザーブレイドで連続して斬撃を繰り出してくるが、それを全て防ぎ、隙を付いて逆袈裟掛けに斬り付ける。しかし少女は身体を捻ってそれを回避し、バックステップで後ろの下がる。

 少女は手を前に突き出して挑発する。

「かかってきやがって下さい」

 俺は少女に迫り、鞘のトリガーを引きながら弾丸と同じ速度で横一文字に薙ぐ。が、少女は上体を反らして回避する。その際、長い前髪が刀に当たり少し青い髪が散った。そして今度はバック転で再び後退した。

「今のは避けられないと思ったが……なるほど、口だけでは無いという訳だな」

「そう口を叩いてられるのも今の内だけです」

 そして少女はレイザーブレイドを構えて跳び、刀がぶつかった瞬間、鍔迫り合いに突入する。

 立花の方が確実に優位だったが、少女が左手のレイザーブレイドで突き刺そうとしてくる。俺はレイザーブレイドをいなしながら少女の後方に回り、逆袈裟掛けに斬るが、少女は前方受け身をとって回避し、両手のレイザーブレイドを両肩の装着させながら飛び上がる。

「終わりです」

 言って少女が少し首を回すと両肩のユニットが前方を向いて先端がそれぞれ五つに分かれ、そこから青い光線が放たれた。

 立花は出来るだけ姿勢を低くして走り、それを回避する。追尾性能でもあるのか光線はその進行方向を変えようとするが、角度が足りず地面に激突し、爆発する。

 そして少女に向かって跳び上がり、顔面に回し蹴りを放ち、左肩のユニットを刀で細切れにする。

 ユニットは爆発し、立花は地面に着地する。

「クッ……中々やりやがりますね――」

 少女は左腕を押さえている。そこからは血が滲んでいた。

「――ですが! まだ終わりじゃねーです!」

 少女は再び残った肩の装甲を右腕に装着して飛躍し、レイザーブレイドを振りかざす。だが、動きが大きすぎた。俺はレイザーブレイドの柄に刀を当てて払い落し、腹部に蹴りを加えた。少女は吹き飛び、壁を派手にへこませた後、その場に崩れ落ちた。

「お前のような奴にはCR-ユニットは似合わない。手を引くんだ」

 俺は少女の方に歩み寄りながら刀を鞘に納め、手を差し伸べた。しかし少女はその手を振り払って俺を睨んだ。

「私はまだ、戦わなきゃいけねーんです!」

 少女はそう言い残した後、どこかに飛んで行ってしまった。

 俺はその背中を見送った後、読取性随意領域(リード・テリトリー)を展開して周囲の情報を取得した。

「こちら立花、周囲の安全を確認した。回収を頼む」

『了解、今そっちに向かうわ。もう少し待ってちょうだい。任務完了よ、お疲れ様』

 久しぶりの達成感に浸りながら任務の完了を心の中で祝った。

 あのヘッドセットは後で自動的に内部融解するようにセットされているので、相手に情報を調べられる事もない。

 立花は空を見上げた。空はすっかり夕焼けに染まっている。

 さて、今日の夕飯は何だろうか、と俺はこの場に場違いな事を思った。

 その後、俺はつくづく狂ってるな、と俺は自嘲するように笑う。

 ――でも、しょうがない。これが俺の世界なのだから。




そういえば、デアラ、映画化するらしいですね。まぁ、あまり見る気はないですけど。
感想、コメント、待ってます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。