デート・ア・ライブ~破戒~   作:Kyontyu

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今回で、起ノ幕完結です! いつも精霊との戦闘シーンは長くなるのですが、途中から面倒になってきて原作部分を飛ばしたり、文が雑になってきてしまいますので、原作3、4巻片手に読むのをお勧めします。


第13話(起ノ幕 完結)

「起、悪魔の目ざめ」

 

……士道さん!

「んっ……」

 士道は目を開けた。辺りは一面真っ暗だ。向かい側には緑色のフード付きパーカーを着た少女が立っている。この前に殺された精霊だ。

「君は……」

 その瞬間、あの時の光景が一気に脳内にフラッシュバックされた。助けられたはずの命。黒い男。血塗られた宝石。自分の慟哭……

「ごめん……俺は、君を……ッ!」

 士道は手を伸ばすも、少女には届かない。あの時と同じだ。

……私の名前は、四糸乃。

「よ、しの……」

……絶対、覚えていてくださいね! 

「ああ、もちろんだ!」

 その瞬間、士道は現実に引き戻された。

 薄暗い部屋、白い天井。間違いない。自分の部屋だ。

 士道はむくりと起き上がった。

 思い出されたのは昨日の夕時、真那に殺された狂三。予測が正しければ明日も来る筈だ。

「絶対、助けてやるからな。狂三」

 士道は拳を固めた。

 その時、〈ファントム〉に渡されたキューブがほんのりと光り輝いているのに誰も気づかなかった。

 

 朝、士道が教室に入ると、狂三は既に席に着いているのが見てとれた。

 士道は狂三の席の元へ向かった。

「狂三」

「あら、士道さん。おはようございます」

「俺は、君を、狂三を、救う」

 さすがに突然で面喰らったのか、狂三は何も言葉を発さない。

「……わたくしを、助ける、ですの?」

「ああ。お前に人は殺させないし、真那にもお前を殺させない」

 狂三は「あらあらあら」と嘲るように笑う。

「士道さん? 救世主気取りは止めていただけます? わたくし、そういうの大嫌いですの」

「ああそうか。でも、これは決めたことなんだ。絶対に、救ってみせる。いや、救う」

 狂三は張り付けたような笑顔のまま立ち上がった。

「では、放課後、屋上に来てくださいまし」

 そう言って、教室から出て行った。

 

 立花が教室に向かおうと廊下を歩いていると時崎狂三とすれ違った。それだけなら何もあたりさわりないのだが、その時の狂三の口は、嗤っていた。後ろを振り向くと階段を上って行く狂三の姿が見えた。

「何かが、『起』こるな」

 立花は心の備えをしつつ、教室に入って行った。

 

「そろそろ、潮時ですわね」

 狂三は踵をカッ! と鳴らす。すると狂三を中心として黒い影が校舎を浸食し始めた。

『くーるみちゃん』

「ッ!」

 狂三を思わず短銃を声の主の元へ向けた。

「……あなたですか。〈ファントム〉」

 そこにはかろうじて存在が知覚できる『霧』が立っていた。

『止めといたら? 彼に狩られたら元も子もないじゃん』

「前回殺られたのは分身、本体であるわたくしに敵うわけがありませんわ」

『そ。じゃ、頑張ってね』

 霧は空間に掻き消えるようにしていなくなった。それと同時に上空に黒い雲が覆い始める。

 その時、ドアが開け放たれ、肩で呼吸する士道が現れた。

「ようこそ、士道さん」

 

 立花が教室で帰り支度をしていると何だか急に体に倦怠感が襲ってきた。

「……?」

 それは周りの人間も同じらしく、皆苦しそうにうめいている。

 すぐに半サイボーグ化された部分が倦怠感を取り除こうと機能し始める。周りの人は全てダウンしていたので通信機を取り出して〈ミズガルズ〉に通信した。

「こちら、立花だ……何が、起きてる?」

『ああ、立花! 今来禅高校の敷地内に強力な霊波が感知されているわ! あなたは大丈夫なの!?』

 慌てたようなリーダーの声、艦内はかなり大慌てになっているようだ。環境音がうるさい。

「少し、微妙な感じとしか言えないな……周りの人間は全て倒れている」

『……分かったわ。発信源は屋上よ。〈イェーガー〉を装備すれば収まるはず』

「了解……緊急着装」

 そう呟くと、体が光り輝き、光が収まると〈イェーガーTypeG〉の装着が完了していた。そして〈イェーガー〉は体の各部から蒸気を噴出させた。

「よし。これなら行ける」

 既に倦怠感は顕現装置(リアライザ)の作用によって取り除かれている。立花は走って屋上に向かおうと廊下に出た。すると、そこには黒い霊装を纏った狂三が立っていた。

「………」

 立花は刀を抜き放ち、構える。

「いざ、参る!」

 立花は一歩踏み込んで刺突する。しかし狂三は二丁の銃――短銃と歩兵銃だ――を交差させて防いだ。そして刀を弾くと腕を交差させた状態で二丁の銃を乱射する。銃弾程度なら刀で防ぐ事ができるが――どうやら弾丸は影から補給できるようだ。これではこちらが疲れてしまう。

 立花は銃弾を防ぎつつ後ろに退いて教室の戸の影に隠れた。黒い銃弾が壁を削っていく。

「くっ……」

 何せこちらには遠距離武装が存在しない。どうにかして近距離戦に持ち込む必要がある。

 しかし、考えていても動かねば勝てない。立花は廊下に出た。しかし、立花の姿はいつもとは違う。

「士、道さん……?」

 その姿を見た狂三は一瞬硬直した。立花は士道の姿を保ったまま、一気に狂三の懐に潜り込み、喉を裂いた。

「あ、がッ……」

 狂三は血を吹き出し続ける首を押さえてその場に倒れた。立花は刀に着いた血を払うと鞘に収め、士道の姿を解除した。

 トリックは簡単だ。狂三が士道を狙っていたのだとすれば、それも命を奪わず。そうだとすれば、ターゲットのフリをすれば簡単に動揺すると思ったのだ。だから立花は士道の姿を顕現装置(リアライザ)を用いて空間に投影したのだ。

 立花は狂三の残骸を一瞥すると、走って屋上に向かった。

 

 扉の錠はボロボロにされており、本来の役目を果たせていなかった。立花はドアを蹴破る。

 屋上には士道と狂三が向かい合う形で立っていた。空は赤い雲で覆われ、不気味な雰囲気を醸し出していた。

 立花は鞘のトリガーに指を掛けて前方に飛び上がる。

 眼下には驚愕の表情でこちらを見つめる士道が見えた。

 立花はトリガーを引いた。火薬の力で加速された刀の切っ先は見事に狂三の首を捉え、命を刈り取った。

 着地して、刀を鞘に収めたその時、

「後ろだ!」

 士道が叫ぶのと同時に立花は何者かによって組み伏せられてしまった。

「何だ、と……ッ!」

 

「あらあら、あなたにも困りましたわねェ」

 

 立花が声のする方向――上を見ると、そこには大量の『狂三』がいた。

 

「うふふ」        「あらあらあら」

      「おいしそうですわねェ」           「ごきげんよう」

 

 皆思い思いの言葉を発しながら浮かぶその光景は正に異様としかいえなかった。

「やはり、分身できる能力だったのか……!」

「では士道さん、もう一度、伺いますが、これでも、わたくしを救うと仰りまして?」

 その時、けたたましいサイレンの音――空間震警報が鳴り響いた。それと同時に上空から耳をつんざくような高い音が聞こえる。

「狂三、空間震を、止めろ。さもないと」士道はフェンスの元まで歩いた。

「さもないと?」

「ここから飛び降りて――」

 その瞬間、立花が拘束を無理やりほどく。狂三の千切れた腕から血しぶきがあがる。

「――させるかッ!」

 刀を構えつつ、再び飛び上がった。

「面倒、ですわ」

「!」

 狂三が二丁の銃を構え、放った。放たれた弾丸は空中では自由がきかない立花の両腕を捉えている。

「しまっ――!」

 そして、二の腕から先が、爆ぜた。

 集中力を切らしたのか、同時に耳をつんざくような音が止んだ。

 立花は爆ぜた部分から青白い人工血液を流しながら空中でバランスを崩して校舎から落ちて行った。

「くそ……ッ」

 

 薄暗い部屋、赤い壁、地面を満たす謎の液体。そんな所に立花は立っていた。

「俺は、死んだのか……?」

 声は聞こえるが、他の音が全く聞こえない。水の音も、何も。

「いんや、死んじゃあ、いないな」

 そう女性の声が聞こえると同時に目の前にスポットライトが当てられる。思わず目を腕で庇った。

「あんたは?」

 女性は金色の玉座に足を組んで座っている。

「私は、〈魔王〉サタン。あんたの命の恩人だ。前にもあった事があるだろう?」

「いや、無いな」

 サタンは少しずっこけるような真似をした。魔王の割には人間くさい。

「まぁ、しょうがないか。でも今のあんたは私の慈悲のおかげで生かされているんだ。使命を託してね」

「使命?」

「そう。精霊の力をその体に封印する。例の少年と違うのは、武力を行使する、という事だけだ。それ以外は何にも変わんない。現に今その体には四番の力を封印してる」

「いや、待ってくれ。四番? 精霊には数字がふってあるのか?」

「ご名答。その通りだ。そして精霊は全てで十体存在する。でも君はその中の三番に負けた。確かに、あれは強敵だが、勝てないわけじゃない。どんなゲームにも突破口があるのさ」

「なんだそれは」

 サタンはフッ、と短く笑った。

「力だよ」

 

 立花ははっ、と目ざめた。依然として右腕には幻肢のような感覚があるが、左腕はちゃんとある。いや、生えてきたと言うべきか。

「ふんっ……」

 左腕に力を込めると腕が四角い白いキューブのような物に分かれ、形を変え始める。カチカチカチと音を立てながらその姿を変え、巨大な銀色の無機的な腕に変形した。大きさは自分の身長の半分ほどある。

 立花は腕を地面に叩きつけて跳んだ。そして一気に学校の屋上に飛び上がると、その腕を一体の狂三に叩きつける。狂三はバラバラの肉片になってそこらじゅうに撒き散らされた。視界の横には巨大な時計塔がそびえている。

 屋上の姿はすっかり様変わりしていて、数体の狂三に抑えつけられている士道と傷だらけの状態で横たわる青い髪の少女、そして気絶させられたのか、倒れている〈プリンセス〉と鳶一折紙。

「ふぇ……?」

 口の中にまで指を突っ込まれている士道が素っ頓狂な声を上げる。

「あらあらあら、生きておりましたの?」

「当たり前だ」

 腕を変形させて巨大な銃にして狂三に構え、放った。銃口から放たれた巨大な熱とエネルギーの塊が狂三に迫る。

「ッ! わたくしたち!」

 狂三の分身体達が狂三の前に立ちはだかる。しかし、それをやすやすと貫いてエネルギーの塊が狂三に迫る。そして爆発した。

 狂三を左腕を消失させた状態で煙から現れた。

「くッ! ならば!」

 そして右腕を掲げると再び警報と耳をつんざく音。

「アハハハハッ!」

「ッ!」立花は左手を固めて狂三に向かって跳ぶ。

「さあ、さあ! わたくしに絶望の顔をォォォ!」

「間に合わないかッ!」

 そして、空気が震えた。が、何も起きなかった。爆発も、空間震すらも起きなかった。

「アハハハハ……へ?」

「何だ?」

 立花は上を向く。

 さすがに狂三も笑うのを止めた。

 

「知ってた? 空間震ってね、同程度のエネルギーをぶつけると互いに相殺し合うのよ」

 

 その声は、どこかで聞き覚えがあった。

「ほ、ほほい(こ、琴里)?」

 赤い空に、『太陽』が浮かんでいた。しかし、よく目を凝らすとそれは太陽では無く、ヒトの形をしている事が分かる。白い和装に頭から生えた一対の黒い角。これは正に人智を超えた存在、『精霊』である事を示している。

(士道の妹も精霊だったのか……これを偶然と捉えるべきなのだろうか。それとも何者かの意思?)

 立花は上を向きながらそう考えていると琴里が口を開いた。

「少しの間、返してもらうわよ。士道」

「へ?」

 琴里はきっ、と前を向くと、前方に手を伸ばした。

「焦がせ――〈灼爛殲鬼(カマエル)〉」

 すると琴里の腕が炎に包まれ、炎が無くなるとそこには赤い戦斧が握られていた。

「そこの黒男。こいつを殺るのに少し、協力しない?」

「……いいだろう」

 立花は腕を三連ガトリングに変形させながら答えた。

「どォなたですのォ?」

 狂三が短銃を構えて不機嫌そうに眉根を寄せる。

「自己紹介なんて必要ないわ――だってアナタ、すぐ地獄行きなんだから」

 琴里は戦斧を構え、立花は腕を上下させてガトリングに弾を装填した。

「俺がザコを吹き飛ばす。お前が本星を殺れ」

「言われなくても――」

 琴里が飛ぶ。立花はガトリングを構えた。

「――分かってる!」

「上等ですわ。全員喰らい尽くして、やりますわよォ!」

 その掛け声と同時に狂三の分身が琴里に向かって飛んでいくが、そのほとんどが立花によって細かな肉片にされてしまう。琴里も取り逃した狂三を斧で吹き飛ばしていく。そして屋上にいる狂三達を蹴散らした。

「こ、琴里なのか……?」

「質問は後、今は逃げなさい!」

「クッ……【一の弾(アレフ)】!」

 巨大な時計塔の姿をした天使〈刻々帝(ザフキエル)〉の一の部分から影が染み出し、短銃に装填されるのと同時にこめかみに放った。そして狂三の時間が加速する。

「フフフッ」

 狂三は笑いながら琴里の頭部に銃を当てると、腹部に鈍痛と衝撃。

「何ッ!」

 横を見ると立花が加速世界だというのに蹴りを加えていた。そして時間が元に戻る。

 狂三は校舎に叩きつけられ、立花は着地した。

「へぇ、なかなかやるじゃない」

「そいつはどうも」

 再び腕を上下させて弾を装填した。

「クソッ! 【七の弾(ザイン)】!」

 短銃に影を装填した狂三は立花めがけて放った。狂三の分身を迎え撃っていた立花はそれに気づかず、その場に固まってしまった。

「クヒヒヒヒヒッ!」

 ここぞとばかりに狂三は校舎から離れ、立花に銃口を向けた。

「させるかっっっつうの!」

 狂三の目の前に躍り出た琴里は〈灼爛殲鬼(カマエル)〉をバットのように振って狂三を吹き飛ばした。

「ごふぁ……ッ!」

「ザコを近づけさせないでよね! 【砲(メギド)】!」

 立花にそう言った後、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の斧の部分が炎となって消え、棍の部分だけにになる。さらにそれが変形し、腕に装着された。

 屋上の上でよろよろと立ち上がる狂三は叫ぶ。

「バカなバカなバカなバカなァァァァァァ!」

「止めてくれッ! 琴里!」

 士道の必死の叫びもむなしく、【砲(メギド)】の砲口に熱が集まっていく。

「せいっ、はァァァァァァ!」

 そして巨大な炎の柱が狂三に放たれ、爆発した。それと同時に分身たちが糸を失った操り人形のようにその場に崩れ落ち、影に呑まれていった。

「殺ったか……?」立花は呟く。

 煙が晴れると胴体の半身を失った状態でなお生きている狂三と無残に文字盤を抉られた〈刻々帝(ザフキエル)〉の姿があった。狂三の抉れた部分からは黒い宝玉が見えている。

「お、おい……狂三……?」

 士道は這いつくばりながら狂三に手を伸ばす。

『何してるの? 早く逃げなきゃ。どうせ彼女もすぐ活動を停止するんだからさ』

 視界の隅に〈ファントム〉が現れた。

 立花が左腕を巨大な腕に変形させて校庭から飛び上がる。

 狂三は微笑む。

「士道さん、ごきげ――」

 そして立花は巨大な左手で屋上の狂三を握りつぶした。水風船を割るように、あっさりと。

「ッ………!」

 血糊がベタリと士道に付着する。

「ウワァァァァァァァァ!」

 士道は空に向かって叫んだあと、力尽きるようにして倒れた。

 それを見た琴里もどこかに飛んで行ってしまった。

「……任務完了、これより帰還する」

 立花は〈ミズガルズ〉に転送された。

 そしてついに〈刻々帝(ザフキエル)〉も崩れ去り、狂三がいた事を示す物は学校と少女たちに残された傷だけになってしまった。

 空はすっかり晴れ、温かな日差しが差し込んできていた。

 

―――戦いはまだ、始まったばかりだ。

 

                                            ――起ノ幕――

                                              完




立花の腕の変形。完全にトランスフォーマーの影響を受けました。でも、かっこいいんですよねぇ、あの変形の仕方。
次回からは『承ノ幕』がスタートします!
あと、お気に入り登録数が二ケタに突入! やった! やっと二ケタだよ!
これからも応援お願いします!
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