あと、ハーレムがないのは作者が書けないからです。現実でも二次元でもそれは苦手です。
え? なんでデアラ読んでるのかって? そりゃあ、CR-ユニットがカッコいいからさ。
十五年前――
「あのーすいませーん。誰かいますかー?」
黒いコートを羽織った女性、ユミ・ケベックは薄暗い部屋の中で呼びかけていたが、それに対する返事は無い。
そのまましばらく部屋の探索を続けていると、大きな窓越しに白い外骨格アーマーのような物が見えた。
「これは……」
手を窓に当ててまじまじとそれを見つめる。
「おいおい、誰だ君は。ここは立ち入り禁止区域だぞ」
するとユミが入って来た方から男性の声が聞こえた。
「あ、すいません……そういうつもりでは」
「ハハ、分かってるよ。冗談さ。君、『クリフォト』から視察に来たんだろ?」
「ええ、ユミ・ケベックです」ユミは入館パスを示す。
「ケベック……ああ、あのガルドロア氏の娘さんか」
「あ、父を知ってるんですか」
「ああ」、と男性は握手を求める。
「君のお父さんとは知り合いだからね――紹介が遅れた。僕の名前は鉾田時雨だ。よろしく」
ユミも手を握り返す。
「あれが、今開発してる……?」
「〈イェーガー〉さ。あれはまだ試作段階のやつ。実戦型は違う部屋で開発してる。来てごらん」
ユミが時雨の後について部屋に入る。清潔感がある白い部屋で中央には先ほどのとはまた形状が少し変わった外骨格スーツが置いてあった。
その周りでは複数人の研究員が慌ただしく動いている。
「顕現装置(リアライザ)搭載強化外骨格スーツ、〈イェーガー〉さ。狼の敵、龍を屠る者。どうだい、挑戦的でいて崇高な名前だろう?」
「すごい……触っても?」
「ああ、もちろん。これは汎用性を目指して開発したんだ。随意領域(テリトリー)を展開しなくても十分に戦闘出来るし、範囲も小さいから演算核(コア)の計算力で足りるんだよ」
「へぇ」
ユミは〈イェーガー〉に触れた。冷たく、表面は少しざらついている。
「〈ヨルムンガンド〉の装甲の組成を真似てみたんだけど、うまくいかなくて滑らかには仕上がらなかったよ。おかげで強度は確保できたがね。今は君たちが保管してるんだろ?」
「そうですね。それのおかげで『空中艦』の開発がはかどっているんですが……顕現装置(リアライザ)は何処の物ですか?」
「いや、これは僕達が開発したオリジナル。さすがに他社には任せたくない。この〈イェーガー〉の形状上、出力は少ないが、機動性だけで精霊と渡り合えるはずさ」
「精霊ですか、最近も〈ハーミット〉が出現してその影響で土砂崩れが発生して数十人が犠牲になったとか」
「そうだね……」時雨は二つのカップにコーヒーを淹れ、片方をユミに手渡す。
「ありがとうございます」
ユミは軽く礼をして一口飲んだ。
「最近もアメリカの国防総省で話題になっている。もうそろそろ国が顕現装置(リアライザ)を使った兵器の部隊を作り始める。時間はかかると思うが、いつかできるだろう」
「我々も、急がなければいけませんね」
「そうだな。今は他にも顕現装置(リアライザ)を搭載した輸送機や、戦闘機の開発もしてる。でも、精霊に勝てるかどうか……」
時雨は壁に寄り掛かった。
「勝てますよ。私達が信じている限り、勝利は必ず来ます」
「そうかい? そう言ってくれるとありがたいな」
その時、室内に警報が鳴り始めた。
『空間震警報発令、発生予定地点は研究所より南に三キロ』
「まずいな……近いぞ」
時雨はコンソールを叩いて画面上に表示されたポップアップを操作する。
そして地面が、揺れた。
館内の電灯が消え、赤い非常灯が灯る。
時雨は胸ポケットから通信機を取り出す。
「被害状況は?」
『……に、し、B棟が半壊……ジェネレーターも故障しました……』
通信状況が悪いのか、ノイズがかなり混じっている。
「観測機にはやはり誤差が……死傷者は!?」
『……ま、だ、確認、できてません』
「分かった。試作段階だが、量産型〈イェーガー〉で精霊の対応にあたらせる。非戦闘員はすぐに地下シェルターに避難だ」
『りょ、うかい』
そこで通信を切る。
「すまない。せっかくの視察が、これじゃ、台無しだな」
「いえ、そんなことは」
「さ、早く避難しよう。こっちだ」
ユミは時雨に手をひかれるままに部屋を出た。
「総員、スーツの着装は完了したか」
坊主頭の隊長らしき人物が目の前にいる五人の隊員たちに確認をとる。
「α1から5まで、問題ありません」
一番右にいる隊員が答えた。顔はヘルメットに隠されていて見えない。
「うむ。今回の目標は避難が完了するまでの防衛だ。決して無理はするな。敵は〈プリンセス〉、既にB棟は破壊尽くされた。このまま放っておけば、何するか分からない。全力で止めるぞ!」
『応ッ!』
隊長もヘルメットを被り、銃を背負う。
「作戦開始!」
「ちょっと待って下さい!」
ユミは時雨の手を振りほどいた。
「何だ!? 早く避難しないと」
「やっぱり私は戦います」
「だが、君に装備は無いだろう!」
「〈イェーガー〉があります。それを使わせて下さい!」
「だがあるのは試作品と開発途中の実戦型だけだ! 危険すぎる!」
「試作品で出ます! 責任は自分で持ちますから!」ユミは手を横に薙ぐ。
「だが――」
そこまで言った途端、素早い動きでユミが拳銃を取り出し、時雨の首元に突き付けた。
「――脅してでも行きます。これでも私は『クリフォト』の戦士です」
時雨は少しの躊躇いの後、溜息をついた。
「ついて来てくれ。用意しよう」
時雨とユミは最初に出会った部屋に戻って来た。
時雨は素早い手つきでコンソールを操作する。
「アンダースーツを着ているヒマはない。悪いが、下着以外脱いでくれ」
「へ?」
「聞こえなかったのか。下着以外脱げと言っているんだ」
「あ、ああ」
ユミは小さく首肯して、衣服を脱ぎ始めた。
「……これでよし」
装甲スーツの前面が開く。
「お、おい。脱ぎ終わったぞ」
「なら、このスーツの中に入れ」
ユミは少し恥じらいつつもスーツの中に入った。中は何だか柔らかい。
「恥じらっている場合じゃないぞ。これから戦闘なんだからな――」
時雨はスーツを閉じ、腹部から胸部にかけて六つのボルトを電動ドライバーを締めていく。
「――これでよし。あとはヘッドセットを付ける」
ユミの頭にヘッドセットを付け、後ろのコードをスーツのうなじの部分に接続する。
「起動するぞ」時雨は壁にあるレバーを倒す。
「おうふッ!」
起動と同時にユミはバコン! という音と共に一気に体が締めつけられた。
「なんだこれ……」
「これで身体をスキャンしたり、筋電位を測定する。直に慣れるさ」
「そ、そうか」
「武装は背中にある榴弾と、試作型レイザーブレイドのみだ」
ユミに一本の刀を渡す。ユミがそれを掴むと刀身の溝部分が青い光を発し始めた。
「出来るな?」
時雨は拳を突き出す。
「もちろん」
ユミは拳を時雨の拳に当てた。
研究所の一角で乾いた音が響き渡る。
『お、おいィィ! 全然効いてねェ!』
全員で銃弾を〈プリンセス〉に浴びせるが、ダメージを受けた様子は無い。
〈プリンセス〉の表情は暗く、陰鬱な印象を与える。
『ク、クソォォォォ! 俺の妻の仇ィィィ!』
一人の兵士が叫び声を上げ、ブレードを抜き放ちながら〈プリンセス〉に突入していく。
『待て! 単騎行動は……ッ!』
兵士は〈プリンセス〉に近づくも、〈プリンセス〉が持つ一振りの剣に右腕を斬られ、あっさりと蹴り飛ばされてしまった。
飛ばされた兵士は持った銃を乱射しながら奥の中庭に飛ばされた。
『ケイシィィ! ああ、まずい! α3がやられた!』
『総員、体勢を崩すな! α4はα3の救出を!』
『了解!』
α4――ケイドは飛ばされたケイシーの元に向かう。
「おい、大丈夫か! おい!」
ケイドはヘルメットを外す。そしてケイシーのヘルメットもロックを外してヘルメットを取った。
「うっ……」
なんとか生きているようだが、右腕からの出血がひどい。
「待てよ。今から運ぶから――」
運ぼうとしたケイドの右腕がケイシーの左手に掴まれる。
「――いや、ダメだ」
「何でだよ!」
「分かってる。自分が死ぬことくらい。お前も分かっているんだろ?」
ケイドは息を呑んだ。
ケイシーの言っている事は正しかった。恐らくスーツの中も出血してる。試作段階のスーツには高度な生命維持機能が備わっていない。このままでは出血多量で死んだしまうだろう。
「俺の妻は、空間震で死んだ。まだお腹に赤ちゃんがいるままで。あとで〈プリンセス〉の起こしたものだと分かって、ここに来た」
ケイシーは腰のポーチから十字のアクセサリーを取り出し、ケイドに渡した。
「これは妻の形見だ。これをお前に託す。だから、だからきっと――」
「――止めろ! これ以上何も話さなくていい!」
ケイシーの肩を抱く。白い装甲に紅い花が咲く。
「奴を、倒してくれ……」
そしてケイシーは動かなくなった。
「おい……おい、ケイシー……」
揺らすも、何も反応は無い。ケイシーの顔は最後まで笑っていた。綺麗な死に顔だった。
「クソ……ッ!」
ケイドは首にアクセサリーを提げ、ヘルメットを被らない状態で戦線に戻った。
「ウアァァァァァァァ!」
戻って来るや否や銃を乱射するも、何も反応が無い。
「え……?」
土煙が晴れると、そこには倒れた隊員たち、その奥には〈プリンセス〉が立っていた。
隊員達は動く気配が無い。みんな死んでしまったのだろうか。
「あ、あ……」
ケイドは尻もちをつき、後ろに下がった。そして〈プリンセス〉がこちらに気づいたのか、剣を構えて跳んできた。
「あああああああ!」
その時、目の前で衝撃波が炸裂し、その威力でケイドは後ろに転がる。
ケイドが顔を上げると、目の前にいたのは試作品の〈イェーガー〉を纏った『女性』だった。
「……ふんっ!」
女性は刀で〈プリンセス〉を飛ばす。
「展開!」女性が叫ぶ。
するとスーツの後ろにある補助腕が展開し、榴弾を放つ。〈プリンセス〉に当った榴弾が爆発し、あたりに爆風を撒き散らした。
「おい、大丈夫か?」
ユミは後ろをちらりと見やって言った。
「あ、ああ」
「じゃあ、今すぐ逃げろ」
兵士は何回か頷くと走って逃げて行った。
ユミが刀を構えると煙の中から〈プリンセス〉が現れる。ユミはとさっさにレイザー刀で防いだ。
「あんたは、どこから来た……ッ!」
しかし、〈プリンセス〉は答えない。次々と斬撃を繰り出してくる。ユミはそれを数回防ぎ、宙返りして後退した。その際、自分の真下に剣が通った。
着地したユミはそのまま飛び上がりきりもみ回転しながら〈プリンセス〉を斬り付ける。
〈プリンセス〉の右頬には切っ先が掠めたのか、血が流れていた。それに気付いた〈プリンセス〉は驚いたような顔をして空間に溶けるように消えていった。
ユミは地面に刀を突き刺して来た道を帰って行った。
今回の話は〈イェーガー〉の過去に触れつつ、精霊の罪を描いてみました。
〈ハーミット〉の出現による豪雨での土砂災害や、〈プリンセス〉の空間震など。
ちなみに一番被害が出ないのは〈ディーヴァ(バ?)〉だと思います。洗脳されますけど。