あと、改題しましたのでよろしくお願いします。
「承、破壊された日常」
「申し訳ありません。全ては私の判断ミスです」
薄暗い書斎の中で栗色の軍服を着た令音は頭を下げる。
「……そうか。琴里が……」
ウッドマンは詰まるような声で呟く。
「第四、第三のみならず琴里まで失ったのは私のミスです。どんな処分でも、甘んじて受けるつもりです」
「いや、いいんだ。『悪魔』が出現したんだ。もしかしたらこれは彼女たちの宿命かもしれん」
「しかし……」
「ああ、分かっている。これは恐らくアイクのたくらみだ。彼は霊力を受ける『器』を必要としている。器に全て注がれてしまった時、何が起こるのかは分からない。全力で阻止していくれ」
「了解しました。では、失礼します」
令音は再び一礼して部屋を出た。
鈴木が一階に降りると士道は夜ごはんの準備をしていた。肉の焼く音が聞こえている。恐らく今日はハンバーグだろう。十香も来ると言っていたからな。
「士道君? 何か手伝おうか?」
鈴木はキッチンに入ってそう言った。
「いや、いいよ。琴里に手伝ってもらうから」
「………」
鈴木は何も言わずに士道を見る。彼の目はどこか虚ろだ。
「おーい。琴里? どこにいるんだ?」
士道はふらふらとキッチンを出た。
「かくれんぼしている暇あったら手伝ってくれよ」
そう言いながら歩いていると足を躓いて転んでしまった。
「士道君……ッ!」
鈴木は駆け寄って抱き起す。その時、ドアが開いて十香が入って来た。
「おーう。シドー! 来てやった……ぞ?」
反応が無かったので十香が辺りを見回すとぐったりとした士道を介抱する鈴木の姿があった。
「シドー!」十香もすぐさま駆け寄る。
「すまない……夜十神さん。思ったより士道君の心のダメージがひどいんだ」
「そんな……!」
「だからと言ってはあれなんだけど……今夜は士道君と一緒に寝てはくれないだろうか」
十香は顔を真っ赤にして立ち上がり、後ろに後ずさる。
「な、な、何を言う!?」
「僕は本気だ。今の彼には癒しが必要なんだ。何をするかは自由にしてくれ。僕は〈フラクシナス〉に行く」
士道を十香に預けて鈴木は立ち上がる。
「それじゃあ、頼んだよ」
「む、むぅ……」
困ったような顔をする十香を残して鈴木は家を出た。
「……シンは、どうだった?」
「もう完全にまいってますよ。あれは。実の妹を失ったようなものですもんね」
鈴木と令音はレストルームで話していた。
「そうか。当然だろうな」
「ええ……神無月さんは?」
「彼は今、自分の部屋で自分で自分を痛みつけている。彼なりに、悔やんでいるのだろう」
「そうですか……あれから一週間、クルー達の士気も確実に下がってますし、士道君も学校に行く気配が見られません。もうすぐ修学旅行だというのに……」
「? 何かあるのか?」
「はい。あの付近には〈ベルセルク〉の反応が最も多く観測されている地域です。もしかしたらと思ったんですが……」
令音は顎に手を当てる。
「ふむ……これ以上奴に精霊を殺させる訳にはいかない。どうにかして士道を復帰させなければな……」
「とりあえず様子を見てみましょう。今日は夜十神さんに任せてきましたから」
「分かった。だが、君はこれでいいのか?」
「何をです?」
「『組織』を裏切った事についてだ」
「僕はもう……悲しむ顔を見たくありませんから」
月明かりの照らす部屋で士道と十香は一緒のベッドで横たわっていた。十香は赤面しているが、士道は既に眠りに就いている。本来なら全力で拒否するはずなのに、今は全てがどうでもよくなってしまったみたいだ。
「シドー……私は、何も出来なかった。なぜ、私と一緒にいてくれたのだ……?」
「……守りたかった、から」
「へ?」
「俺は、何か護りたかった。ただそれだけだったんだ。でも、今はもう、誰かを護りたくない。護ろうとすれば、必ず悲しい思いをする。俺はもう、それが嫌なんだ!」
士道は頭を抱える。
「シドー……」
十香は士道をそっと抱いた。
次の日の朝、士道は十香が学校に行ったのを見届け、家事を始めていた。
その時、インターホンが鳴った。
士道がそれに応じると少女の声が聞こえた。
「来禅高校の者だが、五河士道はいるか?」
士道はすぐさまインターホンを切る。
しかし、しつこくインターホンの呼び鈴が鳴る。
士道は部屋の隅にうずくまり、拒絶するように頭を抱える。すると、不意に部屋が静かになった。
「え?」
その時、衝撃音と共に家の玄関のドアが吹き飛んだ。ドアは真っ二つに折れて部屋の中を転がる。
士道は這いつくばりながら玄関に向かうとそこには以前自衛隊病院で会った銀髪の少女が立っていた。無機的な赤い眼で士道を見下す。
「五河士道。学校に来い」
やっと八舞編に突入します。さて、士道は次こそ霊力の封印ができるのか!?
乞うご期待!