それでは、どうぞ。
「承、ザ・ムーヴ」
「聞こえなかったのか? 五河士道。学校に来い」
目の前の銀髪の少女はこちらを見下しながら手を出す。
「いや、俺は……」
「来ないなら連れて行く」
銀髪の少女は士道の腕を掴んだ。かなり痛い。
「あっ、ちょ……」
そのまま体が強引に立たされ、レッカーされる廃車のごとく道路に出た。
「待ってくれよ。何で俺の家が!?」引っ張られながら訊ねる。
「なんでって……お前、頭悪いのか?」
「へ?」
見上げると、少女の髪に陽光が反射して、眩しかった。
太平洋上空に不可視の艦、〈ミズガルズ〉が浮いていた。たまに屈折パネルがキラキラと反射する。
「『社長』も、人使いが荒いわねぇ」
いつも通りの黒い革ジャンを着たリーダーは額に手を当てる。
「ええ、そうですよ。沖縄まで行って爆破工作なんて……一体何を考えてるのやら。ま、そのおかげで艤装も完了しましたがね」
イーガンは溜息をついた。
「どうやら」天話が言った。
「『社長』は夜十神十香に興味を示したらしい。それに私兵部隊も動き出している。荒れそうだぞ、今回は」
天話は一枚の写真をリーダーに手渡した。銀髪の少女の集団が写っていた。物陰から撮ったようで、明らかに隠し撮りをしたようなアングルだ。
「分かってる。だからこそ今回であの妄想集団と決着をつける」
「〈ラタトスク〉のことか」
「恐らく奴らは空中艦を保有している。そうでなければあんな迅速に対応出来る筈はない。その母艦さえ潰せれば人間同士の戦いは、終わりを告げる。それにDEM社の大型艦も、任務を言い渡されている。次の目的地は、『或美島』よ」
「了解。針路反転、目標『或美島』」
蒼が命令を出す。グォォンという音と共に艦が動き始めた。
ガララと、少女が戸を開いた。しかし、勢いが強すぎて戸の窓ガラスが割れた。
「五河士道、連行した」士道を前に放った。
士道はよろめいて、クラスの全員に向かって愛想笑いをした。
「ど、どうも」
クラスのみんなは驚いて目を丸くしていた。
「あ、あの~水無月さん? 何も壊してませんよね?」
タマちゃんが額に汗を浮かべながら、士道を連れて来た少女――水無月 潤に言った。
「いや、ドアを一つ。壊してしまった」
それを聞いたタマちゃんはトホホ、と肩を落した。
「でも、なんで俺をここに?」
「今は大事な話し合いが行われている。修学旅行についてだ。それに、テストもやってないだろう?」
「ああ~」士道は納得したように頷く。
「では、帰らせていただく」士道は教室の出口に向かって走る。
「帰らせはしないぞ」
潤が士道の襟を掴む。
「いやだ! 離してくれ!」
「断る」
「離せ!」
「断る」
「はーなーせーよー!」
「断る」
これにはさすがに士道も折れるしかなかった。
『どうですかな?『ペルソナ』の調子は?』
「フッ、良好だよ。おかげで主の願いも叶いそうだ」
ウェストコットはホログラム画面越しにシロと話していた。明りを落し、窓もシャッターで閉めた社長室はホログラムが放つ光のみで照らされ薄暗い。
「もう既に一人をイツカシドウと接触させている」
『ほーう。それは楽しみだ。ま、『精霊細胞』が暴走しないことを祈るだけだすね』
「『精霊細胞』、か。一体どうやってそんな物を?」
『いやー。結構時間がかかりました。何せ十体分のサンプルを集めるのは本当に骨が折れましたよ。あなたが協力してくれたおかげです』
「なぁ、一つ、教えてくれないか? なぜ分かったんだ、精霊と人は、元は同じようなものであったということが」
『いいでしょう。せっかくのビジネスパートナーですからね……時間は遡って神話の時代……
アダムとエヴァがエデンの園にいた時代、『知恵の実』が生る木と『生命の実』が生る木がありました。生命の木には、十一個の実、知恵の実は一つしかなく、それは神によって食べることを禁じられていました。神は、人類が高度な知能を持つ事を怖れたからです。しかし、アダムとエヴァはその二つの実を半分に割って、食べてしまいました。
その後、怒った神は二人をエデンから追放しました。そして生命の実は、混沌の深淵へと、送りこまれました。
まぁその生命の実が精霊と成るのですが、何故かは分かりません。しかし、人類は幸い半分だった為、そこまで強い力が現れることはありませんでしたが、稀に超能力者として出てくる場合があります。
これが、人類の歴史です』
「要するに、精霊と私たちは同じ部分を持っていると」
『ええ、それが、脳です。すなわち、知恵の実です。生命の実は霊結晶(セフィラ)として現れましたが。対極のような関係をもっていますので、もしかしたら、と思ったのです』
「ふむ……そしてそれが成功した、と」
『そう! 正に大発見ですよ!』
「それでは、私は会議があるので、ここらで失礼させてもらうよ」
ウェストコットはホログラムを閉じた。
ああ~短いな~。
あと、神話はほとんどが創作です。神話を元にした部分ももちろんありますが。