デート・ア・ライブ~破戒~   作:Kyontyu

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第3話

「起、介入の時」

 

「αユニット起動テスト開始」

「了解。擬似CR-スーツ、リアライザ臨界駆動開始……システム・オールグリーン」

「αユニット、スーツとの接続を確認。αユニット初期起動シークエンスに入ります」

 白い隔離された部屋の中には<イェーガー>と同型のCR-スーツを装着したマネキンがあり、後ろには両端に伸びたマニュピレーターの先には人の幅の二倍程ある盾のような物が付いた新型追加装備のCR-ユニット『αユニット』が装備されていた。

 ここは『ミズガルズ』の後方大型格納庫の『装備実験室』。ここでは様々なサポートユニットや、武装等の開発が日夜行われている場所である。

「流石、早いわね。鉾田主任」

「ありがとうございます、司令」

 開発部の全員がコンソールを操作している後ろでリーダーと、長い髪を後ろに纏めた開発部主任の鉾田 天話(ほこた てわ)が話していた。

「<イェーガー改>はどこまで進んだの?」

「まぁ、八割ぐらいですかね。もうすぐお披露目できますよ。まぁ、一割がとてつもなく長いんですが」

 そこで「初期起動シークエンス終了」と開発部の一人が言った。

「うむ、では擬似CR-スーツのテリトリーとの同期を開始、テリトリーを展開させろ」

「同期完了。テリトリー展開します」

 ねぇ、とリーダーは鉾田に尋ねる。

「αユニットって何が出来んの?」

 その時、αユニットを装備した擬似CR-スーツが『浮かんだ』

「やっと、自由に空を舞う権利を得たのですよ。『狩人』は」

 

「いやだから、なんで俺にそんな力があるんだよ!?」

「え、いや~えっと~、そ、そう! ふ、フラクシナスの観測機で調べたの!」

 士道の問いに琴里が明らかに狼狽した様子で答えた。

「……本題に戻ってもよいだろうか」

 その時令音が声をかけた。

「確かに封印は完了したが……精霊の精神状態が悪化すれば力が逆流する恐れがあるのさ」

「そ、それってどういう事ですか?」

「先ほど言った通り、君と十香の間にはパスが通っている。力を封印……いや、体内に取り込むの方が正しいのだろう。精霊の力をパスを通して封印することができるのならばその逆もあり得る、というわけだ」

 ここで令音は一息ついてから話を続ける。

「力を逆流させないようにするためには精霊の精神状態を安定させる必要があるのだが……シン、君の近くにいる時が一番安定するんだよ。という訳で訓練も兼ねて精霊の特設住居が完成するまで同居してもらいたい」

「ん……訓練? って、もう十香の力は封印したぞ」

「誰が『精霊は一人』なんて言ったのかしら?」

「え、それって……」

「そうだ、シン。精霊は十香以外の個体も確認されているんだよ。そこで、だ。引き続き精霊との会話役を続けてもらいたい」

 令音はさらに自分のカップに角砂糖を入れ、一口飲んだ。

「そのための訓練っていう訳か」

「そ、そういうこと」

「でもやっぱり十香と同居しなくとも……」

 

「だ、駄目だろうか……」

 

 士道が声のした方を振り向くと、ドアの間から不安げな顔を見せる十香の姿があった。しかも目は若干潤んでいる。

「いや全然大丈夫問題ないよ!」

 こんな顔されてしまったら断れる訳がない。士道は心の中で自分の運命を呪った。

 

 五河家の天井裏でパソコンを叩き続ける影があった。モニターの光に照らされたその姿は、辺りの暗さもあって不気味さを増していた。

 ……おかしい。何故テリトリーの反応が無いんだ。それにあの客……この立花 一未という男……なにか裏がある。

 パソコンのモニターに映っていたのは黒と青の装甲を身に纏う一未の姿だった。

 

「それじゃあ、そろそろ立花を呼んでもいいか?」

「ええ、構わないわ」

「私は部屋に戻ることにするよ」

 そして琴里はテレビ前のソファーに、令音はカップを持ったまま階段を上がっていった。

「おーい、立花ー! もういいぞー!」

「うん、分かったー!」

 急いで二階に上がってCR-スーツを解除し、階段を下る。

 そしてその後しばらく遊んだ。こんな楽しい事など、いつ以来だろうか。

 

「なぁ、立花」

「ん? 何?」

「俺は士道でいいよ。あまり堅苦しいのは好きじゃないんだ」

 不意にそんなことを言われ、思わずキョトンとしてしまった。

「? どうしたんだ?」

「い、いや何でもないよ。ただ、そんなことを言われるのは初めてなんだ……僕のことも一未でいいよ」

「ああ、よろしくな、一未」

「こちらこそ、士道」

そしてお互いの手を握り合った。

 

「……じゃあ彼女も精霊、か」

 艦長室で文章化された五河家の会話のログを見ながらリーダーは呟いた。隣には暮空がいる。

「そのようですね」

「いつかは殺さなければならない存在という訳か……」

「そこで留意しなければならないのが五河士道の存在。彼の力は未知数です。もし怒りに任せてその力を暴走させれば……どうなるか分かったものじゃありません」

「確かに」

「救世主(ヤハウェ)か、世界を滅ぼす悪魔か……全ては一人の少年の手の中ですね」

「………」

 リーダーは何も言わず踵を返して艦長室から出て行った。

 

 次の日

 早朝、五時三十分。いつも通りの時間に起床し、ジャージに着替えて外に出る。まだ布団から出たばかりの少し火照った頬に朝方の冷たい風が当たる。

「よし、行くか」

 そう言って俺は前日に決めたルートを走り始める。

 ……接吻(キス)によって力を封印か……もしこの世界に神様がいたらそいつはきっとふざけた奴なんだろうな。

 走りながら頭の中にチャラチャラした神のイメージを展開ながらそんな事を考えていた。

 そして走り続けること一時間。指定したルートを走り終え、家の前に到着した。隣には五河士道の家がある。

 そういえば、昨日士道の悲鳴が上がっていたような……それは『訓練』によるものだろうか?まぁ、関係ないが。

 汗を拭きながら家の中に入る。すると台所の方からフライパンで何かを焼く音と共に「お、兄さんおかえりー」といううずめの声が聞こえた。

「ああ、ただいま」

 リビングに入るとこんがり焼かれたソーセージの匂いが鼻腔をくすぐる。

「あ、兄さん、先にシャワーに入っちゃってよ。それまでに朝ごはん作るからさ」

 台所を覗くと制服の上にピンク色のエプロンを着たうずめが料理していた。

「分かった。そうさせてもらうよ」

 

 フラクナシス級二番艦『ミズガルズ』本艦第二格納庫。ここには『クリフォト』の脳とも言える龍の頭部を模した機械、行動予測プログラム、通称『イザヤ』と『エレミヤ』がある。そして今日は万が一の時に備えて定期的に行っている定期検診の日である。

 現在、第二格納庫には通常では考えられないくらいの大勢の人間が忙しそうに働いていた。そしてその中に混じっていた鉾田 天話がメガホンを取って龍の頭部を模した機械に向って話す。

「『イザヤ』『エレミヤ』、分かってると思うが、今日は定期検診の日だ」

『無論、承知している』

『左様、我々に何かあれば『クリフォト』は稼動できぬからな』

 するとブシューという音の後に顎が下がって中の機械が露出される。

 このプログラムは行動予測プログラム、要するに相手の動きをある程度予測する事が出来るプログラムなのだが、一つだけ「機械」としての欠陥が存在していた。それは「自我」を持ってしまった事だ。何故自我を獲得するに至ったのかは開発者である天話にも不明なのだが、ここまではまだいいのだ。

「あの上から目線の口調はどうにかならないものか……」

 そう、口調である。どこぞの世界最強の老人会のメンバーを彷彿とさせるその口調は明らかにクルーのストレスの原因にもなっていた。

 天話は溜息をつくと、再びメガホンを手にとってこの場の全員に呼び掛ける。

「あ~全員、今日の作業内容について話すから今やっている作業の手を止めてちょっと聞いてくれ」

 すると様々なざわめきに包まれていた第二格納庫が静まり返る。

「今日の作業内容は、定期検診の他に相互神経リンクの為のスロットの増設も行う。特に後者は大変だろうが、頑張って欲しい。では、始めてくれ」

 そして再び第二格納庫は再びざわめきに包まれた。

 

 シャワーと朝食を終えた俺がリビングで新聞を読んでいると士道の家で沢山の物がぶつかったり、砕けたりする音が聞こえた。

 この時ばかりは敵ながらご愁傷様と思うのだった。

 

「おーう、五河。おは……ってお前どうした?」

「やぁ、士道……元気なさそうだね」

 士道が入って来るなり立花と殿町は挨拶をするが、士道の顔は少しやつれていて、足取りは重そうだった。

「まぁ、ちょっとね……」

 士道が曖昧な返事を返して来たのでちょっと揺さぶりをかけてみることにする。

「ああ、それって昨日や……」

 しかしそこまで言った所で口を押さえられてしまい言う事が出来なかった。

「おい、どうしたんだ?」

「い、いや、ナンデモナイヨ」

 士道は明らかに不自然に笑う。額には脂汗が滲んでいた。

「? まぁいいや。ちょうどお前たちに訊きたいことがあったんだ」

「なんだ?」

「ぷはっ…なんですか?」

 そして殿町は真剣な顔をして、こう問いかけた。

「ナースと巫女とメイド……お前ら、どれがいいと思う?」

「巫女」

 即答した。

「お、なんでだ?」

「ふふ、僕は和風な物が大好きなのさ」

 そう言った瞬間周りで女子達のいろいろな囁き声があがったが、聞かないことにした。

「うむ、五河は?」

 そして士道はしばらく考えるそぶりをした後こう答えた。

「あー、メイド…かな?」

「五河! 残念だがお前との友情はここまでだ!」

「………」

「あらあら……」

 そして士道はぽりぽりと頬をかくと自分の席に戻って行った。

「おい、ちょっと待てよ!」

「ん、友情はここまでだって言ったんじゃなかったのか?」

「おいおい、ノリが悪いなー。ナース好きとメイド好きと巫女好きが手を取り合う世界も良いと思いませんかー」

 殿町はナース派だったようだ。

 席につくとそこで教室の戸が開かれ、十香が入って来た。

「やぁ、夜十神さん、おはよう」

「む……お前は……」

 十香は俺の顔を見つめながら考えていると合点がついたように手を叩いた。

「あ、思い出したぞ! 昨日家に来ていたシドーの友達か!」

「そうそう、やっと思い出してくれましたか」

「ふふ、昨日のゲェム、中々強かったぞ。また今度相手をして欲しいものだな」

「ええ、昨日は邪魔が入りましたが、次回はタイマンで決着つけさせてもらいますよ」

 そう火花を散らしている内に士道は質問攻めにされたとか(特に折紙に)

 

 四時限目のチャイムが鳴り、とりあえず校庭で昼食を食べる為に校庭に出た。天気は晴天で雨など降りそうもない程雲一つ無かった。

 そこで『ある人』のことがふと頭に浮かんだ。

 ちゃりーんという鈴の音……沙耶は今、元気にしているだろうか……?

 そんな事を考えながらベンチに腰掛け、朝うずめに渡された黒い弁当箱を開ける。しかし俺は中に入っていた物に驚きの色を隠せなかった。

「なっ……なんだと!?」

 そこにはおにぎりが四つと一通の手紙が入っていた。俺は急いで文書に目を通す。

『兄さんへ

 昨日リーダーさんから聞いたんだけど今日は大事な検査があるということなので変な結果がでないように少し量を減らしました。ゴメンネ!! だから今度好物の唐揚げ作ってあげるから!

うずめより』

 たまらずに頭を抱える。確かに今日は検査が入っているが、一応健全な高校生男児である俺にとってこの量は少なすぎる。

「くっ……購買へ行くしかないか……」

 と、そこで空間震の警報が鳴った。

「……っ!!」

 急いでポケットから一組の手の甲に青い球体が取り付けられた黒い手袋「ギュゲスの指輪」を取り出し、両手にはめて青い球体のダイヤルを回す。すると俺の体は恒常随意領域(パーマネント・テリトリー)に包まれ、姿が見えなくなった。

 小型顕現装置(スモール・リアライザ)「ギュゲスの指輪」、伝説上のアイテムの名が付けられたこれはその名の通り装着者の周りだけではあるが恒常随意領域(パーマネント・テリトリー)を展開することができる。

 更にポケットからイヤホンマイクを取り出し、『ミズガルズ』と通信する。

「リーダー、座標を転送しますので転送をお願いします」

『了解したわ。今転送するからちょっと待ってちょうだい』

 そして浮遊感が体を襲い、『ミズガルズ』の中に転送された。

 

 艦橋では既に精霊の襲来に備え、大勢の人が慌ただしく動いていた。

「今回の目標は?」

 リーダーはオペレーターの一人に声をかけた。

「『イザヤ』『エレミヤ』から送られてきたデータから予想される規模からして『ハーミット』かと」

「分かったわ。総員、特殊第一次戦闘態勢を発令。<イェーガー>による殲滅作戦を開始します。第二格納庫は相互神経リンクの準備を開始して下さい」

「立花 一未、<イェーガー>の装着、完了、装着者の神経バイパス、スロット01に接続を開始」

「空間震予定ポイントのモニター、出します」

 するとメインディスプレイに商店街の一角が映し出された。もちろん人は一人も見当たらない。

「空間震まで後4、3、2……来ます!」

 その瞬間、モニターの中心に映されていた部分が歪み、炸裂した。そして抉られた地面の中心には緑のフードを被った少女が立っていた。

「対象の情報の検索を開始……『ハーミット』です」

「立花、聞いているわね」

『もちろんだ』

「相互神経リンク完了、バイタルサイン全て正常、αユニット接続を確認、システム、オールグリーン。いつでも行けます」

「第一カタパルト、ゲートオープン、ボルテージ上昇」

 すると『ミズガルズ』後部格納庫の下部からカタパルトが現れた。

「迎撃の心配は無し……行きなさい、立花!」

『了解した』

 そして俺はフェイスマスクを閉じ、うつ伏せの状態で『ミズガルズ』から射出された。

 

 着地すると既に目標の姿は無かった。しかし、代わりにあったのは……

「……ASTか……」

『そこの魔術師(ウィザード)! 止まりなさい!』

 リーダーと思わしきCR-ユニットを纏った女性が随意領域(テリトリー)を介して拡大された声で呼びかけた。

「一つ、教えてやる」

 俺は右腰から対精霊高周波ブレード「斬」を引き抜く。

「言っておくが、俺は魔術師(ウィザード)じゃない」

 そして「斬」を構える。

「剣士(サムライ)だ」

 

 ちゃりーん

 鈴の音が鳴る。

「へぇーえ。ここがASTか……」

 天宮駐屯地の門の前に髪をセミロングにし、鈴の髪飾りを付けた少女が立っていた。

「中々おもしろそうじゃねぇか」

 ちゃりーん

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