デート・ア・ライブ~破戒~   作:Kyontyu

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第6話

「起、敗者と勝者」

 

 沙耶達ASTの全隊員達は昨日の作戦の報告会、及び近隣地域で観測された新たな霊波反応と「剣士(サムライ)」を名乗る顕現装置(リアライザ)のようなものを操る人物についての作戦会議が天宮駐屯地の一角にあるブリーフィングルームで行われようとしていた。

 沙耶が事前に配られていた報告書を食い入れるように見つめていると、部屋の自動ドアが開いてAST

の隊長、日下部遼子が現れた。

「あー、いいわ。座って座って……」と、めんどくさそうに手を振る。

「さて、これでみんな集まったわね。今日は報告会の前にある意味非常にバッドなニュースをお知らせするわ」

 それを聞いた隊員達が各々不安そうな顔をし、遼子は溜息をついてから話始める。

「……ここ、天宮は精霊現界数が多い割には成果が少ない、ということで補充要員が派遣されたわ――入って来て」

 その時、自動ドアが開き、周囲がざわめいた。

 そこに立っていたのは青い髪をポニーテールにまとめた中学生くらいの女の子だった。

「祟宮真那三尉であります。以後お見知り置きを」

「く、日下部一尉、彼女は?」

 遼子は予想通りだ、という表情で答える。

「彼女が、件のトップエース様よ」

 質問をした隊員は訝しげな表情で真那を見る。

「って、君はまだ子供じゃ……」

 それを聞いた真那は小さく息を吐く。

「何か問題がありやがるんでしょうか? 問題なのは年齢では無く資質の問題でしょう?それとも――」

 真那はぐるっと周りを見回す。

「――この中に私に勝てるのが一人でもいやがるんでしょうか?」

 自分より年下である彼女のその物言いに沙耶は我慢できずに椅子を倒して立ち上がる。大きな音を立てて立ち上がった沙耶に注目の目線が集まる。

「へぇ、ずいぶんと上から物を言ってくれるじゃねぇか」

 真那は沙耶を睨む。

「あなたは?」

「私の名は刀納沙耶だ」

「知らない名でいやがりますね……あなたは私に勝てるとでも言いやがるんですか」

「あぁそうだ。私ならあんたに勝てる」

 真那はこちらを見て嘲笑うように話す。

「鳶一折紙なら私に勝てる確率が数パーセントありそうでしたが……あなたはどうでいやがるんでしょうね?」

 沙耶がニヤリと笑いながら口を開く。

「さぁな。意外とやらなきゃ分からないものだぜ」

 その時、真那の目つきが変わった。

「やれば、勝てる、と?」 

「あぁ、その通りだ。あんたみたいな奴はどうもいけすかねぇ――」

 そして沙耶はキッ、と真那を睨みつける。

「――口だけじゃなぇか、見てやるよ」

 沙耶は精霊を殺した存在にたった一人で宣戦布告したのだった。

 そのやりとりを隣で聞いていた遼子が呆れ気味に「どうなっても知らないわよ」と、一人ぼやいた。

 

 天宮駐屯地に近接したAST専用の特設演習場。この廃墟のような場所の真ん中に二人の少女、否、顕現装置(リアライザ)を操る現代の魔術師(ウィザード)が立っていた。

 片方は白いCR-ユニットを纏った青い髪の利発そうな少女。そしてもう片方は両手両足に紫色のCR-ユニットを纏う黒髪を短くまとめ、目の前の少女を睨む目つきの悪い少女。

「どうかしやがりましたか?」

「お前から来いよ」

「いやいや、ここは『先輩』に先を譲りますよ」

 へぇ、そうかい、と沙耶は姿勢を低くし、

「なら行かせてもらう……ぜっ!」

 左拳を前に突き出しながら跳び込んでいった。

「ふん、そんな程度……なっ!?」

 真那が鼻で笑いながら身体を捻って回避した途端、左足首に何かが巻き付いた。

「かかったな」

「!?」

 沙耶は急制動をかけて着地し、真那の左足首に巻きついている右肩のドラムから伸びたケーブルを振りまわして真那を地面に、ビルの残骸にぶつけていく。

「くっ……」

 遠心力は随意領域(テリトリー)で緩和されているが、ぶつかった時の衝撃が少女の華奢な体躯に確実にダメージを蓄積させていく。

「おらおらぁぁ! てめぇはこんなモンなのかぁぁ!」

 そして沙耶は最後に右腕を天高く掲げ、一気に地面に振り下ろした。もの凄い衝撃と共に真那が地面に埋もれ、沙耶がそれを見下ろす形で言う。

「さっきとは立場が逆転したなぁ?」

 それを聞いた真那は苦悶の表情を浮かべ、肩の盾のような装甲を両腕に装着させる。

「〈ムラクモ〉――双刃形態(ソードスタイル)」

 そう言った瞬間、腕に装着したパーツから光の刃が出力され、真那はそれを使ってケーブルを切断して抜け出し、沙耶に肉迫する。

「おっと、あぶねぇ」

 沙耶はその刃を上体を反らして回避し、そのままバック宙しながら後退した。

「なかなかやるじゃねぇか」

「そっちも、なかなかやりやがりますね。予想を遥かに超えていやがりますよ――」

 真那はさっきの衝撃で口元に垂れた血を親指で拭いながら続ける。

「こんな短時間でここまでこの私にダメージを負わせるなんて……あなたは一体何者でいやがるんですか?」

「ケッ……そこまでやられてるくせにまだ上から目線かよ……まだやるのか?」

「もちろん、とうぜんでいやがりますよ」

「へっ、そうこなくっちゃ――」

 そう言いながら沙耶は両腕の装甲から対精霊チェーンソー「クルウェル」を引き出す。

「――行くぜっ!」

 沙耶は「クルウェル」を構えながら真那に突きを放つが、真那はそれをレイザ―ブレイドで防ぎ、その勢いを使って後退する。

 そして沙耶は両腕に付けられていた装甲を肩に戻して小さく首を回した。すると両肩のパーツが前を向いてそれぞれ先端が五つに分かれる。

「チェックメイトです」 

 真那がそう言った瞬間、先ほど分かれた先端部分から十条の青白い光線が放たれる。

「へっ、舐めんなよっ!」

 沙耶はそれを軽々しく回避するが、避けられた光線は急にその進路を変えて再び沙耶に襲いかかる。

 さすがに沙耶でも予想外だったらしく、沙耶は大きくバランスを崩す。

「フレア!」

 しかし沙耶がその文言を口にすると両腰の装甲が展開し、フレア弾をばら撒いた。

 フレア弾と光線がぶつかりあって爆発し、辺りを煙で充満させる。いくつかの爆発の後、沙耶は姿勢を立て直すことができずに地面に転がる。沙耶は脳から指令を飛ばして装甲をスキャンすると数か所の被弾が確認できた。どうやらさっきのフレアだけでは防ぎきれなかったようだ。

 沙耶が立ち上がろうと首を上げると首筋に真那のレイザーブレードがあてられた。

「なっ……!?」

「詰みです」

 こちらを見下すように言った真那を数秒見つめた後、沙耶はやれやれと溜息をついて口を開く。

「ああ、私の負けだ」

 沙耶は仰向けに転がってそう言った。しかし、その言葉とは裏腹に表情はどこか清々しそうだった。

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