デート・ア・ライブ~破戒~   作:Kyontyu

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第7話

「起、『過』ぎたもの」

 

 沙耶は先ほどの戦闘の後、ズキズキ痛む頭を抱えながら格納庫のベンチで休んでいた。沙耶の前ではメンテナンスを受ける『ヘル』があった。

 負けちまったか……

 沙耶は『ヘル』を見つめながら唇を噛んだ。

 あいつに……祟宮真那に負けた。こんなようでは一未に顔向けできなぇじゃねぇか……

「サヤ!」

 一人で考え込んでいると前から自分を呼ぶ声が聞こえたので、沙耶は顔を声の聞こえた方に向ける。するとスポーツ飲料のペットボトルが物凄いスピードで目の前に迫って来ていた。

「うわっ!」

 しかし、先ほどの戦闘で脳を酷使しすぎたのか、うまく身体が反応してくれずペットボトルはそのまま額にぶつかった。

「痛ったぁぁぁ!?」

 沙耶は額を庇うように額に手をあててうずくまる。

「おいおい、そんなんで大丈夫か?」

 沙耶は「大丈夫だ、問題無い」という言葉が喉まで出かけるが、実のところ問題は、山積みだった。

「その声は……日下部隊長?」

 沙耶は痛む額を押さえながら頭を上げると、そこにはメンテナンスでもしていたのか、作業服を身に纏い、沙耶に飛んで来た物と同じペットボトルを持った日下部遼子が立っていた。

「ちょっと気晴らしに、お話なんてどう?って思ったんでね」

 

 沙耶と遼子は場所を移し、休憩室の椅子に座っていた。訓練でもしているのか、周りには誰もいなかった。

「……まだ痛む?」

 沙耶は苦虫を噛み潰したような顔のまま頷く。

「ああ、まだこの感覚にはどうも慣れなくてね」

 CR-ユニットを使った後に訪れるこの妙な感覚――まるで頭をシェイクしたような感覚――は沙耶が大の苦手だった。

 しばらくの沈黙が続いた後、遼子がそういえば、と会話を切りだした。

「あなたはあの『剣士(サムライ)』と名乗った存在のことを知っているの?」

「……まぁ。でも、どうして?」

 遼子は少し考えるようなそぶりを見せたあと、口を開く。

「私、あの声の男に会ったことがあるの。ちょうど三年前に現れた男の精霊、彼は自分を『カズミ タチバナ』と名乗ったわ」

 沙耶は机を叩いた。

「一未を知っているんですか!?」

「え? いや、ちょっとね……」

 「あ、すいません」沙耶は席に座った。

「じゃあ、ちょっと話します。私と一未が出会ったのは十年前の話を」

「今から十年前というと……確かサンフランシスコ大空災があった年か。カルフォニア州とその周辺の州を壊滅させ、数千万人規模を死傷者を出した大規模な空間震だったようね……」遼子は手元のタブレットで当時についての情報を検索しながら呟く。

「そう、その日から私達の運命が大きく変わりました――」

 そして沙耶は手を組んで話始めた。

――私はカルフォニア州の隣のネバダ州に住んでいたからサンフランシスコ大空災の影響を受けた。そしてその空間震で私は両親を失い、孤児になった。

 後で知ったのだが、生存者は私を含めて三人だったそうだ。これには私もびっくりした。まぁ、それはさておき、私の親戚と呼べる人物はみんな既に亡くなってしまっていたから、私はコロラド州の孤児院に預けられることになったんだ。私の性格が問題だったのか、そこでは友達ができなかったから、私は毎日孤児院の周りをぶらぶらと歩いて過ごした。

そしてある日、私は部屋の片隅でうずくまっている『彼』に出会った。

 

「なぁ、おまえ。なにやってんだ?」

 私はずっと動かない少年に声をかけるが、彼は動かない。

「おーい。いきてるかー?」

 私はめげずに彼の目の前で手を振ってみたり、体をゆさゆさと揺らしてみたが彼が口を開く様子は、無い。

「むぅ……」

 私は彼の耳元に口を近づけさせ、大声で叫んだ。

「おーい! きこえてるかぁ!」

 しばらくの沈黙の後、彼から声らしき音が聞こえた。

「……わたしにかかわらないでください」

 彼はぼそぼそと口を動かしていたようだが、私には聞き取ることが出来なかった。

「え? なに?」

 私は彼に近づいてしゃがむが、聞こえるのはやはりぼそぼそとした何かの音だった。

「……わたしにかかわらないでください」

「もっとおおきなこえで!」

「……わたしにかかわらないでください!」

「なんだ。ちゃんといえるじゃねぇか」

 私はフッ、と笑って立ち上がり、腰に手をあてた。

「……なにのよう?」

 彼は顔を上げる。彼の目はなんだか冷めきっているようだった。

「いや、ひとりでなにしてるのかなぁ、ってね」

「わたしはひとりでこうしてたほうがいいんです」

「……それ、たのしい?」

「………」

 彼は一瞬こちらを向いたが、すぐにまた俯いてしまった。私は溜息をついてこう言った。

「わたしも、ひとりなんだ。だから――」

 私は手を彼に差し伸べた。

「――わたしとともだちにならない?」

 彼は少しの躊躇いを見せた後、何も言わずに私の手を握った。

 そうして私と彼――立花一未は私と『ともだち』になったのだった。

 そして私と一未が『ともだち』になってから何週間か過ぎたある日、後に『師匠』と呼ばれるある女性が私達を引き取りたいと言ってきたので、私と一未、そして一未の妹のうずめは施設長室に呼ばれた。

「やぁ、私の名前はマミ・ケベック。よろしく!」

 黒いキャップ帽を被り、黒いタンクトップ、ベージュのカーゴパンツを着たマミ・ケベックと名乗った女性は私達にこう言った。

「ねぇ、あなた達の両親を奪った存在に、復讐したくない?」

 案の定、そばで聞いていた施設長はびっくりしていたが、私達は彼女についていく事にした。

 その時、わたし達は決心した。

 いつか、私達の両親を奪った存在に復讐する為に。その為の力を手に入れる為に。

 長い長い訓練の日々が続き、一未は遂に精霊と戦う為の『力』――CR-スーツを手に入れ、実戦に慣れる為に世界を転々として様々な組織、敵と戦った。私は要領が悪かったのか、戦う『力』を手に入れることが出来なかった。うずめは、「見守っているでけでいいから」と言って訓練はせず、一未のサポートをしたりしていた。

 そしてコディアック島での任務の後、師匠と一未は消息を絶った。

 私とうずめは二人の帰りを待ったが、ついに業を煮やしたうずめも「兄さんを探しに行く!」と言って姿をくらましてしまった。

 私は再び独りになってしまい、その不安から一日中泣き続ける日々が続いた。

 そしてある日、ぼろぼろになった師匠が帰ってきて、私にこう言ったんだ。

「キミには力が必要だ。だから、私についてきてくれ」

 

「そして私は『ヘル』を手に入れ、今に至る、という訳」

「いろいろ大変だったのね」

 ええ、と沙耶は窓に映る空を見た。

「まぁ、今は生きてるかも分からないですけど……」沙耶は儚げに微笑む。

「もし彼が『剣士(サムライ)』で、彼をを殺す事になっても?」

「え?」

「勘だけど、あいつは昔に会った『カズミ タチバナ』と太刀筋が似ていたの。だから、もしかしたらってね」

 それを聞いて沙耶は俯いた。この国も加盟している条約では無許可の顕現装置(リアライザ)所有は死罪と定められていた。

「その時は、一未を説得するつもりです」

「……そう」

 遼子は立ち上がり、ドアを開ける前に口を開いた。

「あと、私が会った『カズミ タチバナ』は、大人だったわ」

 そして遼子は部屋を出ていった。

「嘘……」

 沙耶は顔を歪めた。




 もうそろそろ狂三さんの出番かな。さぁ、頑張っていきますよ!
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