魔法使い族/レベル1/光属性
ATK/DEF=0
モンスター効果で直接墓地へ送られた時、墓地からこのカードを特殊召喚する。
「ターンエンド」
「僕のターン! 手札1枚をコストにライトニングボルテックスを発動!
相手のフィールド上に存在している表側表示のモンスターをすべて破壊!」
俺のモンスターたちの真上に雷雲が突然出現するとそこから一瞬だけ何かが光ったかと思えば、
その直後に凄まじい爆音がアリーナ全体に響きわたり、全てのモンスターが破壊されてしまった。
「これで君のフィールドはガラ空き! ホルスでダイレクトアタック!」
「うおぉぉ!」
ホルスの開けた大きな口から火球が吐き出され、俺の目の前のフィールドに落ちたかと思えば、
その火球が大きな爆発をあげ、その爆風が俺に襲い掛かってきて吹き飛ばされそうになるが、なんとか地面に足をつけて踏ん張った。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド」
『LP2600vs1000』
「俺のターン」
このドローでモンスターカードが引けなければその時点で俺の負けが確定する。
俺はこのデュエルを心の底から楽しんできた……だけどもっと楽しみたい!
もっともっと楽しんで、そのうえで真白に勝ちたい!
「ドロー!」
カードをドローし、眼を少しずつ開けながら手に持っているカードに目線を持っていくと、そのカードの枠の色が少しずつ見えていき、完全に目を開いたとき、
見えた色は茶色……つまり、俺が望んでいたモンスターカードだった!
「来たぜ。俺は手札から魔法カード・ワンフォーワンを発動!
手札からモンスターカードを送り、手札・デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚する! 俺が呼ぶのはこいつだ!」
発動した魔法カードから光が放たれ、その光からこの状況を打開するモンスターが姿を現し始めた。
小さな体に似合わない大きな黒いトンガリ帽子をかぶり、
小さな魔法の杖のようなものを小さな手で握り、巨大なホルスの目の前に出現した。
『こ、怖くないもん! マスターのお役にたてるチャンスだもん!』
「……しゃ、喋……った」
『マスター! よろしくです!』
そう言い、小さな魔法使いはぺこっと頭を俺に下げた。
慌てて周囲を見渡してみるが俺が召喚したモンスターに驚いている様子しか見えないし、目の前の真白も観客とおなじ様子だった。
『ATK/DEF=300』
「どうしたの? 優斗君」
「あ、い、いや何でもない」
気のせいだったのか……まぁ、良い! さあ、ベビーマジシャン!
お前の魔法で今まで散々、お前をバカにしてきた奴らの度肝を吹き飛ばしてやれ!
『はいです! えーい! 罠カードさん、墓地へ行くのです!』
「ま、また喋った……まぁ、良い! ベビーマジシャンの効果発動! 1ターンに1度、
デッキから魔法・罠カードを1枚墓地へ送ることができる! 俺が送るのはグレイブ・フォース!」
「……そうか!」
「そうだよ! 墓地へ送られたグレイブ・フォースの効果発動!
このカードがモンスター効果により墓地へ直接送られた場合、デッキからモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚できる。ただし、エンドフェイズにこの効果で特殊召喚したモンスターは破壊され、
効果を発動したプレイヤーはその攻撃力分のダメージを受ける。
俺はデッキから連鎖邪龍・チェイン・カオス・ドラゴンを特殊召喚!」
デッキからそのカードを選択し、ディスクにセットすると俺の目の前から闇があふれ出し、その闇の中からこちらまでもが痛みを覚えるくらいにギュウギュウに、
鎖で縛りつけられた漆黒の龍が姿を現した。
まただ……また、闇があふれて。
「王宮のお触れが無効にできるのはフィールド上のみ。墓地発動で来たか!
でも、それだけじゃ僕のとどめをさすことはできないよ!」
「まだだぜ! チェイン・カオスの効果発動!
デッキから連鎖モンスターを墓地へ送ることができ、この効果で送られたカード1枚につき、このデュエルで積まれたチェーン数を1つあげる。チェーン数は4!
よって俺はデッキから6体の連鎖モンスターを墓地へ送る!」
カードをデッキから6枚墓地へ送ったと同時に墓地ゾーンが輝き始めた。
「さらに墓地へ送られた連鎖・チェイン・ベビーの効果発動! 甦れ!」
『ATK/DEF=0』
フィールドから光が溢れ出し、そこからおしゃぶりのようなものを口にくわえ、
真っ赤な服を着て鎖を首からかけ、赤い帽子をかぶった2体のモンスターが出現した。
「これですべての準備はそろった! 俺は2体のベビーを墓地へ送り、
エクストラデッキから連鎖龍・チェインドラゴンを特殊召喚!」
エクストラデッキからチェイン・ドラゴンのカードを取り出し、ディスクにセットすると、俺の前から膨大な量の光が放たれ、その中から連鎖邪龍とは正反対の体色をもち、
緩く全身を鎖で拘束されているチェイン・ドラゴンが姿を表し、
上に向かって咆哮をあげたと同時にそれに呼応するようにチェイン・カオスも咆哮を上げ始めた。
「連鎖龍・チェイン・ドラゴンの効果! 墓地に存在する連鎖モンスターを5枚まで除外でき、その効果で除外したモンスターの数かける300ポイント、
相手モンスターの攻撃力を下げると同時にこのモンスターの攻撃力もあげる!」
『ホルスATK;3000→1500』
『チェインATK;2500→4000』
「そ、そんな!」
「これでトドメだ! チェイン・カオスでホルスの黒炎竜を攻撃!」
チェイン・カオスをギュウギュウに締め上げていた鎖が解き放たれて地面に突き刺さり、自身を固定すると口を大きくあけ、そこに闇を凝縮させていき、それを放つと、
闇の球体がホルスに直撃し、闇がホルスを飲み込んだ。
『LP2100vs1000』
「トドメだ! チェイン・ドラゴンでダイレクトアタック!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
『LP0vs1000』
ガラ空きとなった相手めがけてチェイン・ドラゴンが放った光の破壊光線が地面に着弾し、
大きな爆発を上げると同時に真白のライフを完全に削りきった。
「っっしゃぁぁぁぁぁ!」
『やったー!』
俺が喜びの叫びを上げると同時にフィールドに残っていたベビーマジシャンも自分のつえをあげ、
さらにはチェイン・ドラゴンとチェイン・カオスまでもが喜ぶようにひと際大きな咆哮をあげた。
「ハハハ……負けちゃったか」
「真白! 楽しいデュエルだったぜ!」
「僕もだよ」
満面の笑みを浮かべながら真白が俺に手を差し出してきたので俺もその手を取り、
固い握手をすると観客席からチラホラとだけだが拍手が俺たちに贈られた。
やっぱり、レッド寮の俺がイエローの奴を倒したからか?
ま、楽しいデュエルだったしそんなことどうでもいいか!
ふと、視界の端に誰かの姿が一瞬だけ映ったのでそちらのほうを向くと、
マイクを持った先生が俺たちがいるフィールドの中央に向かってゆっくりと歩いてきていた。
「これで決まったな。私が担任するクラスの代表は高槻優斗だ! 異論があれば、
デュエルで高槻を倒してからにすること! 以上!」
先生のその声とともにフィールドの周りを覆うように立っていたギャラリーたちが一人、また一人と去っていき、最後に残っていた俺と真白もアリーナを出た。
「というわけで優斗君がクラス代表になったことを祝ってカンパーイ!」
その夜、どこかからか俺がクラス代表に就任したことを聞きつけた森先輩、
そして真白経由で知ったノゾミさん、真白、そして同じクラスの新聞部の山本さんが、
レッド寮の食事室に集まり、森先輩の先の言葉から就任お祝いパーティーが開かれた。
テーブルの上には森先輩が作ってくれた美味しそうな料理の数々とノゾミさんお手製のケーキ、
そして寮長のちょっと豪華目の猫缶も置かれており、寂しいレッド寮はこの時だけなりを潜めていた。
「乾杯も終わったということで早速、デュエルアカデミアの歴史に名を刻んだ高槻君!
コメントをいただこう! はい、どうぞ!」
「え、えっと……とりあえず、頑張っていきます!」
「……ま、ねつ造しちゃえばいいか」
グイグイと押しつけられたボイスレコーダーの前でそんなことを言った直後に、
山本さんの少し聞き捨てならない発言もあったがとりあえず放っておくことにした。
「いや~若いって良いわね~。いろんなものをボッコボッコと潰していく様!
まさに青春! 世の中の決まったルールに反抗するヤンキーの如く」
「あ、これ美味しいですね」
「よかった。マー君以外の人に作るのは初めてだから」
森さんのわけのわからない演説のようなものが始まった瞬間に、
近くにあったノゾミさんお手製のケーキを一口食べ、
ノゾミさんに感想を言うというのを名目に森さんから目をそらした。
「でも、白熱だったね。最後のトドメの立役者はまさかのワンフォーワンからのベビーマジシャン! そしてベビーマジシャンで墓地へ落としたグレイブ・フォースでフィニッシャーを召喚!
要らないカードと言われたカードで手繰り寄せた勝利! まさしく王道物の勝利!」
「森先輩ってそんなキャラでしたっけ?」
初めて会ったときは普通の先輩だったのにテンションが上がりまくっている今は別人のように、演説チックなことを急に喋りはじめる……まあ、美人だから許されることだけど。
そして俺の目の前のテーブルには『エヘヘヘ~』と恥ずかしそうに顔を赤くしながら頭をさすって、テーブルの上にちょこんと座っているベビーマジシャンの姿があった。
彼女の話によるとカードの精霊らしい……よく分からないこともあるもんだ。
「4日後に迫ったクラス対抗デュエルトーナメントが楽しみだわ~。
お姉さんも見に行って応援してあげるからね! 改めてかんぱ~い!」
『かんぱ~い!』